TS転生したらハーレム主人公の親友ポジだった 作:まよねえず
夏休みが開け、私が通う高校では『だるい』『もうちょっと休みを』なんていう言葉が溢れかえっている。
「春香……学校だるくね?」
ほらね。隣に居る奴が言っていた。
教室に着いた瞬間に言ったぞ、こいつ。
なんなら先日、夏休み最終日も同じことを言っていたし、その前日も言っていた。どれだけ学校が嫌いなのか。
私としてはそこまで嫌ではないのだが、まあそれは人それぞれだ。わざわざ言うことは無いだろう。
「……」
それぞれの席に着くために一度祐樹と別れる。
そうして自分の席に座ろうとしたんだけども。
「ねね、なんか桐原さん。もしかしてだけどさ……そういうこと?」
「……え?」
隣の席の桜ちゃんが滅茶苦茶目を輝かせて聞いてきた。
そう、私はまだ誰にも言っていない。言ってしまったら『一人だけ抜け駆けとか許さない』とか言って、とある五人にひどい目に遭わされそうだったからだ。
まあ聞いてくる反応を見てる限りあまり悪い感情では無さそうだが。
……大丈夫だろう。
「……うん、まあそっちの思ってる通り?」
「おめでとう桐原さん!……やっと付き合えたんだね」
「おめでとうって……祐樹の事が好きなんじゃないの?」
「いや?」
「???」
頭の中で?が浮かびまくる。
え、桜ちゃん祐樹好きじゃない?あんなに『……一緒に遊びたい』とか言っていた桜ちゃんが?
祐樹好き好きオーラを醸し出していたというのに、好きではなかった。
私の思考レベルでは理解が出来なかった。
「あ、その。……私含めた四人が、桐原さんと藤井君と見てて恋の応援をしようってなって」
「……うん?」
「恋のライバル的な存在になって桐原さん自身に気づいてもらおうって、ね」
「うん?」
つまりはこういうことだろう。
春香さんずっと藤井君の近くに居るけど、付き合ってないなんて嘘だよね→私たちでくっつけちゃおう!→ハーレムを作る→恋のライバル!
ということだろう。
……なるほどなるほど。祐樹のモテ具合、ハーレムはすべて偽物だったというわけだ。
なんというか安心した。何もないのにモテるわけないのだ。もしモテるのなら前世の私が不憫すぎて泣けてくる。
これでアイツの自慢話も聞かなくてすむと。これでこれからの生活困ることは少なくなった。
あれ、さっき桜ちゃん何人って言ったっけ。桜ちゃん含めて四人?
私の知る限り祐樹のハーレムって五人いた気がするんだけれど。
「四人でやったんだね?」
「え、うん。四人でやりました」
「誰?」
「えっと……私と後輩の朱里ちゃん、そして卯月さん、先輩の葉風さんだけど」
「……」
うん、何か一人足りない気がする。
あれは演技じゃなかったということだろうか。一番演技であって欲しかった人だったんだが。
本当に祐樹が好きであのような行動をしたということだな。
「ごめん授業始まるから……」
「あ、うんごめん」
私と祐樹が付き合ってると知られると、私はどうなってしまうのか。
……できるだけ会わない心がけをしよう。
◇
時間は経って今は昼休み。お昼も早めに食べ終わったので時間もかなり余裕がある。
そんな中私と祐樹は。
「おめでとう……遅かったわね」
「……良かった」
「無事に付き合えてよかったです!藤井先輩が王子様で桐原先輩がお姫様みたいですね!」
妙に疲れた顔をしながら祝福の言葉を伝えてくる綾乃ちゃん、葉風さん。
キラキラした目でこちらをみる朱里ちゃん。
この三人に囲まれていた。
桜ちゃんからの情報で分かってしまったらしい。女の子の情報網って怖い。
「えまってどういうこと」
「……はぁ」
隣の奴が理解していないことにため息が出る。
……少し前の私も同じような反応をしていたのだけれど。
祐樹からすると自分を好いてくれていた女の子たちが、いきなり祝福の言葉を言ってきたというところだろう。
まあ混乱するのも無理はない。
私が納得できるように説明してやろう。
「簡単に言うとハーレムは偽物だったというわけだ」
「……マジか」
「今ちょっと悔しがった?」
ハーレムを作ってても作っていなくてもムカつくやつだ。やっぱりハーレムしてる俺かっけーとしていたに違いないな。
「先輩、私は好きですよ。恋愛的ではないですが」
「……ありがとう」
後輩からフォローされる祐樹。その姿は情けない。
私の今までの鬱憤も晴れるというものだ。
それにしても、やっぱり桜ちゃんから聞いた三人は演技をしていたらしい。
言われるまで、まったく気付くことが出来なかった。なんだろう、この四人は演劇部にでも所属していたのだろうか。
「俺一つ聞きたいんだけど、花佐さんって……」
「……」
「……」
「……」
「え」
全員が黙った。……うん、まあそういうことだろう。
演技をしているみんなでも、菜依ちゃんから逃げてしまうほどだった。
あれは演技ではなくホンモノだったのだ。異物が混入したプレゼントもすべて素だ。
祐樹の気持ちが痛いほどわかってしまう。私も嘘であって欲しかった。
「……改めておめでとうございます二人とも。ぜひお幸せに。生徒会の仕事が少しですが残ってるので、私はこれで」
「……早く付き合っちゃえばよかったのよ。私もそろそろ教室に帰りますわ」
「藤井先輩、桐原先輩!これからもよろしくお願いします。……私が唯一話せる先輩なので。それでは私もこれで」
おかしい。葉風さんは仕方が無さそうだが、二人は帰る理由があったのだろうか。
次の授業の準備は……まだ時間にも余裕があるし、もう少し後からでも良い。
友達と話す……とかなら、わざわざ私たちのところへ来て話す必要がなかっただろう。
では、なぜみんな各々の場所へ戻っていったのか。
「祐樹君、ここにいたんだね?」
なんとなくだが、ものすごい圧を感じる。
今日、というかこれから会いたくないと思っていた人が、すぐ目の前に居る。
「春香さんもいると……さっきの話盗み聞きしちゃったんですけど、どういうことですか?」
「お、俺べべ別に春香と付き合ってな、ないけど?」
「……」
しまった。祐樹が菜依ちゃんの圧に押されて失言してしまった。
どう聞いても嘘にしか聞こえない。
俺は春香と付き合ってるって言っているようなものだぞ。
本当はそうなんだけれど、問題は一番バレてはいけない人にバレてしまったことだ。
「ふーん……やっぱり付き合ってるんだ」
「……まあそうだけどさ」
何の役にも立たないやつは置いておこう。今は一旦この場を切り抜けなければならない。
「……何か?」
正直言って怖い、怖すぎる。何されるか分からないんだもん。
なぜ口を利いてしまったんだ数秒前の私。
「……祐樹君は私じゃないと。なんで春香さんが?」
「告られたの私だし、私もその……好きだから」
「ふーん……」
「……」
しばらく菜依ちゃんと見つめ合う。
怖い、無言でこっち見ないで欲しい。
「……もう無理かなぁ。おめでとう春香さん」
「え??あ、……どうも」
「はぁ……これで十四人目かぁ。何がダメなんだろう……お幸せに」
何かは知らないけれど私は助かったらしい。まさか祝われるなんて思ってもなかった。
もしかして菜依ちゃんも演技をしていたとかそういうパターンなのか。
さっき菜依ちゃん十四人目って言っていたけどどういうことだろう。
まさか、ね。そんな今まで振られてきた人の数とかじゃないよね。
何がダメだったんだろうって……うん、自覚できていないからダメな気がする。
まあまあ、そんなに祐樹みたいな被害を受けている人がいるわけないだろう。
……いないよね?
もしそうだとすると菜依ちゃんは恋をしやすい体質なのだろうか。
「春香……ごめん。俺、花佐さん苦手だからさ」
「……」
何とも頼りにならない彼氏だろう。本来私ではなくお前が対処するべき問題だったのではないか。
うん、告白してきたのはそっちだし、私はそれを受け入れただけで悪くない。
やはり全ての元凶はコイツだったのだ。
もう少し早く告白してきていれば、昔の私でも流れでOKしていたかもしれないし、あの四人がハーレムメンバーになることは無かっただろうし、菜依ちゃんも素早く諦めてくれたであろう。
元は私が言い出したことだが、自分をハーレム主人公に例えたりしていたして、ハーレムを楽しんでいたし。
結局、そのハーレムはほぼ演技によって作られていたのだが。
私たちは主人公でもヒロインでもなくこの世界に無数にいる人、つまりはモブだったのだろう。
それでも。
「祐樹」
「……はい」
「いや、旦那様?」
「え」
「照れてやんの」
「は?」
一つ分かったことは、転生したら人は変わるものだということだろうか。
全部深夜テンションで書いた拙作ですが、ここまでお読みいただいてありがとうございました!
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書いてて一つ分かったことはTS娘は正義ということでした。
TS娘かわいい。