剣も魔術も使えぬ勇者   作:138ネコ

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第2話「Bランク昇格」

「確定な情報が無い以上、その可能性が高い、としか言えないね」

 

 今回の事件に関わる人物は、大体が捕まっている。

 末端の人間ですら逃がさないと言わんばかりの包囲網だ。

 

 だというのに、エルヴァンとリリアは捕まっていない。

 エッダに協力する者は居ないというのに。

 

 となると、そのダンジョンに逃げ隠れている可能性は相当高いな。

 

「そうですね」

 

 どうしようか。

 正直な話をすると、僕はもうどうでも良い。

 無理にこちらから出向かなくても、彼らが捕まるのは時間の問題だろう。

 

 ならば、危険を冒してまでこの依頼を受ける必要があるだろうか?

 

「なに?」

 

「サラはどう思う?」

 

「……エルクの意見に従うわ」

 

 ケルベロスとまで呼ばれたかつての狂犬は、すっかり従順になっているようで。

 大丈夫? 殺気漏れてるけど?

 

「それではその依頼。受けさせてもらいます」

 

 僕には引き受ける理由も断る理由もない。

 なら、サラの意思を尊重してあげるべきか。

 

 アリア達は多分、聞いても「任せる」と言ってきそうだから、聞かなくても大丈夫だろう。

 

「報酬の話とかがまだだけど、良かったのかい?」

 

「構いませんよ。エルヴァンとリリアには個人的に貸しがあるので」

 

「そうか。それなら話が早い。依頼書を取って来るのでしばらく待っててもらおう」

 

 そう言ってギルドマスターは部屋を出た。

 出た瞬間に戻って来た。

 

「そうそう。聞かなくても分かってるけど、キミ達も行くよね?」

 

 ギルドマスターの言葉に、父さんが答えた。

 

「あぁ、私達も同行させてもらう」

 

「そうだな。冒険者として同行するか、ギルド職員として同行するかどっちが良い?」

 

「どちらでも構わない。都合が良い方にしてくれ」

 

「それなら同行の職員として行ってもらえるかな、今こっちは人手が足りなくて職員をあまり割きたくないんだ」

 

「あぁ、わかった」

 

 今度こそギルドマスターは部屋から出て行った。

 なので、今の内に父さんに聞いてみる。

 

「職員として同行って?」

 

「大きい依頼では職員が同行する場合が多いんだ。依頼に見合っているか確認したりするために」

 

「それと俺達への配慮だろうな。冒険者として付いてった日にゃ、うちのギルドマスターの雷が落ちるだろうからな」

 

 職員の仕事として冒険者について行ったので、帰るのが遅れました。

 そういう体裁を作ってくれたという事か。

 

「そっか、じゃあ父さんと冒険出来るのか」

 

「エルク。一応言っておくが、遊びに行くわけじゃないからな」

 

「へっ、ダンナァ、にやけ顔しながら言っても説得力ねぇってもんだぜ」

 

 そうやって笑いながら父さんにちょっかいをかけ、殴られるチャラーさん。

 この人ホント懲りないよな。

 

「盛り上がっている所申し訳ないが、依頼書を持ってきたのでサインを頂けるかな」

 

「うわっ!?」

 

 気づいたら僕らの輪の中に、ギルドマスターが居た。

 完全に気配を感じなかった。

 扉を開け閉めすれば、その音で気づくはずなのに。

 

 これがギルドマスターとしての力量って奴か。

 

「父さん達は気づいてた?」

 

「そりゃあ、扉を開けて入って来たからね。気配も音も殺していたが」

 

 そうなのか、確かに父さん達は驚いた様子が無い。

 これが今の僕らの実力差という事か。

 

「それと依頼書にサインをしたら、キミ達は受付に行ってもらえるかな?」

 

「受付ですか?」

 

「うん。キミ達は全員Bランクに昇格だから、カードを更新してもらわないといけないからね」

 

「おいおい、もうBって早すぎやしねぇか?」

 

「確かに早すぎるが、それだけの働きをしてくれたんだ。なんなら私の独断でAまで上げても良いと思っているよ」

 

 Bランクか、そこまで来たら十分ベテランだ。

 

「……エルクはどうするの?」

 

「僕? 僕はこのままで構わないよ」

 

「そう」

 

 剣の腕も大分上達したと自分では思うけど、剣士を名乗れる程自惚れて居ない。

 あっ、でも拳士を名乗るのはちょっとカッコ良いかも。

 

「そうか、キミは勇者だったね。この機会に他のメンバーと一緒のランクのギルドカードを作ろうか?」

 

「うーん。それって今すぐじゃないとダメですか?」

 

「いや、そうだな。他のギルドマスターにも話を通しておこう。キミが他の職を選ぶとき、ランクも自動的に上がるようにと」

 

「ありがとうございます」

 

 正直、もう勇者である必要は感じない。

 ただ、スキールさんを見て、本物の勇者になりたい。そう思う自分が居る。

 笑われ者のお荷物の勇者じゃなく、誰かのための本当の勇者に。

 

 まぁ、口に出したら恥ずかしいから言わないけどね。

 

「んじゃ、俺らは準備してくっから、お()ぇらも準備してこい、出発は三日後だ」

 

「はい。わかりました」

 

 僕らはギルドカードの更新をしてから、サラの家へ戻った。

 三日後の出発に備えるために。

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