晩夏一香   作:悲しみ

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プロローグ
序の前


 

 

夜の匂いがする。

燻んだ冷たさが肌を撫ぜ、世界と自分との境界が明確になっていく。

 

これは良い。

 

自分の一挙手一投足が、末端までくっきりと把握できる。あまりにも低く、腰を落とす。弓でも放つかのように剣を側部に引いた。歪な構えだと分かっている。

 

しかしこの構えで俺はかつて貫いた。針の穴なんかとは比べ物にならないほどに、緻密で唯一の孔を。

忘れようがない十年前の記憶は、むしろ日を経るごとに濃く、重く、俺の脳裏に染みていく。

思い出すだけでいい。あの日をなぞるだけでいい。

 

 

 

 

 

 

 

まだ剣の重みさえ億劫に感じる歳だった。眼前に立つ男にとって俺を殺すことはあまりにも簡単なことで、俺は正しくまな板の鯉だった。

 

そのはずだった。

 

無意識のうちに手を伸ばした。その先に在った、ただの棒切れを両手で握った。自己流と呼ぶことすらおこがましい、ただ切先を相手へ向けただけの戦闘意志。

 

抗おうとする俺に男は驚いたように目を見開いた。相手をしてやろう、とでも言いたげに、奴もまた長い杖のようなものを構える。瞬間、男の姿は掻き消えた。そう感じるほどの圧倒的な速度。俺の顎を()ね飛ばそうと杖は唸りを上げる。

 

だが俺はぎりぎりまで、1インチたりとも動かなかった。

 

迫る凶撃、早まる息遣い、刹那に見据えていたのは相手の姿では無く。

ただ手中、俺は、その場限りの相棒の切先を眺めていた。相手よりも動き出すのは明らかに遅かった。なぜか先に懐に入ったのは俺の身体の方で、そこから先はあまりにも一瞬のこと。

まるで重力が真横に働いたかのような、我が身を()()圧倒的な高揚感のままに俺は棒切れを前へと突き出して!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んだ」

 

放った突き()()()は、あの日の少年(おれ)が纏う輝きの足元にも及ばない。

想い出の中の男の凶撃に、今日も俺は顎を打ち砕かれて敗北を喫した。ため息をつきたくなる気持ちをぐっと飲み込む。欠かさず行ってきたシミュレーションは、いつになっても進歩する余地を見せない。

 

突きの構えを解いて真剣から手を離す。安価な鋳物(いもの)のスモールソードだ。しかし決して玩具(おもちゃ)ということは無い。俺の刺突によって訓練模型に刺さったそれは、真横の状態で滑稽に浮いている。

 

「…こりゃまた、弁償だな」

 

そう口に出したのは、剣先が模型の心棒まで届いていることを察したからだ。これではいつ模型が真ん中からへし折れるか分からない。

手痛い出費ではあるが、もうそんなものにはすっかり慣れていた。今まででいくつ壊したかも覚えていないほどだし。

 

自分への呆れが契機となって、身体から一気に力が抜けた。

 

「あっ」

 

ぱきん。

咄嗟に身体を支えようと握ったのは、人型模型に刺さったまんまのスモールソード。嫌な音が響くと同時に俺は重力にも敗北した。……いやいや、まさか。いくら側面に無理な力がかかったからって、そんな踏んだり蹴ったりなこと。

右手に目をやると、根本で折れた剣の柄が。

 

「…逆に、この長さだったら成功したりしないか?」

 

待て、落ち着け俺。それはもう試してみたし、体勢を見事に崩して大変なことになったじゃないか。

しぶしぶ諦めて立ち上がる。さあ、壊した道具の片付けを始めよう。折れた剣を布に包みながらも、頭の中では今日の失敗とあの日の一撃を絶え間なく比較している。

 

 

俺には才能が無い。

正確には、無くなったんだと思っている。そうじゃないと十年前の俺が放った突きの美を説明できないし、昔は有ったと信じている限りは、俺は折れることは無いだろうから。

 

今後の人生を憂うなら、この剣のように折れて、さっぱり諦めた方が良いのかもしれない。でもそれは絶対に不可能だ。

 

幼い自分が放った眩しすぎる光。あの日から、俺はそれ以外何も見えない。

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

六月の大英国(ブライテン)は日が長い。

早くも太陽が昇る午前5時45分。じわじわと熱を帯びていく外気を肌に感じながら、俺は市内を一人歩いていた。

目的地はもちろん『傷の塔』。300フィートにも迫るその時計塔は、離れた所から望んでも確固たる存在感を放っている。

 

世界中にある『傷の塔』の中でも、この国の塔は有数の規模を誇る。かつては世界最大級の『塔』であった、らしい。

 

他国で『不逝(イモータル) 』が管轄する塔が発足するまでの話だが。

 

 

 

 

 

不逝(イモータル)

その名の通り、死を超越した絶対的な存在。彼らは決して老いず、死せず、朽ちることは無い。見た目は人間と変わらない彼らは有史以前、人間に紛れて暮らしていたという噂であるが…

 

昨今の情勢を見ると、俺はその事を信じられない。今や不逝は、

 

ある場所では巨大宗教の現人神(あらひとがみ)として。

ある場所では国の最高権力として。

ある場所では厄災の権化として。

 

世界を握っていると言っても過言では無いからだ。

 

そんな人間の上位互換みたいな存在が率いているのだから、所詮は定命がトップである大英国(ブライテン)の『塔』が劣るのは仕方のないことだろう。

田舎者根性が抜けていない俺からすれば、この国の塔でさえもビビるくらいの大きさであるが。

 

 

塔の入り口に辿り着くと同時に、6時を示す鐘が鳴った。もうそんな時間か。焦る気持ちが湧くけれど、それを表に出さないようにあくまでゆっくりと塔の扉を開ける。

 

足を踏み入れた途端に、微かな鉄の匂いが鼻をついた。

武器の匂い。『塔士』にとって最も親しんだ匂い。俺程度の実力で塔士を語るのはいかほどか、という苦言には耳を塞ぐ。

 

早朝の受付は閑散としており、人の数は数えるほどしかいない。占めた。狙い通りの現状に胸中ほくそ笑んで、カウンターへと歩み寄る。

 

「おはようございます、マノ。今日もお早いですね」

 

俺を迎えたのはいつもの顔だ。その受付嬢は、変わらず無表情を顔に貼り付けていた。彼女の制服に乱れは一切無く、第一ボタンまでキッチリと留められている。歪みない綺麗な立ち姿に、俺の背筋も思わず伸びる。

 

「…そういうリーシアこそ、当たり前のように働いてるよな。いつ来ても居る気がするんだけど」

「朝と夜に勤惰(シフト)を入れて、日中に休んでおりますので」

 

淡々と語るリーシアに訝しげな視線を送った。

「…なんですか」と細まった目にも怯まない。俺は彼女がワーカホリックではないかと疑っている。だって本当に何時(いつ)も会うのだ。

 

「それで、本日のご用件は?」

 

すぐさま仕事モードに戻ったリーシア。当然聞かれるその言葉に俺は体を硬直させて、

 

「……これです」

 

じゃら、と、彼女の前にそこそこの数の銀貨を出した。

昨日壊した訓練用模型の弁償代である。これこそ俺が早朝に塔を訪ねた理由の一つ。だって18にもなって、模型を壊して弁償しているところを知り合いに見られるのは恥ずかしいし。

 

「はい。確かに」

 

リーシアは慣れた手つきで銀貨を数え終わると、机の引き出しを開けて紙を取り出した。その紙の正体は破損道具の発注願いで間違いないだろう。

 

「…話は変わるんだけど。ちょっと家で作りすぎちゃってさ。よかったらこれ、受け取ってくれないか?」

 

彼女が用紙を書き終えて一息ついた隙を狙って、俺は手に持った小包を彼女に差し出した。中は自作のキャロットケーキである。

包みから漏れ出る甘い香り。それに気づいたリーシアは初めて無表情を崩した。この感情は、呆れだ。

 

「発注も私たちの仕事ですので、マノが申し訳なく思う必要はありませんよ?」

 

隠したつもりの後ろめたさも彼女にはバレバレで、どう足掻いても格好がつかない。

 

「…うん。毎回スイーツってのは芸が無いよな。これは俺の夜食に——」

「それはそうとして折角作ってくださったのなら頂きます」

 

下げようとした手から、目にも止まらぬ所作で小包がリーシアの手中に移る。仮にも毎日訓練をしている身なのに、その動きがブレて見えた。

 

「そ、そうか?…ありがとう、嬉しいよ」

ずっしりですね…ふふ

「けっこう量があるから、良ければ同僚の人たちにも分けてくれ」

「……………はい」

 

要件は済ませた。そろそろ職場で仕込みが始める時間帯だ。弁償代の痛手を補うためにも、きびきび働かねば———

 

「あ」

 

別れの挨拶の寸前、リーシアは俺を呼び止める。

 

「最近、市内での『擬き(イミタリ)』の発生事例が増えています。マノ、奴らと出会ったら無理せずすぐに逃げてくださいね」

「!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界には、人間を超越した存在、不逝(イモータル) が存在する。

彼らは決して死なない。

しかし、永遠の命を得たのは彼らだけでは無かった。

 

それが「擬き(イミタリ)」。黒黒とした不定形の体を持つ奴らは度々、「不逝のなり損ない」と言われる。

イミタリは単体では知性を持たない。奴らの本能はただ一つ。人を襲い、その身体を乗っ取ること。

 

人々が武器を手に取ったのも、『傷の塔』が発足したのも。全て擬き(イミタリ)に抗うためである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イミタリの被害が最も多いのは、民間人ではなく(おご)った塔士です。…マノに限ってあり得ないと分かっていますが、連絡は義務ですので」

 

本来、塔士は擬き(イミタリ)に抗うために武器を取る。

 

奴らは死なないが、不逝(イモータル) と違って細切れにする事で一時的に無害化できる。完全に滅する方法は確立されておらずイタチごっこの争いであるが、現状ではこれが最善だ。

 

 

一方で、俺はと言うと。

正直、イミタリには微塵も興味が湧かない。仮にも塔士になっておいてこんな主張をするのもいかがなものかと思うが、結局俺が武器を握る理由は一つ。究極の突きをもう一度放つ事。それだけだから。

 

実戦をこなすことで新たな光明が差す、という意見は一理ある。しかし一時の欲に流されるほど俺の理性は溶けていない。

あの日の一撃をなぞるまで俺は絶対に死ねない、死にたくない。その代わりその突きを成せたなら、俺はどうなっても構わない。だからせめて、それまでは。

 

「安心してくれ。逃げ足には自信があるさ」

 

自慢げに胸を張る。リーシアは少し複雑そうな顔で、それでも苦笑しようとしていた。

 

「今晩も、訓練場は利用しますか?」

「そうだな」

「分かりました、手配をしておきます。いってらっしゃいませ、マノ」

 

感謝の言葉を一つ残し、別れの挨拶には親指を立てて応じる。……先ほど、強さには興味が無いと思ったばかりであるが。

受付嬢に見送られて向かう場所が、戦場では無くただの職場(レストラン)であることは、非常に格好がつかないなと思う。

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

塔を出て向かうは街の中心部。道沿いのストリート・マーケットは既に中々の賑わいを見せており、穏やかながらも棘のある値段交渉の会話が耳を打つ。

 

青果や骨董が並ぶ中でひときわ目を惹くのは、やはり道にずらりと並べられた塔士向けの武器の数々。ジャンク品の入り交じる玉石混合のラインナップであるが、稀にこの場所から大家(たいか)による傑作が———

 

「マーノっ!」

 

しっとりした手が、俺の首を包み込んだ。

…昔は、分かりやすく肩を跳ねさせて間抜けな悲鳴をあげていた。急に背後から急所を掴まれたら誰だってそうなる、と言い訳させてほしい。

 

「…もうぴくりとも反応しない。つまんないの」

 

今やすっかり慣れたことで面白い反応をしなくなった俺を見て、不意打ちの犯人はぶー垂れながら俺の首から手を離した。

 

「…ケセラ。マーケットに何か目当てでも?」

「んー…強いて言うなら、マノが歩いてるのを見つけたから、かな」

 

振り向いた先に居たのは予想通り、踊り子のような衣装に身を包んだ少女の姿。

大英国(ブライテン)では珍しい褐色の肌も、情感たっぷりの決め顔も。彼女———ケセラの纏う雰囲気によく合っていた。

 

「…ケセラの目に留まるなんて光栄だなー」

「なんてわざとらしい棒読み… そんな照れ隠ししなくてもいいのに〜! ほら、「朝からケセラさんと会えて嬉しいです」って正直に言いなよ!」

 

けらけらと笑いながら背中を叩いてくる。今日はいつもよりテンションが高くて…その。ぶっちゃけちょっとウザい。

 

「朝からお前と会うのはちょっとカロリーが高いって…」

「もう、素直じゃないんだから。マノはもっとわたしに感謝するべきだと思うよ?こんなにマノに構ってあげてるの、わたしくらいしか居ないんだから」

「……それは、そうかも」

「え」

 

そればっかりはケセラの言う通りである。先にも述べた通り、塔士とは擬き(イミタリ)の討伐を生業とする、紛れもない戦士である。対して俺は、たった一つの技を求めて訓練を続けているだけ。

格上の塔士に助言を乞うことは度々ある。しかし仲間と背中を合わせて戦ったり、技術を競い合ったりの経験が無いに等しい俺は。

端的に言うと、友達といえる人がゼロに近かった。

 

「ケセラ、こんな俺と仲良くしてくれてありがとう」

 

紛れもない本心でそう言った。するとケセラは口をぽかんと開けて、無言でこちらに視線を向けている。

 

「……ほんとにわたし以外、仲の良い子いないの?」

「目的無しに俺に話しかけてくれるのは、少なくともケセラだけだな」

「………ふぅん」

 

朱色の瞳が、俺の顔を覗き込む。浅黒い肌が背景色となって、その朱色はますます鮮やかに映えて見えた。

 

「なんだよ」

「いーや、なんにも?」

 

ぼっちな俺を煽ることもなく、慰めることもなく。もうこの話題は飽きたとばかりに、ケセラは俺の手を引いて歩き出す。

猫みたいな奴だ、と思う。しかし彼女の奔放さは今に始まったことではないので、敢えて追及することは無い。

 

「お昼に模擬戦しようよ。マノが負けたらわたしにもケーキ作ってね」

 

突然の話題転換に面食らう。ケーキと言われて思い出すのは、先ほどリーシアに渡した手作りの物。頭の中を疑問符が埋めた。まず一番気になるのは、

 

「…なんでケーキのこと知ってんだよ」

「秘密っ!」

 

一蹴である。

ケセラの「秘密」はマジの秘密だ。謎の威圧感に(おのの)いて、しぶしぶ頷くことしかできなかった。

そんな俺を一瞥して、機嫌よく鼻歌を歌っているケセラ。何がそんなに嬉しいのだろうか。

 

「マノもわたしと同じ武器使えばいいのに。マイナー武器仲間が増えるのは嬉しいから、特別にコツとか教えてあげるよ! そしたら塔での階級も上がるんじゃないかな?」

「あー、ケセラ。話を進めてる所悪いんだが…」

 

俺は日中、レストランで仕事をしている。それも2回の賄いが出る場所だ。加えて塔からのアクセスが良く、空き時間は訓練に没頭したい俺にとって非常に都合のいい職場。

今日は平日。例外なく出勤日である。

 

「また仕事で断るのー?このケセラちゃんが頼んでるのに?」

「俺はケセラと違って擬き(イミタリ)討伐なんて出来ないから、こうやって稼がないと駄目なんだよ」

 

不満げに頬を膨らませるケセラ。しかし突然何かを思いついたかのように目を見開くと、彼女は意地悪な笑みを浮かべて指を二本立てた。

 

「…今日一日、わたしの言うことを聞く。これでマノの日給の2倍払ってあげる」

「!?」

 

とんでもないことを言い出しやがった。

ケセラの模擬戦に付き合って、彼女にケーキを振る舞うだけで金が貰える、と。格上である彼女との模擬戦はこちらとしても学ぶことが多く、俺から頼んで戦うこともあるくらいだ。それに、ケーキ作りなんて仕事と比べたらお遊びの楽さである。

 

って、何を揺らいでるんだ俺は。

 

「そんな無駄な金の使い方はおすすめしないぞ」

「お金のことなら心配いらないよ!これでもわたし、マノより稼いでるから」

「ぐふっ」

 

突然俺を襲った、年下に実力だけでなく収入も負けているという明確な事実。先の不意打ちより全然効く。

 

「…また後日埋め合わせするから、今日は見逃してくれないか?」

 

それでも俺はその申し出に対し辞退を選んだ。

当日連絡の欠席は店に迷惑がかかるし、補填として休日出勤しなければならない。

訓練の時間が減ってしまう、それだけは避けたかった。

 

やんわりとした言葉、それでも明確な拒絶の意志に充てられて。突然ケセラはしおらしく顔を俯かせた。

ここまで弱々しい彼女の態度を、俺は今まで見たことが無かった。

 

「…わたしより、仕事の方が大事?」

「いっ!いやいや、そんな事は無い! こんな俺に構ってくれて本当にありがたく思ってる!ただちゃんと予定を立ててだな…!」

 

ケセラにしっかりと向き直り、言い訳するかのように言葉を紡ぐ。彼女はふるふると震えている。まじか俺女の子泣かせたのか、と思った瞬間。

 

彼女は堪えきれずに吹き出した。

 

「んっ、ふふ…流石マノ。打てば響くね」

「おまっ——!」

 

やられた。

彼女の目に涙なんぞある訳がなく。朱色の瞳はニヤニヤと歪んでいる。

ケセラへの苦言より自分への呆れが(まさ)って、漏れたのは疲れたようなため息だけだった。

 

「前言撤回。マノほど素直な人はいないよ!」

 

後ろに手を組んで、満面の笑みである。踊り子然としたケセラの衣装が勝ち誇るように揺れている。

彼女の言う通り()()に両手を上げて敗北の意を示すと、ケセラは心底嬉しそうに俺の頬を突いた。

 

その表情に目を奪われた。本当に無垢で、楽しそうな笑顔だ。

こんな風に、何に対しても真っ直ぐだから。ケセラが武器を振るう姿はあんなにも魅力的なのだろうか。

 

あれこれ悩むことはせず、彼女のようにひたむきに生きれば、俺も夢へと近づけるだろうか。

 

「模擬戦はまた今度。約束だからね? それじゃ、またね!」

 

彼女は今を生きている。前を見ている。過去ばかり見ている俺が本来追うべき背中。

 

ケセラに手を振り返して別れる。元気をお裾分けしてもらった気分になって、ぎゅっと拳に力を込めた。

 





マノ
主人公。過去に放った突きを再現することが生きがいな訓練狂い。自分に合った武器が見つからず、頻繁に取っ替え引っ替えしている。
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