ティーパーティーはもっと俗世のことを知るべきじゃんね☆ 作:翠晶 秋
原作:ブルーアーカイブ
タグ:ブルアカ ティーパーティー トリニティ総合学園 桐藤ナギサ 聖園ミカ 百合園セイア 庶民派 お嬢様 澤はドリブルが上手い
ミカは素朴な家庭料理作っててたまに食べる外食を楽しみにしててほしいし、
ナギサはジーパン履いてカゴを膝にかけてスーパーうろうろして欲しいし、
セイアはセクシーセイアですまない。
「……はい? 急にどうされたのです、ミカさん」
「またいつもの発作かい?」
トリニティ総合学園、ティーパーティーにのみ許された
そこに設置された丸テーブルをへし折り、
「全く……また机を壊して……。この机も、いくつでもあるわけじゃないのですよ?」
「ほら、ミカも紅茶を飲むといい。今日のはナギサのお気に入りだぞ」
「ええ、そうですよ。それにこのマカロンも、トリニティのケーキ屋さんからいただいた特別なもので……」
「それ!! それがダメって言ってるの!!」
「「えぇ……?」」
「私たちは……あまりにもお嬢様すぎたんだよ!!!!」
「…………はい?」
「察」
予知夢の神秘を持つ
「我々ティーパーティーが
「それ!!!! 声は聞こえないけどよく言ったじゃんね!!!!」
「死んでみるかい?」
「あ?
「まぁまぁ!! まぁまぁ!! ミカさんの言いたいことはわかりました。……しかし、俗世に触れると言ってもどこから手をつけていいものやら。ペロペ……ペロ……コホン。ああいったものは種類も豊富ですし、下手をすればティーパーティーの威厳が失われてしまいますよ」
「そこでコレじゃんね☆」
がさり、と紙袋を置くミカ。
中から香る香ばしい匂いが、それが温かいものであるとは察せるが、しかし嗅ぎ慣れない独特な匂いにナギサは眉を潜め、セイアは首を傾げた。
「じゃ〜ん☆ ハンバーガーとポテト〜!!!!」
「はん……ばーがー」
「え? もしかしてハンバーガー知らない? 嘘?」
「い、いえ、知識としては……」
「しかし最初からジャンクフードとは、ミカも魔女だねえ」
「セイアちゃんの分は無しね☆」
「さて、ミカのご厚意に甘えていただこうじゃないか」
「ねぇ、無いから。セイアちゃんの分。喋れないんだから食べる口も無いでしょ?」
「学名トリニティピンクゴリラはジャンクフードを食べても平気な身体構造なのかい?」
「あ?」
「んん?」
貼り付けた笑顔で威圧するミカと、それをすっとぼけたように受け流すセイア。
その後ろで、1人手に取ったチーズバーガーをさまざまな角度から眺めるナギサ。
先生が来ていたら"一体これはどういう状況?"と言いそうなワンシーンだった。
「構造はやはり、サンドイッチとほとんど同じなんですね」
「あっ、チーズバーガー! 美味しいよ!」
「……? 包み紙を剥がしたのは良いですが……フォークがありませんね。それに、少し大きいですからナイフも……」
「本気で言ってるナギちゃん? お茶会で出るあの小さいサンドイッチじゃないんだよ? そこはもう、がぶっと手で掴んで食べるの!」
「がぶっと……」
「はむ」
「セイアちゃんのそれはパンの部分しか食べれてないよ? もっとこう、大きく口を開けて……あーむっ!」
「まあ!」
「豪快だね」
両手でバーガーを持ち、元気よく噛みついたミカ。
数回咀嚼し、ごくんと飲み干して大きく息を吸った。
「ぷはー! ジャンク〜!」
「で、では私も……。は、はむ……」
その瞬間、ナギサは目を見開いた。
真っ先に舌に来るのは、挟んであるハンバーグによる肉汁。パンチの効くそれを、チーズのとろみがマイルドにしている。
レタスのシャキシャキとした食感の上から、ケチャップの酸味が
「ゲフッゲフッゴホッ!」
「ナギちゃん!?」
「まあ、しょっぱいよね」
……ケチャップの酸味が口いっぱいに広がり、マスタードのピリリとした味わいが最後に
「んぐぅ!?」
「ナギちゃん!!!!」
「まあ、辛いよね」
……最後に残る。
総評。
「Cで……」
「待って! 慣れれば! そう、慣れれば美味しいから!」
「しかし……かなりボリュームがありますね……。一口だけでも、かなりの満腹感です。ずず……」
「あっ紅茶飲んでる。良いの? 1会計千いくらかのハンバーガーと1缶うん万円の紅茶一緒にして」
「ええ、まぁ……(こうでもしないと正気を保てません……!)」
「ミカ、これはなんだい? 見たところ、揚げ物のようだけど」
「ポテト。見たことない?」
「無い」
「ヤバじゃんね。それは……塩がかかってるから、そのまま食べても良いし、ケチャップにつけてもいいね」
「この細さにケチャップをつけるのかい? ……まあ、ものは試しと言うしね」
ちょんちょんとケチャップをフォークの先のポテトにつけ、口に含むセイア。
ヘイローが消えた。
「セイアちゃんっ!!!!」
「はっ。あまりの油っぽさに気を失っていたようだ」
「体弱すぎるよお!!」
「味としては悪くない。……が、私には合わないようだね。私はこのバーガーの方が好きだよ」
「ナギちゃんは? ポテト食べない?」
「ま、まあポテトフライでしたら、お料理の付け合わせにも出てくる時がありますし……少しくらいなら……」
「ふふ……気をつけた方がいいよ……それは危険だ」
「そうなるのはセイアちゃんだけだよ」
しゃむしゃむと小さな口でポテトを咀嚼するナギサに対し、一度の咀嚼が小さすぎてパンだけ、パティだけ、レタスだけを一口ずつ食べるセイア。
ミカは2人のあまりのお嬢様っぷりに呆れてため息も出ないが、出ないなりに口から呻き声を絞り出した。
「……? ミカさん、これはなんですか?」
「え? あぁ、それはチキンクリスピー! これもケチャップにつけて食べるよ!」
「他のお店ではナゲットとも言ったりするやつだね? これは興味があったんだ」
「というか、このお店のものは大体にケチャップをつけるのですね……」
「ケチャップだけなら会食でも出たりするのにぃ。ナギちゃん、舌が肥えてるね☆」
「誰が肥えた太っちょですか!」
「そんなこと一言も言ってないじゃんね!?」
怒り心頭のナギサが指を鳴らした直後に四方八方から飛来するロールケーキをなんとか躱し、ぜーぜーと肩で息をしながらミカは机の上に置かれたドリンクを手に取った。
話がうまく進まないために、紙のコップには結露がいくつかついていたが、それでも喉に炭酸が流し込まれる快感は変わらない。
喉の奥をしゅわしゅわと鳴らしながらポテトを口に放り込み、ミカは油のついた指先を見つめながら言った。
「こういうのって、指が汚れるのが厄介なんだよね」
「はい、おしぼりです」
「これロールケーキじゃん」
「おしぼりです」
「平気で嘘つくじゃん!?」
「なあミカ、
「召し上がれ……ッ……ロールケーキはッ……もう要らない……ッ」
押し込まれそうになるロールケーキを寸前で食い止めるミカ。
それをよそに、フォークでナゲットを突き刺しケチャップにつけ、自身の手のひらの4分の1ほどの大きさのナゲットを、その半分だけ口に含むセイア。
小さな口で咀嚼する様子は、その耳や尻尾と相待ってさながら小動物か。
「……! これは美味しい! これなら私にも食べられる!」
「お気に召したようで良かった! はい、緑茶」
「おお……この口の中の油を冷えた緑茶で……至福だね」
「でしょ!?」
目を輝かせるセイアの前でミカがはしゃぐ。
自身の目の前に置かれたハンバーガーと2人を見比べ、ナギサは小さく微笑んだ。
「(こういった会合も……トリニティのためには、必要ですよね)」
トリニティの生徒会長は、各派閥から選出された3人。
一体感ごとに『ホスト』と呼ばれる最高権力者を一定期間ごとに交代する独特なこの文化は、上下左右24時間、政略という名前の檻に囲まれていた。
生きづらくて、息ができなくて、目の前が見えなくなってしまったこともあった。
だからこそ、こうして放課後に、たった3人の女生徒が集まって、ジャンクフードを囲んで笑い合う。
「(まるで……あの補修授業部のようです)」
目の前に広がる、確かな平和。
トリニティの生徒会長の権限があれば自治区から追い出せてしまう、たかだか一つのお店のメニューに一喜一憂するこの時間を過ごせていることが、何より嬉しかった。
「ミカさん」
「……なに? ロールケーキは要らないよ」
「それは後で送っておくとして」
「要らないってば」
「この会合、次はいつにしますか?」
「……! それって」
「ええ。私も、ミカさんの意見に賛成です。……先ほども申し上げた通り、私はこういったことに疎いのでほとんどミカさんが主体になりますが……」
おずおずと出された手のひらは上を向いている。
ミカが手に取れば、それはナギサの手の上にある現最高権力者である権利を受け取るということ。
要は、ティーパーティー3人が集まって俗世のことを知るために活動する部活の、部長になってくれないか、という意味だ。
「まっかせて! 今から私が、この『放課後ティーパーティー』のホストだよ!」
「そのネーミングはかなり危険だよ、ミカ」
「ええっ、じゃあ放課後……」
「まず放課後から離れよう、ミカ」
「ふふっ。ではロールケーk」
「「それはない」」
「なななな、なんですってぇ……!?」
ティーパーティーは、今日も平和。