超古代出身最強魔女のダンジョンブレイカー!   作:龍翠

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世界異変の当日

『あたしは、そうね。神様みたいなものよ。それに限りなく近いわ。……は? 自分の信じてる神と違う? 知らないわよ、そんなもの。人の信仰なんて興味ないもの』

 

 神。神様。それを聞いて、なんとなく安心した子供も多かったと思う。でも、私は、なんとなくその声が恐ろしかった。

 

『ずっとあなたたち人間を見ていたけど……。もう我慢できないわ。一時のことを思えばましになったみたいだけど、またくだらない争いが増えてきて……。あなたたちはどれだけ、この星の自然を壊せば気が済むのかしら』

 

 怒っている。それがすぐに分かった。神を名乗る誰かの声からは、誰かを殺したいほどに憎む怒りの感情が、憎悪の感情が感じ取れた。しかもそれは、特定の誰かじゃなくて、人類全てに向けられていたもので。

 

『人類全てを消してしまうのも考えたけれど……。それをすると、人類に頼ってる他の動物も死んでしまうでしょう? だから……。数を減らすことにしたの』

 

 そこからは、底冷えのする声だった。

 

『今から世界中に迷宮を作るから。迷宮には魔物が棲んでいて、放っておくとあふれ出てくるわ。そうして、あなたたち人類を殺していくでしょう』

 

 だから、とその声は続けた。

 

『死にものぐるいで抗いなさい。国を存続させたいのなら、迷宮の魔物を減らしなさい。未来永劫、ずっとね』

 

 その声が聞こえなくなって、一分ほどかな。詳しい時間は分からない。ただの体感で、実際には十秒だったかもしれないし、十分だったかもしれない。

 突然、大爆発が引き起こされた。どこで起きたのかは分からないけど、世界中、いろんな場所で爆発が起こって、大きな地震がいろんな場所で起きたらしい。

 その爆発の後にできたのが、大きな穴。底の見えない深い穴ができて、そこから多くの化け物があふれ出てきて……。

 そこからは、地獄だった。魔物によってバスが倒されて、魔物が集まってきて、みんなが逃げ惑って……。

 正直なところ、どうして私が生き残れたのか、それは本当に分からない。何度も襲われたし、私の体には今も大きな傷跡がたくさんあるけど……。それでも、奇跡的に生き残れた。

 

 死にそうになりながらも、歩いて、走って、動き続けて……。私は、自分の家にたどり着いた。家だったもの、が正しいかもしれない。あちこち崩れていたから。

 そこで見つけたのは……。亡骸、だった。両親だったもの。

 両親はあーちゃんを守るように抱きしめて、事切れていて。そしてあーちゃんもまた、息をしていなくて。

 その後は、何も覚えてない。気付けば私は病院で目を覚ました。

 私が眠っていたのは、一週間。その間に人類は地上の魔物をどうにか倒して、迷宮の攻略を始めたらしい。ただ地上に出ていたのは本当に弱い魔物ばかりだったみたいで、その時は自衛隊の総力をあげてどうにか押しとどめている、という状態だった。

 

 それは他の国でも同じだったんだって。他国との戦争なんてそんな余裕はどこにもなかった。みんな、自分たちが生き残るのに必死だった。

 これもあの神を名乗る誰かの目論見通りだったのかな。戦争はほとんどなくなって、今も人類は迷宮に、ダンジョンにかかりっきりになってる。

 まあ、昔ほどぎりぎりの状態でもなくて、国交は再開されてるところが多いけど……。でも戦争は、今もない。始まりかけると魔物が活発化して大量発生するから。そして大きな被害が出るから。誰も、戦争なんてやろうとはしなくなった。

 いや、それでもやろうとした国はあったらしいよ。魔物に滅ぼされたけどね。

 

 私は……施設に預けられた。たくさんの、私みたいな子供がたくさんいて……。そこで知ったのは、両親がちゃんと残っていたのは、奇跡だったらしい、ということ。ちゃんとお墓も作ってもらえたから。

 でも、あーちゃんの体だけは、いつの間にかなくなっていたらしい。あの時、私がもっとしっかりしていれば、と思わずにはいられない。ちゃんと弔ってあげたかった。

 世界的には……。戦争は、確かになくなった。でも、ダンジョンの出現による犠牲者は、どれだけいるかも分からない。日本でも一千万人以上が亡くなったらしい。

 神様が間違ってる、かは分からない。戦争がなくなったのは事実だから。でも、それでも私は、許すことはできない。たくさんの命が失われて、私の家族もいなくなって……。

 いや、うん。それはいいかな。それはただの、私の感情だから。

 

 

 

「これが、私が経験したダンジョンの発生。その被害。参考になったかな?」

 

 語り終えた時、リンネちゃんは顔を俯かせていた。ちょっとショックが強すぎたかもしれない。急かさずに待ってあげようかな。

 そう思っていたけど、リンネちゃんはすぐに顔を上げた。

 

「凪沙は……」

「うん?」

「凪沙は……よくわたしを、受け入れてくれた……ですね」

「えっと……。どういうこと?」

「わたしは、神や精霊みたいなものと……言った、ですから」

「ああ……」

 

 確かにそう言われたね。聞いた時はちょっと怖かったけど……。でも、今はそんな恐怖心はない。だって、ほら。今も、ちょっと不安そうに瞳を揺らしてるから。

 リンネちゃんを撫でると、一瞬だけ訝しげに眉をひそめて、でもすぐに目を細めた。なんだかとても気持ち良さそう。撫でられるのが好きなのかも。

 

「あの時の神と名乗ったやつに対しては、いろいろと思うところがあるよ。でも、リンネちゃんは絶対に違うって分かるから。撫でられるのが好きなかわいい女の子、みたいな感じかな」

「んー……。撫でられるのは……気持ちいい、です」

「あはは」

 

 甘えるようにすり寄ってくるのが、本当にかわいい。相手の方がずっと年上のはずではあるんだけど。

 しばらく撫でてあげていたら、リンネちゃんが口を開いた。

 

「凪沙」

「うん」

「今日のドラゴンで……ダンジョンはある程度、理解した、です。凪沙が望むなら……ダンジョンを、片端から、潰す、ですよ?」

「それは絶対にだめ」

「え……? そう、です?」

「うん」

 

 ダンジョンは悪いことばかりじゃなかった。戦争がほとんどなくなった、とかそういうのとは別の方向で。

 ダンジョンからは魔石というものを手に入れることができる。これは魔物の核みたいなものらしくて、倒すと大なり小なり必ず手に入れることができる。

 この魔石がかなり大きなエネルギーを持ってるらしく、最近はこの魔石が電力などのエネルギー源になってる。だから、今更それがなくなってしまうと、世界はまた大混乱に陥ってしまう。

 それを説明すると、リンネちゃんはどこか信じられないといったような様子だった。

 

「人間……たくましすぎる、です……。順応する、なんて……」

「私が言うのもなんだけど、それは本当にそう」

 

 順応ができなかったら生き残れなかっただけかもしれないけどね。

 




壁|w・)自称神にとって、人間は動物と大差ない扱いかも、です。
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