このお話はメインとなるパートの11年前からスタートします。
たきな等の主要キャラは過去編である序盤のみ登場しません。
過去編はそんなに長くする予定では無いのでこの作品はこんな雰囲気なのか、と楽しんでください。
『開始前にルールの確認だ』
入ってきた鉄の檻の中、いや檻と言うには広すぎるか。見渡せば様々な障害物。壁、岩、鉄柱……しかしどれも綺麗に整備されており、銃弾は疎か鉄球がぶつかってきても壊れはしないだろう。
そんな空間に1人ぽつんと立っている。
『赤チームは九人。いずれも現役で現場を生業とするプロだ。数々の修羅場をくぐりぬけてきた生還者。敵対するは青チーム。それはお前一人だ。お前は単独でこの九人を撃ち倒せ』
『これは模擬戦ではあるが、各々実践と心得て行動するように。使えるものは何でも使え。互いに与えられた任務は同じ、実戦で死にたくなければ殺せ』
そんな声が聞こえてくる中、俺は弾薬の入ったマガジンを1つ取り出して銃に差し込む。
「ダブルカラム……やけに小さいと思ってたけどそういうことか。まさかいきなり触ったことの無い銃を握らされるなんてさ」
SIG P226か……実弾の時を考えると軽くてこんな俺でも扱いやすいんだろうけど、今回はペイント弾、正直そんなに大きな差は無いだろう。
『期待しているぞ、蓮』
そうして戦闘開始を合図するサイレンが鳴り響いた。
「ふぅ…………集中……!」
その瞬間に走り出す。ただひたすらに人を撃つ為に。
右、クリア。
左、クリア。
音、クリア。
前ももちろん、後ろも大丈夫。
探せ、見つけろ。
そして…………
聞こえてくる。今、誰かが床を踏んだ。だったら後は見るだけ。
進行方向に銃を構え、警戒しながらそのままゆっくり音を立てずに進んでいく。視線は変えずにゆっくりと……
敵がいるのはわかってるんだ。まずは居場所を…………
「見つけた」
まずは背後の瓦礫の陰に1人。ソイツを振り向かずに撃ち抜く。
「ぐわっ!?」
そしてその左手、つまり俺から見て左後ろから2人。ソイツらの左右の腕を撃つ。そのまま間髪入れずにその2人の方へ。するとこの隙を逃さないようにと3人が俺の向いていた方向の両壁から体を半分さらけ出して撃ってくる。
「……ふっ」
息を吐くようにして障害物の陰へと飛び込み、すかさず両腕を撃った2人を拘束、そのまま頭部を射撃。
その瞬間に見える。死角から走ってくる3人が。
休む間もなく銃撃した敵の1人をその方向へ投げ捨てスライディング。走ってきた1人にそれがぶつかると俺を見失った3人が視線を動かす。
投げ捨てた人の陰になるように地を這う俺はその隙間から3人を銃撃。瞬く間に6人を撃ち抜く。
そして立ち上がるや否や前後と右から囲むように残りの3人が現れ、俺に向かって発砲してくる。
が。
「……」
それは見えてる。
中盤の3人を撃ってる時から、この3人は壁に隠れて様子を伺っていたから。これだけ長い時間見ることが出来たら弾道も予測できる。
コイツらは俺の頭なんか狙っちゃいない。
右足、左足、あと左脇腹かな。
それが分かれば後は簡単。撃たれた弾を避けるために空を舞い、その弾みに右手にいる奴に2発の弾丸を浴びせる。
そして俺が避けた事で片方にペイント弾が命中し、動揺した隙に無傷の方を撃つ。後は流れで最後の一人を撃ち抜けば……
「終了」
何度も聞き飽きた銃声が一際大きく響いた。
「ほう。凄いな彼は……齢6歳にしてもうこの強さか」
「
「なるほど。明らかに視認できない者を的確に撃ち抜けたのはそれが理由か。それに体がついてきている。正に天才と言うべきか」
「あぁリコリスの方にも才能ある者がいるようだが、こちらの方も期待ができる」
「そうだな。是非迎えよう」
「リリベルへと」
模擬戦が終了し、着替えを終えた後正式に組織の一員となった俺はとある場所で人と会えと命じられた。
勿論ある程度の内容は説明を受けたので把握している。
俺の入隊したリリベルという組織。基本的には他組織であるリコリス達と任務を臨機応変に分けられ街の治安のために人知れず犯罪者を仕留める。
だが、俺はリリベルの本隊ではなく少し特殊な部隊への配属となった。
それが先遣隊。全四つあるチームのうちの一つ“イーグル1”に配属……らしい。それらの用途は本隊突入前の確認や場合による囮、隠密作戦での少数特攻部隊等、より確実に本隊の動きをスムーズにするための行動役と言うもの。
真っ先に危険に突っ込み、味方の糧になる。と言えば聞こえはいいが、要は捨て駒のような扱いって訳だ。
上曰く、人並み以上に優れた能力を持つものしか配属しないらしいが……それもどこまで本気なのか。
なんて考えている時に、一人の男がエレベーターから降りてきた。
「あ、千堂さん! 司令が見かけたら顔を見せに来いと言っていましたよ」
「オーケー、見かけなかったことにしといてくれ」
……なんか適当な人だな。
その男は適当に言葉をあしらうと、迷うことなく俺の方へと向かってきた。
きっとこの人が会うべき人なのだろう。
「よう、新入り。俺は千堂雅人。形式上お前の上官にあたる……が、まぁ面倒臭い話は省略する。とりあえず、とっとと背中を預けられるくらいに育ってくれ、な?」
その男はどこまでも適当だった。
本来俺から挨拶すべき所だろうけど、そんな暇も与えず、なんなら歩きながら自己紹介を始めた。しかもいきなり仕事に関する説明を全て省いた。
声もどこかやる気のないような……
でも直感が確信する。
この人は、“強い”。
「よろしくお願いします。千堂隊長。お話は伺っております。本日からリリベル先遣隊“イーグル1”に配属となりました。鳴海 蓮 と申し────」
「ああいいよそんな硬っ苦しいのは。任務外の時ぐらいはもっと楽〜にしとけ」
「あ、いえしかし……」
「名前が聞けりゃそれでいいさ、大体まだ7歳のガキだろ? ちょっとお前真面目すぎるぞ」
なんてデリカシーのない人なんだ。なんなら年齢も間違えてるぞ。
「うぉー!!! もしかして噂の新人君!?」
と、その時やたらハイテンションな声が聞こえてきた。
バタバタと走ってきた男は目をかっぴらいて俺の顔を見てくる。
年は……俺よりも5つは上だろうか?
「あー、うるさいうるさい。今世界一厳しい規律を蓮に叩き込んでるんだからあっち行ってなさい、寛治君」
「へいへーい、上官殿〜」
妙に砕けた対応の寛治と呼ばれる男はちょっと残念そうにしながら口をとんがらせた。
「じゃあ後で色々話そうぜ〜! 新人君〜! じゃあな〜!」
嵐のような人だったな……
「とまぁ、そういう訳で……だ。3日後、実戦があるんだがお前には参加してもらう。内容は比較的簡単な部類には入るが……模擬戦は終えていても実戦は初めてだろ? 本来ならお前単独でしてもらいたいところだが、今回の任務は俺が同行する」
「そこでお前の能力を知っておきたい。データで色々と送られてきちゃいるが……面倒臭いのは苦手でな。そんなもん見てねぇ」
「ウチの隊員と二手に分かれて、次回任務の実戦形式で模擬戦をし、動きを見させてもらう。模擬戦の指揮はお前に任せる。思った通りに動け。出来るな?」
「……はい、わかりました」
色々と気を抜いてしまった瞬間もあったが、これはもう遊びなんかじゃない。命に関わる仕事なんだ。
真剣に、俺に出来る全てをぶつける。
全てを知ってもらう。
「よし、じゃあ早速地下へ行くぞ。もうあいつらは待ってるはずだ」
「はい!」
清々しい笑みを浮かべた千堂隊長は着いてこいと言わんばかりにその場を振り向き、エレベーターの方へと歩む。
俺は初の任務に向けての準備の為に気合いを入れ直す。
頬を叩いてまっすぐ前を。
これは俺がとある女の子達と出会い、大切なモノを見つける物語。
の11年前の記憶だ。