スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました   作:鏡銀鉢

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麻弥に頼ってもらえなくてさびしい

今朝間違えて別の話を投稿してしましました。すいません。こっちがほんとうです。

 

 

 

 

  翌朝の月曜日。

 一時間目の授業が始まると、国語担当の女性教師が入室してきた。

 

 その表情は機嫌が悪そうで、目つきが鋭い。

 

「残念なお知らせです。金土日、三日分の宿題を送信しなかった生徒が、8人もいます。内容は小学校4年生レベル。やる気があれば誰でも簡単に解ける内容なのにです。つまり、送信しなかった人は、やる気そのものが無いと言うことです」

 

 教卓を軽く叩いて、先生は声に怒気を込めた。

 

「いいですか皆さん、この学園は、勉強ができない子に与えられた、最後のチャンスです。英語は一般動詞とbe動詞の違いもわからない、数式は呪文、社会科は何の話をしているのか通じない、国語はなにを問われているのかわからない。それは小中学校の勉強を理解していないから。基礎ができていないから。知識のピラミッドの下層部分がスカスカだから。でも、心を入れ替えて、解けて当然の問題にきちんと取り組めば、できる生徒に生まれ変われるの。宿題を提出しなかった生徒は、自らそのチャンスを棒に振っているのよ」

 

 誰かが言った。

 

「でも先生、オレら超能力のおかげでもう総務省に就職できているし、勉強なんてできなくてもいいじゃないっすか?」

 

 とある男子生徒は椅子の背もたれに体重を預け、鼻で笑った。

 

 まるで、もう人生の勝ち組になったかのような口調だ。

 

「君の能力は?」

「え? 地形操作ですけど?」

「将来、君の仕事はなくなるかもしれないわよ?」

「え?」

 

 態度の悪い男子生徒は、面食らったように目を丸くした。

 

「早百合部長も言っていたかもしれないけど、超能力の弱点は本人がいないと使えないこと。もしも将来、文句を言わなくて休みも給料もいらない、最新鋭の土木掘削マシーンが導入されて、自分の仕事がなくなるかも、とは考えないの?」

 

 先生の鋭い指摘に、男子生徒は声を震わせながら、自分へ言い聞かせるように返事をした。

 

「いやいや、そんなことないっしょ。SFじゃあるまいし、俺ら地形操作能力者よりも有能な掘削マシーンなんてできるにしても100年後とかでしょ」

「100年以上前、蒸気式掘削機が導入されて、炭鉱夫たちはみんな解雇されたのを知らないの? 最近でも、税理AIが導入されて、日本中の税理士が公認会計士に転職したわね。技術は進歩する。いつか機械に取って代わられる日のために、勉強はしておくべきではないかしら? それとも、土木マシーンも導入できない貧乏土建会社で低賃金で便利に使われる?」

 

 男子生徒は姿勢を正して、静かにうつむいた。

 

 他にも、何人か同じ行動を取る生徒がいる。きっと、似たようなことを考えていた生徒だろう。

 

 俺も他人事じゃない。

 

 今でこそ毎日海底からメタンハイドレートをアポートで掘削したり、がん、ウィルス、汚染物質中毒者の治療に当たっているけど、これがずっと続く保証はない。

 

 新エネルギーが見つかってメタンハイドレートがいらなくなったら?

 

 新薬が開発されてがんや病気、中毒が一発で治るようになったら?

 

 6億円なんて現実味の無いお金を貰ったけど、日本が今後、とんでもないハイパーインフレになったら、6億円なんて紙切れだ。

 

 ていうか、10分の1の円安の今じゃ、日本を一歩でれば6億円も6000万円分の価値しかないわけで。

 

 明日は我が身か、と思うと、俺も自然と背筋が伸びた。

 

「それと山見麻弥さん」

 

 先生の視線が、ぴしりと麻弥へ注がれた。

 

「どうしたの? 先週まではきちんと宿題を提出していたのに」

 

 その事実に、俺は驚いた。

 

 ――麻弥は歴史だけでなく、国語の宿題もやっていなかったのか!?

 

 これはいよいよ深刻だと心配になるも、麻弥はしょんぼりとうつむくだけで、何も言わなかった。

 

 その様子から何かを察したのか、先生はそれ以上、深くは追及しなかった。

 

「まぁいいです。とにかく、宿題は遅れてもいいから必ず提出すること。早くしないと、借金みたいにどんどん溜まって、いずれ首が回らなくなるわよ。じゃあ、授業を始めます」

 

 麻弥の席は、俺の斜め前だ。

 

 彼女の寂しそうな横顔に、彼女の助けになりたいと、俺は強く思った。

 

   ◆

 

 放課後。

 学校の生徒たちと一緒に、総務省へテレポートすると、俺は麻弥に声をかけた。

 

「元気ないけど、なんかあったか」

 

 麻弥は、ちらりと俺を見上げる。

 

 その眉は八の字に垂れて、彼女の落ち込みようを現していた。

 

 でも、麻弥は顔を横に振ってしまう。

 

「ううん……私は元気なのです……」

 

 そう言って、彼女は同じ警察班の生徒たちの輪に混ざっていった。

 

 人に言えない事情なのかもしれない。

 

 深く追求しないほうがいいのかもしれない。

 

 けれど、俺は麻弥に頼ってもらえないのが、なんだか寂しかった。

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