ホークスは摩虎羅の考えをそのまま、今回の一件の後処理に集まった面々へと告げた。
具体的には総理大臣含めた現行の大臣に、警察長官、自衛隊の統合幕僚長等々のこの国の意思決定に関わる人間が一同に介していている。
勿論、ヒーロー公安委員会もおり、現場代表としてホークスも招致されている。
「…つまり、オールマイトの代わりになる気は無いが、国や世界の危機にのみ対応すると?」
総理大臣は一瞬、ふざけた考えに顔を真っ赤にしたが冷静に考えの真意を読み取ろうとホークスへと質問を投げた。
「彼の目的はヒーローやヴィランの特権階級的立場を弱める事です。
なので、ヒーローという枠では無く、その上に自身を置いた上で規格外のヴィランが現れた時のみ動くそうです。」
「ふざけるな!
オールマイト引退で犯罪率の上昇が目に見えている上に、AFOの死亡で裏社会も群雄割拠の有様!
黎明期以上の社会的混乱に対して無責任過ぎる!」
声を荒げたのは警察長官だった。
批判の声は最もだ。
表と裏のトップの共倒れによる余波は既に起きている。
表社会では平和の象徴不在による心理的な不安と犯罪率の増加。
裏社会では今まで燻っていた犯罪組織と活動再開の動きは既にホークスの耳にも入っている。
既に一部の国民は新たな平和の象徴に成るのではないかと摩虎羅を英雄視する声も上がるほどだ。
摩虎羅を次の象徴として、オールマイトの様な働きを求めたくなる気持ちも分からなくならない。
しかし。
「その責任を誰が取らせるんで?
あ、やべ。」
「ホークス!!」
あまりにも非現実的な批判に思わず内心が漏れてしまった。
公安委員長も思わず声を荒げ制止させようと呼びかけるが、総理が片手を上げた。
「続け給え。」
「では遠慮なく。
いち公安ヒーローとしてもトップヒーローとしても断言します。
摩虎羅君を捕まえるのは不可能です。
今の摩虎羅君を倒すにはAFOの最後の一撃以上の威力を今直ぐに彼に当てる事ですが、用意する時間で適応を終えてしまうでしょう。
仮に捕まえても捕らえる檻がないし、仮に出来たとしても直ぐに適応されて終わりです。」
「法が意味を成さないと言うわけか。」
「はい。
幸いな事に彼の性格は現状、自己中心ではあるが善性に傾いている。
一応今回の提案を呑む事で大規模犯罪の抑止力としての機能はあります。」
オールマイトの引退に、AFOの死亡。
表と裏の規格外が共倒れならここまで会議が荒れる事は無かっただろうとホークスは思う。
ヒーロー公安委員会としても神野の一件の対処に政府全体の意見が必要であることは織り込み済みである。
根周しを徹底して素早く事件の混乱から新たな新体制を発足させるつもりだったのだ。
(オールマイトの引退からのチームによる象徴不在の払拭計画は完全にパーというか後回しになりそうだな。)
全部、摩虎羅が悪い。
ホークスは勝手にそう結論付ける事で怒号飛び交う会議の中で心を落ち着かせていた。
表と裏の頂上決戦に乱入して、あまつさえ残り火とはいえOFAを取り込んだAFOの一撃を受け流し、その上で決死の一撃を食らった上での死からの復活を予想できるだろうか。
(しかも現在進行系で適応の個性は発動し続けている。
恐らくAFOが同じ事をしても次は傷一つ与えられない可能性が高い。)
現状、摩虎羅は誰にも止められない。
「…オールマイトに依存した状況からいきなり放り出されるよりマシか。」
総理の肯定する様な呟きは会議の方向を決定付けた。
お久しぶりです。
新作書こうと思ったら何故か出来上がりました。