スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました   作:鏡銀鉢

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美女と野獣

 照明が落ちると、今度は村の背景が映り、桐葉がはけて、代わりに美稲と茉美が現れた。

 

 照明が点くと、俺は笑顔で身振り手振り、MRオブジェクトの村人たちに言って聞かせた。

 

「というわけで明日、俺と姫様の結婚式だからみんな来て欲しいんだ。母さん、俺、あの人と結婚するよ。そうしたら、姫様の呪いも解けるんだ」

「あらまぁ。怖い人だと思ったけど、貴方が選んだ人なら、きっとあのお姫様も素敵な人なのね」

 

 美稲が笑顔の一方で、ステージの端にいた狩人姿の茉美は吐き捨てた。

 

「森にすむバケモノの呪いが解けるだって? 冗談じゃねぇ。そんなバケモノがいるなら、このあたしの獲物にもってこいだわ! そうだ、いいことを考えたわ!」

 

 再びステージが暗転すると、今度は俺の部屋の背景だ。

 誰もいないステージの上で、俺は寝起きの演技をして、ドアを開けるパントマイムをした。

 

「ふー、よく寝た。さて、今日は姫様との結婚式だ……あれ? ドアが開かないぞ? かーさーん、ドアが壊れているみたいなんだけど? あれ? 窓も開かないぞ?」

 

 すると、外から美稲の申し訳なさそうな声がする。

 

「ごめんなさい。貴方を外に出すことはできないわ」

「え? どうしてだい母さん」

 

「狩人さんから聞いたわ。森の化物は、人の心を操り食べるって。貴方はあの化物に騙されているのよ」

「そんなことないよ母さん。俺は騙されていなんかいないよ!」

 

「心配しないで、今夜、村の人たちがあの化物を退治しに行くから。そうしたら、貴方の目もきっと覚めるわ」

「な、なんだって!?」

 

 ステージが暗転すると、俺と美稲は舞台袖へ。

 ステージは屋敷の謁見の間に戻るも、BGMに人々の喧騒が流れている。

 桐葉の元へ、舞恋が駆け込んだ。

 

「お逃げください姫様! 大挙した村人たちを門を破り、ここへ押し寄せるのも時間の問題です!」

「そんな、彼は? 彼はどうしたの?」

「あの男なら来ねぇよ」

 

 弓矢を構えた茉美が、舞台袖から踊り出した。

 極上の獲物を前によだれを垂らす肉食獣を思わせる声で、茉美は弓に矢をつがえた。

 殺意のこもった鋭い矢じりは、桐葉へと向けられている。

 

「姫様!」

「邪魔だ!」

 

 放たれたMR映像の矢が、舞恋に当たった。

 舞恋は胸を抑えて倒れ、動かなくなる。

 桐葉は怯え、ハチの巨躯であとずさった。

 茉美は、弱者をいたぶり楽しむ支配者のようにゆっくりと歩み寄りながら、背中の矢かごから新しい矢を手に取り、弓につがえた。

 

「さぁ、これで最後だな!」

「やめろぉ!」

 

 俺が飛び出し、茉美を背後からはがいじめにした。

 

「なっ、てめぇは家に監禁していたはずなのに!?」

「母さんを説得して出してもらったんだ! 俺の愛する姫様を殺させないぞ!」

「えーい離せ! あっ、あっ、あぁあああああ!」

 

 俺と茉美は舞台袖近くまで下がってから、茉美は舞台袖に向かって転んだ。

 ごろごろと、まるで人が階段から転がり落ちるような交換音が流れて、最後にバタリと音がした。

 

「姫様!」

 

 力無く床に座り込む桐葉に、俺は駆け寄った。

 けれど、俺が桐葉に触れる直前、遠くから深夜0時を告げる、鐘楼の鐘の音が鳴り響いた。

 すると、桐葉が床に両手をついて悲嘆に暮れた。

 

「もうダメよ……16歳の誕生日を過ぎてしまった……もう私は人に戻れない。ずっと、このバケモノのまま……」

 

 その姿はあまりにも可哀想で、俺は胸をぎゅっとしめつけられるような、いたたまれない気持ちになった。

 

 彼女は何も悪くない。

 

 桐葉だって、好き好んでハチの能力をもって生まれたわけじゃない。

 

 ハチの能力を持っていたって、その力で誰かを傷つけたわけじゃない。

 

 なのに、どうして桐葉が傷つかないといけないんだ。

 

 何も悪いことをしていない人が、どうして傷つかないといけないんだ。

 

 俺は硬く握りしめた拳をほどいて、泣き崩れる桐葉を抱きしめた。

 

「姫様、結婚しましょう」

 

★本作はカクヨムでは498話まで先行配信しております。

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