透き通った空に浮かぶ星 作:哲学の階司書補
かつて極地研究基地があった氷海、ビナーの姿はそこにあった。
「懐かしい聲に耳を傾けて来てみれば、嗚呼。ここに降り立った時もそうだったね。刻まれた名が其れで在り、形は違えど箱に詰められた意思。あの時のように心踊らせてくれるかと期待したが。頭であったなら、処分以外の道は無かっただろうが、私はあの男に覗かれた時からそうでは無いが故に」
その対面には、金色の鎖によって捕らえられた巨大なロボット、デカグラマトン第5の預言者、ゲブラの姿があった。
妖精により全ての砲門を『閉じ』られ、鎖により動きを封じられる。ゲブラがビナーに攻撃を放つまでもなく、勝負は決していた。
「ここで破壊するのは容易い。然し……ふむ」
ビナーは考える。自分がこの世界にやってきた時、同じ名前であるデカグラマトン、ビナーに引っ張られる形であったこと。この機体を触媒に、ゲブラーをこちらに引き込むことが出来るのではないか、と。そうすればよりこの世界には混沌が訪れるだろう。
本来の『先生』に味方する可能性もあるが、殺し合いになるならそれはそれで愉しめばいい。
なんせL社の始まりでも終焉でも、ガリオン、ビナーはカーリー、ゲブラーと敵対している。
とある不純物が都市から放逐された日は共闘し、時にはホドと共に茶会に招待する仲とも言える。
しかし、折角自分を『先生』と慕う生徒たちが居るのだから。
「否、ここは一つ、組織の『頭』らしく行こうか」
ビナーは踵を返すと、ゲブラを拘束していた鎖も消える。
そこに残っていたのは、音もなく放たれた柱によって風穴を開けられた残骸だけだった。
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己のE.G.Oを得たホシノやヒナ、そしてセイア。彼女らに追いつくべく、後輩達は鍛錬を積んでいた。
開花E.G.Oと言うものは誰もが持ちうるもの。しかし、揺らげばねじれへと成り果てる可能性もある。
本来は光の種に由来するものだが、この世界には恐らく降り注いでいないであろうもの。
それ故、ビナーの妖精によってその可能性を『開く』ことにより、開花する可能性がある。
しかし、自己を確立し自分だけの意思を固めるということは、このキヴォトスにおいてかなり不安定なものである。
自我とテクスチャの乖離。ある意味で他者に存在を定義された被観測者が、与えられたテクスチャではなく、自己を定義する。
強度の強い存在でなければ、揺らいだ境界を起点にねじれていく。
であるが故に。
『心』と『望』。ビナー自身が使うことは無かった(2026/3/19現在)技術だが、これを強さを求める生徒たちに教えることとした。
『心』はオーラのようなエネルギーを纏い自身を強化する技術。ここキヴォトスでは、神秘にて代替することで、ほとんど同じ効果を得られることが発覚した。
『望』はその発展。己の強い感情を冷たく制御することで、輪の形へと変形させ武器や身体に惑わせる。
意外にも適性の高かったのはセリカ。あと戦闘のプロになりつつあるアヤネ。輪の数はまだ少ないものの、『望』を纏った愛銃、シンシアリティの一撃は、少し前に巡航ミサイルを真っ二つにしたアヤネでさえ、少し焦るレベルだったそう。
ということで、セリカはE.G.Oを纏ったホシノと戦闘演習を行うことになったのだった。
「私の本気の一撃、アヤネに真っ二つにされたんだけど!? 出張るならアヤネじゃない!?」
キヴォトス屈指の強者に仲間入りしようとも、いつも通りなセリカだった。
読み返したら過去の自分めっちゃ面白くて辛い