スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました   作:鏡銀鉢

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体育祭開催です!

「では気を取り直して、私が皆さんの担任の鶴宮宮子です」

 

 言って、鶴宮先生は中指で眼鏡の位置を直した。

 

 どうやら、MR映像ではなく、今どき珍しい物理眼鏡らしい。

 

 灰色のタイトスーツに身を包み、長い髪をうしろで一本結びにした若い女性は、一学期に俺らの担任だった先生だ。

 

 どうやら、1組を担当してくれるらしい。

 

 眼鏡レンズの奥から、理知的な瞳で俺らの顔を見回してから、鶴宮先生は語気を強めた。

 

「さっそくですが、皆さんに二学期の学校行事予定表を配ります」

 

 言うや否や、鶴宮先生が空中に指先を滑らせると、俺の視界にメールマークが表示された。

 

 学園のローカルネット経由で届いたそのマークを指先でタップすると、視界にMR画面が開いた。

 

 9月から12月までのカレンダーには、各種学校行事が書き込まれている。

 

 ――9月は体育祭、10月は学園祭か……ん?

 

「ツルちゃん、体育祭が来週の月曜日っすよ」

「ええ、一週間後、体育祭を開催します」

『はやっ!』

 

 クラスみんなの口がシンクロした。

 

「学園祭と違って準備が少なく済みますからね。それに、競争心を煽るためにも学園祭前がいいだろうというのが龍崎理事長の判断です」

 

 ――龍崎理事長。早百合次官て肩書が多いなぁ……。

 

「世間の人たちに超能力者のことを理解してもらうべく、学園祭は一般の方々にも来ていただくオープンなものとします。そのためにも動画サイトに学園祭の宣伝PVを投稿し、学園ホームページには各教室の出し物紹介ページを作ります。そのPVの尺や紹介順は体育祭の成績順とします。つまり、優勝クラスはホームページの一番上に掲載され注目度ナンバーワンということです」

 

 クラス中から感嘆の声が漏れた。

 

「ツルちゃん、学園祭には優勝クラスとかないんすか?」

 

 両手を挙げてぐいぐい質問する詩冴に、鶴宮先生は勝ち誇った笑みを浮かべた。

 

「優勝クラスの全員に、アビリティリーグの年間パスポートが配布されるわ。それも、VR観戦、試合場観戦の両方です!」

 

 感嘆の声が、さっきの倍の音量で教室に響いた。

 その反応で俺らの作ったアビリティリーグの人気がうかがえて、けっこう嬉しかった。

 

 ――もっとも、俺らは関係者パスで年中無料だけど……。

 

 左隣に座る桐葉の横顔をチラ見する。

 

 太陽の光を受けながら亜麻色の髪を輝かせ、ミルク色の頬をゆるませ微笑を浮かべる彼女は一枚絵のように美しく、神々しくさえもあった。

 

 恋人の美しさに胸をトキメかせながら、彼女を幸せにしたいという欲求がムクムクと湧いてくる。

 

 桐葉は、ずっと蜂の能力を怖がられ、独りぼっちの小中学生時代を送ってきたらしい。

 

 彼女が失った学校生活を、この高校三年間で取り戻したい。

 

 思い切り青春をエンジョイしてもらいたい。

 

 まだうちのクラスの出し物は決まっていない。

 

 だけど、お店なら思い切り忙しく、ステージ発表なら万員御礼の中で、達成感のある学園祭にしたい。

 

 幸い、クラスのみんなもやる気を出していた。

 

「よし、じゃあ桐葉、俺らで学園祭優勝すっぞ」

「ハニーが勝つ気なら、ボクも頑張るね」

 

 桐葉は、好意的な笑みを返してくれた。

 

 

   ◆

 

 

 一週間後の9月10日。

 

 残暑残る時期の今日は晴天だが、気持ちの良い風が吹き抜け、体感温度はそれほど高くない。

 

 まさに、絶好の体育祭日和である。

 

 異能学園のグラウンドは朝から大盛り上がりだった。

 

 グラウンド、と言ってもそこは校舎に隣接した立派な陸上競技場で、100メートル走トラックの前はスタンド席になっていて、他は芝生の土手みたいになっている。

 

「札幌の円山競技場みたいっすよねぇ」

 

 と、北海道から来た詩冴が言っていた。

 

 画像検索をしてみると、確かに似ている。

 

 地面は土ではない。

 

 サッカーや野球をやるグラウンド中央部分は芝生で、その周囲の陸上用トラックスペースが赤い合成ゴムだ。

 

「流石は廃止された超エリート校だよな」

 

 言いながら周囲を見渡した。

 運動部希望の生徒たちが、最高の環境だと浮かれていた。

 

「二学期からは体育の授業も入るんだっけ?」

 

 そう言う桐葉の格好に、俺はちょっとみとれた。

 異能学園の体育着は、黒のランニングシャツにランニングショートパンツだ。

 なかなかに露出度が高くてドキドキしてしまう。

 

 それからしばらくして、開会式が終わると、生徒たちはスタンド席を目指すも、俺はその場に残った。

 

 理由は単純、俺がトップバッターだからだ。

 

『それでは、これより第一種目、100メートル走を始めます。第一レーン、一年一組、奥井ハニー育雄くん』

「だからハニーじゃねぇよ!」

 

 スタンド席の上、実況席に向かって叫ぶも、客席の大爆笑にかき消された。

他のレーンの走者たちも笑っている。

 

『なお、ルールはプログラムに書いた通りです。異能学園ということもあり、他選手を直接攻撃しなければ超能力の使用は原則OKとなります』

 

 知っている。

 そう、つまり俺は……。

 

『いちについて、よーい、ドン!』

 

 テレポート。

 俺はゴール地点にテレポートした。

 

「はい終わり」

『た、ただいまの記録、0・01秒……です』

 

 他のクラスや学園からはブーイングが、1年1組の席からは拍手が聞こえてきた。

 

「ズルじゃあねぇもんな」

 

 俺は、ちょっとしたり顔になった。

 続く女子の100メートル走は桐葉が出走。

 そして当然。

 

『一着桐葉選手! 記録は0・3秒です!』

「蜂が人間サイズなら飛行速度は超音速だよ。もっとも、衝撃波でみんなが死なないよう手加減はしたけどね」

 

 イタズラっ子のような笑みを浮かべてから、桐葉は俺の姿を見つけるや、一目散に走ってきた。

 

「ハニー見てくれた? ボクの勝利♪」

 

 ――ふぉおおおおうぁああああああ!

 

 彼女が走ると、シャツ越しに胸が揺れて大迫力だった。

 彼女が走らず水平飛行をしたのは正解だ。

 こんな絶景を、他の男子に見せたくない。

 

「と、いうことをハニーさんは考えています」

 

★本作はカクヨムでは456話まで先行配信しています。

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