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ワンダーの自分と新井モトハはクリスマスに向けて大掛かりなようなそうでもない方法で準備に追われていた。
もう直ぐ冬休みに入る前、琴音・モンターニュからスマホへ連絡が入る。
琴音・モンターニュ
『もし良かったら、クリスマスのプレゼントを一緒に選んで欲しいの』
その場にモトハも居て、琴音からの連絡を伝えると彼女はキョトンとした顔をし、女子のプレゼントならば女子の感性に頼りたいというウマを伝える。
琴音も異性の友人を連れて行っても良いかと聞くと、喜んでいた。
モトハも満更でもなさそうに任せてよと張り切る。
フクロウの相棒、ルフェルも共に向かうことにした。
彼はクリスマスなるものをしっかりと把握しており、肉をプレゼントしろときっちり要求していた。
ルフェルの声は欲望を強く持つものならば聞こえるのだが、琴音に聞こえないかという懸念があった。
「ふうむ。今の所、琴音・モンターニュからは微弱な欲望しか感じ取れない。声が聞こえてしまう可能性はない」
とのことで、安堵してルフェルとモトハ、ワンダー達3人は電車で琴音の告げた場所へ集まる。
寒くなった空気を感じ取りながら待っていると銀色の髪を持つ美人な女性が現れる。
「待ったかしら?ごめんなさいね」
有名な人らしいが、謙虚な性格をしていて普通の女の子といった風だ。
風でもなく、普通の女子高生だ。
モトハは初対面なのでぺこりと自己紹介する。
「は、初めまして。ワンダーと同じ学校のクラスメイトで、アライモトハです」
琴音はにこりと笑い、同じく頭を下げる。
「わ、めっちゃ可愛い。銀色とか綺麗だね」
「そうだな」
ワンダーは無難に答えた。
今更髪色に言及するような狭い交友関係ではなくなってしまい、銀色は珍しくもなんとも無くなっているからだ。
モトハも茶色、ワンダーも黒茶、男友達であり、怪盗名ソイことシュンは青みがかったグレー。
銀色で一喜一憂する時代は遠に過ぎていた。
ルフェルなどどうだ?
フクロウだ。
「プレゼントフォーユー」
ワンダーは突然耳から聞こえた声にびっくりして見回すと、モトハが心配そうに聞いてくる。
なんでもない、と首を振る。
ルフェルにこっそり今のことを伝えておく。
幻聴だと言い切るには、ワンダーの取り巻く状況は異世界と密接にされ過ぎている。
「わかった。ワシにそれは任せて、お前はこちらの現実をしっかり楽しめ」
ルフェルはたいそうな相棒だ。
グイグイ進めたかと思えば年上のような振る舞いもする。
「分かった」
yesと答え、モトハ達とお店を回る。
モトハと琴音は互いの呼び方を模索して、仲良くなろうとしていた。
こういう時はそっとしておくのが吉。
「お前もしっかりクリスマスを満喫するのだぞ?異世界のことはことが動くまで気にするな」
ルフェルがちょくちょく耳打ちしてくる。
「あ、ワンダー、琴音さんがクリスマスドームにするって言ってて、ワンダーはどれがいいと思う?」
「消耗品」
「え?いつも掃除機系統を送ってくる君のいう消耗品?」
モトハは混乱した。
ワンダーはいつも消耗品とは程遠い贈り物を良くしてくる。
雑誌や香水、などという軽いものから電化製品まで。
「リップクリーム」
「リップクリーム!?意外かも」
「そうね、そうすれば相手もいつか消耗するから、なくなりやすくはあるわ。それにしようかしら」
「同性ならありなのかな」
シュンにもメールを送り、アンケートを取る。
『俺ならラーメンだな』
シュンに聞いた自分が悪かったと反省する。
送る前からなんとなく、こういう答えが返ってくると分かっていたのに。
結局そこから三件周り、漸くプレゼントを買えたらしい。
途中、クリスマス用のケーキが売れないと嘆く店員を見かけた。
長年住むワンダーからすれば、売れないという事態は考えられなかった。
琴音は恥ずかしそうに連れ回した事を詫び、モトハと共に帰りの電車へと向かった。
モトハはクリスマスパーティーをするから来ないかと聞いたが、琴音は家族と過ごすからと言い、モトハはそれなら仕方ないと、手を振ったのを思い出し、ルフェルらは帰宅の帰路をなぞる。
「どうだった」
「うむ、どうやらポチ公前の広場で強い認知の歪みを見つけた。お前が見かけたケーキの売れなさはおそらく、気力を奪われておる」
自宅に戻り、フクロウのキャトル、またはルフェルに尋ね、認知の歪みが幻聴ではないことを確認。
「モトハ……クローザー達と集合し、認知の歪みが暴走する前に沈静化させるぞ。そして、クリスマスのチキンを食べるのだ」
「チキン、食べて良いのか?」
「なにをいってる?肉はワシの好物だ」
言いたいことはそれではないが、言わぬが仏なのだろう。
「よし、そうと決まれば2日以内に歪みの地へ行こうぞ」
ルフェルに急かされてメンバーに集合をかける。
2日後、ワンダー達はポチ公前に集まり、異世界へ行く。
3人とフクロウの一行は、異世界へ行く為に異世界ナビを起動させる。
現在の景色がブレ、異世界が現れる。
「ポチ公がクリスマス仕様、そして、俺らもクリスマスコスプレかよ」
「似合ってるぞ」
「お前もな」
「やっぱり、こうなったか」
モトハは夏の時を思い出しているのだろう。
水着で異世界に来ていたのだから、クリスマスといえばサンタのコスチューム、またはトナカイのコスチュームとなる。
ルフェルを見てみろ、トナカイのぬいぐるみの角をつけ、背中にソリのリュックを背負ってるぞ。
ルフェルのコスプレ自体、どこかのお店でぬいぐるみとして売られても良いほど、巧妙に作られている。
この服は大衆の認知の結果だ。
夏の海では水着という共通の認識。
クリスマス間近の場所ではクリスマス衣装でいろという、大衆の認知。
話していると「来たぞ」とルフェルが忠告してくる。
直ぐに気配を感じ、目の前に悪魔が出現する。
出てきた悪魔を4人で撃退し、ベルを鳴らした攻撃がヒットし、消えていく敵。
撃退に撃退を重ね、暴走をおさめていく。
終わり、異世界から帰還すると四人はお疲れ様と互いに言い合う。
適当な店に入り、息をつく。
「これでケーキ売れると良いね」
クリスマスパーティーの準備が終わってないのだと、疲れがどっと来る。
ワンダーの秘書兼コンシェルジュのメロペが後日、認知の歪みを鎮めた礼を述べてきた。
メロペもクリスマスコスプレをしていた。
色々イベントをやっているが、一番盛り上がっているのは彼女だと知っているのは自分だけなのかもしれない。
「私からプレゼントをやろう」
という凛々しい言葉と共に赤い鼻(トナカイ)を渡された。
「これでパーティーの一発芸は大盛り上がりでござる」
「一発芸なんてしないが」
彼女は話を聞いておらず、ワンダーにメイドカフェの事をつらつらと話し始める。
ワンダーは疲れていたが、辛抱強く聞いた。
「ワンダー、プレゼント!」
冬休みに入りかけた放課後、四人で集まった屋上でシュン達からプレゼントをもらった。
自分からも全員へプレゼントを渡す。
「琴音・モンターニュさん、ちょー綺麗だった」
モトハのうっとりした声が空に響く。
「へえ」
シュンは殆ど反射的に相槌を打つ。
「シュンのことだから今回も誰のことか知らないんだろうなあ」
「そうだな!」
ルフェルが強調し、シュンが知らなくて悪かったなとむすくれ、ワンダーはくすくすと笑った。
笑い声の響く屋上、初雪がちらつくのが見えた。