よう実 √A   作:日彗

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当初の予定だったDクラスルートが実は3話ほど書き溜めがあったりする。
√Aが影の支配者ルートとするなら、√Dは堀北育成及び綾小路親友ルート。
Bだと王道にクラスのリーダー。Cだと試験の時だけ龍園と仲良く暴れまくる。

ちなみに星川が一番充実した日々を送れるのはCクラスルート。実は龍園との相性が一番良い。
逆に一番退屈なのはBクラスルート。仲が良いのは羨ましいけど、それとこれとは話が別。あまりに退屈すぎてあえてクラスに逆境を与えようとする。


第十話 船上試験

 

 無人島での特別試験が終わってから3日。俺たち高度育成高等学校の生徒を乗せた豪華客船では何事もなく平穏な時間が保たれていた。

 無人島のような大自然も良いが、やはりこの船も素晴らしい。食事も飲み物も娯楽でさえもタダで満喫できるなんて夢のようだ。産まれてこの方ジェラートなんて初めて食べたぞ。常に脳をフルで回しているため、糖分は俺の数少ない癒しなのだ。

 

 サバイバル終了直後は、大半の生徒がこれで試験終了だと思っておらず、学校側が何か仕掛けてくると踏んでいたらしい。だがそのような兆候はまるでなく、本当に夏休みを迎えたかのように穏やかで平穏な旅行を満喫することになっている。

 当然生徒たちの気も緩み始め、試験はこれで終わったのだと楽観ムードに変わりつつあった。旅行初日から無人島生活を強いられたからこその緩みだ。その考えが悪いとは言わない。そういう時こそ危ないのが世の常ではあるが、気構えを持っていたからって上手くやり過ごせるわけでもない。むしろリラックスしていた方が好成績を残せることもある。

 

 休める時にこそ全力で休む。その切り替えもまたこの学校が求めている実力というやつなのかもしれない。

 

「ま、そろそろ来る頃だと思うけど」

 

 トロピカルジュースを片手にそんなことを呟く。

 特別試験が終わってからずっと一人だ。だれも俺を遊びに誘ってはくれない。少し寂しいが、別にいいもん。この船だったら一人でだって楽しめるもん。チッキショー。

 

 頬を冷たい滴が流れ落ちる、と、同時に俺の携帯から音が鳴り出した。

 キーンという高い音。それは学校からの通知を表すメールの受信音だ。これはマナーモードにしていても音が強制的に出てくるという音ゲーマーにとって天敵のようなものである、知らんけど。

 このメールが届くときは重要性が高いというのは入学時に説明を受けている。だが今日までそのようなメールが届いたことは一度もない。

 

『生徒の皆さんにご連絡いたします。先ほど全ての生徒宛に学校から連絡事項を記載したメールを送信いたしました。各自携帯を確認し、その指示に従ってください。また、メールが届いていない場合には、お手数ですがお近くの教員まで申し出てください。非常に重要な内容となっておりますので、確認漏れのないようお願いいたします。繰り返します────』

 

 船内アナウンスが流れる。

 アナウンスに従う形で携帯を操作して開くと、そこには次のことが書かれてあった。

 

『間もなく特別試験を開始いたします。各自指定された部屋に、指定された時間に集合して下さい。10分以上の遅刻をした者にはペナルティを科す場合があります。本日18時までに2階207号室に集合してください。所要時間は20分ほどですので、お手洗いなど済ませてた上、携帯をマナーモードか電源をオフにしてお越し下さい』

 

「ほぅら来た……」

 

 無人島で一週間、その後豪華客船で一週間の計二週間のバカンス。前半の一週間に特別試験を入れて後半は休んでくださいなんてこの学校が言うはずがない。それとも休みなら三日も上げたでしょ? とかそういう感じだろうか。はあ~マジでクソ。

 

 とりあえず指定された時間までゆっくりしていよう。そう思っていると神室さんと橋本くんから同時にチャットが入った。

 内容に目を通して見ると、どちらも今届いたメールに関することだったため、俺は一言『ただいま電話に出ることは出来ません』と返信する。

 これで邪魔は入らないだろう。そう思った直後に携帯がバイブし始めた。

 電話には出れないって書いたじゃん。ちゃんと読んでんのか、お?

 

「はぁ、………はい、もしもし?」

『さっさと出なさいよ。あんた舐めてんの?』

「俺は今バカンスを満喫中なんですが……」

 

 電話の向こう側では神室さんがブチ切れていた。声だけで体が縮み上がりそうな怒気だ。恐ろしい。

 

「さっきのメールの件だっけ。そこに橋本くんもいるでしょ。面倒だしスピーカーにしてくれない?」

『言われなくても既にやって…………なんで橋本もいるって知ってんのよ』

「この船の中にいる人間の行動は粗方演算出来てるから。いやそれはどうでもいいんだけど、俺の方には18時に207号室集合って来たんだけどそっちは?」

『……私が19時に205号室。橋本は18時40分に201号室だってさ。ていうかさっきの話どうでもよくないんだけど───』

『まあまあ神室ちゃん、ちょっと落ち着けって。そんで大将。このメールどう見る?』

 

 電話の向こうから神室さんとは別のチャラそうな声が聞こえてくる。……待てこいつ今大将って言った? 誰がだコラ。

 俺たち三人の集合時間と場所は別々。メールでは所要時間は20分ほどと書かれていた。となると考えられるのは。

 

「このメールは特別試験のルール説明のためのものだと思う」

『……ん? それってどういうことだ?』

 

 疑問の声を上げる橋本くんに一つずつ説明をしていく。

 

「まず、集合場所にされている部屋は三人とも客室なんだ。お世辞にも試験を行うに適している環境じゃない。所要時間が20分というのもそうだ。あまりにも短すぎる。けどルール説明と考えると妥当な所だろう。説明後の質疑回答も含めればそのくらいの時間はかかる」

『お、おおう、なるほど? でもよ、集合場所と時間がバラバラなのはなんでだ? 説明なら一ヶ所に全員集めた方がずっと効率が良いだろ』

「つまり次の試験はクラス内で少数のグループに分かれる可能性があるってことだ。他にも探してみれば君と同じ時間、同じ部屋に呼び出されている人もいると思うよ」

『でもちょっと待ってよ。仮にあんたの言う通りグループに別れて試験を受けるとしても、このメールの呼び出しが特別試験のルール説明だけのものとは限らないんじゃない? もしかしたら今回は時間のかからない試験なのかも……』

「それだと時間帯が異なるのは不自然だ。試験開始時刻が異なるなら先に問題を知る者とそうでない者とで不公平が生まれる。まあ、それも込みで試験として採点するって言う可能性もないわけじゃないけど、確率は低いと思うよ」

 

 二人からの怒涛の質問に一つずつ答えていく。

 時間が異なる以上、先に問題を知る者が現れる。それならいっそ全員を同じ部屋に集めた方が良いに決まっているだろう。この船には学年全員が入れそうな広場はいくらでもある。その上で時間と場所をバラバラに指定したということは、これから行う試験の説明をするため。だがこれだと場所を別にする意味があまりない。つまりグループに分けた上で、グループ外に持ち出されてはいけない情報を伝えてくる可能性もある。

 

「いろいろと思考を巡らせては見たけど、こんな少ない情報から読み解けるものなんてその程度だよ。あとは時間になってからのお楽しみってことでそれまではバカンスを楽しむことにする」

『ったく、何でこいつはこうも呑気なのよ。あんたの方が早いんだし、終わったら報告してよ』

「ええ~? 前情報が無い方が楽しいと思うよ?」

『試験で楽しいもクソもないわよ……』

 

 それを最後に通話が切られた。女の子がクソとか言っちゃいけません。

 18時まではまだ時間が残っている。それまでここでゆっくりしていようと思ったが、先のメールのせいで周囲が騒がしい。

 

 俺は部屋に戻ることにしてジュースを飲み干した。この船に乗って初めて飲んだ味だが、悪くない。今度自分でも作ってみよう。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 時間は流れて17時50分過ぎ。学校からのメールに書かれていた通り俺は二階フロアに足を踏み入れる。この階に辿り着く前に神室さんたちとすれ違ったが、なぜか化物を見るような目を向けられた。解せぬ。

 207号室と書かれた部屋の前で立ち止まり、軽くノックをするとすぐに返事が返ってきた。

 

「入れ」

 

 おや、女性の声だ。

 許可を受け室内に足を踏み入れる。するとそこにはスーツを着た30歳届かないくらいのポニーテールが特徴的な女教師が足を組んでこちらを睨みつけていた。

 俺なんか悪い事しましたかね? この先生目が鋭すぎるんだよなぁ。

 

「……もしかして時間過ぎてました?」

「いいや、ちょうど五分前だ。さすがAクラスは優秀だな」

 

 そんな嫌味なのかわからない言葉を頂戴した。

 ポニーテールの女教師、Dクラス担任の茶柱先生は椅子に座るよう促してくる。だが茶柱先生の前には二人の男子生徒が腰かけ座っていた。

 一人は町田浩二くん。先日の無人島試験で戸塚くんを運ぶ際に手伝ってくれた人だ。

 もう一人は森重卓郎くん。こちらは話したことはないが、確か坂柳さんの派閥だったと思う。

 葛城派の町田くんと坂柳派の森重くん、そして中立の俺。なんだこれは、地獄かな?

 

 大人しく俺が座ったのを見届けると、茶柱先生が話を切りだす。

 

「Aクラスの町田、森重、星川だな。少し早いがこれより特別試験の説明を行う」

「わあ~(パチパチパチパチ)」

 

 茶柱先生の言葉に拍手を送る。こういう時は手を叩いて盛り上げるのが常識だと祖父(じい)ちゃんが言っていた。

 だが手を叩いているとおかしなことに気が付く。部屋に木霊する音が俺一人分しかなかったのだ。

 恐る恐る周囲を確認してみると、茶柱先生も町田くんたちもおかしなものを見る目をこちらに向けていた。

 

 ……あれ?

 

「……えっ。こういう時って拍手で場を盛り上げるものじゃないんですかっ?」

「そんなわけないだろ……」

 

 町田くんに告げられた事実に俺は雷に打たれたような衝撃を覚えた。

 全身から力が抜けていくのを感じながら、茶柱先生に説明の続きを促す。

 

「話を遮ってすみません。続きをお願いします……」

「どこのクラスにも変な奴はいるものだな。まあいい」

 

 うちのクラスの担任、真嶋先生は生徒たちから冷たいと言われることが多い。だがそれは茶柱先生も似たようなものだ。冷淡で冷静。誰に対しても一定の距離を取っている。

 教師としてそれはどうなんだと思わないこともないが、この学校の性質を考えるとあまり生徒に干渉しない方がいいのだろう。この学校を常識に当てはめてはいけない、ということだ。うん。

 

「今回の特別試験では、一年全員を干支になぞらえた12のグループに分け、そのグループ内での試験を行う。試験の目的はシンキング能力を問うものとなっている」

 

 何事もなかったかのように説明が行われる。

 問われるのは『シンキング』。つまり考える力、考え抜く力ということ。

 そして干支になぞらえた12のグループ。一クラス40人のため12グループに分けるなら3人~4人。ちょうどここに揃っているのもは三人だけだ。

 

「社会人に求められる基礎力には大きく分けて3つの種類がある。アクション、シンキング、チームワーク。それらが備わった者が初めて優秀な大人になる資格を得る。先日の無人島試験はチームワークに比重が置かれた試験内容だった。しかし、今回はシンキング。考え抜く力が必須な試験になる。考え抜く力とは即ち、現状を分析し、課題を明らかにする力。問題の解決に向けたプロセスを明らかにし、準備する力。想像力を働かせ、新しい価値を生み出す力。そういったものが必要になってくる」

 

 丁寧な説明であったが、一口に説明されたことで他二人の頭の上にはクエスチョンマークが複数浮かんでいるようだった。それは俺も似たようなものだ。何せまだルールについて一度も触れていないのだから。

 

「そこで今回の試験んでは12のグループに分け、試験を行うとなったわけだ」

 

 そして一呼吸を置く。

 

「ここまでで何か質問は?」

「……わざわざ小分けにして呼び出した理由を教えていただいても?」

 

 町田くんが手を挙げた。

 質問を受け付けるとは言われても、ここまでの曖昧な説明で聞きたい内容など限られてくる。中規模の人数を集められる部屋は他にもあるはずなのにわざわざ小分けにして呼び出した理由などだ。

 

「まず当然のことだが、ここにいる3人は同じグループとなる。そして今この時間、別部屋でも同じように『お前たちと同じグループとなる』メンバーに対して同時に説明が行われている」

 

 その説明に一つ合点がいく。

 グループを12に分ける。それは当然他のクラスも同様だろう。

 干支になぞらえて分けられたグループ。その与えられた干支同士で()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と考えられる。

 同じくその結論に達したわけではないのだろうが、町田くんは続けて質問を投げた。

 

「それならメンバー全員集めて説明した方が効率がいいのではないでしょうか」

「それは事前に説明していなければ混乱を来たす恐れがあるため。そうですよね、茶柱先生?」

 

 茶柱先生が口を開くより早く、俺が町田くんに答えた。

 

「どういうことだ星川? 事前に説明を受けずともたかが試験のルール説明で混乱を来たすようなことはないと思うが……」

「それはAクラスだけならの話だろ? いざ扉を開けて部屋に入ってみたら他クラスの人間がそこにいた~なんてことになって、あまつさえそのメンバーでグループを組めなんて言われたらそりゃ混乱するに決まってる」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。他クラス? いったい何の話をしているんだっ!」

 

 やはり彼は理解できていなかったらしい。もう少し説明を加えようとしたが、続きは茶柱先生に奪われた。

 

「星川が言っていることが正しい。グループは一つのクラスで構成されるのではなく、各クラスから3人から5人ほどを集めて作られる」

「どういうことなんですか先生! 俺たちは今まで他クラスと競ってきたんです! ここに来ていきなり他クラスとグループを組めなんて理解できない!」

「競ってきた? お前たちの学校生活は始まったばかりだろう。この段階で右往左往していては先が思いやられるぞ町田」

「ぐっ……失礼しました」

 

 勢い余って立ち上がった町田くんだったが、茶柱先生の言葉で冷静になったのか頭を下げてから腰を降ろす。森重くんの方も発言していないだけで内心は町田くんと似たようなものだろう。若者はそのくらいでちょうどいいんだよ。

 

「今考えるべきは理解することではなく考えることだ。お前たちの配属されるグループは『卯』。ここにそのメンバーのリストがある。これは退室時に返却させるため必要性を感じるのであればこの場で覚えておくように」

 

 渡されたのはハガキサイズの紙。そこにはグループ名と合計14名の名前が記載されていた。

 

 Aクラス・星川祐樹 町田浩二 森重卓郎

 Bクラス・一之瀬帆波 浜口哲也 別府良太

 Cクラス・伊吹澪 真鍋志保 藪菜々美 山下沙季

 Dクラス・綾小路清隆 軽井沢恵 外村秀雄 幸村輝彦

 

 一之瀬さんや綾小路くんなど、中には知っている生徒の名前もある。それ以外はあまり知らな───待てよ、この軽井沢という子は平田くんの彼女ではなかったか? なんかギャルっぽい子だった気がする。

 今の段階ではどんな試験になるのかは分からない。だが他二人は他クラスと組まされる状況で競い合うことなど出来るのか懸念しているようだ。

 

「今回の試験では、大前提としてAクラスからDクラスまでの関係性を一度無視しろ。そうすることが試験をクリアするための近道であると言っておく」

「関係性を無視する……というのは?」

「今からお前たちはAクラスとしてではなく、兎グループとして行動をすることになるということだ。そして試験の合否の結果はグループごとに設定されている」

 

 一つずつ紐解くように説明してくれているが、全貌はまだ見えていない。

 

「特別試験の各グループにおける結果は4通りしか存在しない。例外は存在せず必ず4つのどれかの結果になるよう作られている。分かりやすく理解してもらうために結果を記したプリントも用意してある。ただし、このプリントに関しても、持ち出しや撮影などは禁止されている。この場でしっかりと確認しておくように」

 

 三人分用意されていた紙が渡される。

 書かれている基本ルールは以下の通りだ。

 

 

『夏季グループ別特別試験説明』

 本試験では各グループに割り当てられた『優待者』を基点とした課題となる。定められた方法で学校に回答することで、4つの結果のうち1つを必ず得ることになる。

 

 ・試験の日程は当日午前8時に一斉メールを送る。『優待者』に選ばれた者には同時にその事実を伝える。

 ・試験の日程は明日から4日後の午後9時まで(1日の完全自由日を挟む)。

 ・1日に2度、グループだけで所定の時間と部屋に集まり1時間の話し合いを行うこと。

 ・話し合いの内容はグループの自主性に全てを委ねるものとする。

 ・試験の解答は試験終了後、午後9時30分~午後10時までの間のみ『優待者』が誰であったかの答えを受け付ける。なお、解答は1人1回までとする。

 ・回答は自分の携帯電話を使って所定のアドレスに送信することでのみ受け付ける。

 ・『優待者』にはメールにて答えを送る権利が無い。

 ・自身が配属された干支グループ以外への解答は全て無効とする。

 ・試験結果の詳細は最終日の午後11時に全生徒にメールにて伝える。

 

 

 これが基本的なルールとして目立つように書かれてあった。さらに細かく、ルールの説明や禁止事項などについても記載されている。

 そしてこれが茶柱先生の言っていた4つの『結果』というものらしい。

 

 

 ・結果1:グループ内で優待者の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合、グループ全員にプライベートポイントを支給する。(優待者の所属するクラスメイトもそれぞれ同様のポイントを得る)

 ・結果2:優待者及び所属するクラスメイトを除く全員の答えで、一人でも未解答や不正解があった場合、優待者には50万プライベートポイントを支給する。

 

 

「この試験での肝は1つだ。それを理解すれば何のことはない。その肝とは『優待者』の存在だ。グループには必ず優待者が1人だけ存在する。そしてその優待者の名前が試験の答えでもある。簡単な話だ。例えば森重、お前が優待者として選ばれたとしよう。兎グループの答えは『森重』となる。後はその答えをグループ全員で共有するだけ。そして試験3日目の最終日午後9時に試験が終わった後、午後9時30分から午後10時の間にだけ解答を受け付けるため、グループ全員が『森重』と記載して学校にメールを送ればいい。それでグループの合格、結果1が確定し全員が報酬50万ポイントを受け取るという仕組みだ。さらに優待者には結果1に導いた褒賞として倍の100万ポイントを支給する」

「ひゃ、100万ですか!?」

「全員が50万ポイントも貰えるのか……」

 

 分かりやすく二人が驚愕する。

 現時点で50万ポイントというのはかなりの大金だ。誰であっても欲しいだろう。その倍の100万ともなれば猶更に。

 

「そして結果2だが……これは優待者だと学校から知らされた者が、そのことを誰にも教えない、あるいは嘘の優待者へと誘導するなどして、試験終了時まで正体を悟られなかった場合だ。文面に書かれてある通り優待者のみポイントが与えられる。その額は50万ポイントだ」

 

 ここまでの説明であれば、圧倒的に優待者が有利だ。結果1でも2でも必ずポイントが手に入る。それは試験として成立しているとは言えないだろう。

 だが結果は2つではなく4つ。明かされていない残り2つに何かがあるのは間違いない。

 

「説明した2つの結果は理解したか? これが分かっていなければ次に進めんぞ」

「……大丈夫です。進めてください」

 

 一呼吸置いて茶柱先生はこう口を開いた。

 

「残りの結果に関してはプリントの裏に書かれてある。が、捲る前にお前たちは人狼ゲームをやったことはあるか?」

「人狼ゲーム、ですか? はあ、ありますけど……」

 

 茶柱先生の問いかけに町田くんと森重くんは揃って頷く。

 だが俺はあいにくとやったことがない。そんな友達なんていなかったし。

 

「星川はどうだ?」

「経験はありませんが、ルールは把握しています。ようは嘘を吐いて潜伏している人狼をあぶり出す遊びですよね。それがなにか?」

 

 今のところ説明されているルールに対して人狼ゲームのような展開は成立しない。人狼も村人も協力して結果1を目指せばいいだけなのだから。

 つまりこの試験の内容は一対狼とも取れる何かが隠されているということだ。

 

「グループの中には一人だけ優待者が存在すると説明したが、いち早く優待者を暴き出すことで第3、第4の結果が新たに現れる。───プリントをめくってくれ」

 

 先生の言葉に俺たちは一斉にプリントをひっくり返した。

 そこに書かれていた残りの2つはこうだ。

 

 

 以下の2つの結果に関してのみ、試験中24時間いつでも解答を受け付けるものとする。また、試験終了後30分間も同じく解答を受け付けるが、どちらの時間帯でも間違えばペナルティが発生する。

 

 ・結果3:優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ正解していた場合。

 答えた生徒の所属クラスはクラスポイントを50ポイント得ると同時に、正解者にプライベートポイントを50万支給する。また優待者を見抜かれたクラスは逆にマイナス50クラスポイントのペナルティを受ける。及びこの時点でグループの試験は終了となる。なお優待者と同じクラスメイトが正解した場合、答えを無効とし試験は続行となる。

 ・結果4:優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ不正解だった場合。

 答えを間違えた生徒が所属するクラスはクラスポイントを50ポイント失うペナルティを受け、優待者はプライベートポイントを50万ポイント得ると同時に優待者の所属クラスはクラスポイントを50ポイント得る。答えを間違えた時点でグループの試験は終了となる。なお優待者と同じクラスメイトが不正解した場合、答えを無効とし受け付けない。

 

 

「────あ、これダメだ」

 

 思わず口から零れた言葉に、全員の視線が集まる。

 俺は手で口を塞ぐようにして続きを促した。

 

 明かされた試験の全貌。これは結果1、2は不可能と考えていいだろう。

 結果1、2では優待者は全員と答えを共有しようが黙っていようが自由だった。回答を間違えてもペナルティは存在しない。

 だがここに『裏切り者』がルールによって追加されることで試験内容が豹変する。

 迂闊に優待者だとバレてしまえば、たちまち裏切り者に捕食されてしまう。試験中24時間解答を受け付ける以上、誰も馬鹿正直に結果1を狙うはずがない。我先にとポイントのために行動するだろう。

 そして優待者は自らの勝ちと他クラスを陥れるため、別の人間を優待者に見せかけることも考えられる。報酬額が減ったとしても、他クラスにペナルティを与えることが出来るからだ。

 

「今回学校側は匿名性についても考慮している。試験終了時には各グループの結果とクラス単位でのポイント増減のみ発表する。つまり優待者や解答者の名前は公表しない。また、望めばポイントを振り込んだ仮IDを一時的に発行することや分割して受け取ることも可能だ。本人さえ黙っていれば試験後に発覚する恐れはない。もちろん隠す必要がなければ堂々とポイントを受け取っても構わん」

 

 至れり尽くせりではあるが、俺の中でこの試験に対する興味が一気に冷めていくのを感じる。

 一見優待者を見つけるのは非常に困難で、優待者が圧倒的有利に見えることだろう。だがそうではない。この試験、優待者こそが()()()()()()な存在だ。

 この学校での前例を考えると間違いなく優待者には法則がある。それについて大方目星は付いているが、正解かどうかは明日まで分からない。もし当たっていたら一気にクソゲーになってしまう。

 

「3つ目、4つ目の結果は他の2つとは異なるものだ。よって裏面に記載した。以上を踏まえた上で今回の試験の説明は終わりとする」

 

 今回の試験、クリア方法を簡潔にまとめると

 

・グループ全体で優待者を共有してクリアする。

・最後の解答を誰かが間違え、優待者が勝利する。

・裏切り者が優待者を見つけ出す。

・裏切り者が優待者の判断を誤る。

 

 の4つ。そしてその4つの結果全てに報酬の違いがある。

 全クラスが入り混じった混合グループ。

 各グループに必ず存在する『優待者』。

 もともとAクラスは狙われる立場だったが、先の無人島試験での大勝で今回はどのクラスも確実に狙ってくるだろう。

 ……カマをかけてみるか。

 

「茶柱先生。グループの人選について何か基準などがあるんですか? 見たところ話したことのない生徒が多かったので」

「ああ、それについては学校側が厳正に調整している。基準は話せないが、優待者についても我々は公平性を期した上で選んでいる。また、仮に優待者に選ばれた、もしくは選ばれなかったにも拘らず変更の要望などは一切受け付けない。また、学校から送られてくるメールのコピー、削除、転送、改変等の行為は一切禁止とする。禁止事項などは細かに書かれているためしっかりと目を通しておくように」

 

 禁止事項には他人の携帯を盗んだり、脅すなどの脅迫行為で優待者に関する情報を確認することや、勝手に他人の携帯を使って答えをメールするなどの行為は『退学』という最大の処罰が待っていると記されている。他にも最終試験終了後はただちに解散し、一定時間他クラスの生徒同士での話し合いを禁じていることも書かれてあった。これも破れば退学だそうだ。

 

「お前たちは明日から午後1時、午後8時に指示された部屋へ向かえ。当日は部屋の前にそれぞれグループ名の書かれたプレートがかけられている。初顔合わせの際には室内で必ず自己紹介を行うように。室内に入ってから試験時間内の退室は基本的に認められていない。トイレなどは済ませておくようにしろ」

 

 話し合いは毎回1時間。1時間が経過したら部屋に残るのも退室するのも自由。初回の自己紹介以外の余った時間は好きに使っていい。なるほど、行動や話の内容は全て生徒に一任するということか。

 

 これで説明は終わりなのか、解散が命じられ、俺たちは部屋を後にする。

 ルールは理解した。勝ち方も大体わかった。むしろ無人島試験よりずっと簡単で退屈な試験だ。

 せめて俺が優待者に選ばれればもう少し楽しめるのに。9割方あり得ないと断じてはいるが、そんな期待をせずにはいられなかった。

 

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