東方無限者 〜the Infinitous's Second Life. 作:影のビツケンヌ
申し訳ありません。
活動報告にてアンケートをとっております。この小説の第4章についてのものです。
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俺が警察に提供した、乗用車のナンバーを写した写真により、事件の5日後には例の車両が県境の駐車場に放置されているのが見つかったようだ。その更に一週間後の今日、運転していた男も埼玉県春日部市で発見・逮捕された旨がニュースになっている。朝食を摂りながら皆で視聴している真っ最中だ。
「しかし流石は小櫃君だよ。若い頃の僕でもやらなかったことを平気でやってのける。そこに痺れる憧れるぅ!」
「お前は何を言っているんだ」
「あ、あはは…」
「……」
ベスが鈴仙の隣で愛想を尽かしたような顔をしているが、海生は気にも留めてない。
犯人逮捕に協力した礼として、俺には感謝状が贈られた。幻想郷に来てからはそれらしいこと――強盗や立て篭もりも起こらず、その腕を振るうことなく鈍らせるばかりだったが、これを持ち帰れば俺の実力に懐疑的な一部の者達を黙らせる材料にはなるかもしれない。
ところで、今の日付は3月11日。日本人ならば(情報として知っているだけとはいえ、勿論俺も日本人なのだから)忘れてはならない日だ。
「海生」
「んー?」
「お前は何年前からこの世界線にいる?」
「えっと、…5年と少し前かな?」
「ならお前は経験したはずだな。…4年前に」
「…東日本大震災だね」
「東日本大震災?」
首を傾げる鈴仙に、海生と俺が説明する。
「2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波、及びその後の余震により引き起こされた大規模地震災害。15000人以上の死者を出した惨劇だよ」
「俺のいたコーカサスでは、目も当てられない状況をその日付にちなんで『スリー・イレヴン』などと揶揄することもあったな。主に日本人が使う自虐的なものだったが」
「15000人…そんな、月都だったら全人口の2%近くじゃない! 私達が幻想郷でのうのうと暮らしてる間にそんなことが…」
深刻な表情の鈴仙に、俺は説明を続けた。
日本が乗っている地殻は、、ユーラシアプレート、フィリピン海プレート、太平洋プレート、北アメリカプレートがせめぎ合い、環太平洋造山帯・環太平洋火山帯・環太平洋地震帯と呼ばれる帯の一環をなしている。その為、世界全体で放出される地震エネルギーのうち1割から2割が日本の周辺に集中すると言われているほど地震が頻発し、震度1や2クラス程度の地震なら、どこかで毎日のように起きている。
過去には関東大震災や阪神淡路大震災も経験した地震大国である日本は、古くから地震に耐え得る建造物を造ってきた。京都の寺院には、現代の高層ビルにも似た『揺れる』ことで地震に耐える機構の塔が存在する程だ。
しかし東日本大震災は勝手が違う。死者の死因の90%は水死である。これは即ち、津波による被害が最も大きな要因ということだ。
被害地域の多くは津波高が増すリアス式海岸の為、津波常襲地域であり、津波への対策(防波堤・防潮堤)の規模は日本随一であった。過去の津波の伝承や石碑が至る所に残り、住民の防災意識も高く、多くの人々が避難行動を取ったが、想定を大きく上回る規模の津波(場所によっては波高10m以上、最大遡上高40.1mにも上る)が押し寄せたため、甚大な被害を受けた。しかも福島県では福島第一原子力発電所が炉心融解、爆発事故を起こし、それは世界の人々に1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故を想起させたという。
この惨劇はコーカサスにも受け継がれる教訓となっており、地震が発生すれば、高さ70m近い巨大な防波堤が地下からせり出すようになっていた。また島そのものの設計にも大きく影響を与えていたらしい。
「おや、丁度出たね」
俺達の話題に合わせるかのように、ニュースの話題が『東日本大震災4周年』に変わった。被害地域の瓦礫撤去はほぼ完遂しているものの、未だ住環境整備と産業回復は問題を残したまま。復興への道のりは遠い。
ヒトは無力だ。自然には勝てぬ。だがそれでも、何度でも立ち上がるのである。日本の努力がなければ、俺のいたコーカサスは存在しなかったかもしれない。