スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました   作:鏡銀鉢

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妻と子と愛人のいる幸せな家庭?

「お、新生四天王のご出勤だぞ」

 

 俺らが総務省の講堂にテレポートすると、同じ異能学園に通うみんなが集まってきた。

 

「伊集院のことは聞いたよ。奥井たち大変だったな」

「有馬さん大丈夫だった? まさか伊集院があんな奴だったなんてね」

 

 どうやら、今朝のニュースを見て、俺らのことを心配してくれたらしい。

 伊集院が殺人教唆で捕まって、同じ学校の真理愛が襲われた、なんて聞けば当然だろう。

 ただし、一部の男子は、

「テレポートVS予知能力はテレポートの勝ちか」

「その試合見たかったな」

 と、武勇伝気分だった。

 

「前は有馬や奥井たちのこと、羨ましいなんて思っていたけど、最近大変だよな」

「え?」

 

 OUが俺らの拉致を狙っているという情報が洩れたのかと思い、一瞬焦った。

 けど、その男子は軽いノリで苦笑を浮かべた。

 

「だってそうだろ? ネットじゃ妬まれるし伊集院みたいな奴には襲われるし。俺も昔は有名税は当然だなんて思っていたけど、同じ学校に通う奴が大変な目にあっているのを見ると、俺は一般人で良かったって思うよ」

 

 ――あー、そういうことか。

 

「あたしもあたしも。そりゃあ今でも奥井くんや内峰さんいいなぁって思うけどさ、ネットで批判されるなら、今ぐらいがちょうどいいかなぁって。あ、異能学園に入ってから、フォロワー一万人いったんだよ」

 

 みんなの話をまとめると、どうやら異能学園に通っているだけでも、ある程度注目はされるらしい。

 

 みんな、軒並みSNSのフォロワー数やイイネが倍増している。

 一方で、批判をされるのは、やはりメディアで大きく取り扱われる、俺ら四天王のようだ。

 

 絶賛と炎上の両方を受けるスターよりは、批判は最小限でイイネを稼げるプチ有名人ぐらいでいい、という人は多そうだ。

 

「でもやっぱ、憧れるよな。俺の能力なんて、微風を発生させるだけだし」

「俺は指先にライター程度の火を起こすだけだし」

「俺は相手に寒気を感じさせるだけだし」

「俺は体がほのかに光るだけだし」

「俺は触れたものの重力を0・1パーセント減らすだけだし」

「俺は鼻先に電気を流す鼻スタンガンだし」

 

「すいません早百合局長。なんでこの6人を呼んだんですか?」

「む? 能力測定の為だぞ? ある日なにかのきっかけで能力が覚醒するかもしれんだろう? 鼻スタンガンが鼻から雷撃に進化するとか」

「そこは全身スタンガンにしましょうよ……」

 

 げんなりと肩を落としながらも、ちょっと楽しかった。

 普通、同じ学校どころか、教室が同じでも、人は友達グループを作り、他のグループとは疎遠になる。

 

 学年やクラスが違えば、もはや他校の生徒だし、一切の交流はない。

 なのに、こうして名前も知らないスクールメイトたちと自然とお喋りができる環境が信じられなかった。

 

 一瞬、俺が有名人になったからかとも思ったけど、違うようだ。

 

 異能学園の生徒たちは、前の学校の連中とは違う。

 こうして話しかけては来るけど、しつこく連絡先を交換しようとしたり、お金を無心してきたりはしない。

 

 連絡先を聞くのはある程度仲良くなってから、お金は稼いだ人のモノ、そうした常識と良識が身に着いた人ばかりなのだろう。

 

 可愛い恋人に仲の良い友人、気兼ねなく接することができるスクールメイトに理解のある上司。

 

 小中学生の頃は、ソロ充を気取っていた。でも、今の方がずっと楽しいし幸せだと断言できる。

 

「どうした? 随分と幸せそうだな?」

「ええ。一人でいた頃より、今のほうが幸せだなって。異能学園を作ってくれて、本気で感謝していますよ」

 

 早百合局長は、まるで教え子の成長を喜ぶ教師のように微笑を浮かべた。

 

「ふっ、それが成長というものだ。だがこれで終わりではない。貴君の人生はまだこれからなのだ。これから貴君は二年生、三年生へと進級する。それから進学か就職をして、結婚をして、そして愛する妻と子供と白い大きな犬と愛人のいる幸せな家庭を築くのだ」

「あのいま余計なものが混ざっていましたよね?」

「なんだ、貴君は猫派か? ちなみに私はウマ派だ」

「そういう問題じゃなくて倫理的に愛人はアウ、ト、で……」

 

 早百合局長を挟んだ向こう側から、真理愛がじっと俺の顔を見つめていた。

 真理愛の瞳は濡れていた。

 その眼差しからは、怯えと期待が入り混じった複雑な感情が伝わってくる。

 

 罪悪感と使命感が俺の両肩にそれぞれのしかかり、息を呑まされた。

 そうして、俺は窒息しそうなプレッシャーの中、せいいっぱいの言葉を絞り出した。

 

「よ、嫁がOKしてくれないと、愛人はアウトなんじゃないしょうかです?」

「どうした? 日本語がバグっているぞ?」

「バグってないでせう」

 

 早百合局長の向こう側で、無表情の真理愛がこころなしかホッとしているように見えた。

 

 俺は安堵で胸をなでおろした。

 

 ところで麻弥といい真理愛といいなんでみんな無表情のまま感情を表現できるの? 

テレパシー?

 

 ちょっとふざけて、真理愛にエッチなお願いを念じてみた。

 

「むむ、いまハニーちゃんからエロスの波動を感じたっす!」

「ハニー、いま真理愛のことをえっちな目で見たよね?」

「お前らかい!」

「奥井ハニー育雄、いま欲情したな?」

「早百合局長は大人だからできちゃだめでしょ!」

 

 世界最初の超能力者が生まれたのは18年前、という事実を踏まえながら、俺は鋭くツッコんだ。

 

 そして真理愛はMR画面を見ながら赤面していた。

 

 ――あぁあああああ! 真理愛の能力を忘れていたぁあああああ!

 

   ◆

 

 

 その日の仕事終わり。

 

 俺がみんなを総務省へ連れて帰ると、真理愛に向かって、桐葉が声をはずませた。

 

「ねぇ真理愛、昨日の話だけど、うちの隣の部屋に引っ越さない? 早百合局長の許可はとってあるよ」

 

 ――おいおいあれ本気だったのかよ?

 

 桐葉と同棲しているだけでも精神的に困ってしまうのに、ここで真理愛まで追加されたら、いよいよ俺は文明人の誇りを保てなくなってしまうだろう。

 

 だけど、俺が断るまでもなく、真理愛は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「すいません。お誘いは嬉しいのですが私の一存では決められません。両親の許可が必要です」

「そっか、じゃあハニー、真理愛を家まで送ってあげよ」

 

 ――え? これ両親がOKしたら一緒に暮らす感じなの? 愛人として?

 

 胸の中で不安が膨らみ、心臓がパンパンに張り詰めたように苦しかった。

 

 ――いや、大丈夫。安心しろ。真理愛みたいな最高過ぎる女の子、きっとご両親は真理愛を蝶よ花よと愛でているに違いない。見ろ、真理愛の物腰柔らかな品格を。ご両親の愛情を一身に受けて育ってきた証じゃないか。そんな娘を親御さんが俺のようなどこの馬の骨ともわからない男の、まして愛人に差し出すわけがない。俺は信じていますよ、お二人の愛を。

 

「そうだな、真理愛の両親に頼んでみよう」

「ハニーいますごい間があったよ?」

「気のせいさ!」

 

 俺は力強く拳を作った。

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