剣も魔術も使えぬ勇者   作:138ネコ

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第12話「告白作戦その1」

 いやぁ、すっかり帰るのが遅くなってしまった。

 帰りの遅い僕らを、女性陣が迎えに来るまでずっと話し込んでしまった。

 ちなみに迎えに来た女性陣はアリア、サラ、ゾフィさんで、リン、フレイヤさん、ケリィさんは先に宿に戻って寝たそうだ。

 遅くなってしまい申し訳ない気持ちはあるにはあるけど、でも仕方ないよね。スキールさんがあんなにも嬉しそうに話すものだから、聞かないわけにはいかないよね。

 これが男の友情ってやつかな。なんてね。

 

 と言うのも、あの後、お酒を一杯飲んだだけなのにすっかり出来上がったスキールさんが、初体験の話をそれはもうねっとりと話してくれるものだから、ついつい聞き入ってしまったのだ。

 正直、この手の話は嫌いじゃない。いや。素直に言うと好きな部類だ。

 とはいえ、僕のパーティは僕以外皆女の子だ。当然そんな下な話は出来るわけがない。そんな話をしようものなら、サラに何をされるかわかったものじゃないし。

 

 もしかしたら、スキールさんも同じだったのかもしれない。

 恋の相談と言っておきながら、本当はこんなバカ話をする相手が欲しかっただけじゃないだろうか。

 彼は性格的な問題で、仲良くしてくれる冒険者は少なそうだし。

 余裕があるなら、今度は僕から誘ってあげようかな。

 

「相談をされたって割には、ニヤニヤして上機嫌じゃない。一体どんな話をしたのよ?」

 

 帰り道。

 サラに帰りが遅くなったことを咎められるかと思ったけど、予想に反して彼女は特に怒った様子はない。

 声色も、どちらかと言えば機嫌が良さそうな方だ。

 サラの反対側にいるアリアは、いつもの無表情で僕の顔を覗き込み「何があったの?」と言いたげだ。

 

「うん。その事で皆に聞きたい事があるんだけど、良いかな?」 

 

「うん」

 

「私も構わないけど、今日はもう遅いから明日にするわよ?」

 

「うん。明日で構わないよ。一応リン達にも聞いて欲しいしね」

 

「わかったわ」

 

 宿に戻ると、リンとフレイヤさんは既に寝ているようで、すーすーと規則正しい寝息が聞こえて来る。

 

「それじゃあ寝るから、灯りは消すわよ」

 

「うん。おやすみ」

 

「おやすみ」

 

 さて寝よう

 そう思ってシーツを被ると、モソモソと何かが入ってきた。

 

「……アリア、自分のベットで寝ようね?」

 

「うん」

 

 アリアは素直に自分のベットに戻っていった。

 

「サラ。ゾフィさん達と一緒に食事に行った時に、何かあった?」

 

「ブホッ。も、もう遅いから寝るわよ」

 

 ブホッて、今思いきり笑ったよね!?

 もう一度聞き出そうとしたけど「もう寝なさい」としか返事をしてくれないし。

 う〜ん。無理に問い詰めようとして騒がしくすれば、リン達を起こしてしまうかもしれないし、仕方ない。

 

「アリア。僕が寝てる時に潜り込むのもダメだよ」

 

「……わかった」

 

 返事には間があった。もしかしてやるつもりだったのか。

 不安に感じながらも、僕は眠りについた。

 翌朝。

 目を覚ますと、僕のベットにはフレイヤさんが潜り込んで居た。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 宿の台所を借り、市場で買ってきた食材を並べ朝食の準備。

 僕の目の前には、サラが真剣な顔をしてフライパンを見つめている。

 

「今日の料理当番は、私がやるわ」

 

 彼女がそう申し出た。

 最初は手伝おうとしたけど、そのたびに「私がやるから、そこで見てて」と言われた。

 サラが料理を手伝うことはあっても、1人でやったことは無い。

 少々不安ではあるが、朝食程度だし、もし何かミスをしてもすぐに僕がフォローすれば良いだけだ。

 それに、せっかくやる気になってるんだ。水を差すのは良くないよね。

 

「あっ……」

 

 と思ったら、サラは早速ミスをした。

 溶き卵を作るために、卵を割ってボールに入れようとしたのだが、割る際に力が弱すぎてあまりヒビが入らず、無理に開いた結果、殻がいくつか混入したようだ。

 スプーンで殻を取り除こうとするが、中々上手くいかないようだ。

 

「ちゃんと手を洗ったから、指でつまんで取っても大丈夫だよ」

 

「わ、わかった」

 

 困った表情でこちらをチラチラと見ていたので、口だけ出した。

 僕が取っても良いけど、彼女は自分でやると言ったのだから、出来る限り彼女自身の手でやらせてあげたい。

 サラは返事をした後に、意を決したように指を入れ殻を取り出した。

 殻を全部取り出した溶き卵を、あらかじめ熱しておいたフライパンの中にゆっくりと流し込んでいく。

 じっくりと焼き色がついたところで裏返す。

 やることは無いし僕は、皿でも並べておくかな。

 

「で、出来たわ……」

 

 どうやら玉子焼きが完成したようだ。僕の用意した皿へ、慎重に玉子焼きを移している。

 次は鶏肉を焼くようだ。

 色が付き始めた鶏肉にサラはフレイヤさん特製の香辛料を振りかけていく。鶏肉が焼けるに従って、段々と食欲をそそる独特の匂いを漂わせている。

 鶏肉も無事、綺麗に焼けたようだ。やや香辛料が多い気はするけど、問題はないだろう。

 玉子焼き、鶏肉、そして洗った野菜を切り分け、次々とパンに挟み込んでいる。

 こうして、サラが一人でサンドウィッチを完成させた。

 

「ど、どうかな?」

 

「うん。上手に出来てるよ。それじゃあアリアがお腹空いたと言って暴れ出す前に、部屋に持って行こうか」

 

 僕の軽い冗談に、サラはクスリと笑う。

 僕らはサンドウィッチの敷き詰めた皿を持って、部屋まで戻っていった。

 部屋に戻ると、アリア達が床に敷物を敷いて座って待っていた。 

 それなりに広い部屋だけど、テーブルは無いから床に敷物をして、ここに料理を並べていつも食べている。

 

 僕らが戻って来た事に気付いたリンは、会話をやめ僕の手から皿を取り並べるのを手伝ってくれる。フレイヤさんもリンの後に続いて、キョドりながらサラから皿を受け取っていた。

 料理を並べ、僕らは座って食べ始めた。

 

「今日の朝食はサラが1人で作ったんだ」

 

 僕の言葉に、アリア達は「美味しい」と感想を漏らすと、サラは「ま、まぁこれくらいはね」と言っているが、満更ではないようだ。耳が真っ赤になってるし。

 普段はアリアががっつくと「意地汚い」と小言が始まるのだが、今日に限っては「これもどう?」と言いながら次々とアリアに手渡している。

 アリアが一口食べるたびに「美味しい」と言うのが相当嬉しいようだ。口元がにやけ出した。

 

「なによ」

 

「いや、サラは本当に料理の腕が上達したなと思って」

 

 僕の視線に気付いたサラが、ムッとした表情で絡んで来た。

 ここで下手な事を言えば、照れ隠しに氷漬けにされかねないので褒めてごまかす。料理の腕が上達したと言うのは本心だし。最初の頃は色々酷かったからな。牛乳をかければ何でも美味しくなると勘違いしたりして。

 

「アンタが今までちゃんと教えてくれてたからね。ありがとう」

 

 そう言って、サラは軽く笑った。

 珍しく素直なサラに、内心ドキッとしてしまった。

 普段から何かと不機嫌そうな顔ばかり見ているから、こうして笑っているのを見るとやっぱり美少女だなと思う。っていかん、何を意識しているんだ僕は。

 

「エルク君顔赤いよ? どうしたの?」

 

 そこ、そういうのは分かっていても口に出さない!

 サラも顔を赤らめてそっぽ向いちゃったし。フレイヤさんはもうちょっと空気を読んでですね。

 

「あ、そう言えば昨日、なんでフレイヤさんは僕のベットに潜り込んだんですか?」

 

 なので、ちょっと露骨だが話題を変えよう。

 アリアも寝る前に潜り込もうとして来たし、サラは何か知っているみたいだけど、聞いても教えてくれない。

 

「えっとね、ゾフィさんが『男を喜ばすには、ベットに潜り込む』って教えてくれたの。エルク君どうだった?」

 

 どうだったかって、フレイヤさんそんな満面な笑みで聞かれても……

 ゾフィさん。なんて事を話しているんですか……

 僕とスキールさんも似たような事話してたけどさ。

 

「なんで一緒のベットに入ると喜ぶです?」

 

「なんで?」

 

 アリア達の様子を見ると、潜り込んだ後に何をするかは教えられてないようだ。

 彼女達が思いのほか無垢だったから教えるのを躊躇ったのか、それとも僕が手を出すのを楽しむためか。

 

「ベットに入って何するのかしらね」

 

 サラだけは意味がわかっているようだ。ニヤニヤしながらあえて煽ってくる。

 ここで僕が下手なことを言ったら、どうせ怒るくせに。はぁ、なんという理不尽。

 

「えっと。ほら、マッサージだよ」

 

「じゃあ昨日はエルクなんで断ったの?」

 

 昨日アリアにダメと言った事を根に持たれてるようだ。

 

「昨日はもう眠かったからね。また今度お願いするよ」

 

「うん」

 

 なんとか誤魔化せた。

 今度ゾフィさんに会ったら、変な事を吹き込まないようにと言っておくべきだな、これは。

 

「そうだ。そのゾフィさんの事で相談があるんだけど」

 

 どうやって話に持ち込むか考えていたけど、丁度良い。僕はスキールさんがゾフィさんに恋をしているが、なかなか告白に踏み出せない事。ゾフィさんに剣で一本を取り、その際に告白するという作戦について説明した。

 

「というわけなのですが、スキールさんがゾフィさんに勝つ方法って何かありますか?」

 

「無理」

「無理」

「無理です」

 

 アリア、サラ、リンの意見は一致して「無理」のようだ。

 スキールさんが弱いわけじゃない、むしろ勇者をやめて剣士を名乗っても良い程の実力はあるらしい。

 だけどゾフィさんはもっと強い。Dランクだけど、実力はアリアと同程度かそれより上だとか。かつてヴェルの魔法大会でも本戦に出た事もあると言ってたそうだ。

 それだけの腕があるなら、もっと良いパーティからお誘いがあるだろうに。なんでスキールさん達と一緒に居るのか疑問ではあるけど、今は置いておこう。

 

「それなら良い方法があるよ」

 

 我に策ありと言わんばかりに、自信あり気な表情で、フレイヤさんがそう言った。

 エルフならではの、秘策みたいなものがあるのかな?

 

「お肉をいっぱい食べて、ゾフィさんより強くなれば良いんだよ!」」

 

 筋肉(エルフ)理論は却下の方針で。

 ダンディさんに対して散々呆れた反応をしていたけど、フレイヤさんも相当毒されているようだ。

 とりあえずアリアにゾフィさんと模擬戦をしてもらい、何かしら弱点みたいなものが無いか観察するという事で話はついた。

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