剣も魔術も使えぬ勇者   作:138ネコ

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第23話「事件の全貌」

 ティラさんの家にある、広い応接間。

 今いるのは僕、アリア、リン、フレイヤ、ダンディさん、レッドさん、父さんとギルド職員さんの2人。

 そしてサラの父であるティラさんだ。サラは今回の事件の重要人物の一人として身柄を拘束されているから、この場には居ない。

 

「だから、私はサラのために死ぬつもりだった」

 

 そう言って、ティラさんは昔話を締めた。

 なるほどね。だから僕がティラさんに会いに行った時、わざわざ外に聞こえるような声で脱獄がどうとか言ったわけか。

 そこまで聞こえたら、ゲイルさんも流石に看過出来ないだろうし。

 

 僕に「サラをやろう」とか「リンなら奴隷だから何をしても良い」なんて言ったのも、助けてもらうのが目的じゃなかった。

 僕に嫌悪感を持たせて、自分を見捨てさせるためだったのだろう。

 

 あそこで自分が死ねば、権力が手に入ったエッダはそれで満足するだろうと。

 実際は、ティラさんが死んだだけで終わらそうとしてなかったみたいだけど。

 

「しかし、ティラさんを殺した後に、なんでサラを捕まえようとしたのでしょうか?」

 

 家を捨てたら、サラには利用価値がないはずだ。

 

「……エッダは女好きで有名だ。地下牢の監禁部屋に気に入った女を連れ込んで飼っているという噂がある。実際エッダに嫁いで消息不明になったものは後を絶たない」

 

 そういえば、フレイヤやレッドさんを捕まえるときに性奴隷コレクションとか言ってたし、サラに関してもそういう目的だったのだろうな。

 確かにサラは見た目は良いからね。うん。見た目は。

 

「私が話せるのはこれくらいだ。エッダがどう動いていたかの詳細までは分からん」

 

 ティラさんの言葉の後に、父さんが続いた。

 

「ならば、ここからは私が話そう」

 

 父さんが話してくれたのは、事件の全貌だった。

 エッダは、ティラさんがサラを逃がそうとする事には薄々感づいていたそうだ。

 明らかにティラさんの父親の代から、奴隷を助ける振りのパフォーマンスとは違う動きを見せていた事を勘ぐっていたらしい。

 

 なので、もしサラを嫁に迎えればそれで良し。

 上手く行かなかったときの為に「アインに行けば、種族関係なく幸せに暮らせる」とウソの噂を流させた。

 もしサラがリンと共に逃げるのなら、獣人差別のない土地を探すだろうから。

 彼は噂を流す事によって、サラの行動を把握しやすくしたのだ。

 実際にその噂を聞いて、僕らはサラと一緒にアインに行ったわけだしね。

 

 一つ問題があるとすれば、僕らがアインに着くまでに予定より1年遅れた事か。

 僕らは真っ直ぐアインに行かず、イリスでスキールさん達に付き合ってたから。

 

 その後、僕らが着いたのを確認してからアインで事件を起こし、サラにはサラの父親の仕業と煽る。

 あとはバールまで来て父親をサラに処刑させれば、レイア家の次に権力を持つハイルマン家がこの辺り一帯を治めることが出来るようになる。

 

 もし計画の途中でサラを見失ったなら、アインで起きた事件はサラに罪を擦り付け、その責任として当主であるティラさんを処刑する計画だったそうだ。こっちはサラに処刑させるよりは他の貴族の反感を買う危険が伴うが、仕方ないという感じか。

 なんともまぁ、回りくどくてめんどくさい計画だ。下手に殺すことが出来ないのだから、仕方がないのか。

 

「でも、どうやって僕らを監視していたのですか?」

 

「あぁ、イリスへ向かうための関所があるだろう? あそこにエッダの息がかかった者が何人かいるらしくてな。今詳しく調べている所だ」

 

 そうだったのか、やけに行列が出来てると思ったけど、もしかしたら一人一人顔を見て調べられていたのかもしれないな。

 

「だけど、父さんはどうやってそれだけ調べ上げる事が出来たの?」

 

「あぁ。エルク、お前の親友とやらがほとんど調べ上げてくれたよ」

 

「親友……スクール君か!」

 

「うむ。彼の情報力は素晴らしいとしか言いようがない。あっという間にエッダ達が拉致した人たちの場所を見つけ出し、秘密裏に冒険者達と救出作戦を決行したのだからな」

 

「えっ? それって大丈夫なの?」

 

「もし下手をすれば全員殺される危険性があった。だが見事救出作戦に成功したおかげで、私達がこうやって国王から逮捕の為の書状を頂けたわけだ」

 

 なるほどね。

 スクール君には、簡単に返しきれない恩が出来てしまったな。

 もし彼に会ったら、お礼を言おう。心から。

 

「他に、聞きたいことはあるかね?」

 

「すみません。拉致された中に、ドワーフやホビット族は居ませんでしたか?」 

 

 先ほどからそわそわしていたレッドさんが、父さんに質問をした。

 

「キミは、レッド=ツインちゃんだったね。キミの兄弟は全員無事保護したと連絡があったから安心しなさい」

 

「……ッ!!!」

 

 何かを言おうとして、何も言えず。彼女は声を上げその場で泣き出した。

 今まで必死に耐えてきたものが、プツリと切れたのだろう。ただただ子供のように泣きじゃくるだけだった。




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