スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました   作:鏡銀鉢

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桐葉の嫁力

登場キャラが多すぎて誰が誰のセリフかわからないと思うのでまとめ。

奥井育雄(おくいいくお) 一人称:俺 二人称:お前 

 みんなからハニーと呼ばれ過ぎるせいで読者から本名を忘れられている。

針霧桐葉(はりきりきりは)一人称:ボク  二人称:キミ

内峰美稲(ないみねみいな)一人称:私   二人称:貴方  優しいお姉さん口調

枝幸詩冴(えさししさえ) 一人称:シサエ 二人称:~~ちゃん っす口調

有馬真理愛(ありままりあ)一人称:私   二人称:貴方  ですます口調

山見真弥(やまみまや)  一人称:麻弥   二人称:あなた なのです口調

恋舞舞恋(こいまいまいこ)一人称:わたし 二人称:あなた

三又茉美(みつまたまつみ)一人称:あたし 二人称:あんた

龍崎早百合(りゅうさきさゆり)一人称:私 二人称:貴君

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 その日の夜八時。

 リビングのソファに座り、俺は漫然とMR画面を壁に展開してニュースを見ていた。

 

 ニュースを見たいわけではない。

 テレビの内容なんて右から左だ。

 

 ただ、真理愛のことで悩む姿を、桐葉に心配させたくはなかった。

 けれど、俺の浅い知恵なんて桐葉にはお見通しだった。

 

「どうしたの、ハニー?」

 

 優しい肉声に顔を上げると、視線を合わせるようにかがんだ桐葉が、穏やかな笑みで待っていた。

 

 いつもの無邪気な顔でも、妖艶な顔でもない、子供を心配する母親のような、包容力溢れる柔和な雰囲気に、初恋の瞬間にも似た興奮を覚えてしまう。

 

「それは……」

 言い淀んで俺が視線を下げると、桐葉はソファのすぐ隣に腰を下ろした。

「真理愛のことでしょ?」

 

 やはり、全てお見通しらしい。

 敵わないなぁと、俺は誇らしい気持ちになった。

 

 俺のことをお見通しということは、それだけ桐葉が俺のことを理解してくれている、ということだ。

 

 そんな恋人を、未来の嫁を持てたことを誇らしく思いながら、俺は降参のポーズを取るような気持ちで口を開いた。

 

「桐葉には全部お見通しだな」

「未来の妻だからね。それで、ハニーはどうしたいの?」

 

 やわらかい声で身を寄せて、桐葉は肩を触れ合わせてきた。

 夜でも暑い七月で、俺も桐葉もノースリーブ姿だ。

 互いの肌が触れ合い、伝わる彼女の体温のおかげで、からまった心がほぐれていくように思えた。

 

「真理愛を助けてあげたい」

「なら、助けてあげればいいんじゃない?」

「それはできないよ」

 

 くちびるを硬くしながら、俺は苦しい胸の内を吐き出した。

 

「俺が真理愛を助けたくても、真理愛がそれを望んでいない。本人が助けを求めていないのに、親子の問題に首を突っ込むのは、独善だ。真理愛はこうあるべきだっていう、俺の傲慢だ」

「でも、ボクの時は助けてくれたじゃない。ボクはハニーの助けなんていらないって突き放したのに、なんで真理愛は助けてあげないの? 舞恋の時だって」

「桐葉や舞恋の時とは一緒にできないよ。これは親子の問題だからな」

 

 そう、それがネックだ。

 

「親子の問題だけは、本人でないとわからないんだ」

 

 俺はまだ高校一年生だけど、毒親の被害者や専門家関係の動画で、その複雑さは嫌と言うほど見てきて、そして納得させられた。

 

「子供にとっては、毒親でも親なんだ。代わりはいない。仮に真理愛の親を言い負かして真理愛と引き離しても、真理愛が救われるかは、真理愛しだいだ」

 

 子供は誰かに愛されたいのではない、親から愛されたいんだ。

 

 親を見限って家を出て行けば、その瞬間に親から愛されなかった子供という結論が完成されてしまう。

 

 だから、子供は毒親から離れられない。いつか親が改心して、自分を愛してくれるかもしれないという、甘い幻想にすがらずにはいられないから。

 

「でも美稲の時は助けてあげたよね?」

「美稲は、親よりも俺らを選んでくれていた。でも、真理愛は違う」

 

 大切な子を守れない無力感で頭が重く、俺がうつむくと、桐葉は透き通るような声を鳴らした。

 

「なぁんだ。なら、真理愛と話さないとだね」

 

 俺が顔を上げると、桐葉は顔をほころばせた。

 

「あのねハニー。ボクは嬉しかったよ。ボクが助けてって言わなくても、ハニーがボクを助けてくれたこと」

 

 桐葉は思い出を抱きしめるような声音で、桐葉はほんのりと頬を紅潮させた。

 

「ボクはハニーに助けを求めなかった。でもそれは助けてほしくなかったからじゃない。自分が助かるなんて思っていなかったから。ハニーに期待していなかったんじゃない、自分の人生に期待していなかったんだ」

 

 かつての桐葉を思い出して、俺は胸が辛くなるも、彼女は今が幸せだと言わんばかりの笑顔で俺の顔を覗き込んできた。

 

「でもねハニー。やっぱり、辛くて苦しい時は誰かに助けて欲しいんだよ。真理愛が、本当に余計なお世話だって言うならそれでもいい。だけど、勝手にボクらで助けは必要ないなんて決めつけちゃダメだよ」

 

 桐葉の一言で、俺は一気に視界が開けたように感じた。

 自然と顔が上がり、体が軽くなった気分だ。

 

「ありがとうな、桐葉。それとごめん、気ぃつかわせて」

「そうだよハニー。相手を心配させたくなくて悩みを抱えるのは恋人止まり。悩みを共有して相手に助けを求めるようになって、初めて恋人以上になれるんだよ」

 

 するりと伸ばした腕で俺の肩を抱き寄せて、俺の耳元に甘えてくる桐葉。

 

 恋人以上という言葉もさることながら、彼女の暖かい吐息と甘い匂いに、力が湧いてくる。

 今なら、真理愛を三人くらい助けられそうな気がした。

 

「なんだか、桐葉と一緒に居ると、真理愛を三人くらい助けられる気がするよ」

「真理愛は一人だよ?」

 

 俺の意気込みを聞いた桐葉の含み笑いが、押し倒したいくらい可愛かった。

 

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