原作はそろそろダンジョン要素出すべきだと思います(半ギレ)
──前線基地の壊滅を阻止し、亜人共を撃退したという話は、瞬く間にアイギス全体に広がった。
いや、広がったというよりは、意図的に広げられたという方が正しいだろう。
なにせ、言い方を変えれば、『亜人の奇襲を阻止しただけでなく、逆に奇襲を掛けた亜人たちを全滅させた』という話だ。
勘の良い者や詳しい者は半信半疑ではあったが、大半の人達は素直に喜び、しばらくはアイギスの空気が明るいものとなった。
……アイギスの人達が喜ぶのも無理はない。
一歩進んでは一歩下がり、一歩下がっては一歩進む。互いに動きらしい動きが取れないまま、只々時間だけが過ぎて行く。
対亜人に関しては、百年以上にも渡り
そこに、あくまでも撃退しただけとはいえ、明確な勝利を一つ勝ち取ったのだ。長くアイギスに居る者ほど、喜ぶのも無理はなかった。
……まあ、その際に、だ。
前線基地から戻ってきたギルド幹部の人が、青ざめた顔で地面に蹲ってゲーゲーと吐いていたとか、その背中を新人冒険者が摩っていたとか。
もう二度と乗りたくない、頼まれたって乗りたくない、俺は地面が大好き、一生を地面と共に生きるぞと呟いていた姿が目撃されたが。
そちらの目撃情報は、あくまでもそんな姿があったという噂に留まり、それ以上の話に広がることはなかった。
……さて、場面を変わって、無事にアイギスの冒険者の仲間入りを果たした……モッコスと呼ばれた女へと移る。
彼女は、基本的にソロで行動をする。
理由は、単純に普通の人間とは戦力の差が有りすぎるからだ。
まず、体力。
これに関しては、実質的にほぼ無限に近しい。
本来のKOS-MOSであれば定期的なメンテナンスと補給が必要不可欠なのだが、『ウ・ドゥ』による魔改造により、補給と調整の必要性が無くなった。
これは、単独で行動するうえではとてつもないメリットではあるが、集団で動く場合はデメリットな部分が現れる。
それは、パーティで動く場合は、そのパーティの機動力に合わせた動きしか、彼女は取れなくなるからだ。
彼女一人だけが元気に動けて、他の者たちが動けない。
それでは、実質的に彼女が他のメンバーをサポートするだけで、他のメンバーは彼女におんぶに抱っこされているも同然である。
加えて、索敵等の能力も、彼女は生物の範疇を超えている。
ゆえに、他のメンバーの存在は彼女にとっては足枷でしかなく、また、他のメンバーも足枷にしかならないのが分かっていたこともあり、自然とその形に収まったのであった。
次に、パワー。
これはもう、生物の範疇に収まるものではない。
なにせ、重さ数十キロ(SF的な軽量化済み)にも達するガトリングガンを片手で振り回してもなお、その場にて静止したまま連射を可能とする。
これが、どれだけ馬鹿げている事なのか……そう、屈強なオークで例えよう。
仮に、そのオークがガトリングガンを両腕で抱えて使用した場合、その身体はどうなるか?
答えは……例外なく、ガトリングガンを支えている両手、手首、腕の骨が骨折し、身体で押さえようとすれば、肋骨どころか内蔵すら痛める、である。
そう、ガトリングガンとは本来、固定砲台なのだ。
誇張抜きで雨のように連射する破壊力に比例して、その反動は使用者に跳ね返る。持って運ぶだけでも相当な重量だというのに、それでもなお反動を抑えきれない。
そんなものを片手で一つずつ使用し、まるでダメージを負っていないのだから……いかに、馬鹿げたパワーを発揮しているかが窺い知れるだろう。
そして、そんなパワーを発揮(つまり、戦闘時)するにはやはり、単独での行動が一番適している。
ガトリングガンなどは破壊力こそあるが射線の微調整が難しい。万が一フレンドリーファイアったら、一発でミンチ確定……とてもではないが、リスクが高い。
最後に、スピード。
ある意味、これが一番分かりやすい。
実質的な体力無限からの休息不要とパワーが生み出す機動力。これだけでも、彼女がソロで行動するに足る理由過ぎた。
というか、1人だけ機動力が有りすぎる時点で、周りが遠慮するのは当たり前である。
だって、実質的に周りがその機動力を殺しているようなもので。剣術に長けた者に弓矢を持たせ、支援行動を取れと言っているようなものだ。
言うなれば、適材適所。
1人で全てをこなすだけでなく、1人の方が能力を発揮しやすいという事実がある以上、彼女のソロ活動は……ある意味、必然の結果でしかなかった。
(……仕方がない事だけど、ちょっと寂しい)
なので、彼女は……時々特定の獲物(鳥とか、亀とか)を獲れたらというお願いをされる時以外は、ソロで『ふかふかダンジョン』へと潜っていた。
なにせ、彼女はアンドロイドであり機械の身体なので、訓練等を行う必要がない。
休息どころか睡眠も食事も排泄すら必要としないので、何もしない時間というのは本当に手持無沙汰になってしまう。
もちろん、何もしない方が良いと判断している時は気にならない。
だが、何時でも『ふかふかダンジョン』に行けるという状況で、意味も無い待機時間を増やすことに彼女は意義を見出せなかった。
それに……『ふかふかダンジョン』に潜るのに、特別な資格証や許可証が居るわけでもないときた。
どうやら、現時点ではあくまで未開の場所であり、誰かが所有しているわけではないようで、出入りは自由(ただし、人間に限る)らしい。
まあ、自由とはいえ、だ。
『ふかふかダンジョン』そのものは、特定の場所にあるわけではない。
そもそも、『ふかふかダンジョン』というのは、厳密には暗黒大陸全域を差し、一般的にイメージされる『ふかふかダンジョン』は、その下部に当たる。
つまり、地下だ。
暗黒大陸のいたる所に、地下へと続く出入り口、あるいは穴に相当する場所があるらしく、入ろうと思えば何処からでも入る事が出来る。
もちろん、危険は伴う。なので、よほどの自殺志願者でない限りは、調査を終えているルートを通るのが鉄則であり常識とされていた。
なんでかって、単純に暗黒大陸というか、『ふかふかダンジョン』そのものが滅茶苦茶広いからだ。
光が全く入らないぐらいの地下奥深くにまで通じているのもあれば、日中は光が差し込んで明るい、地表すぐ近くの場所もある。
数百年という月日を得てもなお、その全容の一端すら分かっていないのは伊達ではない。
明らかに知的生命体の手で作られた通路や壁や地面、何時頃にそれが生まれたのか、誰がどのような目的で作ったのか、何もかもが不明な場所。
あくまでも人類が入口と定めている場所は、人類が幾度となく出入りして安全性を一定以上確保したルートでしかなくて。
他のルートを増やしたいと思っても、ダンジョンから出てきたファンタジー生物や『亜人』たちの存在によって、ままならず。
結局、人類は本来の目的であるダンジョンの調査すら出来ないまま、数百年も進んでは戻されるというのを繰り返している……という生存競争と同じ結果を、ダンジョン探索でも出しているのであった。
……。
……。
…………とまあ、そんなわけで、だ。
100人に聞けば100人から『え、自殺でもしたいの?』という、『ソロでのふかふかダンジョン探索』という、頭オカシイことをやっているわけだが。
「……状況不明、重力場の異常を感知」
現在地、地表よりマイナス200m。
既に、というか、当たり前だが、地上からの光は全く届かない。
まあ、地下である以上は光が入る通路や多少なり反射してくれる物質がなければ、少し潜っただけで全てが暗黒である。
しかし、ここは只の地下ではない。あの、悪名(?)高き『ふかふかダンジョン』の地下だ。
だからなのか、マイナス50mを超えた時点で温度が下がり始めたかと思えば、マイナス80mを超えた時点で今度は逆に温度が上がった。
マイナス200mの地点では、地表との温度差は約25℃。
ちなみに、マイナス50m~80m地点では氷点下75℃であり、そこを過ぎると何故か温度が急上昇し始める。
地熱の事を考えれば、この時点で意味不明である。
基本的に、地下へ向かえば向かう程に温度は上がるものだが、それにしたってあまりに変化が激し過ぎる。
局所的に温度が上がっていたり、逆に熱が伝わり難いがゆえに低い場所があるにしても、異常だ。
まるで、特定の深さにて温度などを調節してから地表へ排出しているかのような、不自然さ。
もちろん、センサーにはそれらしい反応は何一つ検知していない。
つまり、温度を上下させる物質や反応が一切見られないのに、異常な温度変化が起こっている。
膨大な熱エネルギーがある地点で急激に失われたかと思えば、そこから上に上がると熱エネルギーがどこからともなく補給されているのだ。
まるで意味が分からない。説明が、付けられない。
SF的な説明でも、もう少しそれっぽい理屈が付けられるだろうと彼女は思った。
……ちなみに、だ。
地下○○階ではなく、地表からのメートル計算なのかというと、『ふかふかダンジョン』はあまりに広大であり、階段のような明確な段差が少ないからだ。
有っても中途半端だったり、途中で崖になっていたり、緩い傾斜が続いていたり、地下と言っても天井までの高さがバラバラなこともあって、そのように彼女は決めていた。
──で、話は戻るわけだが、地表よりマイナス200m(高さ、おおよそ60階分ぐらい)の場所まで下りたのだが……ここで、彼女は始めての体験をしていた。
「……再計算終了。おおよそ、月面と同程度と推測。並びに、重力場の影響によってベクトルの乱れが発生」
具体的には、重力が明らかに弱まっていた。
どの地点から、それが始まっていたのか?
おそらく、この地点に辿り着いて、すぐ。
明らかに高度な科学力を持って作られた、広大な広間。多少なり汚れが見られる、そこに入った辺りだろう。
最初はあまりにも変化が小さ過ぎたので計測装置の誤作動かと判断していたが、僅かずつではあるが数値の変化が増え続けているのを感知した辺りで、彼女はこれを重力変動と認識した。
……原理は不明だが、何も起こっていないのに重力が弱まるというのは本来ありえないことだ。
重力とは質量に応じて発生する力場であり、それが弱まるということは、その場所だけ質量が継続して消失しているということになる。
常識的に考えて、そんな事はあり得ない。はっきりと重力を知覚出来るレベルの質量ともなれば、天文学的な数字になる。
それだけの大質量が無いのであれば、他所から物質が流れ込んでくるだけで、その部分だけが継続して質量が消滅したままというのは……しかも、だ。
どういうわけか、ベクトルが安定していない。
頭上から真下に掛かったかと思えば、ある地点では向かって右方向にベクトルが向き、ある地点では真下から頭上へ……そう。
センサーでも詳細不明だが、ある地点では重力が反転している。信じ難い現象だが、そこだけ真上に落下する。
言うなれば、その部分だけに影響を留める超大質量によって、真下への重力よりも上へと落ちる重力が勝っているような……いや、止めよう。
(さ、さすがはファンタジー……物理法則もなにもあったもんじゃねえってやつだ……!!)
これはもう、SF的な理屈でも説明が付かない現象。
すなわち、ファンタジー法則。別名、何でもあり。
それも、SFファンタジー法則であると考えた彼女は、それ以上の推測は野暮であると結論を出したのであった。
……。
……。
…………ちなみに、だ。
この場所も当然ながら光源など無いので、真っ暗で。
何も知らないまま入って、気付かぬままに進み続けると、だ。
先ほどの彼女のように、天井へと落ちて叩きつけられた挙句、その勢いで押し出されて地面へ落下するという極悪非道のトラップになったりするので、注意が必要である。
……。
……。
…………そうして、あまり長くアイギスを離れると心配されてしまうので、調査を終了して地上へと戻った彼女は。
「──ジャン、これを見てください」
「え、これって……?」
「ここを、こうすると──こうです(ビュウィン)」
「び、ビームシールド、だと……!!??」
その場所に落ちていたSF的なお土産を、ジャンへ見せたのであった。
なお、ジャンからは一生のお願いだからと譲ってほしいとお願いされたことを、ここに報告しておく。