スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました   作:鏡銀鉢

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頼もし過ぎて感謝の言葉もない!

 

「頼む! 試合に出てくれ! メインイベントの桐葉と美稲の到着が遅れているんだ!」

 

 俺が感情をぶつけるように声を張り上げると、弟さんの守方が尋ねてきた。

 

「どういうことだい?」

 

「桐葉と美稲の試合は今日のメインイベントなんだ。客はみんなこの試合を楽しみにしている。だけど二人とも、総理のわがままに捕まっていつ来られるかわからないんだ。だからそれまで、お前らの試合で場を繋いで欲しいんだ! もちろん謝礼は払うしケガをしても茉美が試合後にすぐ治す! 勝手な頼みだと自分でも思う。だけど頼む!」

 

 嘘偽りなく、正直に懇願した。

 だけど、返ってきたのは俺の願いとは真逆の、侮蔑に染まった声だった。

 

「醜いですわね」

 

 頭を下げている俺には彼女の姿は見えないが、虫を見下すような表情がありありと浮かんだ。

 

「お前が怒るのは当然だ。お前の力を単なる場繋ぎの代役、しかも金で釣るような真似をして、後で治療するからって痛いのはお前らなのに!」

「そんなことはどうでもいいですわ」

 

 さっきまでの臆病風が嘘のように蔑んだ声で、彼女は講釈を始めた。

 

「頭の重さは下げた回数に反比例します。男が簡単に頭を下げるものではありません。 軽い会釈ならともかく、男がつむじを見せてもいいのは、己が魂を賭ける時だけと心得なさい」

 

 それから、まるで汚物を吐き捨てるように、美方は俺を罵った。

 

「己の野望のためなら誰にでも頭を下げる。そんな醜い豚のような、まさに破廉恥極まる者は凡民ではなく愚民。喋る家畜ですわ。いきますわよ守方、こんな連中、からかう価値もありませんわ」

 

 彼女が踵を返す足音を聞いて、俺は抑えきれない気持ちを口から絞り出した。

 

 

「俺の頭ひとつで山ほどの人を救えるなら、頭くらいいくらでも下げてやるさ」

 

 

 足音が止まった。

 振り返る音はしないも、貴美は背中で俺の言葉を待っているようだった。

 

「俺は何の努力もしていない。ただ生まれつきテレポートを持っていた、それだけで

四天王なんてもてはやされている。なのに戦闘系能力者は需要が無くて、みんな自己否定感に悩んでいる。これは理不尽な格差だ。俺は理不尽が嫌いだ」

 

 かつて、理不尽にいじめられ、誰も助けてくれず、独りだった頃の惨めな気持ちを思い出して、胸の辛さを押し込めるように息を呑み込んでから、俺は語った。

 

「戦闘系能力者ってだけで危険視されて、社会から必要とされなくて、鬱屈とした気持から犯罪に走る奴もいるかもしれない。俺の同級生の、坂東亮悟みたいに」

 

 ――それに、問題はそこで終わらない。

 

 俺の声は徐々に熱を帯びて、言葉を加速させながら、俺は思いの丈を吐き出した。

 

「その犠牲者は一生超能力者を恨む。そのうち超能力者全員が危険視されるかもしれない。そうなったら大勢が苦しむ。何十年も、何百年も差別問題が世界中に蔓延する。それを防ぐには、今ここで戦闘系能力者のイメージ回復と生きる道を示さないといけないんだ!」

「……でも、貴方がた四天王は別でしょう? 国益を左右する貴方たちを差別する人なんているはずがないわ」

 

 長い沈黙を破った言葉に、俺は頭を下げたまま、首を横に振った。

 

「それじゃ駄目だ。同じ超能力者たちが差別されて、俺らだけが特別扱い。そんな歪んだ世界で、俺は生きたくない。そんな世界を、俺の子供に見せたくない。俺は、俺の味わった理不尽を、他の奴に味わわせたくないんだ!」

 

 最後は、声をからさんばかりに声を張り上げていた。

 

 恥も外聞もない、感情をむき出しにした言葉を吐き出し終わると息は乱れ、俺は肩で息をしていた。

 

 関係者ルームに、長い沈黙が流れた。

 その永遠にも感じる時間を、俺はわらにもすがる想いで耐え続けた。

 

 すると、貴美の重たい声が降ってきた。

 

「貴美家の者が、動物園の獣が如き大衆の見世物になるなど言語道断……ですが」

 

 踵を返す摩擦音に、俺は曲げていた腰を伸ばして顔を上げた。

 そこには、威風堂々、女帝然とした風格で俺を見据える二つの瞳があった。

 

「凡民の期待に応えられぬ王など張子の虎にも劣りますわ!」

 

 語気を滾らせ、貴美は腰から瀟洒な扇子を取り出し、気風よく広げた。

 

「参りますわよ守方! 凡民たちに我らが威光を見せつけるのです!」

 

 姉の指示に、弟さんは目元をゆるめてほほ笑んだ。

 

「うん。流石はぼくの姉さん。カッコイイよ」

「当然ですわ! さぁ奥井育雄、ワタクシたちを、あのフィールドへテレポートさせなさい!」

 

 二人の返事に、俺は万感の思いを込めて叫んだ。

 

「頼もし過ぎて感謝の言葉もねぇよ。じゃあ頼んだぜ、二人とも!」

 

 俺は、貴美姉弟をテレポートさせた。

 

 

 

 

 

 

★本作はカクヨムでは433話まで先行配信しております。

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