スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました   作:鏡銀鉢

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芸能界ジェノサイド

●あらすじ3 21話~30話

 美稲が海水から金属を生成し、詩冴が食べられる外来生物を集め、舞恋と真理愛と麻弥が警察で事件を次々解決し、破綻した日本社会はみるみる再生されていく。

 一方でただのタクシー役の育雄は落ち込んでしまう。

 が、育雄のテレポートは、遠くのものを召喚するアポートも可能であることが判明する。

 ヒロインたちとのエロハプを交えながらアポートの修行を成功させ、アポートをモノにする育雄。

 日本は1か月以内に石油などの燃料問題を解決する必要があった。

 しかし、育雄のアポートの海底資源であるメタンハイドレートを大量に手に入れ、日本はエネルギー問題から解放されたのだった。

 

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 翌日の木曜日。

 

 メディアは騒然としてた。

 

 人気アイドルのやまちーの枕営業動画に後輩アイドルへのイビリ動画が合わせて50本も動画サイトにアップされ、合計1億回以上再生されていた。

 

 事務所とやまちーはフェイク動画だと弁明しているが、専門家の分析で、本物の動画であることはすぐに証明された。

 

 いま、やまちーはプロデューサーへの売春と、後輩アイドルへの暴行罪で警察の事情聴取を受けているらしい。

 

 

 騒ぎはメディアにとどまらず、教室も大混乱だった。

 

 やまちーファンだった男子たちは、机に突っ伏して生きた屍となっていた。

 

 一部の女子たちは、いい気味だと笑っていた。

 一部の男子たちは、肩を組んで泣き合っていた。

 

「うぅ、こんな現実知りたくなかったでござるぅ~~」

「やまちーが枕営業なんてウソなりぃ~~」

「俺らの天使がぁ~~、明日から何を希望に生きていけば~~」

「だから言ったじゃないか。お前らも早く三次元に見切りを付けろと!」

 

 最後の一人はちょっと毛色が違った。

 俺の隣で、美稲が冷や汗を流した。

 

「う~ん、これってやっぱり、真理愛さんのせいになるのかなぁ?」

「ど、どうかなぁ……」

「みなさんおはようございます。これはなんの騒ぎですか?」

 

 悪気ゼロ、純真無垢の塊、有馬真理愛が教室に降臨すると、泣きべそトリオが真理愛に迫ってきた。

 

「有馬ぁ! あれやったのお前だろ!?」

「世の中には知らない方が幸せな現実もあるんだぞ!」

「俺は一生騙されていたかったぁ!」

「有馬って2・5次元美少女だからコスプレ似合いそうだよな!」

 

 真理愛は判断を仰ぐように俺に視線を投げてきた。

 桐葉も俺に目配せをしてきた。

 

「ハニー、こいつらはどうすればいい?」

「判断に困るなぁっ~~」

 

 悩み過ぎて頭が痛くなる。

 真理愛に危害を加えようとしたら威嚇していいけど、ある意味、彼らは被害者だ。

 すると、そこへ思わぬ助け船が現れた。

 

「君たちは何を言っているんだい。むしろ有馬に感謝しないと」

 

 長髪をかきあげながら、長身イケメンの伊集院が話に割って入ってきた。

 敵意をむき出しにするトリオに、伊集院は怖じることなく、余裕の態度を返した。

 

「だってそうじゃないか。君らは今まで騙されていたんだよ? でも、有馬さんがこうやって芸能界の闇を暴いていけば、本物のアイドルだけが残る。つまり、君らが本当に推すべき運命の天使がわかるんだ」

 

 トリオの顔に衝撃が走り、机に突っ伏していた他の男子たちも、ピクリと反応した。

 

「うぐっ、だ、だけど俺はやまちーに騙されていたかった。残酷な現実なんて知りたくはなかったんだ」

「気持ちはわかるよ。でもね、本当にいいのは騙されることでも残酷な現実に直面することでもない。本物の天使を応援することじゃないのかな?」

 

 トリオの背筋が伸びて懐中電灯のように大きく開眼。

 

 机に突っ伏していた男子たちに至っては握り拳と共に立ち上がった。

 

「だよな! 一番は本物の天使を推すことだよな!」

「有馬がいなかったら、危うくあのビッチに貢ぎ続けるところだったぜ!」

「俺は目覚めたぜ! 有馬、これからもアイドルオタクを騙すビッチどもの悪事をガンガン暴いてくれよな! 有馬は警察班のエースだぜ!」

「有馬ってアニメ声だよな!」

「承りました。警察班念写係りとして、犯罪の証拠を動画サイトに念写し続けます」

 

 ――芸能界終了のお知らせが聞こえる!

 

 俺は、静かに黙とうを捧げた。

 一方で、伊集院はみんなから崇められる真理愛の姿に満足げだった。

 伊集院なりに、フォローをしたようだ。

 こいつのおかげで真理愛が助かったのは感謝だけど、ちょっと不安になる。

 

「なぁ、こういうことはあまりしないほうがいいんじゃないか?」

「何を言っているんだ奥井? これは素晴らしいことじゃないか」

 

 くるりと振り返って、伊集院は俺の肩を掴んできた。

 

「僕ら警察班の仕事は犯罪者を捕まえること。むしろ、ファンが悲しむから芸能人だけ超能力捜査の対象から外すなんて特権、僕は嫌いだな」

「それは、まぁ、だけどよ」

「奥井は心配性だな。アイドルオタクは君が思っているよりもずっとたくましいんだよ? 推しが解散したらすぐに次の推しを見つけるしね。むしろ、絶望と悲しみは通過儀礼さ。それに、犯罪の抑止力にもなる。一番いいのは事件解決じゃなくて、事件そのものが起こらないことだからね。それと」

 

 急に俺の首に腕を回すと、伊集院は声を潜めて耳打ちしてきた。

 

「有馬さんに逆らえば汚職をバラされるとなったら、悪徳政治家だって僕ら超能力者に手を出せなくなる。君らは早百合部長と仲がいいみたいだけど政治家は別だ。ユニークホルダーの僕ら4人と有馬さんの5人が交渉カードになれば心強い」

 

 そう言って伊集院は俺から離れると、男子たちの輪に入って芸能トークを始めた。

 

 伊集院の言うことはもっともだ。

 

 欲をかいた政治家が、稼ぎ頭である俺や美稲を私物化しないとも限らない。

 

 ライバル政治家を宇宙空間にテレポートしろと、俺に暗殺を命令してくる可能性も、ゼロじゃない。

 

 だけど、真理愛がいれば悪徳政治家もおとなしくなるだろう。

 

「犯罪の抑止力か」

 

 そう言われて、俺は舞恋のことを意識した。

 舞恋のサイコメトリーは、残酷な事件の光景を読み取る関係で、精神的負担が大きい。

 日本の治安がよくなって犯罪そのものが減れば、舞恋を含めたサイコメトラー全体の負担も軽くなるだろう。

 

 なのに何故だろう。胸騒ぎがする。

 

 だから、いつのまにか真理愛に声をかけていた。

「なぁ真理愛。早百合部長の指示じゃないんだし、無理はしなくていいぞ」

「お気遣い感謝します。ですが、私の念写に消耗はありませんし、手間もかかりません。念のため、警察の確認は取ります。それに、私が活躍すれば、舞恋さんの負担も減りますし、私自身が悪徳政治家への交渉カードになり得ます」

「……そっか、ならいいんだけど」

 

 ――気づいていたのか。やっぱり、純真過ぎるだけで、頭はいいんだな。

 

 美人で賢くて純真で献身的。

 

 人としての魅力しかない真理愛の姿に、俺は彼女の幸せを願わずにはいられなかった。

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