カーシュナー一行が≪霊峰・咲耶≫から持ち帰った情報は、各組織を代表する竜人族の老人たちを仰天させた。
五大老に限らず、チヅルに始まる竜人族の次代を担う世代も、この報告に目を丸くする。
第一次調査団の参加者全員に情報が公開され、興奮した各団員が作業の手を止めて互いに語り合い始めてしまったため、一時全ての活動が停止する事態にまで発展した。
≪霊峰・咲耶≫は一躍注目の狩場となったが、協議の結果狩場としては閉鎖されることになり、保護区として今後はハンターズギルドに厳重に管理されることになった。
≪不死の心臓≫に関しては、発見され次第、≪霊峰・咲耶≫へ送られることになった。王立古生物書士隊と古龍観測所としては、研究対象として非常に未練があったが、仮に研究の結果その仕組みが解明され、複製が可能となった場合、その技術を手にした東西シュレイド王家が世界に与える影響を考慮し、未練を断ち切った。大き過ぎる力に溺れて暴走するのは考えるまでもなくわかることだったからだ。
南の大陸、第一大陸でのクエストを終えたカーシュナーたちは、第二大陸の調査隊に志願した。
第一大陸の足場固めをしている段階で、第二大陸を調査する必要性は低かった。ギルドの支援体制は皆無に等しく、≪鉱山都市≫が無数のモンスターに包囲された時のように、危機的状況に陥ったとしても、これを知り、救助体制を整えるようなことは出来ない。
リスクばかりが高く、得られるものは、人的資源の都合上現在活用することが出来ない情報のみである。それでも知りたいという好奇心は、カーシュナーたちばかりではなく、第一次調査に参加した全ての者に共通する抑え難い欲求ではあったが、無秩序な探索は結局全体的な調査を遅らせる結果を招くことになる。
五大老に加え、主だった実力者で協議した結果、特選調査隊を結成し、一定の成果や調査対象を定めず、自由に調査を行うことが決定した。なまじ成果を期待すると、無理をしかねないからだ。特選調査隊のメンバーは、カーシュナー一行をベースに、基本無所属の最強ハンターである赤玲と、伝説の鍛冶職人の弟子であるレノ、チヅルの船の船医の3人が加わるだけの小さなキャラバンとなった。
責任者としてギルドマスターが同行すると駄々をこね、これを受けた他の老人たちが自分こそ責任者に相応しいと言い出したため、おおいにもめたが、カーシュナーに諭され引き下がった。その影響力は、もはや南の大陸の最高権力者と言って差し支えないレベルに達している。
バルバレに集うキャラバンのような特殊機能を備えた車が用意され、カーシュナーたちは出発した。これもまた、多くの職人が仕事を放りだしてカーシュナーのためにと製造された新車揃いである。
一行は海路を使わず、陸路にて第一大陸と第二大陸が最も接近する地点を目指した。船を使わず移動したのはキャラバンの運転操作に慣れるためもあったが、第一大陸と第二大陸との間に広がる≪海峡≫を根城とする強力モンスターが存在したためでもあった。
このモンスターは、白い獣人がギルドマスターらに警告を発した4種類のモンスターの最後の1種で、つい最近まで北の海域から海底大地震の影響で移動してきたナバルデウス級の大海竜や古龍種を相手に縄張り争いを繰り広げていた。
あまりにも危険な海域のため、撃龍船でも無事に切り抜けるのは難しいと判断されて航行を禁止されていた海域であった。
現在も航行は禁止されているため、船を使って第一大陸から第二大陸へ移動しようと考えた場合、縄張りを大きく迂回する必要がある。安全を考えれば単に迂回すればすむ話なのだが、第二大陸に調査隊を派遣するとなれば、いざというときに迅速に大陸間を行き来できなければ、救助隊の派遣など、急を要する事態に対応が出来ない。
そこで、調査隊派遣に懐疑的であったギルドマスターが、第二大陸への調査派遣を図る最終審査として、≪海峡≫の開放を目的とした討伐クエストを発注したのであった。キャラバンに同行する赤玲はクエストには同行せず、臨時のハンターズギルド監察員として、クエストの成否を判断することになっている。
「≪海峡≫の覇者が代わることを、思い知らせてきな!」
とても監察員とは思えない赤玲の言葉に気合を注入されて、カーシュナーたちは≪海峡≫の覇者、≪獄海竜≫(ゴクカイリュウ)を討伐するために、≪海峡≫へと身を躍らせた。
≪獄海竜≫は≪冥海竜≫ラギアクルス希少種と共通する生態が多く、第一大陸では非常に珍しい≪龍属性≫と、G級モンスターすら比較にならない猛毒を合わせ持つ巨大な海竜である。属性攻撃が強力にもかかわらず、肉弾戦を好み、ラギアクルス希少種との大きな違いである強靭なアゴで敵対するモンスターを噛み砕いて退ける好戦的なモンスターだ。
ナバルデウスのものと思われる角が、猛毒に汚染され、噛み砕かれた状態で近くの海岸にうちあげられていたことがあり、≪獄海竜≫の仕業と考えられている。
カーシュナーたちが南の大陸で初めて捕獲した巨大な水生甲虫と戦い、長い脚の一本をもぎ取ったのも、解剖調査と白い獣人の鑑定の結果、≪獄海竜≫であると判断されていた。
この強力なモンスターを、カーシュナーたちは無事討伐し、≪海峡≫の航行権を手に入れて見せた。カーシュナー可愛さのあまり、つい過保護になってしまう竜人族の老人たちも、この結果を受け、ようやくその突出した実力を正当に認めたのであった。
≪海峡≫を平定し、安全な航路を確保したカーシュナー一行は、水上走行機能を持つキャラバン特殊車両で海峡を渡った。
渡った結果思い知ったことは、比較的波が穏やかな時以外、水上走行は避けた方がいいという事実だった。
波にもまれてめちゃくちゃになった室内と、各特殊車両の機関に発生したトラブルを解消するために、カーシュナーたちは突貫で復旧作業に追われることになった。
拠点やベースキャンプなどが存在しない第二大陸では、ゆっくり休むことが出来る場所など存在しないからだ。
応援の職人たちのおかげでなんとか1週間で復旧することが出来たが、今後は全て自分たちで行わなくてはならない。カーシュナーたちは懸命に技術を習得していった。
第二大陸は第一大陸と違い、大陸の大半に繁殖しているのは飛竜種と鳥竜種、そして、その捕食対象となる草食種であった。大型甲虫種は大陸の北部に帯状に広がる≪灼熱の砂原≫と、東部の一部に飛行能力の高い甲虫種が見られるだけで、環境としては北の大陸にかなり近い。
第一大陸が土壌の豊かな土地であったのに対し、第二大陸は、荒涼とした砂岩地帯の多い荒れた土地だった。
調査の結果これらは≪竜大戦≫による戦禍がもたらした荒廃だとわかった。かつては活力に満ちていた土が、人知を超えた力で焼き尽くされ、植物を育む力が極端に低下してしまったのだ。
やせた土地は生存競争をより厳しいものにし、第二大陸に生息するモンスターたちの凶暴化に拍車をかけた。
街や村などの拠点があり、クエストとして足を踏み入れているわけではないので、いつ何時モンスターに襲われるかわからない。常人ならば気が狂いそうな環境であったが、カーシュナーたちはスラム街で最弱の立場で生活していた。理不尽な暴力がいつふりかかってくるかわからない環境だ。不要な時はしっかり頭と心を休め、必要な分だけ緊張を持続する。カーシュナーたちは未踏の地において、孤立無援で活動するのにうってつけの精神力の持ち主たちであったのだ。
多くの古代都市跡地を調査し、≪竜大戦≫の戦禍の凄まじさを知った。残されたものは破壊の跡とその威力を物語る残骸ばかりで、第二大陸が≪竜大戦≫において最大の激戦区であったことがうかがい知れた。
時折白い獣人が自身の使命の途中でキャラバンに立ち寄った。互いの情報を交換し合い、戦場跡で発見した人工≪不死の心臓≫を受け取って去って行くということが繰り返された。白い獣人は決して口にしないが、彼もまた、南の大陸から≪竜大戦≫の痕跡を消す使命を担っているのだろう。
ある時、カーシュナーたちは、≪砂海の孤島≫で二頭連れの牙竜種と出会った。
発せられる強者の威は、≪煉狼龍≫ラヴァミアキスをはるかに上回っていただろう。だが、誰も武器に手を伸ばす者はなく、灼熱の陽光に焼かれて漂白された体毛の奥で優しく光る濡れた瞳を見つめていた。
カーシュナーが≪巨人≫との経験を活かし、思念を飛ばしてみる。
予想通り通じ、思念が返ってくる。たが、それは明瞭な意志ではなく、おおまかなイメージだった。雪のように真っ白な少女がいた。白くほっそりとした手。か細いが愛情にあふれた声。何より強く伝わったのは、その少女を大好きだという温かい心。そして、失くしてしまった愛情を探し求める深い悲しみと、さまよい続けた気の遠くなるような歳月――。
この牙竜種も白銀の龍と出会っていた。そして、≪巨人≫同様≪不死の心臓≫を探す使命を与えられていた。
白銀の龍は、同じ探し求める使命でも、はっきりと結果の出る使命を与えたのだ。徒労感だけを味わい続けることは、終わることのない痛みに似ている。
カーシュナーたちは二頭の牙竜種に導かれ、第二大陸の≪龍脈≫の集中点である≪力場≫、≪流砂の底≫へとやって来た。そこには、顔見知りが一人いた。白い獣人だ。
こちらは≪霊峰・咲耶≫と違い、エネルギー抽出機関は活動を停止し、施設全体の機能もはるか以前に停止していた。
「出会い、導かれたか。カーシュ君。君には本当に驚かされる。あるいは、南の大陸は君を待ち続けていたのかもしれないな」
白い獣人はそう言うと、どこかで見つけたのだろう。≪不死の心臓≫を≪龍脈≫へと投げ入れた。
カーシュナーも荷袋から取り出した≪不死の心臓≫を牙竜種に見せてから、白い獣人を真似て≪龍脈≫へと投げ入れた。
牙竜種から喜びの思念が送られてくる。
白い獣人はそれ以上何も語らなかった。カーシュナーも尋ねない。答えられないとわかっているからだ。
その夜はヂヴァが腕を振るい、二頭の牙竜種も含めて宴が開かれた。
第二大陸で数々の飛竜を退け、カーシュナーたちは主要な地域の調査を終えた。かかった期間は丸二年を要した。極みに達したハンターとしての技量は熟成を重ね、深みを持つまでになった。最強のお手本がすぐ隣にいたことも、カーシュナーたちの技術向上に大きな役割を果たした。
「あたしが4人いるみたいだよ」
日々成長を遂げるカーシュナーたちを前にし、赤玲が笑いながら言ったことがある。カーシュナーたちは冗談と受け取っていたが、赤玲の目には深い満足があった。
一度船で北の拠点に帰り、全てを報告した。
第二大陸の牙竜種と≪流砂の底≫に関しては保護指定が決まった。自分たちよりもはるかに優れた文明を構築した人々が下せなかった正しい判断を、ギルドが下せていることが、カーシュナーは嬉しかった。
報告が終わると、カーシュナーはさっそく第三大陸の調査を志願した。
しばらく腰を落ち着けてはどうかという意見が殺到したが、カーシュナーはいつもの笑顔でさらりとかわしてみせた。
2年間の成長はカーシュナーの魅力を倍増させ、肉体的にも大きく成長した結果、甘やかしたいという感覚に、頼り甲斐が加わり、持ち前の人たらしっぷりは絶頂を極めていた。もはや誰もカーシュナーの意見に逆らえる者はいない。
笑顔一つで説得に成功したカーシュナーは、キャラバンの特殊車両の整備をすませると、さっそく第三大陸へと旅立った。
第三大陸は、第一、第二大陸の中間位置から南下した位置にあり、他の大陸と比較すると大陸の規模は7割ほどと少し小さく、大陸全般ではっきりとした四季が存在した。
生態系は多種多様の一言に尽きた。
これまで北の大陸で確認された全てのモンスター種別が確認され、従来のカテゴリーに含まれないモンスターも多数発見された。
ここではファーメイが無双の働きをみせ、モンスター図鑑は更新に次ぐ更新となった。
大陸の北西部は第二大陸同様戦禍による荒廃が見られたが、逆に北東部は第一大陸のように豊かな土壌を持ち、甲虫種が覇権を握っていた。
北の大陸では砂漠化が進む地域があるが、ここ南の大陸では逆の現象が起こっていることを、荒廃している北西部と生命力豊かな北東部の中間地域に該当する北部調査時に船医が発見し、第二大陸の緑化計画を新たな夢とした。
蛇竜種タイプの超巨大古龍種と遭遇し、チヅルが南の大陸に漂着した際に遭遇した超巨大甲虫種にも遭遇した。この超巨大甲虫種は海を渡るらしく、どうやらかなり長い周期で三つの大陸を渡っていることが確認された。ラオシャンロン級の古龍のつがいとも遭遇し、危うくキャラバンを踏み潰されそうになったこともあった。山岳調査のつもりで踏み込んだ地域では、山崩れに巻き込まれたかと思わせるほどの巨大な両生種が存在し、知らずに背中に乗った途端大ジャンプを敢行されたこともあった。
他にも多くの超巨大モンスターが生息し、第三大陸は巨大モンスターの巣窟のような状態だった。古代人たちはこの環境でどうやって文明を発達させたのかと一同は首をひねったものである。
この大陸には多くの古代都市の遺跡が残されており、竜人族がのどから手が出るほど欲した古代文明の文献が数多く発見された。当時の良識ある人々が、後世に自分たちの生きた証を残そうと懸命の努力で遺した知識が、カーシュナーたちの努力の結果、正しく伝わることが出来たのだ。
始めは危険の伴う先行調査に反対していたギルドマスターらも、この発見には興奮のあまり心臓が止まるのではないかという勢いで歓喜し、第一大陸で進められていた多くの計画を全て中断して駆けつけてきた。
細かい調査を王立古生物書士隊と古龍観測所の調査団員にゆだね、カーシュナーたち一行はさらに奥へと未踏の大地を渡っていった。
第三大陸の南部に、貫通弾で貫かれたかのように、見事な円形をした湾が存在する。
周辺台地は均等な高さで盛り上がり、海に面した側は垂直な崖になっている。船医の説明では、空から大きな岩が降ってきて、大地に大穴を穿った跡だという。
湾の中心では巨大な渦が唸りをあげて回転し、湾に迷い込んだものは流木だろうとモンスターだろうと関係なく飲み込んでいた。
どうやって調査を行うか、はたまた調査自体が可能なのかを話し合っていた時、大渦を割って一羽の巨大な≪白鳥≫が現れた。モンスターと呼ぶにはあまりにも美しく、清浄な空気をまとう巨大な≪白鳥≫は、一度飛び去ってからカーシュナーたちに気がついたらしく、優雅に舞い戻って来た。
力感にあふれた肉体にもかかわらず、強者の威はまったく感じない。あるのはこの状況をどこか面白がっている雰囲気のみであった。
カーシュナーは迷わず思念を投げた。帰って来たのは混乱であった。
どうやら記憶の一部を失っているらしく、意識に話しかけられたこと事態驚きであったらしい。熟成を見ない未熟な意志を根気よく解きほぐし、なんとか落ち着かせるとともに状況を理解させた。
カーシュナーたちにはこの巨大な≪白鳥≫の正体がわかっていた。なんとか記憶を呼び覚ましてやろうと様々な思念を送ってみたが上手くいかない。頭を悩ませていた時、モモンモが何気なく≪巨人≫の肩に登り、転げ落ちて受け止められた時の記憶を≪白鳥≫に送った。
文明が滅び、自然に飲み込まれる程の歳月の下に眠っていた記憶が刺激される。
体調の良かった日、父の背にゆられながら庭を散歩していた。青空にしか見えない都市の天井に手を伸ばす。その時一羽の小鳥が横切り、反射的に父の肩に手を掛けて、小鳥を捕まえようと思い切り身体を伸ばした。バランスを崩して背中から落ちそうになった自分を慌てて捕まえる父。驚きのあまり大きく見開かれた目がおかしくて、大笑いした。日常に潜むほんの小さな幸せ――。
モモンモの記憶に刺激されて目覚めた記憶が、次々と埋もれていた記憶を呼び起こす。
《お父さん!!》
これまでにカーシュナーたちが投げかけた思念と、よみがえった記憶がつながり、美しい≪白鳥≫は父を求めて羽ばたいた。
《ありがとう!!》
歓喜に震える思念が届き、カーシュナーたちは≪白鳥≫の後姿が青い空に溶け込んで見えなくなるまで手を振って見送った。
第三大陸最南端部――。
晴れることのない霧に包まれた岬にたどり着き、カーシュナーたちの第三大陸先行調査は終わった。
第三大陸初上陸からここに至るまで、2年の歳月が過ぎていた。隅々まで調べつくしたとはとても言えないが、これから先の本格調査の立派な土台となることは確かだ。
やり遂げた感慨に浸っていると、遠方から歓喜の思念が送られてきた。
それは≪霊峰・咲耶≫で罪をあがない続けていた≪巨人≫からもたらされた感謝の言葉だった。
《こんな日が来ると、私は信じることが出来ないで過ごしてきた。償いに終わりなどないと、それはいまでもわかっている。それでも私は許しを得た。これほどの報いが与えられるとは、……言葉もない》
言葉としての思念は途切れ、後はあふれだした感謝がとめどなく伝わってきた。
最後にイメージが届けられる。
≪霊峰・咲耶≫の見事な半円形をした山頂火口で、≪巨人≫と≪白鳥≫の周りを嬉しそうに跳ね回る牙竜種の姿だった。
おそらくつがいのどちらかが目にしている光景なのだろう。≪巨人≫の股の下をくぐったり、≪白鳥≫の美しい翼の下をくぐったり、再会の喜びをなんとか表現しようとしている。
カーシュナーは強く念じた。距離があり過ぎて、カーシュナーたちから思念を飛ばすことが難しいのだ。
《心がつながっているから、ただ想うだけでいいんだよ》
この思念を受け取った牙竜種が、≪巨人≫と≪白鳥≫を一心に見つめた。そして、歓喜の咆哮を、5000メートルの空のかなたへと放つ。
≪巨人≫が泣いていた。≪白鳥≫も泣いていた。
こぼれ落ちた涙は雪の上に落ちる前に結晶と化し、雪よりも澄んだ光で輝いた。
「本当のレアアイテムだモン!」
モモンモの言葉に誰もがうなずき、その夜開かれた宴は、東の空が白み始めるまで続いたのであった――。
第一大陸、北の拠点へ帰還したカーシュナーたちは、しばらくの時間をゆっくり過ごした後、船医の新たな夢である戦禍跡地の緑化計画を手伝うことにした。
この時点で≪霊峰・咲耶≫での激闘から4年の歳月が過ぎ、南の大陸への人の流入はとどまる事がなかった。
人口の増加が南の大陸開発を促進させ、各地に拠点一体型の村が興され、南の大陸生まれの子供が誕生していた。
この4年間、北の大陸は海底大地震からの復興は期待していたほど進まず、東西シュレイド王国内では内戦が激化の一途をたどっていた。
人心はとうに離れ、故郷を見限った多くの人々が新世界で新しい人生を手にしていた。
カーシュナーたちの緑化事業は、もはや信者と呼べるほどの領域でカーシュナーに心酔する人々の多くの協力を得て進み、それに伴って、わずか一年の歳月でドンドルマを上回るほどの規模の都市も誕生していた。
カーシュナーが南の大陸、第一大陸を踏破してから5年の歳月が過ぎた。カーシュナー自身の足跡を数多く残す新世界に、カーシュナーが幼いころより求め続けた本当の居場所を、カーシュナーは仲間たちと共に創り出したのであった――。