アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話   作:rideru

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前回の続きです。



第二十話

 

 「待ち合わせで。先に来てると思うんですけど」

 「確認しますね……、はい!あちらの個室へどうぞ!」

 

 とある日のこと。俺はすいせいとAZKiに連れ出されるように都会へ出てきた。そのまま流れるようにお高めな御食事処へ。

 

 「……完全に俺は場違いだと思うんだが」

 「そんなことないよ。今日もかっこいいし」

 「そうそう。もっと堂々としていいんだから」

 

 2人に励まされてるけど、店員も俺見て少し変な顔してたの気づいてるからな。気持ちはわかるけど。

 

 「ここかな?みこちー、いるー?」

 「あっ!すいちゃんきたにぇ!いるよー!」

 

 ドア前ですいせいが声を掛けると、中から女の声がした。

 

 「ちょっとまっててね」

 「ああ」

 

 そのまま2人が先に入って何事か話してから、

 

 「いいよー」

 

 AZKiに声かけられたので、俺も入ることに。

 

 「お邪魔します」

 「は、はじめまして!尾丸ポルカです!」

 「どうも、はじめまして」

 

 目の前ですくっと立ち上がって挨拶してくれた……、何の動物かはわからないけど獣人の女性、ポルカさんと、

 

 「……ようやく会えたにぇ。さくらみこっていいます。よろしく!」

 「どうも、いつもすいせいがお世話になってるみたいで。ありがとうございます」

 

 むむむ、とでも言いたげなピンク髪の女性、みこさん。以前すいせいが言っていた会わせたい人達ってのがこの2人だったらしい。

 

 「とりあえず座りなよ。あ、君はここね」

 「分かった。失礼します」

 

 ぽんぽんと促され、すいせいとAZKiの間に挟まれる形で座る俺。対面にはみこさんとポルカさんが座る。

 

 「……で、どうなのよみこち。初対面の感想は?」

 「思ったより普通にぇ。もっとオーラバリバリな派手派手しい感じな人かと思ってたんだが?」

 「だからそう言ったじゃん。同じ田舎地元の普通の人よ?って」

 

 すいせいにそう答えてるが、彼女に俺は何者だと思われてたんだろうか?

 

 「……あの、ポルカさんはなんで俺に?」

 「私?みこちがどーしても貴方に会いたい!って、すいちゃんに騒いでる現場に居合わせただけなんですよね……。そしたら、すいちゃんにストッパーとして来てって呼ばれたので」

 「ポルカちゃんは普段から割と巻き込まれやすいタイプなんだよ。その場の空気を盛り上げるの上手だし。巻き起こすことも多いけどね」

 「あぁなるほど……。すみませんね、すいせいがご迷惑かけて」

 「いえいえ!偶然だったけど、こうして会えたのは良かったですから!」

 

 無言で眺めててもあれなもんで、とりあえずポルカさんに話しかけてみた。AZKiがこう言うってことは、この人もしかして苦労人ポジションか?

 

 「彼氏さんはさ」

 「はい?」

 

 すいせいとの会話を切り上げたみこさんに話しかけられた。

 

 「すいちゃんに振り回されてないの?」

 「なんであたしだけなのよ」

 「おめー普段の配信とか、3Dで呼んだ時の様子思い出せよ!どう考えてもお前が振り回してる側だろうが!」

 「あずきちと比べたらそうかもだけど、あたしだけじゃないですー」

 

 ……やっぱりこの2人、思った以上に仲いいな?

 

 「どうなんですかね?慣れもありますし、あんまり辛いとか思ったことないですけど」

 「ほんとにー?無理してない?すいちゃん割と強引だし」

 「ホントですよ。……確かに配信だと割と強気なのは何度も観ているので知ってますけど」

 「ププッ、知られてやーんのー」

 「うっさい。つーか、貴方も何言ってんのよ」

 

 肩を叩くな、痛いわ。

 

 「あずきちのほうは?」

 「んー、どうなんですかね……。こっちも普段からこんな感じですけど」

 「やはり清楚か」

 「でも、みなさんが思うよりかは結構はしゃぐこともありますよ」

 「私、別に清楚で売るつもりないしなあ」

 「売るとか言うなよ……。あ、根回しとかはきっちりしてるので、何かしらアクション起こす時の逃げられない感じはこっちの方がつよ」

 「なーにーかーなー?」

 「……なんでもない」

 

 こういうとこだと思うぞ。

 

 「んー……、ぽぅぽぅ」

 「なに?」

 「尻に敷かれてる男ってこういう感じなんかな?」

 「あー、まぁ、そうかな……?」

 「……まあ別に間違ってはないと思いますよ」

 

 みこさんが割とズバッと言うからポルカさんが申し訳なさそうにこっち見てくるけど、否定できないしなあ。

 

 「ふーん……。とりあえず、全然悪い人じゃないってのはよーく分かったにぇ」

 「当たり前でしょ。幼馴染だって言ってんじゃん。そんなの昔から知ってるっての」

 「どう成長するかわかんないじゃん!男は狼だって言うし!」

 「ゲームのやり過ぎ。実際そうだったら今の私達がどれだけ楽だったか……」

 「それはそうかも。もっと狼になってほしいけど、今は……、子犬?」

 「あずきちからのまさかの援護で草」

 

 悪かったな、子犬で。

 

 「こんな可愛い2人を前にして、なんであんたは子犬なんだよ!獣になれよ!」

 「いやあの、俺の事なんだと思ってるんですか」

 

 流石にツッコミを入れざるを得ない。

 

 「そもそも、そこで獣になる人ならたぶん好きになってないって」

 「言えてるね。楽しみも苦労も全部含めての恋愛だと思うし。上手く乗せたり乗せられたりするのがいいんだから」

 「すげー、大人な意見だ……」

 

 ……めちゃくちゃ失礼かもしれんが、ここまでの感じ、みこさんが異常に子供っぽいだけに見える。本人には言わないけど。あと、AZKiはもう少し黒いところは隠せよ。十分知ってるけど。

 

 「彼氏さんって大学生なんだよね?前のゲスト配信観たけど」

 「はい。予定通りなら今年で卒業します」

 「将来とか決まってんの?」

 「普通に就職して働くつもりですよ」

 「あたしらが囲うに決まってんじゃん」

 「ね。そのつもりで動いてるよ」

 「勝手に決めるな」

 

 割り込みが強いって。

 

 「おおぅ……、すいちゃんは何となく知ってたけど、意外にあずきちもガチガチじゃん……」

 「いろはとかが今のあずきち見たら失神しそう」

 「何のために今まで貯金してたと思ってるの」

 「少なくともこの為ではねえだろ、頼むから」

 

 対面2人が恐ろしげにこっち見てくるが、俺は止めるのに必死だよ。

 

 「初対面の方にお願いすることじゃないんですけど、お二人もこいつらを止めるの手伝ってください」

 「無理だよ……。目がマジだもん。止めたらこっちが食われそうだにぇ」

 「が、頑張ってくださーい」

 「ふふっ、残念だったね」

 

 味方がいない……。

 

 「ねえねえ」

 「はい?」

 「折角こうして会えたんだし、敬語やめない?その方がみこ達も話しやすいし。そもそもそんなに年離れてないのになんかムズムズするにぇ」

 「……いいんですか?」

 「本人がいいならいいんじゃない?貴方の他所行きの口調珍しいから、あたしは楽しんでるけど」

 「ポルカも、その方が気楽かな」

 

 なんか言ってるすいせいはともかく、お二人がそう言うなら、合わせたほうがいいよな。

 

 「……分かった。これでいいか?」

 「おお、その方がイメージに合うにぇ」

 「2人には普段この口調ってこと?」

 「そう、じゃないか?特別変えたりとかしてない筈だし。だよな?」

 「そうだけど。あーあ、戻っちゃった」

 「でもこの方が馴染むかな」

 

 すいせいだけやたら残念そうなのはなんなんだ。

 

 「それにしても、今の今まで、すいちゃんがマジでずーっと腕を離そうとしてないの、マジでビビるにぇ」

 「普段も2人きりとかなら近い事あるけど、人前でもこんなにくっついてるのはなかなか珍しいけどな」

 「いいじゃん」

 

 みこさんに指摘されても素知らぬ顔のすいせい。若干顔を赤らめてはいるから、照れてないわけではないみたいだが。

 

 「あずきちも、さっきからめちゃくちゃ甲斐甲斐しく御世話してるよね。貴方も割と違和感ない感じ?」

 「あー、そうかな。こんな高そうなお店なんて普段一人で来れないから、分からないことはほとんど任せてたりはする」

 「これでもだいぶ素直になってくれたんだよ。前は照れてたのか結構抵抗してたもんね」

 「うるさいな」

 「なるほど。……これが狙い通りってやつか」

 

 逆にAZKiはポルカさんの言葉にニコニコと笑うだけだな。その間も俺の分取り分けてくれてたり、コップ下げたりと忙しなく動いてるし。マジで何考えてるのか分からないこともあるのが怖い。

 

 「ねえねえ、2人は普段どんな感じなの?貴方の前だとなんか違ったりする?」

 「ちょっと、みこち?」

 「だって気になるじゃん!すいちゃんもだけど、あずきちも意外にデレデレしてたりするんか?」

 「あー、外だとイメージもあるのか、きちんとキリッとしてるみたいだけど、油断してると結構だらけてたりしてるな」

 「「へぇー!」」

 「な、何言ってんのよ!」

 「痛いな」

 

 少しだけ教えてあげたら、みこさんもポルカさんも目を輝かせてる。すいせいに腕をつねられたのは痛いが。AZKiも若干ジトッとした目をしてるのは感じたが、それにはあえて触れないでおく。

 

 「ねぇねぇ。折角だからこれとか食べたくない?奢ったげるから、もー少し詳しく教えてほしいなあ?」

 「あ、ポルカも出すよ。お兄さん、お酒とかイケる口です?」

 「おいおい!ふたりとも!?」

 「わざとらしく物で釣ろうとしないで?」

 

 少し身を乗り出してメニューを差し出してくる対面2人に、横の2人が慌ててる。なんか珍しい光景で面白いな。

 

 「……おっ、これ美味しそうだな」

 「あー!なんかみこも食べたいなあ!店員さん呼ぶか!」

 「少し悩んでからあんたも釣られてるんじゃないわよ!」

 「食べたいなら私達出すから!」

 「ぽぅぽう、この人案外ノリ良いにぇ!」

 「獅白とかと相性良さそうだなあ」 

 

 ……たまにはこんなのを面白がってもいいか。後がちょっと怖いけど、まあ謝れば許してくれるだろ。

 

 

 

 

 

 「ねえねえ、綺麗な女の子2人に構ってもらえて嬉しかったの?」

 「私達隣にいたのに、たくさん食べて、色んなこと話しちゃったもんね?」

 「い、いや、たまには俺が楽しんでもよくないか?」

 「そんなに女の子で楽しみたいんだったら」

 「朝までいーっぱい構ってあげるから」

 「「もちろん喜んでくれるんだよね?」」

 「わかった!ごめん!頼むから真顔でにじり寄ってくるな!怖いから!」

 「アイドル捕まえて怖いだなんて」

 「失礼しちゃうなあ」

 「「ねー?」」

 「ハイライト消えてんだってば!機嫌直してくれって!」

 

 

 ……マジで怖かった。予測が甘すぎたわ。文字通り眠れなかったよ。

 




ここまでの話を反映させて設定更新しました。
よければご確認ください。
https://syosetu.org/novel/349730/1.html
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