スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました   作:鏡銀鉢

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アイドルVS桐葉

 ●あらすじ2 10話~20話

 育雄のテレポートはどこにでも侵入できるので問題視されてしまう。

 そこで監視役として戦闘系能力者と暮らすことに。

 派遣されてきたのは桐葉という亜麻髪金眼の巨乳美少女。

 彼女はハチの能力を持つ自分のことを怖がらない育雄のことを気に入りハニー呼び。

 桐葉との甘い同棲生活がスタートするも、育雄は彼女の抱える心の闇に気づく。

 毒バチの能力を嫌われ、独りぼっちだった桐葉。

 だが、育雄の努力で桐葉は他のヒロインと仲良くなれた。

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 伊集院が席に着いたのを確認してから、先生は気を取り直すように咳ばらいをした。

 

「それと今日の連絡事項ですが、テレビ局が取材に来ます」

 

 教室がざわつくと、先生はみんなを落ち着かせるように言葉を継いだ。

 

「みんなが取材を受けるわけじゃないから落ち着きなさい。あくまでも学校設備の取材ですから。日本初の超能力者専門の学園ということで、みんなが思っている以上にうちの学校は注目されているんですよ。じゃあ、一時間目の授業を始めます」

 そう、先生が言った矢先、突然教室のドアが開いた。

 

 

「おっじゃましまーす♪ すごーい、皆さん見てください、この子たち全員超能力者なんですよ♪」

 

 突然、テンションの高い女子が教室に飛び込んできた。前に見たことがある。

 確か、やまちー、とか言われている人気アイドルだったか?

 

 その背後からは、大きなカメラを担いだ人や、先端にマイクのついた金属棒を持った人たちが何人もついてくる。

 

 みんなはどよめき、一部の生徒は「すげ、生やまちーだ」「おれファンなんだよな」とか呟いている。

 

 先生はぎょっとした顔で彼女たちの前に立ちふさがった。

 

「困ります。取材は拒否したはずです。校長の許可は取ったんですか?」

 

 テンションの高い女子が先生の脇をすり抜け、背後のスタッフたちが申し訳なさそうに先生に頭を下げる。

 

「すいません、彼女がどうしてもって」

「彼女、事務所の看板アイドルだからうちも、その、お願いします」

「そんなの関係ありません。承諾なく生徒を撮影するのは肖像権の侵害です。すぐに出て行ってください!」

 

 どうやら、わがままなアイドル女が、今話題の超能力者との絡みシーンがどうしても欲しくて、学校の許可を得ずに突撃してきたらしい。

 

 連中を外にテレポートさせるか、少し悩んだ。

 俺のテレポートは、控えめに言ってもチートだ。

 どんな相手でも、遥か彼方にテレポートさせてしまえば決着だ。

 でも、だからこそ使うことを躊躇ってしまう。

 

 正当防衛ならいい。

 けど、感覚が麻痺して、都合の悪い相手を片っ端からテレポートするようになったら、いつか、大切な人も、一時の感情で傷つけてしまうだろう。

 

 将来、桐葉と夫婦喧嘩になった時、怒りに任せて桐葉を宇宙空間に飛ばしてしまったり、俺に逆らったら宇宙に飛ばされると恐れられ孤立する未来が頭に浮かぶと、自然、テレポートを使うことを想いとどまった。

 

「あ、見つけましたよぉー、彼らが日本に一人しかないユニークホルダー、四天王の四人です」

「四天王?」

 

 やまちーがこちらに駆けてくると、俺らと伊集院を手で指してそう言った。

 

「テレポートの奥井育雄くん。オペレーションの枝幸詩冴さん。リビルディングの内峰美稲さん。予知能力の伊集院秀介くん。この四人は日本に一人ずつしかいないメッチャ貴重なユニークスキルの持ち主なんですよねぇ♪」

 

 ――ユニークって、【面白い】じゃなくて【固有の】って意味のか。

 

「しかも、奥井くんは一人で日本のエネルギー問題を、内峰さんは金属資源問題を解決している、まさに英雄なんですよ! SNSじゃ四天王最強とか言われてますよね」

 

 ――何? 俺らSNSでそんな風に言われてんの?

 

 正直、SNSとかまったく興味ないから知らなかった。

 こんなこと言っているから小学生の頃から坂東を中心にクラス中からいじめられてきたんだけどな。

 

「というわけで奥井くん♪ さっそくですがテレポートしてみてくださいよ♪」

「えっ?」

 

 ずいっとやまちーが迫ってきて、俺は椅子に座ったまま仰け反った。

 

 ――え? でも先生が取材拒否していたらしいし、取材に協力するのってどうなんだ?

 

 テレポートを見せるのは簡単だ。

 でも、これが前例になって、異能学園は取材許可がなくてもごり押しで取材できるとか、超能力者に見世物的に能力を使わせるのは有名税の範囲内、なんて風潮ができたら困る。

 

 俺は、意を決して口を開いた。

 

「いや、取材するならちゃんと学校か総務省異能部の許可を取ってくれませんか?」

「ちょっと奥井くんノリ悪いですよ。別にちょっとくらいいいじゃない。とりあえずそこから教壇の上にテレポートしてみてよ♪」

 

 やまちーが興奮気味にまくしたてると、カメラマンがレンズを俺に向けてきた。

 

 俺はちょっと心臓が跳ね上がって、ますます言動に困った。

 

 ――これって生放送か? もしもそうだったら、俺の不用意な言動で異能部や学校みんなに迷惑が……。

 

「ボクのハニーを困らせないでくれるかな?」

 

 刃のように冷たい声が、その場の空気を切り裂いた。

 

 俺の窮地を救ってくれたのは、やはり俺のボディーガードで恋人の、桐葉だった。

 

 先生、俺に続いて、次にぎょっとするのはやまちーの番だった。

 

 有体に言えば、人気アイドルのやまちーよりも3倍美人でグラマーで、スラリと手足の長い、亜麻色の髪の美少女を前に、やまちーは唖然としていた。

 

 小声で「え? CG?」とか言っている。

 

 わかる。桐葉の顔は日本人離れというか、やや人間離れした2・5次元美少女だ。

 MRゲームのヒロインNPCと言われたほうが、まだ説得力がある。

 

 そんな美人が、絶対零度の表情で対峙してくるのだ。その迫力は、美しいを通り越して、もはや【怖い】の一言に尽きるだろう。

 ハチミツ色の眼光に、やまちーは、完全に委縮していた。

 

 ――桐葉、久しぶりのクールモードだな。

 

 本来、桐葉は無邪気で妖艶な女の子だ。けれど、長年の迫害体験のせいだろう、【敵】と認識した相手には、暗殺者にも似た凄味と威圧感を放つようになったようだ。

 長いまつげに縁どられた切れ長の瞳が、冷徹に先生を捉えた。

 

「先生、取材許可が下りていないなら、彼女たちは不法侵入ですよね?」

「それは、はい」

「了解」

 

 不敵に笑った刹那、桐葉は指を三本立てた。

 

「三秒以内に出て行かなかったら警察に引き渡すよ3 2 1」

「は? いや、何言って、これテレビ――」

「さようなら」

 

 桐葉はやまちーを押し倒すようにして彼女の胴体を小脇に抱えると、開いた窓に足を駆けて、外に飛び立った。

 

 やまちーは高所恐怖症患者のように悲鳴を上げ、その悲鳴がみるみる遠ざかっていった。

 

 カメラマンは、事務所の看板アイドルに何かあっては大変だと、死に物狂いで教室の外に飛び出した。

 

 俺は頬をかきながら、乾いた笑いを漏らすしかなかった。

 

「桐葉……頼もし過ぎだろ……」

 

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