東方無限者 〜the Infinitous's Second Life.   作:影のビツケンヌ

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余章:元賞金稼ぎの考察
記載


人外のバイオエナジー

 

 バイオエナジーは、あらゆる生物が体内で無限に生成・循環させている謎のエネルギー体である。これまで発見されたどの素粒子でも構成されておらず、生成プロセスは一切不明。現行の科学技術では認識・数値化することすら不可能。コーカサスに於いても、それを扱う技術を持っているのは、Gアームズとその社長ハルベルト・フランケンシュタイン、そして彼に親しい一部の人物のみであった。

 この不可解な物質は、生物の身体に関するありとあらゆることに相互作用する。バイオエナジーの流動が生物を左右すると表現しても過剰ではない。

 幻想郷に於ける妖怪のバイオエナジーの流動についてだが、通常のヒトと異なるのは自明だ。まずヒトよりもずっと効率の良い流れ方をしている。通常バイオエナジーは、細胞一つを流れる際は一方通行である。が、妖怪の場合、その流れは非常に複雑で、細胞一つにバイオエナジーが触れる機会が多くなっているのだ。これは当然細胞が活性化、極めて強靭になることを示し、妖怪の高い身体能力、肉体強度を実現する。身体構造が殆どヒトと同じであっても、ヒトを上回る力を発揮できるのである。

 亡霊の場合、通常のポジバイオではなくネガバイオが流れる。むしろ、亡霊はその流動だけで構成された一種のエネルギー生命体(死んでいるのに生命体とはこれはいかに)である。ネガバイオの負の力荷の影響で物体の分子構造の隙間に入り込みにくい為、亡霊は物体をすり抜けることができない。亡霊に体温があるといわれるのは、バイオエナジーの力荷の温度であると考えられる。正の力荷でも負の力荷でも、凝縮されれば温度は高くなる。また、亡霊が怨みや妬みなどの特定の感情に支配されている場合、負の力荷が大量に発生し、ポジバイオの力荷を奪ってしまうが、これが幻想郷で云われる『死に誘われる』というものの原理だ。

 幽霊の場合、それは力荷の存在しないニューバイオの流動、というより塊程度でしかなく、非常に不安定なものだ。自分の力荷の恩恵を受けられないので流れている状態を維持するだけでやっとであり、それが持つ感情も亡霊程細やかなものではない。ただし、幽霊は冥界におびただしいという形容では済まされない数が生息する故、これが一概に幽霊全般にいえたことかは不明である。

(編集中事項)

 

妖怪の特筆すべき身体構造

 

 ある程度力のある妖怪は、ヒトに近い姿をしてはいるものの、様々に興味深い点を持つ。

 白狼天狗や玉兎、人狼などは、頭頂部にも耳が存在するが、これは頭蓋骨の一部分に空洞があり、そこにもう一つの内耳及び蝸牛が存在しているようだ。神経は側頭部のものと共有しているらしい。

 背中に肋骨や肩甲骨が変化したと思しき翼を持つものも多くいる。鴉天狗と地獄鴉は鳥のものと同じ構造の翼を持つが、両者には決定的な違いがある。鴉天狗は翼を飛行中の姿勢制御に用い、妖力が原動力である為翼なしでも飛べるのに対し、地獄鴉の飛行は翼と密接な関係があり、飛行の補助としてしか妖力を使わないので翼なしでは浮かぶことすらできないのだ。また地獄鴉の方が翼が大きく、鴉天狗は翼を『収納』できることも特徴の一つ。鴉天狗の後背部には、背骨に平行して二つの裂け目が入っており、そこから生えた翼を、裂け目内部の筋肉でできた嚢状の器官に収めるのである。この身体的特徴の影響で、鴉天狗は上半身を曲げられる角度に制限があり、翼の骨折を防ぐには、どうしても翼を嚢から出さねばならない。ちなみに、飛行に翼を殆ど使わない吸血鬼の後背部の皮膚には、角質化した窪みがあり、翼の鉤爪を引っ掛けて留めておける。用途は不明。

 河童は長時間の潜水が可能だが、これはアシカやマッコウクジラのように、血液中や体組織に酸素を備蓄しておける為である。

 鬼の角は幾つかの種類がある。シカのように骨だけでできたもの、インパラやオリックスのように骨の上に角質の鞘が被さったもの、サイのように毛が纏まってできたもの、この三つが大半だろう。

 覚のサードアイ器官は、対象の中枢神経の電気的信号パターンを視覚的にキャッチし、それらの情報を脳内で自動的に変換、思考を読み取る為のものだ。眼球に似たこの感覚器官は、身体から直接生えた複数のケーブル状の管で、さながらイヤホンジャックに挿さるプラグの如く神経接続している。サードアイ器官内部には、小規模ながら独立した循環系が存在し、管との接続部分の、開放血管系と閉鎖血管系の特徴を併せ持った特殊な毛細血管で酸素や二酸化炭素、養分のやり取りを行なう。またこの部分は、短時間であれば管と完全に離れることもできるようだ。

 

(以下独白)

 現在、更なる謎の解明の為、発生段階での観測を行ない、ゆくゆくは遺伝子操作によるジーンセラピーを妖怪向けに導入可能か検討するべく、妖怪達に協力を仰いでいるが、未だ協力者は現れない。

 生命倫理(バイオエシックス)の問題が騒がれているが、真に憎むべきは遺伝子を弄ぶことではなく、その技術力を以ってして何かを壊さんとすること、生み出した生命を蔑ろにすることである。

 その技術の一番の被害者こそ内穂だ。英雄への復讐の為俺の遺伝子を元に作られた彼女は、バイオエナジーを利用したVRANEの高度な技術で急速培養、誰のものとも知らぬ記憶を植え付けられて、失敗作だと粗暴に扱われ、終いには研究員達の性欲の捌け口にされて放り出された。無理な強制培養でテロメアの傷付いた彼女は、肉体年齢15歳、実年齢僅か4歳でその生涯の幕を閉じた。

 目を閉じるだけで、俺は鮮明に思い出すことができる。痣や傷だらけになった内穂の白い肌。調教され過ぎて、したくもない性交を身体が覚えてしまい、夜な夜な泣きながら秘所に手を伸ばし自分を慰めている彼女の姿は、正直見ていられなかった。

 遺伝子工学に限らず、学問は本来、あらゆるものの助けとなるものを創造し、より良くしていく為のものだ。その志まで幻想入りしないことを切に願う。

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