超古代出身最強魔女のダンジョンブレイカー!   作:龍翠

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魔女

 

「見つけた、です」

 

 小さくなって震えていたら、そんな声が上から聞こえてきた。

 うずくまる私を見下ろすように立っているのは、真っ黒なローブでフードを目深に被った人。声とその背格好から、多分女の子。それも、私よりもずっと幼い女の子だ。

 

「あ……。あの……」

「助けにきた、です」

 

 そう言って、女の子は私に手を差し出してきた。

 

「え、と……。だ、だめだよ! 危険だから、早く逃げないと……!」

「危険? 何が、です?」

「何がって……」

 

 私が答えるよりも先に、大きな咆哮が響き渡った。その声に思わず竦んでしまうけど、すぐに振り返って確認する。オーガが、ちょっとした建物ほどの背がある鬼が、こちらに走ってきていた。

 見つかった。まずい。どうしよう。せめて、この子だけでも……。

 そう混乱する私の目の前で、女の子は言った。

 

「うるさい、です」

 

 女の子が持っていた杖を掲げる。するとその杖の先から小さな雷が走って、一瞬でオーガに到達、黒焦げになって絶命した。

 瞬殺だった。あのオーガを、苦労することもなく倒してしまった。

 でも、音が大きすぎた。光が眩しすぎた。他の魔物たちも気付いて、襲ってきたから。

 けれど。やっぱり女の子は、ただただ面倒そうだった。

 

「仕方ない、です。殲滅……です」

 

 女の子が杖を掲げる。すると、今度は風の刃が放たれた。風の刃はまるで生きているみたいに岩とかの障害物を避け、魔物たちに殺到していく。

 そして気が付けば、魔物たちはみんな魔石だけを残して細切れになっていた。

 

「終わり、です」

 

 女の子は短くそう言うと、てくてく歩いて魔石を回収し始めた。

 圧倒的だった。蹂躙だった。あれだけ強い魔物をあんなにあっさりと倒してしまう人を初めて見た。最上位のパーティでも難しいと思うのに。

 

「お待たせ……しました、です」

 

 女の子が戻ってきてくれる。そしてまた杖を掲げる。攻撃魔法か、と思ったけど、今度は私の傷が全て消えてしまっていた。

 回復魔法。それも、私よりもずっと高度な。

 ハイレベルの攻撃魔法と回復魔法、その両方を使いこなせるなんて……。この子は、見た目はこんなだけど、実は有名なパーティに所属する大人の人なのかもしれない。何かの呪いで幼くなってしまってるとか……。違う、かな?

 

「動ける、です?」

 

 女の子の声に体を動かしてみる。あちこち骨が折れていたはずなのに、それすらも今は感じない。麻痺をしているだけ、というわけでもなさそうで、問題なく立って歩くことができた。

 本当に、すごい。

 

「動けます……。助けていただいて、ありがとうございます」

 

 私がそう言って頭を下げると、女の子は頷いてくれた。

 

「それなら安心、です。それでは……私は行く、です。気をつけて帰ってください、です」

「え?」

「え?」

 

 私が首を傾げる。女の子も首を傾げる。

 いや、あの……。助けてくれたことは本当に嬉しいし感謝しているけど……。ここで置き去りなの……?

 思わずそう小声で言ってしまったけど、女の子には聞こえてしまっていたらしい。ただ意味は分かってないのか、首を傾げていた。

 

「一人でここまで……来た、ですよね? 万全なら……帰れる、のでは?」

「あ……」

 

 先入観で、パーティのみんなが助けを呼んでこの子が来てくれた、漠然とそう思っていたけど違ったらしい。偶然私を見つけてくれた、ただそれだけみたい。

 考えてみれば当たり前だ。私がパーティと別れて、まだそこまで時間が経ってない。こんなに早く、それも階層が違うここに来るはずがなかった。

 

「すみません……。実は、大穴から落ちてしまって……。私は、一人だと第二層でも厳しいんです……」

「ああ……。なるほど、です」

 

 納得してくれたみたい。女の子は天井の方を向いて、小さな声で何かをつぶやいてる。

 

「奇しくも……実験、成功、です……。クッション……ちゃんとなってた、です。安心安全、です」

「あの……?」

「あ。ごめんなさい、です」

 

 こほん、と女の子が咳払い。そして言った。

 

「ここは、第七層、です。それでは……あなたを、ダンジョンの出口まで、送る、です」

 

 よかった。安心した。ちゃんと送ってくれるらしい。ここで残されてしまったら、今度こそ間違いなく死んだと思う。

 

「それでは、行きましょう。えっと……」

 

 そこで私は自己紹介すらしていないことに気付いてしまった。

 

「あ、ごめんなさい! 私は姫花といいます。ヒーラー、です」

「ひめか、ですか。私は……」

 

 そこで、女の子は言葉を止めてしまった。

 むむむ、と小さく唸ってる。名乗りたくないのかもしれないけど……。そうして唸る姿はちょっとだけかわいいと思ってしまうのは、さすがに失礼かな?

 

「ん……。ちょっと待ってほしい、です」

 

 そこで女の子は目を閉じてしまった。完全に無防備な状態だ。信頼してくれるのは嬉しいけど、何かされるかも、なんて思わないのかな。

 ちょっとどきどきしていたけど、一分ほどして女の子は目を開けた。

 

「お待たせ、です」

「いえ……。何かしていたんですか?」

「念話を……いえ、なんでもない、です」

 

 念話? 念話!? 本当にそういう魔法があるなんて……!

 女の子がこほんと咳払い。慌てて姿勢を正した。

 

「私は、魔女、とでも呼んでほしい、です。よろしくお願い……します、です」

 

 やっぱり名前は教えてくれないみたいだけど……。無理強いはだめ、だよね。こうして助けてくれるだけでも、感謝しないといけない立場だから。

 

「よろしくお願いします、魔女様」

 

 私がそう言うと、魔女様はしっかりと頷いてくれた。

 




壁|w・)ひょっこり。
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