ほぼ勢いのままにやった
後悔はしていない

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“あの日”の想い出

緊急で飛び込んできた案件を何とか片付け、凝り固まった身体を揉み解す

 

一仕事終えた解放感にコーヒーの一杯でも嗜みたいところではあるが、時間を確認するとそれ程余裕は無さそうなので手早く、ただし念入りに汗を流すべく浴室へ

 

来客を待つ間に執務室の窓を開け放ち、ジメジメと淀んでいた空気を追い出していく

 

机の奥底から小箱を取り出し中身を確認

再び元の場所へと仕舞うこと数度

 

その後、めったに使うことのない手鏡で身嗜みを入念にチェックすることこれまた数度

 

今この瞬間を花騎士の誰かに見られようものなら、こちらの額に手を当てて熱でも測り出すのではないか

そんな推察にやれやれと苦笑が溢れる……と、扉をノックする音が響き、思考が現実に引き戻された

 

「団長様、オジギソウです~」

 

律儀にこちらの応答を待ってから入室し、深々とお辞儀を1つ

 

「お呼びですか、団長様~

あれ?てっきりお手伝いに呼ばれたと思ったのですが~」

 

キョトンとした表情を浮かべるオジギソウ

敏感な五感を持つ彼女のこと、ある程度こちらの状況を把握した上で用件に当を付けていたのかもしれない

視線は先程片付けたばかりの書類の山とこちらを行き来している様子

 

事実、文官が血相を変えて駆け込んできた時には気持ちが揺らぎかけたし、今日で無かったら頼っていたかもしれない

しかし、さすがにそれでは格好がつかないというものだ

 

 

え?という驚いた表情は一瞬

先程の小箱から“それ”を取り出す

彼女の前に跪き、おずおずと差し出された左手の薬指に照明を浴びて淡く輝く誓いの指輪をはめ込んだ

 

オジギソウがパチクリと自身の指にはめられた輝きに視線を移し沈黙すること暫し

 

「本気、なんですね……団長様」

 

それは問いかけではなく、確認

こちらを見据える視線を真っ直ぐに見つめ返し、頷きを1つ

 

「だったら私も……答えはひとつです」

 

ゆっくり噛み締めるように瞳を閉じ、こちらを迎え入れるように腕を広げてくれる

 

応えるべく立ち上がり、繊細なを扱うように優しく抱き締め、彼女が抱き締め返してくれたのを確認して唇を重ねる

 

どれくらいそうしていただろうか

一瞬のことだったかもしれないし、ずっと長いことそうしていたかもしれない

どちらからともなく身体を離し、互いにはにかむような照れ笑いで見つめ合う

 

「恥ずかしいとか、緊張するとか、もっと色々あるかと思ったんですけど……そういうのは無いんですよね~」

 

「多分、団長様の……旦那様の考えがなんとなく分かってたからだと思います~」

 

自分で言い換えたくせに、顔を真っ赤にして先が続かなくなってしまう

ただまぁ、そんな姿がどうしようもなく愛おしい

ここで終いかとも思ったのだが

 

「私も……大好きです

幸せにしてくださいね~」

 

何とか最後の一言を絞り出したようだ

堪らず、逃がさないように再び彼女を抱き締め、口付けを交わす

 

今度は先程よりも長く、いつまでも…いつまでも…

 

必ず幸せにする

そう自分にも言い聞かせるように

 


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