カミキヒカルの心の中が知りたい。

だから語りかけるHEYカミキヒカル!罪を教えて(あんたについて知りたい)

154話前後からの「ほげえ、今までの展開とずれまくるよお!」に対してカミキヒカルだけに焦点を当てれば行ける? と思ってまとめました。

アイの背負えないセリフも、私はわたしの子供を背負うから、カミキくんは残された大輝くんを背負ってあげなよ。
わたしたちは愛を確信できなかったけど、きっと子供は愛することができる、かもしれないよ、頑張ろう!みたいな気持ちで言ったと思えば、思えば、おも……やっぱつれえわ

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HEYカミキヒカル!罪を教えて

 

 やあ、ボクはカミキヒカル(神木輝)

 

 かつて劇団ララライに所属していた女神を魅了する男さ。

 なんてね。

 

 君にはちょっとボクの一人語りに付き合ってもらおう

 

 

【子供の頃はどうしていた?】

 

 見た目の良さで生きてきた母親がいたけど、色々あって亡くなってしまった。

 父は芸能界にもツテのあるおえらいさんなんだけど、クズで本妻がいながらも母やらなにやらに手を出していたみたいだ。

 

 愛人の母が生きている間は父から最低限の支援はあったみたいだけど、母が死んでからはもう禄にこちらを見てもくれなくなってしまった。

 まあ、生きていたら見ていたかと言えばそう変わらなかったと思うけど。

 

 父の関心を得たい母の意向で役者を初めて死んでからも訓練を続けてたけど、意味は結局あったのかなかったのか。

 何にせよ、子供だけで生きる生活というのは厳しい。

 

 最低限中学校は通っていたけど、場合によってはこのまま中卒もあるなあとあの頃は日々悩んでいた。

 生きるのってお金がかかるよね……ほんと。

 

 そんなボクの主な稼ぎは大人の女性からもらうお小遣いだった。

 売春と言ってもいいかもしれない。

 

 役者としての稼ぎなんてもともと低い舞台役者で更に子供じゃほとんどないようなものだ。

 むしろ衣装だ何だとこちらが払ってるくらいなものなので、まー、厳しい。

 でも、劇にやってくる客の中には成功している女性たちがいて、逆にお金をありあまらせているので、ボクみたいなのがお金を稼げるってわけだ。

 ある意味で売れない役者とパトロンを結びつける救済措置とも言えるかもね。

 

 ただ正直体を売るっていうのは心を売るみたいなもんだよね。

 女を抱いてお金をもらえるなんて羨ましいじゃないか、なんていうバカ(無理解)も多いけど、自分より遥か上の年齢の女性に好き勝手されるんだよ? 

 

 オバサンに美味しい美味しい言われながらねっとりとおしりの穴をなぶられた後にその口でキスされて嬉しそうにしなければいけないんだ。

 どう? ボクに羨ましいと思った人だけそう言ってくれ。

 

 まあ、当時のボクは誰から見ても弱者で媚を売って色んなものを削って生きてきていた。

 愛ってなんだろうって本気で悩んでいた。

 未来も不透明だし、きっとボクはなんで生まれたのかもわからず死ぬんだろうな。

 そんな表面だけ見れば中学生らしく悩んでいた。

 

 そんなときに出会えたのがアイだった。

 星野アイ。

 女神のような美しさの彼女はそれでもボクと同じく愛を知らない子供で、だからこそお互いに惹かれ合ったんだ。

 

 彼女は1歳しか年が違わないけど、ボクと同じで、彼女と一緒ならどんな苦しみにだって耐えられる。

 真っ暗な世界に小さくても眩しい一番星が輝いたような、そんな幸福をボクは手にしたんだ。ああ、幸せになれる。ボクはきっとアイ()を手にして幸せになれるんだ! 

 

 そう信じていた。

 

 でも、うまくいかなかった。

 

 ボクに貢いでいて、旦那に黙って子供すら作った姫川愛理。

 彼女がアイに突っかかるようになったんだ。カミキに手を出すな! って。

 

 もしも、それで本当にアイがボクを避けるようになったらどうするんだ! 

 ボクは、……ボクはもうその可能性を考えるだけでいてもたってもいられなくなって、どうにか彼女を遠ざける方法がないか考えたうえで、最悪の手段を実施してしまった。

 

 夫にチクったんだ。

 

 お前の妻は子供に手を出している。お前の愛している子供はあなたの子供ではない。

 

 夫の清十郎さんは怒り狂って姫川愛理を殺してしまった。

 

 心中ってなっているけど、どっちがどっちを殺したかなんて明白だった。

 彼女がアイにちょっかいをかけなくなればいい、そのくらいの気持ちだったのに。

 

 金田一さんに二人の命を背負っていけ(二人の死の責任はお前にある)と言われてボクは首を括られたような苦しさを覚えるようになった。

 

 ああ、ああ、命の価値()はなんて重いのだろう。

 

 それでもボクにはアイがいる。

 二人でならこの重さもなんてことないよね……? 

 

 でも世の中はボクの思い通りになんてなにもならないんだ。

 

 **

 

 

【それで?】

 

 その後にアイに振られてしまった。

 

 原因はわかっている。ボクがアイに命の価値を背負ってもらおう(罪を被せよう)としたからだろう。無罪の無垢な女神にボクは重荷を預けようとしたんだ。

 お前が背負っていけと言われたのに。

 

 それでも彼女は自分の子供の分くらいは背負っていってあげるよとこれ以上命の価値を背負わなくていいようにしてくれたんだ。

 優しいよね。はは。でもボクは一緒にいてほしかった……。

 

 ボクにとってアイは(恋人)をやめた。

 きれいで美しい女神(アイドル)に戻っていった。

 

 拠り所を失ったボクに残されたのはファン(信者)としてアイドル(女神)崇拝する(すがる)だけだ。

 

 アイ、君はいつだっていつまでも美しい。

 

 **

 

 

【アイと別れた後は?】

 

 アイを崇拝する日々のなかで、同じファン(信者)の友達ができたんだ。

 リョースケくんとB小町のニノだ。

 

 二人はただのファンと違う、なにか命の価値()を背負う同士であり、女神(アイドル)に捧げ物をした同士でもある……気がしていた。聞いたわけじゃないけどね。

 

 なにせふたりともアイに双子がいることを知っていて、それでもファン(信者)なのだ。

 そんじょそこらの木端とは違う。

 

 秘密を知る同士。それでも愛している(崇拝している)同士。

 仲良くなれないわけがなかった。

 

 ボクは二人の信仰心を信じていた。

 

 だから、彼女から子供に会わないかと言われたときも一緒に飲んでいたこともあって口が軽くなっていた。

 

「あはは、今日アイから電話があって、子どもと会わないか、あ、よりを戻す気はないって電話もらっちゃってさ。別によりを戻そうなんて思っていたわけじゃない。なにせボクも今となってはアイのファンだからさ」

 

 でも、最後の一線を切られたみたいで悲しいのは確かだった。

 あの頃の二人に戻りたいと思う気持ちは今もないわけではないのだから。

 胸を苦しめる命の重み()は今も変わらないままだから。

 

「なあカミキ、俺がアイの本心を確かめてやるよ」

 

 ニノとなにか内緒話をしていたリョースケくんは頼もしかった。

 ボクは友情という彼ら以外には感じたことのない温かいものを信じた。

 

 ファンに押しかけられたらアイは怖がるだろうか。

 

 でもまあ、彼はすべてを知ったうえで受け入れた(信者)だ。

 アイを困らせることはしないだろう。

 でも怖がるかな。少しくらいは困らせたい。

 こちらを振り向かせたくて悪戯をする子どものような気持ち。

 

 子供。

 子供か。

 

 子供に会わないかと言われても、最初にアイに会わないかと聞こえて、子供が見えないボクには到底愛せないだろう。

 これ以上命を背負えないボクには。

 

 **

 

 

【アイが死んでどう思った?】

 

 アイがしんだ。

 

 そう、殺されてしまったんだよね。

 アイの死を知った瞬間、世界がきしんだような気がしたよ。

 

 な、なぜ? 

 アイがなんで死ぬんだ? 

 リョースケくんがアイを殺しただって? そんな馬鹿な。

 

 混乱するボクにニノは言った。

 

「リョースケにはドームでアイはアイドルを辞めるつもりみたいって言ったの。あなたがアイがアイドルをやめないようにアイを惑わす産婦人科医を殺したのにねって」

 

 ニノが語った計画を聞いてボクは初めてリョースケはボクを元彼だと思っても子どもの父親だと思ってなかった理由を知った。

 産婦人科医を双子の親だと思ったからボクをただの元彼と思っていたのか。

 どうりで話がすれ違う時があるわけだ。

 知られていたらそれこそ雨宮医師のように殺されていたかもしれない。

 ボクの感じていた友情は偽りだらけだったというわけだ。

 

「な、なぜだ? 君だってアイのファンだろう?」

「ええ。でもアイは子どものためって色んな仕事に手を伸ばして、アイドルとしてはどんどん仕事をしなくなっている。いつB小町が解散するかわかったもんじゃない。彼女は子供(お金)のために女優になってしまう。私の完璧で究極のアイドルが、私の隣にいてくれなくなっちゃう! B小町だけが私とアイの絆なのに! だったらB小町が解散する前にアイには死んでほしいの。永遠に私のB小町のアイのままで」

「そんな……」

「アイドルをやめて女優として歩んでいくということは私からどんどん遠くに行くってこと。でもアイドルのまま、B小町のまま死ぬってことは近づきも遠ざかりもしないってこと。私との距離は隣のままってことよ。……ね、カミキさん。そうでしょ? 私の共犯者さん」

「ボ、ボクは……」

「あなたがアイの家を教えてくれたから、あなたが会いに来てくれるかもしれないと思ったからリョースケの前にドアは開いたのよ。共犯と言わずになんというの?」

「そ、ん……な……?」

 

 ああ、ボクはアイの死(命の重さ)まで背負うことになってしまった。

 共犯として半分を。

 

 苦しい。命の重さに潰れてしまいそうだった。

 いっそ潰れてしまいたい。

 なのにボクの体は中途半端に潰れられずに生きている。

 

 ニノはそれからもアイのように単独でドームライブをするような巨大な才能の持ち主を見つけては始末をしていた。

 

 その偉業はアイのもの、B小町のものだからといって。

 ボクはそれを知りながらも警察に言うことができない。

 ボクは彼女の共犯だからだ。罪があるからだ。

 

 **

 

 

【アイの子どもたちをどう思っているか】

 

 親がなくとも子は育つとはよく言ったものだ。

 けれど、子供の頃に彼女が愛情を注いだからだろう、アイの子どもたちはとてもまばゆく見える。兄のアクアが見た目がボクに似ているせいでボクとアイが隣を歩いていた頃を思い出す。

 罪を抱いていないはずの彼に自分がダブるのは不思議だったが、だからこそ彼と自分が重なることに何処か喜びを感じたよ。そんなふうに思われてもアクアは迷惑だろうけどね。

 

 お墓参りも欠かしていないようだしアイの子はとても良い子に育っているようだ。

 

 

 **

 

 

【15年の嘘について】

 

 この話をもってきた鏑木さんのプロットにボクは驚くしかなかった。

 プロットから感じる愛を受け取った。

 ボクを断罪してくれる(救ってくれる)映画だった。

 

 ああ、なんて素敵なことだろう。

 女神を殺してしまったボクを女神の子達が復讐してくれるのだから。

 ボクは壱にもなくスポンサーとして手を上げた。

 

 ああ、ようやく終わりの時が来るのだ。

 

 同時にうろたえたのはニノだった。

 

 妨害目的なのかそれともアイを演るのにふさわしくないと感じたのかニノは片寄ゆらを殺してしまった。今回も彼女がどこにいるかの場所のリーク役。

 罪を更に重ねてしまった。最近はどこか重なったばずの命の重みが感じられない気がする。本当にちゃんと増しているのだろうか。

 いや、ましているはずだ。ほら、ニノに突き飛ばされた彼女を見ろ。

 

「人殺し……」

 

 ボクを恨む目。そんな目で見られたのは初めてだった。

 ボクは嗤った。

 

 

 **

 

 最近ニノに落ち着きがない。

 彼女からすればすべてが明らかになれば自分はB小町のニノではなく、犯罪者のニノになる。アイを殺したニノになればもう隣りにいるとは言えなくなる。

 

 だからニノは先方からの見学の誘いに乗ることにした。

 

「アレはアイじゃないわ。全く別物。猿真似にもなってないわ。やっぱり究極で完璧なアイドルはこの世でアイだけ」

 

 あの映画では娘のルビーがカミキを許すか許さないかが問われる程度のどうでもいい映画だと彼女は笑う。

 この世で最もアイを愛しているのか、最大の信者の正体を暴くものではなかった。

 

 帰るわね。

 一人で帰ってしまった彼女を追う気はなかった。

 

 

 **

 

 

【アイのラブレターを見てどう思った?】

 

「アイがボクを愛していた……?」

 

 胸を切り刻むラブレターだったよ。

 女神(アイドル)になったはずのアイは変わらずボクを想っていたのだと。

 

「嘘だ……」

 

 でもアイ自身のDVDが証拠だった。

 

 アイは【愛していると言えなくてもボクを愛していた】

 全てはボクが潰されてしまわないための嘘だった。

 

 嘘は(アイ)なんだよ

 

 いつか教えてくれた彼女のお気に入りのフレーズが頭に浮かぶ。

 自分は何をしていたのだろうか。

 彼女の()ホント()だと信じてしまった。

 

 勝手にアイドル(偶像)に変わってしまったと信じて、双子というアイドルでなくても一人で育てるのには大変な状況に放り投げてしまった。

 

 イチゴプロがアイを愛していたからこそああなったけど、普通であれば事務所を追い出されてそれこそ夜の仕事でもやりながらじゃないと生きていけない状況だったはずだ。

 

 なのに自分と残された自分の子供を大事にしてね(君と子供を背負えない)と言ってくれていた。

 だけどボクはその思いを裏切って大輝が孤児院に行くのをなんとも思わなかった。

 

 アイはボクを愛してくれていたのに、ボクはボクだけを愛していた。

 

 自分の重みだけを気にして、相手に背負わそうとだけしていた。

 背負ってくれないのならと勝手に形を変えてすがる先にした。

 可愛かったのは自分だけだったんだよ。

 

 ああ、ああ……。

 

 確かにあの時アイはボクに見返りのない愛をくれていたんだと思うよ。

 

 アイの()に気づけていればボクはアイと信者(ファン)女神(アイドル)ではなく、ヨリを模として恋人同士で要られただろうか。

 

 ボクの背にあった価値とごまかしていたものはすべて罪だった。

 

 アイの愛を届けてくれたボクとアイの子供。

 彼らにこれ以上何も背負わせないようにしようと誓ったよ。

 

 だからボクはすべてを終わらせるため、ニノの元へと行ったんだ。

 

 その後のことはわかるだろ? 

 翌日、かつてアイドルだった一人の女が死に、すべての罪をようやく理解して出頭した男がいたのさ。

 

 どうかな、アクア。

 もうきっと君と会うこともないだろうけど。

 

 今更だけど、父親として愛する人ができたら大切にね。

 

 

【ああ、わかった】

 

 

 


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