東方無限者 〜the Infinitous's Second Life.   作:影のビツケンヌ

35 / 47
また…コラボしてえな…
戌眞呂氏との共作録も楽しかった…


死闘

 本来戦闘行為に『ルール』など存在せず、求められるのは結果のみ。目的の為に手段を選んではならないのだ。事実、俺は素子との決闘以来、一度たりとも弾幕ごっこで負けたことがない。とにかく『勝つ』ことのみを考えて行動した結果だ。顔面に砂をぶつけて目を潰し、弾幕そのものを破壊して強行突破、敵の結界も無理やり抉じ開けて内部に攻撃する(勿論、鈴仙や魔理沙らに指摘されてすぐに止めた)。

 「卑怯だ」

そう後ろ指を指されたこともある。だが俺は、決してそんなことはないと考える。ヒトという生物そのものが卑怯な生物だからである。

 元々死肉を探して長距離を歩き回る為発達したその体躯は、霊長目の中でもかなり大きな部類に入るのに、オランウータンのように腕力が強い訳でも、ヒヒのように牙が鋭い訳でもない。全速力でも大抵の個体は時速30km程度で走るのがやっとで、教わらなければ泳ぐこともできない。貧弱なヒトが何故ここまで繁栄できたのか、それはヒトの持つ突出した投擲能力のお陰だ。遠くから攻撃すれば獲物を一方的に封殺できる。かくしてヒトは己を危険に晒すことなしに獲物を仕留める術を発達させ、それが道具の作成へと発展していく。楽をすること、それは始めからヒトの遺伝子に刻み込まれているのである。

 だからこそ、今俺とエリオットが繰り広げているような『手段を選ばぬ戦い』が実現する。

 

 シジマ作戦開始から1時間程経っただろうか。

 誘導しながら森を伝っていくうちに、俺とエリオットはいつの間にか魔法の森で戦っていた。

 俺もエリオットも、ここの瘴気に対する強い耐性がある。戦闘に支障をきたすことはまずない。

「オラァッ!」

「うおおあアッ!」

溢れ出す思いは、遠くからの攻撃では伝わらない。接近して、それを畳み掛けるように浴びせた。

 清廉なようで感傷や偏執を孕んだ青白い光の(つるぎ)と、狂おしいまでに正義を追い求めたが故とでもいうべき赤黒い闇の(やいば)が、それが金属でなく高密度の素粒子の集まりであるというのに、金属的な剣戟音と火花を湿った空気に撒き散らし、空中で互いにぶつかり合う。中世ヨーロッパの騎士(ナイト)や江戸時代の侍でもこんな連撃を繰り出すことはできまい。バイオブースターを操る俺と、ワイヤーで飛び回るエリオットは、殆ど地上に降りていない。そしてバイオブレードならでは――刃の向きが決まっておらず、どの方向から振るっても切断が可能なのだ――の、通常の刀剣には真似できない無茶な剣筋での運用。それが、元々のスピードに拍車をかけていた。血中に流れ出す大量のアドレナリンが思考を速めに速め、命を刈り取る一振り一振りを生み出し、受け流し、弾き返す。コンマ1秒も注意が逸れたなら、それは死を意味する。

 俺もエリオットも目を大きく見開いていた。バイオエナジーが見えるか否かという点を除けば、どちらの目の性能もほぼ同じだ。薄暗い魔法の森の中で、視界に入る光学情報を最大限活用しようとしていた。僅かな挙動を見逃すだけで、既に一巻の終わり。回避し切れない距離でオセロ並みの後悔をしようと、自身の判断ミスが招いた運命を免れることはできない。スペルカードルールに慣れ親しみ、平和ボケしたヒトには到底到達不可能な領域である。これがコーカサスに於ける『戦い』なのだ。

 少しでも隙を見つければそこに付け入り、その一瞬のもと葬り去らんと己の得物を叩き込む。すぐさま反応し、隙を埋めて返す。その応酬を何桁繰り返したのだろう。

 作戦の内容を忘れた訳ではない。だが俺は、自身の過去に向き合えない者を許せなかった。これはエリオットだけでなく、鈴仙に対する憤怒でもあった。スコープを通して、彼女が俺の思いを受け止め、過去に立ち向かう覚悟ができたなら本望だ。ただただエリオットに全身全霊を上げて攻撃を続け、シュリュウからの裁きの光が放たれるのを待った。尤も、単に作戦を遂行するのみであれば、シュリュウで狙撃する以前に俺がエリオットを殺してしまえばいいだけの話なのだが。

 …それに、仮に鈴仙が撃たずとも、こちらの懐には()()が存在する。

 「うおっ?!」

宙でエリオットを吊るしていたワイヤーが急に外れ、彼が明後日の方向に飛ばされる。視界の隅を流れたアンカーフックには、腐りかけた樹皮がむんずと握られていて、俺はそこから、その狂人がクローを射出するべき場所を見誤ったのだと判断した。

 千載一遇の好機。それを掴まない程俺は馬鹿ではない。

 茂みに落ちたエリオット。俺は全てのブースターを唸らせた。文も舌を巻いた加速度で、俺の体は獲物目掛けて一直線。刃をこれでもかと鋭く尖らせて、ハブもかくやという勢いで腰仙部に突き込んだ。

 はずだった。

 自分の腕が貫いていたのは、薄汚れたような色合いのコート。

「馬鹿がッ」

その罵声が左から聞こえた。地面に刺さった腕が抜けず、首だけを動かすと、エリオットとハイドラがすぐそこにあった。

 予想外だった。完全に不意を突かれた。エリオットは幻想入りする以前から、エヴォリューテッドパーソンとして覚醒し、バイオブースターを有していたのだ。

 反応し切れない。3本の凶悪な鉤爪が、自分の頭蓋を一気呵成にぶち抜く、その瞬間を幻視した。

 その時。

 エリオットが空中でバックステップした。すぐにそこには斜めに強烈な光の柱が立ち上がり、地面のキノコを地形諸共焼き尽くす。

「?!」

驚愕し、辺りを見回す半裸の男。半ば呆然としながらそれを見つめていると、シュリュウから通信が入った。

『撃てた…小櫃、私…』

「…ああ、撃てた。そうだ、お前はやれる!」

鈴仙の声に調子付けられ、俺も気を持ち直し励ます。そうか、立ち向かう準備が整ったか。

『小櫃さん、レーザー発射時の電力消費量は、予想を大幅にオーバーしています! 再充填が必要です、どうか時間を稼いで下さい! お空、もっと出力を上げて!!…』

素子の頼みを無言のうちに了承し、再度ブレードを形成。エリオットは「そっちか!」と苛立ち気味に吐き捨て、丁度シュリュウのある守矢神社の方角へ飛び出していく。

 陽動作戦が、停滞作戦に変わった。




第2章はあと2、3話程度で終了する予定です。
そういえば、無限者を動画化しようと思ったけど、ブラストの立ち絵の問題をまだ解決していなかった…どうしよう…
またダーシマ様にお願いするのは恐れ多くて無理だ…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。