スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました   作:鏡銀鉢

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俺の女に手を出すな!

 まさか死んでいないよな、とやや心配する俺の視線の先、霧のような煙を突き破り、灰色の機体が襲い掛かってきた。

 

 目の前に着地するや否や、腰を回した拳の一発で桐葉を真横にぶっ飛ばした。

 

「桐葉! がっ!」

 

 続けて鋼の巨拳が俺の腹にめり込み、激痛で内臓が潰れたような錯覚さえ覚えた。

 

 意思とは関係なく、床が崩れたように俺はその場に倒れ込んでうずくまった。

 

「な、なん、で……?」

 

 真理愛の話じゃ、あれは対戦車用ミサイルだったはずだ。超硬合金の装甲を破れないはずがない。

 

 すると、伊集院は息を整えながら、種明かしをするように語り始めた。

 

「ギリギリだったよ。すんでのところで君の行動を予知して、爆発と同時にバックブーストが間に合って、ダメージを最小限に抑えられた。でもこの僕をここまでイラつかせた代償は大きいよ」

 

 テレポーターの俺の体は、一般人と変わらない。

 

 拳銃一発、ナイフの一刺しで死ぬし、重量500キロの機体に踏まれるだけでも死ねるだろう。

 

 けれど、伊集院はマチェットソードを下げた。

 

「気が変わったよ。先にあのバケモノを殺そう。君は自分の無力さを思い知らせてから殺した方が、僕の溜飲が降りそうだからね」

「よせっ! がっ!」

 

 伊集院は、最後の置き土産とばかりに俺のわき腹を蹴り飛ばすと、血濡れの床に転がる桐葉の元へ跳んだ。

 

 ブースターの力で大きく跳躍した伊集院は、空中で弓を引くように肘を引き絞り、マチェットソードを突き出す体勢を作った。

 

 桐葉を串刺しにする気であることを悟った俺は、恐怖で心臓が止まりそうだった。

 

 桐葉が殺される。

 

 その事実に、一瞬で走馬灯を見るような勢いで、桐葉への想いが胸の中を駆け抜けた。

 中学校までずっと独りだった俺を、桐葉は大好きだと言ってくれた。ハニーなんて呼んで、将来結婚するとまで言ってくれた。

 

 桐葉は、いつだって俺を支えてくれた。

 

 そうした日々の中で、俺も桐葉のことが大好きになって、桐葉を助けたいと思った。

 辛い15年間の人生も、残りの人生を桐葉と過ごせるなら、これでよかったと肯定できるくらい、桐葉との出会いはかけがえのないものだった。

 

 それは桐葉も同じで、ずっと毒虫女といじめられていた彼女は、俺と出会えて幸せだと言ってくれた。

 

 せっかく幸せになれたのに、それが終わってしまう。

 

 やめてくれと、どれほど懇願しても、時間は止まらない。

 

 残酷な凶刃の切っ先は桐葉の心臓へ吸い込まれるように突き進み続けた。

 

 一秒にも満たない時の中で、俺は衝動的に言葉にならない何かを絶叫しながら、奇跡が桐葉を守ってくれるよう願った。

 

 

 刹那。

 マチェットソード型高周波ブレードの切っ先が、伊集院の背中を貫いていた。

 

 誰かがやったわけではない。

 

 信じられない気持ちで、ブレードの根元を視線で追うと、ブレードは空間の切れ目から生えていた。

 

 逆に、伊集院の突き出したブレードは、空間の切れ目に消えていた。

 

 それはまるで、二つの空間が繋がっているようにも見えた。

 

「な、なんだよこれ!? どうなっているんだよ!? このスーツにテレポートは効かないんだろ!?」

 

 誰かに苦情をぶつけるように怒鳴りながら、伊集院はブレードを引き抜き、周囲を見回した。

 

 どうやらブレードは伊集院を避けて通ったらしい。

 

 振り向いた伊集院は無傷だが、防風ガラスには蜘蛛の巣上のヒビが入り、そして割れ落ちた。

 

 千載一遇の好機に、体の痛みが吹き飛ぶような闘志が湧き上がった。

 

 ――テレポート!

 

 防風ガラスの穴が、スーツから伊集院を外にテレポートさせた。

 

「な、なんで僕が外に!? テレポート効くじゃないかぁ!」

 

 あとは、数メートルの高さから落としてもいい。下水道に落としてもいい。

 

 だけど俺は、自分の都合で真理愛を危険に晒して、学園のみんなを巻き込んで、桐葉を殺そうとして傷つけた伊集院を、それだけで許すことはできなかった。

 

 鉛のように重たい体を走らせて、俺はケダモノのような咆哮を上げながら、人生で初めて殺意を込めた拳を固めた。

 

「いじゅうううううううういいいいいいいいいいいいいいいん!」

「ひぃっ!? お、おくいぃいいいいいいいいいい!?」

 

 恐怖に引き攣った顔面へ、拳で体当たりをするような気持ちで右ストレートを打ち込んだ。

 

 やわらかいものが潰れる感触と硬いものが砕ける感触と激痛を右の拳で味わいながら、そのまま腕を振り抜いた。

 

「ぐげぁっ!?」

 

 伊集院は白目を剥いて転倒。

 後頭部を体育館の床にぶつけて動かなくなった。

 

「大丈夫か桐葉!?」

 

 伊集院を無視して、すぐ桐葉の安否を確認した。

 

 すると彼女は、最初に刺された腹部を手で押さえてはいるものの、新しい傷は無かった。

 

 床に座り込んだまま、安堵の表情を浮かべていた。

 

「ボクは大丈夫だよ、ハニー」

 

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●コメント紹介

 なんで素人の伊集院がパワードスーツを操作できるのかと言う質問がありました。

 これは脳波で動かすブレインコントロールシステムで動かすタイプなので手足を動かすように扱えるからです。

 

 また、なんで桐葉はハチスーツを着ているのにアポートが効くの?という質問がありました。

 桐葉のハチスーツは全身を隙間なく覆っているわけじゃないから効きます。

 坂東の氷鎧や、伊集院のパワードスーツは全身を隙間なく密閉するように覆っているのでテレポートは効きません。

 坂東戦で説明しましたが、テレポートは超能力に干渉できないからです。

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