第1話「緊急依頼」
僕の名前はエルク。
かつては5年来の引き籠もりで、親のスネをかじるだけのダメな人間だった。
結局家を追い出されるような感じになって冒険者に登録、僕が登録した職業は”勇者”だ。
勇者の役割それは、炊事、洗濯、荷物持ち……いわゆる雑用係。戦闘の技術が無い僕がなれるのは勇者だけだった。
冒険者となり、剣士のアリア、魔術師のサラ、斥候のリン、エルフのフレイヤと共に依頼をこなしたりして行くうちに、僕もそれなりに成長した。と思う。
相変わらず魔法の適性が無いけど、『混沌』なんていう魔法を無効化して身体能力をめちゃくちゃに上げるスキルを覚えたり、剣もそれなりに振るえるようになったかな。
サラとリンの問題も解決してパーティの絆が深まった。さぁ新たな旅に出発だ。
☆ ☆ ☆
なんて思いながら、10日が経った。
僕らはいまだにティラさんの屋敷に居る。
なんというか、出ていくタイミングが見つからない。
せっかくサラがお父さんと仲直り出来たのに、すぐ出発するのはしのびない。
そんな事を考えながら、なぁなぁにした結果、10日間が経っていた。
宿代は掛からないし、アリアは料理に満足そうだし、フレイヤは毎日館の探検をしてて楽しそうではあるけど、これではいけないよね。
このままだと、住み着きかねない。
「久しぶりに、冒険者ギルドに顔を出さない?」
なので、お昼の時に、食事が終わってからそう声をかけた。
☆ ☆ ☆
「よぉエルク、パーティも一緒のようだな。久しぶりじゃねぇか」
冒険者ギルドに入ると、カウンターで僕らを見つけたチャラい職員さんことチャラーさんが声をかけて来た。
なんでまだ
冒険者ギルドとしては貴族に無駄に目を付けられるのはごめんだからな、と言っていた。
「今日は何の用だ、と言いてぇ所なんだが……」
普段はヘラヘラ笑っているチャラーさんが、真顔になった。
「どうかしたのですか?」
「ここじゃちょっとな。ついてきてくれ」
チャラーさんは近くの職員に「わりぃ、後頼むわ」と言うと部屋の奥へ入って行った。
後を頼まれた職員さんがどうぞどうぞという仕草をしてるので、僕らも中に入ってくれという事か。
チャラーさんについて行くと、応接室のような場所に案内された。
「ちょっとアレク達を呼んでくるから、中で待っててくれ。詳しい話はそん時すっからよ」
「は、はぁ」
状況は分からないが、応接室の中で待つことにした。
「今回の件で、まだ話があるのかな?」
適当な椅子に腰かけ、アリアがそう呟いた。
事件についてはあらかた話はついて、後はこっちでやっておくと言っていたけど。
「それは無いんじゃないかな」
普段事件について話をする時は、ティラさんの屋敷で話していた。
理由は情報が漏洩しないようにだ。
人払いをしているとはいえ、応接室で話す内容ではない。
「だったら、こんな所に呼び出してなんなのかしらね」
呼ばれた理由は何だろうか、取り留めのない会話をしながら僕らは待った。
しばらくしてドアが開かれた。
父さん、ダールさん、チャラーさん。それにこの街の冒険者ギルドのギルドマスターだ。
他の街のギルドマスターは大体がいかつい体系と顔をしているのに対し、こちらは線の細い紳士のような人だ。
笑顔で一礼をされたので、慌てて立ち上がり頭を下げる。
僕に続きアリア達も立ち上がり頭を下げる。
「あぁ、楽にしてくれて構わない。それにそちらのお嬢さんの方が立場で言えば私より上だ」
困ったような顔でそう言って、僕らの対面に座った。
父さん達はその後ろで立っている。
えっと、この場合どうした方が良いだろう?
父さん達が立ったままなのに、このまま座るのは何か悪い気がするし。
僕らの戸惑いを察し、ギルドマスターが笑いながら言う。
「あはは。キミ達は座ってくれるかな」
言葉に従い、僕らは椅子に座った。
「単刀直入に話そう。緊急依頼がある。それはキミ達にも関係がある内容だ。話を聞いたうえで受ける受けないはキミ達の判断に任せる」
「緊急依頼? それに僕たちに関係のある?」
そう言えば前にチャラーさんが緊急依頼があると言っていた気がする。
「あぁ、実はエッダの屋敷からダンジョンが発見されてね。多分今回の事件に関わった奴らがここに逃げ込んだ可能性があるんだ」
「屋敷からダンジョンですか!?」
「私達も驚いたよ。カモフラージュしてたとはいえ、敷地内にダンジョンがあるなんて誰も思わないからね」
となると、緊急依頼の内容は今回の事件の実行犯達が逃げ込んだダンジョン探索という事か。
僕らに関係があると言っているという事は。
「それは、エルヴァンやリリアがそこに居るという事ですか?」