剣も魔術も使えぬ勇者   作:138ネコ

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第28話「処刑」

 さて、問題はもう一つ残っている。

 レッドさん達だ。

 

 

 レッドさんは護衛の冒険者と共に、弟たちと再会するため隣町へ出向いていた。

 本来ならわざわざ出向かわなくても、スクール君達が護衛をしながらティラさんの屋敷に向かっているのだから、待っていれば会える。

 なので、向かったのは少しでも早く会って安否を確認したいと言う彼女の希望によるものだ。

 

 その日、僕は彼女が帰って来た知らせを聞き、玄関まで向かった。

 玄関に着くとレッドさんだけが、少し困った顔で立ち尽くしていた。

 ビアード君達は屋敷に入るなり、目を輝かせて探検に行ってしまったそうだ。

 

「ははっ、元気な事は良い事なんだけどね」

 

 まだ姿は確認していないけど皆ケガもなく、無事だったらしい。

 

「やぁ、久しぶりだね」

 

「うん。久しぶり」

 

 玄関でレッドさんと立ち話をしていると、スクール君が顔を出した。

 本当はスクール君に労いとお礼の言葉をかけて、語り合いたい所だけど。

 

「ごめんエルク君。先に報告に行かないといけないから」

 

「分かった」

 

 報告が先だよね。流石にドワーフホビット関連だから、依頼の重要度が他とケタ違いに違う。

 スクール君の後に続いて、見た事のある顔がぞろぞろと玄関に入ってくる。

 

 ランベルトさんとケーラさん。そしてその2人のパーティの人達だ。

 子供好きに世話好きと来たか。確かに今回の救出作戦で最適なメンバー選びだ。

 彼らなら戦闘力も人望もある。 

 

 お礼を言って頭を下げると「良いって事よ」と返事をして、ニカっと笑いかけてくれた。 

 使用人に案内され、屋敷の奥へと向かう彼らを見送った。

 

 彼らが居なくなり、レッドさんと二人きりになった。

 

「あのさ、お願いがあるんだ」

 

「何かな?」

 

「うん。実はね……」

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

‐一週間後‐

‐バールの中央広場‐

 

 

「た、頼む! 助けてくれぇ!」

 

「うるさい! さっさと歩け!」

 

 ボロボロの衣類を来た男が、兵士にムチで打たれながら無理やり歩かされている。

 手足には鎖が付けられ、腰には紐をつけ逃げられないようにしている。

 それが一人二人と言った数ではない。数十人にも及ぶ。

 

 彼らは一列になり、間隔を空けて歩かされる。

 時折座り込んだり、倒れこんだりして駄々をこねた子供の用に歩くのを拒否しながら、周りに助けを求める。

 

 そんな彼らに対する目線は冷ややかだ。

 それもそのはず。彼らは先日バールでエッダと共に騒ぎを起こしていた共犯者達だからだ。

 中には、アインで騒ぎを起こした仲間も居るのだとか。 

 

 そんな彼らに下された判決は、死刑だった。

 本来は市中で引きずり回してからの死刑が妥当なのだけど、あまりにも数が多すぎるため、迅速に処罰できるように処刑台でさっさと処刑される形だ。

 一応見せしめは必要なので、こうしてバールの中央にある広場に処刑場を作り、処刑場まで囚人自らの足で歩かせている。

 

 中央広場、その処刑場の対面。処刑が見えやすいようにと設置された高台に、今僕らは座っている。

 中央にはティラさんが、僕の右側にレッドさん、左側にはアリアが座っている。

 他にはリン、フレイヤ、ダンディさん、ビアード君、アクアちゃん、チョロちゃんが居る。

 

 サラは騙されていたとはいえ、エッダ達と共に行動していたので欠席している。

 彼女に対し快くない感情を持つ者も居るだろう。なので今はティラさんの屋敷で待機している。

 

「レッド姉ちゃん。あいつらって、この後どうなるの?」

 

「死刑だよ。皆、死刑になっちゃうんだよ」

 

「そっか」

 

 ビアード君がレッドさんに問いかけ、その答えに対し満足そうに返事をする。

 両手を膝の上に置いて、今か今かとワクワクした表情で、命乞いをする囚人を見ている。

 アクアちゃんやチョロちゃんも、同じような感じだ。

 

 ビアード君達がそんな気持ちになるのも仕方がない。キバさんが殺されたんだ。恨まない方がおかしい。

 目の前には、キバさんを殺した犯人たちが居る。直接手をかけたわけじゃないにしろ、ビアード君達にとっては同じようなものだろう。

 そんな様子を、レッドさんは何とも言えない表情で見ていた。

 

「ねぇ、エルク」

 

「なに?」

 

 唐突にアリアに話しかけられた。

 

「エルクは、どうする?」

 

 どうする?

 主語のない言葉だが、アリアの言いたいことは分かる。

 彼らを助けるかどうかだ。

 

「ダメ、かな」

 

「どうして?」

 

「彼らを助ければ、虐げられた人たちが救われないよ」

 

「……そっか」

 

 目の前に助けられる命があるなら助けたいし、殺さないで済むならそれで良いと思う。

 でも、ダメなんだ。今回はそんな事をしちゃダメなんだ。

 彼らは、とてもじゃないが擁護しようのない罪を犯しているのだから。

 

 もし彼らを助ければ、彼らに虐げられた人たちの想いを潰す事になる。

 だから、きっと……いや、絶対に彼らを助けてはいけない。そう思う。

 

 そうこうしている内に、処刑は始まった。

 

「この者達は、先日バールでエッダと共に騒ぎを起こしただけではなく、アインでドワーフやホビットを殺してまわり、奴隷にしようと連れ帰った者達だ!」

 

 長い槍を持った兵士がそう叫ぶと、広場に集まった人たちがざわめく。

 ざわめく観衆からは罵倒の声が飛び交う。中には「殺せ」と声高らかに叫ぶ人も居るくらいだ。

 

「そのような行為を働いたものがどうなるか、その目に焼き付けよ!」

 

 枷を付けられた一人の男が、処刑台にいくつも用意された丸太に縛り付けられる。

 

「た、助けてくれぇ。頼む。頼むよぉ」

 

 必死にボロボロと涙を流しながら命乞いをする男目掛け、兵士がその槍で脇腹を貫く。

 

「アギャアアアアアアアアアアア!!!」

 

 つんざくような悲鳴が辺りに響いた。

 兵士は槍を引き抜き、そして、また刺すのを繰り返している。

 そのたびに男が叫び、悲鳴に合わせ、彼を嘲笑う声が聞こえてくる。 

 

「もうやめて、お願い許しグギャアアアアアア!!!」

 

 断末魔のような叫び声を上げながら、最後はビクンビクンと体を震わせ、やがて動かなくなった。

 縄を外し、念入りに首を落とされると頭と胴体を乱雑に投げ捨てられた。

 

「い、いやだ。うわぁあああああああああああ!!!」

 

 その光景を見ていた囚人が逃げ出そうとするが、枷をかけられ腰には縄をかけられているためにまともに走ることが出来ない。そんな状態で、当然逃げられるわけが無い。

 

「ほう。威勢が良いじゃないか。次はお前の番だな」

 

 なおも逃げようとする囚人を数人の兵士で抑え込み、丸太に縛り付ける。

 先ほどと違い、ここからは数人ずつ縛られて処刑が執行されていくようだ。

 

 罪の重さによって死刑方法が変わるらしく、罪が重いと先ほどみたいに槍で突かれて、死ぬまで痛みや恐怖を与える処刑方法となるそうだ。

 罪の軽いものは即座に首を刎られている。どれだけ軽くても結局死刑には変わりない。

 

 次々と処刑が行われていく。

 フレイヤは処刑開始早々泣き出してしまい、ダンディさんと護衛に連れられ、ティラさんの屋敷に戻って行った。

 

 段々と積み上がっていく死体の山から、血の臭いが充満し始める。

 だと言うのに、観衆はその臭いも気にならないと言った様子で処刑が執行されるたびに、興奮の声を上げている。

 

「全員死んじゃったね」

 

「そうだね」

 

「これでキバ兄ちゃんの仇が取れたよね!」

 

「うん。そうだね」

 

 レッドさんが困ったような笑みを浮かべてるのに、ビアード君は気づかず嬉しそうに語る。

 アクアちゃんやチョロちゃん達と、これで帰ったらキバ兄ちゃんに報告できる、と嬉しそうに喋っている。

 だけど、その笑顔はすぐに消える事になる。

 

「やだ、やだああああああああああ!!!」

 

 先ほどと同じように、手足に枷を付けられ歩いてくる人影が見える。

 そのほとんどが幼い子供か老人、そして女性ばかりだ。

 枷すら付けられないような小さな子供は母親にしがみつき、ただ泣きじゃくるばかり。 

 その光景に、ビアード君達の表情が固まる。

 

「あの子達も、さっきの奴らの仲間なの?」

 

「あんなに小さいのに?」

 

 呟いたのはビアード君とアクアちゃんだ。

 

「ううん。違うよ。今回の騒動に家族が関与してるから、あの子達は連帯責任として処刑されるんだよ」

 

「そんな……」

 

 レッドさんの言葉に、ビアード君達は青ざめた。

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