地下生活者はチーレムしたい!   作:名無しのレイ

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新しい仕事に馴染むのが大変でなかなか更新できなくてすみません。
今回はかなり独自解釈が入っております。


第九話

「―――この世界には大きな因果律の流れ……いわゆる”運命(メインストーリー)”が存在する。」

 

漆黒の空間に一人の異形の存在、『異世界の地下生活者』が言葉を放っていた。聞いている者がいるか分からない状態でも、彼は淡々と言葉を続けていく。

 

「この因果律の流れは、例えるならば大きな川の流れと言えるだろう。私の過去改変能力は、この大きな川の流れに遡って、上流で棒を立てて川の流れを多少変える程度の能力だ。

この程度では支流が多少変わる程度で大きな川の源流を変える事はできない。いわゆる”運命(メインストーリー)”を変える事は出来ない。川全体の流れを変えるには、例えば大きな事件なり”主人公”の命を奪うなりしなければならない。そうでもしないと”運命(メインストーリー)”を変えることはできないのだ。」

 

「……他の多元世界、並行世界は直接の観測を行うのは難しいが、それでもそこからの実例は存在する。それこそが『プレナパテス』。別の時間軸での『先生の成れの果て』だ。これが他の平行世界が存在する証明である。そして、今話しているこの小生も今いるお前の時空軸とはまた別の平行世界、『小生が完全勝利を果たした平行世界』の小生である。」

 

そんな彼の前には、空間に浮かぶ一枚の泣き叫ぶ人の顔が書かれた不気味な絵画が浮かび上がっていた。

それはゲマトリアの一人、匿名の行人と言われた『フランシス』である。

この地下生活者が完全勝利を治めた世界では、真っ先に地下生活者によって排除されたフランシスだが、本編では殴り飛ばされただけで生存している。その生存したフランシスは別の世界、並行世界の地下生活者との会話を行っているのである。

 

「そしてもう一つ言うべきことがある。我々よりさらに上位存在としての”何者か”が存在する。*1その上位存在はどうやら”運命(メインストーリー)”にご執心らしい。そのため、小生の世界とは異なり、そちらの世界では”運命(メインストーリー)”の流れにするべく必死に修正を行っているだろう。もしかしたらこの平行世界との通信がいきなり通じたのもその上位存在の考えかもしれんが……まあそれはいい。」

 

「ともあれ、”それ”が運命(メインストーリー)に拘るというのなら、これから貴様がやるべきことは『シャーレの爆破』である。小生の能力を貸し与えた貴様ならば可能なはずだ。そして運命(メインストーリー)も上位存在も(少なくとも今のところは)こちらの味方である。そちらの小生がいかにあがこうが『シャーレの爆破』を防ぐことはできまい。これは運命の決定である。」

 

フランシスの現状の世界は他の地下生活者の働きによって、『運命』から外れつつある。そして、『運命』から外れる事をフランシスたちですら感知できない上位存在は好まないらしい。

ここで外れつつある『運命』を元に戻す決定打こそが『シャーレ爆破』である。それと同時に『ホシノ』を暴走させるためのカードが必要となる。

列車砲シェマタはすでにあちらの世界の地下生活者が手を打っているため使えない。ならば、使うべきはあちらの世界の『地下生活者』自身である。

ホシノは先輩である「梔子ユメ」に対して非常にご執心である。そんな彼女に「梔子ユメを死ななかった事にできる手段がある」と唆せば暴走するのは目に見えている。そのための噂を流そうというのだ。

 

運命(メインストーリー)は我らに味方している。そちらの小生の能力でもそれを防ぐ力はあるまい。だが心せよ。逆に言えば、そちらの”小生”にも運命が味方しているという事だ。今の段階ではそちらの”小生”を討つことはできまい。時を待つのだ。必ずそちらの”小生”を討つタイミングは来るはずだ。小生の力を貸し与えるのだから、せいぜい頑張る事だな。『別世界のフランシス』よ。」

 

その他世界の地下生活者の言葉に、フランシスは感謝の言葉を投げるとその場から消えていった。

 


 

―――場所は戻り、本編の地下生活者が活躍している世界。

そこでは生徒たちの中で一つの奇妙な噂が広まりつつあった。それは『死人を死ななかった事にする』事ができる能力者がいるという噂である。ヘイローの加護があるこの世界では、死人が出ることすら少ない。

だが、その噂は不自然なほど広く広まっていた。それはそれだけでなく、その力を手にすればあらゆる願望が叶えることができる、という願望機じみた存在である、という噂のためでもあるが、それでもその速度は速すぎた。

まるで『未知なる存在がわざと流している』と思うほどである。

そして、その噂を聞きつけたとある生徒の姿が存在した。

 

「……へえ。何だか随分と面白そうな話だね。その話、おじさんにも聞かせてくれないかな?」

 


 

「……ホシノ先輩。ホシノ先輩ってば!!」

 

真夜中まで一人で知られることなく治安維持を行っていたアビドス生『ホシノ』はほかのアビドス生であるセリカによって揺り起こされた。ホシノの真夜中の行動は誰も知らないので、ほかのアビドス生からすれば「よくサボっている」「昼寝をしている」程度にしか思われていない。

とはいうものの、重要な会議の最中に寝てしまうのは、流石に疲れがたまっているか……。とホシノは心の中で反省していた。

 

「ごめんね~セリカちゃん。で?何の話だっけ?」

 

「もう!ホシノ先輩しっかりしてよね!!列車砲シェマタの話よ!!何か情報が流れた瞬間ゲヘナの部隊が徹底的にガードして確保したけど、アレってアビドスの紋章も入ってるウチのものでしょ!そのまま引き渡してもいいかってコト!!」

 

そう、アビドス砂漠で発見された『列車砲シェマタ』

まるでゲヘナ学園はそれを知っていたかのようにアビドスに正式な許可を取ってシェマタ発見&確保を行った。

そして、アビドスにシェマタ破壊許可(アビドスの紋章もあるため)を取ってきたのである。

 

「うへー。そんなのがアビドスに埋まってるなんておじさん知らなかったよ~。まあそんな厄ネタあってもこちらの一銭の得にもならないしね。ゲヘナに処分してもらう事自体は問題ないよ~。アビドスとして正式に許可も出しちゃおう。その代わりお金ちょうだいといえば一石二鳥だしね~。」

 

本編とは異なり、カイザーたちも全く気付いていない状態ならば今のうちにゲヘナに引き渡す契約を行っておけばいい。そしてヒナやマコトたちがカイザーたちが動き出す前に爆破・解体を行えばセイント・ネフティス、ハイランダー、カイザーなど誰も手も足も出ないまま闇に葬られるはずである。

先生からアビドスの皆にも話は伝わっている。ホシノとしてもアレが解体されるのなら別段問題はない。

懸念はゲヘナがそれを手にして暴走を始める事だったが、先生はそれをさせないときちんと確約しており、実際ゲヘナのトップであるマコトも確実に解体処理を行っている。

問題はゲヘナがシェマタを手にして暴れまわるのではないかということだったが、マコトは本気でシェマタを破壊するつもりだし、『先生』もいるしで大丈夫だろう。

そのホシノの言葉に、アビドスのみんなもそれに賛同した。だが、ホシノの脳内では全く違う考えが彼女を支配していた。

 

(そう『そんな事』より私には成さなければならない事がある。もし『死ななかった事にする能力者』がいたとするならば、私はどんな事をしてもその能力を使わせる。そう、何があってもだ。そうすれば、ユメ先輩は死ななかった事になる。)

 

(そうだ。ホシノ。お前はそれをしなければならない。梔子ユメを死ななかった事にする。それがお前の贖罪だ。何を引き換えにしても果たさなければならぬ。)

 

他世界の地下生活者の能力による思考誘導の力を得たフランシスの思考誘導。

それはホシノの深層心理に影響を及ぼしていた。そして、その思考誘導にホシノは逆らうどころか気づくことすらなかったのだ。こうして、じわじわと次の舞台は整っていったのである。

 

 

*1
某生徒会長の事。




地下生活者「運命(メインストーリー)から脱却したいんゴねぇええ!!」
会長「これ以上逸れると困るので運命(メインストーリー)に無理矢理引き戻します!とりあえずシャーレ爆破で!!」
だいたいこんな鬩ぎあい
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