剣も魔術も使えぬ勇者   作:138ネコ

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第15話「リンとの再会」

 ゆっくりと扉を閉め、外に出た。

 

 外は暗く、辺りは静まり返っており、時折虫や動物の鳴き声だけが聞こえてくる。

 そして、僕らが泊まった部屋の窓際に、リンは1人で佇んでいた。出会った頃と変わらない、黒のゴスロリ衣装を着て。

 

 別れて1ヶ月くらいしかたっていないはずなのに、なんだか、凄く懐かしく感じるな。

 出てきた僕に気づいたようで、こっちを向いた。薄暗い月明かりからは、リンの表情が伺えしれない。

 

 サラやリンに会ったら、色々と言いたい事があったはずなのに、向かい合った瞬間に何を言おうとしていたのか忘れてしまった。

 なんで勝手に居なくなったのか、なんで相談してくれなかったのか、そんな事はもうどうでも良かった。ただ、無事な姿を見られたのだから。

 

 もしかしたら、サラやリンは無事ではないかもしれない。

 アリア達が余計な心配をするかもしれないから、あえて口には出さなかったけど、これまで旅の間にそんな想像は何度もしていた。

 もしエルヴァン達が本当は敵だったら、飛空船でサラが船酔いして弱ってる所を狙われやしないか。

 父親を討とうとして、返り討ちにあい、捕まったりしていないか。

 そんな不安がいつも頭をよぎっていた。

 

 だから無事でいてくれた事が、何よりも嬉しかった。

 はやる気持ちを抑えつつ、リンの元まで歩く。

 

「久しぶりだね」

 

「なんでここに居るですか」

 

 笑顔で話しかける僕に対し、リンは無表情で拒絶するかのように言い放った。

 そんな反応されるのは予想の範疇だ。べ、別に傷ついてなんかないし!

 

「サラとリンを追いかけてきたからだよ」

 

「来て欲しくなかったです」

 

「本当に?」

 

「本当です」

 

 本当に来て欲しくなかった。ねぇ……

 

「じゃあ、なんで僕らに会いに出てきたの?」

 

 僕の言葉に、リンの表情が一瞬崩れた。

 来て欲しくないのに、わざわざ会いに来るのは変な話だ。

 それなら「街にはもう居ない」と誰かに伝言を頼めば、僕らを遠ざける事だって出来たはずだ。

 

「警告しに来たです」

 

「警告?」

 

「エルクの事だから、どうせサラや、ティラさんの事について調べ回ってる事だと思うです」

 

「ティラさん?」

 

 誰だろ?

 

「ティラ=ブレイズ=レイア。サラのお父さんです」

 

 言われてから、サラのお父さんの名前を今まで知らなかった事に気づいた。

『サラのお父さん』が名称みたいな感じになっていたから、名前なんて気にしてなかったや。

 

「えっ……もしかして、サラのお父さんの名前も知らずに、調べていたのですか?」

 

「ん? サラのお父さんについては、別に調べてないよ?」

 

 サラやリンを探すために話を聞いていたら、いやでもサラのお父さんの話を耳にするけど、別にサラのお父さんに興味があるわけじゃないし。

 

「どちらにせよ、もう調べて回るのはやめた方が良いです」

 

 リンは軽くため息を吐いた。

 

「サラはエルク達が来ても会う気は無いです。それに下手に調べて回れば、ティラさんを逃すための仲間と思われて捕まる可能性もあるです。だから、出来れば明日にでも街から去って欲しいです」

 

「ふむ」

 

 会う気は無い、去って欲しいか。

 面と向かって言われると、精神的にくるものがあるな。

 

「仮にだけど、僕らが去ったとして、全てが終わった後にサラとリンは僕らのところに戻って来てくれる?」

 

 もし今回の件で僕らが邪魔だと言うなら、それも仕方ない。リンの言う通り去るとしよう。

 だけどそれは、僕らのところにもう一度戻って来てくれるならだ。

 じゃないとここまで来た意味がない。

 

「……警告はしたです」

 

 僕の問いに、リンは答えなかった。

 そのまま踵を返し、近くの木の枝に飛び移ったと思ったら、そのままひょいひょいと身軽な動きで屋根を飛び移り、闇夜に溶け込んでいった。

『混沌』を使って追いかければ追いつけるだろうけど、追いついたところでリンは何も話してくれないだろう。

  

「話、終わった?」

 

 突然背後から声をかけられたが、驚きはしなかった。なんとなく予感はしていたし。

 

「うん。終わったよ」

 

 振り返ると、ドアの前に寝巻き姿で、少し眠そうなアリアが居た。

 

「いつから気づいてたの?」

 

「エルクがベットから降りた辺りから」

 

 つまり最初から気づいていたのか。

 

「エルクに用があるみたいだったし……私が居たら邪魔になるかなと思って」

 

「そんな事ないよ。もしまた会ったらアリアも一緒に話そう」

 

 彼女なりに遠慮していたようだ。本当は自分も話したい事が山ほどあるだろうに。

 アリアの元まで歩き、頭を撫でる。

 

「うん」

 

 よし、満足してくれたようだ。

 

「それじゃあ、もう寝ようか」

 

 僕らは部屋に戻った。

 寝ようとベットに入ったところで、アリアが声をかけてきた。

 

「もう、街を出るの?」

 

「いや、出ないよ」

 

「明日もサラとリンを探す?」

 

「ううん。ちょっと気になる事が出来たんだ。それでアリアにお願いがあるんだけど、明日は僕1人で街に出るから、フレイアとレッドさんを頼めるかな?」

 

「うん。わかった」

 

「ありがとう。助かるよ」

 

 何も聞かず、二つ返事でOKが出た。

 正直、もうちょっとどうしてか聞いてくると思ったけど、意外だった。

 聞かれても少々答えづらいから、聞かれないならそれに越したことはない。

 

「おやすみ。それと自分のベットで寝てね」

 

「……うん」

 

 会話のどさくさ紛れに(どさくさでもなんでもないけどさ)僕のベットへ潜り込もうとしたアリア。

 本当に僕の話を聞いてくれていたのか一抹の不安を覚えつつも眠りについた。

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