スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました 作:鏡銀鉢
「おい、あれは詩冴の親戚か?」
「失礼っす!」
「誰に?」
「シサエにっす!」
詩冴が左右の白いツインテールをつかみ、ムチのように使って俺を攻撃し始めると、向こうも俺らに気づいたらしい。
弟さんと目が合った俺は、仕方なく助け船を出した。
「えーっと、お前たち異能学園の生徒か?」
「そうだよ。奥井さんだよね? おれらも特進コースだから、夏休みが明けたら同じクラスかもね」
初対面の俺らにも、弟さんは好意的に接してくる。人見知りはしない方らしい。
なら、余計に助けてあげた方がいいだろう。
俺は、有名人の登場に驚いているスタッフさんに向き直って頼み込む。
「そっか。すいません、このふたりも俺らの連れっていうことで一緒に入ってもいいですか?」
「も、もちろんです。奥井さんたちならフリーパスですよ!」
—―俺も有名になったもんだなぁ。
テレビや雑誌の取材を受けておいてよかったなぁ、と俺が思っていると、思わぬ横やりが入った。
「お、お、お、奥井育雄ですってぇええええ!?」
再び素っ頓狂の声を上げたのは、姉の貴美美方だった。
「ああ、どうもそうです奥井です」
今もっとも旬な有名人と言ってもいい俺の登場に驚いているのかと思ったけど、なんだか雰囲気がおかしい。
憧れの人に会えて感激しているというよりも、まるでオバケにでも遭遇したような悲鳴だ。
「どうしたの姉さん。前に会ったことあるの?」
「何を悠長なことを言っていますの! この男はテレポーターでアポーターですのよ!」
「うん、だから?」
冷静沈着な弟さんとは違い、美方は顔を真っ赤にして憤激中だ。
「つつつ、つまりこの男がその気になれば、ワタクシを裸でアポートしたあとこのダイナマイトボディを獣欲のままに蹂躙し尽くし、体液をアポートで除去してからワタクシを元居た場所にテレポートさせれば完全犯罪成立! ワタクシの貞操が、純潔が、イヤァアアアアアア! 誰かこの淫獣を逮捕してぇえええええ!」
「想像力モンスターか!?」
「テレポートと聞いてその利用方法を真っ先に思いつく姉さんのほうが淫獣だよ」
真っ赤な顔をブン回しながら暴れる美方に、桐葉が呆れ口調で話しかけた。
「あのねぇ、ハニーは24時間ボクのカラダに夢中なんだからキミに興味あるわけないだろ?」
「ハッ!? ア、アナタは針霧桐葉!? 確かハチの能力を持つ……」
「うん、そうだよ?」
「いやぁあああああああ! なんで日本政府はこんなバケモノを世に解き放っているのぉおおお!?」
美方は弟さんの背中に隠れて、喉が潰れそうな勢いで絶叫した。
桐葉を化物扱いされて、流石に俺は平静ではいられなかった。
「おい、化物ってなんだよ。取り消せよ」
「バケモノはバケモノじゃない! アナタ知りませんの!? 女王バチはそのフェロモンで何万匹というオスバチを意のままに操り! 働きバチは超高速ピストン腰振りダンスで仲間に情報を伝達し! 体を高速振動させて発熱しますのよ!」
くわぁっと目を見開き、美方は声を張り上げた。
「つまり、催淫機能付き超高速ピストンバイブレーション! 淫獣よ! 淫獣以外の何者でもないわ! なんてドスケベなコンビなの!?」
―—なんだろう、怒る気が失せた。
こいつはアレだ。健全なようでいて実は自分が一番下品なパターンだ。
アニメや漫画の性表現にクレームをつける界隈の人たちと同類だ。
一方、桐葉はちょっと語気を強めて文句を付けた。
「ちょっともうバラさないでよ。それはハニーとの初体験用のサプライズ能力だったんだから」
――えー! 本当にできるんですか桐葉さん!?
未来に待ち受ける初体験のクオリティに、俺は色々な意味で絶叫したくなった。
「きっとあの男は毎晩日本中の美少女を自宅にアポートして淫乱フェロモンで体の自由を奪ってから欲望のままに蹂躙し尽くしそれだけでは飽き足らず媚薬漬けにして女のほうから求めてくるように仕向け行きつく先は――ウッ!?」
守方の手から電気が走り、美方はビクンと意識を失った。
倒れる美方を腕に抱きとめ、守方は何事も無かったような平静さで尋ねた。
「すいません、姉さんは眠らせたので入場していいですか?」
「あ、あー……はい、どうぞ」
どうも、と言って、守方は白目を剥いた姉をお姫様抱っこして首里城の中に入った。
俺らも入って少し歩くと、背後から美方の声が聞こえてきた。
「はっ!? ここは!? ワタクシはまた貧血で倒れてしまいましたの!?」
「そうだよ。いつもの貧血だよ。姉さんは病弱だからね」
「深窓の令嬢にして薄幸の美少女ですもの、仕方ありませんわ。あら? 首里城の中にはどうやって入れましたの?」
「姉さんの威光の前にスタッフさんが通してくれたんだよ」
「フッ、気絶していても凡民たちを委縮させてしまう威光、さすがはワタクシですわね。オーホッホッホッ! さぁ守方、この沖縄旅行で英気を養い、二学期はあの調子に乗っている奥井たちをケチョンケチョンにやっつけますわよ!」
「ウンソーダネ」
「二学期になったら三分の一の確率であいつらと同じクラスなのか……」
「大丈夫。ハニーはボクが守るよ」
「あまり、お近づきにならないほうがいいかもね……」
「マツミちゃん、お仲間っすよ」
「あたしでもあれはドン引きだわ……」
「ハニーさん、私から早百合局長に打診しておきましょうか?」
俺、桐葉、美稲、詩冴、茉美、真理愛が口々に苦い言葉を漏らし、舞恋と麻弥は無言でそそくさと俺らのあとをついてきた。
★本作はカクヨムでは424話まで先行配信しています。