地球が帰ってきてくれともう遅いをされてしまう話 作:苺のタルトですが
オリジナル:ファンタジー/日常
タグ:残酷な描写 転生 女主人公 男主人公 異世界 ファンタジー 虫 巨大トカゲ アンチテーゼかも 地球
今回は地球にいるトカゲを保護しに行く。
元地球の記憶をほんのり持つエルフと現地人エルフ
ここはコーラル。
異世界だ。
この世界は優しい。
どこを見ても自然豊かで、生物はとても大人しく、人懐っこく、理解をしている。
ブラッシングをして、光の匂いを思う存分嗅いでいるとクスクスと笑う音が耳に到達。
振り向かなくても分かる。
「別に私に限ったことじゃないんだからね」
分かってる、と震えた声で応えられる。
彼は【アドニス】。
同じ同僚で、仕事上のパートナー。
私達の容姿は伝承にある種族から派生したと言われる。
アドニスはエルフエルフと言っていたが、また夢でも見たのだろう。
「リーシャ、仕事が入ったぞ」
「本当?今度はなんの種族に会えるのか楽しみ」
「どうやら、地球だそうだ」
「地球?聞いたことないね」
「ああ、でもおれは嫌と言う程知っている」
「もしかして、アドニスの夢物語の星の名前?偶然の一致だと思うんだけど」
アドニスには前世があって、そこで生きた記憶があるらしい。
とは言っても、私達は長命の種族なので今となっては、その記憶も殆どないそうだ。
「昔は鮮明に覚えて居たけど、流石にこんだけ時間が経つとな」
昔は結構話してくれたんだけど、私も名前とか細かいところは忘却してしまっている。
それもこれも、今の仕事が充実しているおかげ。
「私も殆ど覚えてないよ?もうそれって覚えておく必要もないってことだよ、きっと」
彼はそれもそうだなと笑う。
地球への派遣を要請されて、アドニスとリーシャはその惑星へ異世界ゲートを使用して向かう。
広大な宇宙の一つの惑星に送られる程なのだから、巨大生物がなにかしらいるのだろう。
私達の仕事は巨大化した、又は巨大型の生物の保護です。
うちの異世界は大きくて、巨大生物を保護するくらい、わけない。
そして、幸せに暮らして欲しいと異世界の者が思えるような人柄故に、こういう活動が行える。
アドニスは人生がSSRだと嬉しそうに語るが、そんなのは大前提ではないか。
「んじゃ、人生初の地球訪問、行くか」
「うん。アドニスが地理知ってるのなら困ったら頼らせてね」
「まかせろって言いたいけど、おれの記憶じゃ巨大生物なんて影も形もなかったんだよな」
地球へ到着すると、そこには事前に話を通してあった通り、案内人が居た。
今回のコンダクターだ。
「今回もご苦労様です」
「お二方も遠路はるばる、ありがとうございます」
我が世界、コーラルの人なのでいつもの挨拶を交わす。
アドニス曰く、エルフの見た目をしている。
「地球の方々はどうしですか」
「あまり感触は良くないですね。はっきり言いますと、最悪の部類でしょう」
相手は言い直す。
「報告書によれば巨大生物はトカゲだよな?トカゲは襲わないんだから、最悪になりようがないんだが、なにが最悪だったんだ?」
「トカゲは一日中同じ場所に居座り、自分たちの星を占拠し続けている存在として、嫌悪してます」
「巨大生物はある日現れたわけでもなく、太古の昔から居た、所謂先住民。その言い方は傲慢さの現れですね」
リーシャも言い草に呆れる。
「そこにいるのはなにか理由があるからとは思いますが、これから先、トカゲ達が駆除されかねない思考を感じているので、保護は急いだ方が良さそうです」
「そうですね。アドニス。行こう」
「ああ。これから地球の外交官と会うんだろ」
「ええ。会います。呑気に会食をと言われまして、我々をボランティアだとか勘違いしているのではないかと思いましたよ」
「はあ、お前にそこまで言わせるとは」
この異世界人も優しさマックスの人なのだが、その人でさえ投げ打つように苦言を溢すような真似を地球の人達が見せていたということだ。
アドニスはまだかろうじて元地球人の感覚があるので、コーラル人の人の良さがどれほど凄いか分かる。
リーシャ達は足早に巨大生物達の保護を開始する。
合間に地球人達がジロジロ見てきて、スマホや写真で撮ろうとしたから、認識阻害の魔法を自分達にかけた。
「あー、あんだけドヤ顔で自慢してた過去を消したい」
アドニスが失望を絵に描いたような顔色で落ち込んでいく。
「落ち込まないで。それにアドニスが話してくれた地球となにか違う」
「巨大な生物なんていなかったからなぁ。パラレルワールドか?」
「パラレルワールド。それは確か、時代が二分したうちの一つの時間のことね」
「そうだ。それなら巨大生物という存在が居ない世界の方の人間だったと、辻褄が合う」
案内人に従って外交官と会うと、トカゲのところへ案内される。
案内されずともすでに遠目に見えていた。
高層ビルのところ、東京タワー、山、色んなところでじっとしている。
「特に動くこともなく、私の任務期間にも微動だにしませんでした」
「こりゃ、本当になにかあるな」
「うん。巨大だからエネルギーを使わないようにしないという意味も無いわけではないけど、それ以外にもありそう」
アドニス達と異世界語でやり取り。
「どうしたのですか?」
しきりに地球の外交官が聞いていたが、すでに私達は巨大生物を排除したがる人間に教えるものなどないと満場一致していた。
「さて、では魔法陣を」
「はい」
「行くぜ」
「これから大規模な光が発生しますが、トカゲをこちらの世界に移動させるだけなのでご安心下さい」
そう地球外交官に言うと、彼はやっとこの積年の悩みがなくなることに安堵していた。
世の中、そんなことで済ませるものなどないのだが。
アドニスは長年の経験で、うっすら末路を察していた。
よくよく考えてみて、トカゲが巨大さを大昔から維持できていて、進化しても小さくならなかった理由。
それを地球の科学者や政治家達は良く考えてみて欲しかった。
普通に考えて、本当に何もしてないのなら進化の過程で小さくなってるはずだ。
ライオンが猫と派生していったように。
マンモスがゾウと派生していき、昔と違って小型になったように。
それがなかった意味を。
魔法陣が光るのをやめるとトカゲが一匹もいなくなっていた。
外交官はそれに感動の声をあげ、見物をしていた野次馬達も視界から居なくなった【なにもしてなかった】トカゲが消えて喜ぶ。
その後、私達は歓迎の宴も断り、俊足で異世界へ蜻蛉返りした。
アドニスは肩をすくめる。
「クジラは小魚やプランクトンを食べる」
クジラの画像を出して、我々に説明する。
「つまり、トカゲも虫を食ってた」
「地球を埋め尽くすような虫を食べていたから、地球はあの程度ので済んでいたと」
帰還して一年、結末を踏まえて私達は何故巨大トカゲはあの巨大さを維持できたのか、じっとし続けていたのかを分析した。
「そ。パラレルの地球は随分と虫が多くて、元はあのトカゲと虫だけが居た星だった。紀元前からそうだったなんて地球の奴らは知る由もない」
トカゲが動かなかったのはその虫を目にも止まらぬ速さでコツコツ食べ、それ以上数が増えないように、食べすぎないストックの様に今の数になっていた。
そうしたバランスの上で地球は平穏を感受。
しかし、今ではトカゲは居なくなってしまった。
虫の成長速度、増える速度を考えると今頃、地球は……。
「まあ、今更戻ってこいって言っても戻ってくるわけがない」
食べる速度を考えてもちまちま食べていたものを、地球が安定できる程一気に食べられるわけがないので、また気の遠くなるような時間がかかることだろう。
「俺の知ってる地球は肉食動物と小動物と哺乳類が生き残ったけど、パラレルワールドの地球はトカゲと虫が本来の生き残り組だったんだな。人類は運良くトカゲの陰で生かされてたってわけか」
遠くない未来、地球の文字の上に【LOST】の文字が押されるのだろう。
アドニスは思っていた地球とは違うことにささやかな哀愁が過ったが、それもあと数十年で綺麗さっぱりなくなるだろうと予感した。