銃、手榴弾、幽波紋(スタンド)   作:春雨シオン

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Part12 補習授業部 その①

「……リンゴ? 大丈夫?」

 

「問題ない……そうだ、大丈夫だ。」

 

 

 先生は本当に、私たち生徒のことをよく見ている。だが今はその優しさが、ただひたすらに面倒だ。私を気遣うような発言を受けて、ハナコやヒフミたちも次々と反応する。

 

 

「あら? 確かに少し、顔色が悪いような……気分でも悪いのですか?」

 

「そ、それなら少し保健室で休憩された方が……」

 

「きゅ、休憩!? 保健室で何するつもりなのヘンタイ!!」

 

「コハルちゃん、流石にそれはピンクすぎると思いますよ……。」

 

 

 口々に私の心配をしてくる補習授業部の面々。……とにかく、今はこの場を凌がなければ。

 

 

「すまない、本当に大丈夫だ。初めて会う人たちの前で、少し緊張しすぎていたみたいだ。皆いい人そうだし、今はもう何も心配していることはない。」

 

 

 笑みを浮かべた私の顔を見て、ひとまず彼女らは納得してくれたらしい。そういえば、とヒフミの提案を受けて、アズサは改めて私に向き直り、自己紹介を始めた。

 

 

「白州アズサだ。特技はゲリラ戦やブービートラップ、趣味は……これだ!」

 

 

 アズサが誇らしげに取り出したのは、デフォルメされた頭蓋骨のような模様を顔に持つ、奇妙なキャラクターのぬいぐるみだった。

 

 

「とてもかわいいだろう。スカルマンというんだ。」

 

「はい! この子たちはモモフレンズといって、沢山の魅力的なグッズを出してるんです! 私は特にこの、ペロロ様が大のお気に入りなんです!」

 

 

 言いながら、ヒフミは力なく舌を放り出した……もう面倒だ。不気味な鳥のぬいぐるみを見せてくる。……こいつらのどこにそんな魅力を感じているのかはわからないが、とにかく話を合わせておこう。

 

 

「そ、そうだな。いいと思うぞ。」

 

「わかりますかリンゴちゃん! そうなんです、とってもかわいいですよね! ペロロ様だけでもこんなにバリエーションがあって―――」

 

 

 ……どうやらヒフミにモモフレンズの話をさせると、止め時がわからないくらいに喋り続けるらしい。何とかなだめすかして、今日の補習授業が始まった。

 

 

(……ペロペロとかいうキモい鳥に毒気を抜かれたが、白州アズサ……お前への感情は薄れていない。今夜、ケリをつけてやる。)

 

 

 ふと思いつき、私はスマホを手に取った。モモトークのアプリを起動すると、少ない連絡先の中でも二人の名前が目に入る。砂狼シロコと一之瀬アスナだ。

 

 しばらくその二つを眺めた後、スマホの電源を切った。私は今、何を考えた? いくらスタンド使いだからといって、あいつらを私たちの事情に巻き込もうとしたのか?

 

 

(私だけだ。この戦い、この因縁は、私だけのもの。)

 

 

 私がひそかに固めた決意も知らないままに、授業の時間は流れていった。ほんのわずかな、一瞬にも満たないように感じられた。

 

 

「アズサ、この後少し時間はあるだろうか?」

 

「む、リンゴか……。」

 

 

 授業が終わった後、私は何気なくアズサに話しかけた。突然話しかけられたことで私を警戒しているようだが、周りには先生も他の生徒もいる。ここで不用意な行動を起こしはしないだろう。私はアズサの耳元まで近づき、一言だけ囁いた。

 

 

vanitas vanitatum, et omnia vanitas……説明は不要だろう。」

 

「ッ!? お前は―――!!」

 

「そういうことだ。今夜、付き合ってくれるだろう?」

 

「……わかった。20時、第5体育倉庫だ。」

 

 

 場所と時刻の指定……間違いなくトラップがあるな。だが私のスティッキィ・フィンガーズなら、入口以外からでも侵入は容易だ。仕掛けを搔い潜り、アズサを欺くことだって出来るはず。今日、始末してやる。

 

 

「……アズサちゃん? それにリンゴちゃんも、もうそんなに仲良くなっちゃったんですか?」

 

 

 アズサに警戒しつつ、横目でちらりと声のする方を窺う。密約を交わす私たちを、心配そうにヒフミが覗き込んでいた。

 

 

「……まあな。アズサとは妙に気が合う。」

 

「私も同感だ。ヒフミ、今日は先に帰ってくれないか?」

 

「えっ……わ、わかりました。それじゃアズサちゃんにリンゴちゃん、また明日!」

 

「うん、また明日。」

 

 

 ヒフミは疑念を完全には振り払っていないようだが、それでも私たちを尊重して出て行ってくれた。

 

 

「ヒフミはいい奴だ……。本当に、私たちにはもったいないくらいにな。」

 

「貴様、ヒフミに手を出したら……!」

 

「それはありえない。私の獲物はお前一人だ、白州アズサ。」

 

 

 互いの視線が交錯し、火花を散らす。もはや言葉は不要だった。どちらが先だったかは覚えていないが、とにかく私たちは教室を出た。明日の朝日を、どちらかは見ることが出来ないだろうと察しながら。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「第5体育倉庫……ここか。」

 

 

 時間ぴったりに指定の場所に着いた私だったが、倉庫の外にアズサの姿は見えない。だが入口はわずかに空いているし、中の明かりもついているのが確認できる。アズサは中で私を待っているようだな。

 

 

「馬鹿正直に扉を開けて、ブービートラップに引っかかってやる必要はない。ここは……そうだな、天井から侵入するとしよう。」

 

 

 体育倉庫の壁に、足場になりそうな出っ張りや窪みは存在しない。あまり使われていない場所だと聞いているが、それでもここまで綺麗に整備されているあたり、よほどトリニティには余裕があるのだろう。

 

 

「掴めるところがないなら、作ればいい。私の『スティッキィ・フィンガーズ』ならそれが出来る。」

 

 

 壁に触れ、天井まで伸びるジッパーをつける。後はこのつまみに掴まって上に開いてやれば、つまみが上に行くのに従って私の体も上昇する。矯正局から脱獄する際、何度も使った手法だ。

 

 

「壁に穴は開いていないから、私の能力についてはわからないはずだ。ひとまず天井から、アズサの様子を探るとするか……。」

 

 

 音を立てないように注意しながら、指先で天井に触れ穴を開ける。外から見ただけでも、ある程度のトラップの配置はわかるはずだ。倉庫の中には明かりがついているから、外から入って来る月明かりでバレることもない。

 

 

 アズサは倉庫の中に、ガスマスクをつけて待機している。跳び箱の陰に隠れているあたり、私が中に入ってもすぐには彼女を見つけられなかっただろう。トラップに引っかかってテンパってるところを攻撃するという作戦か。

 

 

(扉のノブにワイヤー……手榴弾に繋がるトラップだな。ドアを開くとワイヤーが引っ張られて、ピンが引っこ抜けて爆発……というところか。)

 

 

 まずは一つ見破った。だが私なら……いや、私たちなら、トラップが一つだけなんてヌルいもので終わらない。最初のトラップを見破って得意になってる奴を狩る……もしくは仲間を助けようと突入してくる奴を仕留める第二陣があるはずだ。

 

 

(……だが、ここからじゃあ見えない。これ以上の確認は無理か。)

 

 

 いや待て、こうなったらこの穴から上半身だけ出して、奴に拳を叩き込んでやる。床に降りなければ、トラップに引っかかることもないだろう。

 

 

 音を立てないようにゆっくりとジッパーを拡大し少しづつ、少しづつ体を乗り出す。天井の高さは3~4mほど。ギリギリだが、拳が届く射程距離内だ。

 

 

(あと数十センチ……入ったッ!! 喰らえ、スティッキィ・フィンガーズ!!)

 

 

 渾身の力で拳を繰り出し、アズサの後頭部を狙う。スティッキィ・フィンガーズの能力ならば、一撃食らわせた時点でアズサを無力化出来るはずだ。だがその拳が、アズサに命中することはなかった。

 

 

「なっ……!」

 

「捕らえたぞ……! お前が天井に陣取っているのは、気づいていたからな。」

 

 

 受け止められた!? スタンドに触れることが出来るのは、スタンドだけ……ということは、つまりッ!!

 

 

「白州アズサ……ッ! お前、やはりスタンド使いッ!!」

 

「黒沢リンゴ、お前も私と同じか。やっぱりアリウスから……え?」

 

 

 アズサの背後に音も無く現れた、人型の(ビジョン)。実際に見るのは初めてだ……スティッキィ・フィンガーズ以外の、近距離パワータイプ!

 

 とにかくこの不安定な姿勢でいるわけにはいかない。スティッキィ・フィンガーズがラッシュを繰り出し、アズサの意識を反らした隙に、私は天井から飛び降り、アズサの延髄をハイキックで狙う。

 

 

「ま、待ってくれ! ジッパーで穴を開ける能力……まさかあなたは、茶山(さやま)タルト』なのか!?」

 

「!?」

 

 

 お互いの動きがぴたりと止まる。こいつ、何故その名を知っている?

 

 

「な……何故、その名を?」

 

「やっぱりそうだ! タルト、あなたはタルトなんだな!」

 

 

 花がつぼみから開くように、アズサの表情がぱあっと明るくなる。

 

 

「こんなところにいたなんて……! あっ、私はアリウスに密告するつもりなんてない、信じてくれ!」

 

「ま……待てと言ってるんだ! それに騒ぐんじゃあない。『アリウス』だとか『タルト』だとか、あまり大きな声で話すなッ!」

 

 

 何とかアズサを落ち着かせ、私たちは跳び箱を椅子代わりに腰掛けた。まずはお互いが、相手に対して持っていた認識に対して確認することにした。

 

 

「私から話そう。お前の言う通り、私は昔『茶山タルト』という名前だった。あの場所……アリウス自治区を出てから、今の『黒沢リンゴ』を名乗り始めた。」

 

 

 元の名前……『茶山タルト』は、自分がアリウスの生徒であるという過去と共に捨てた。自分のことを知る者は外の世界にはいなかったから、過去を隠し名を変えれば、新たな人生を歩めるはずだと思っていた。だが実際には『矢』の情報を先生が持ち込み、それが外の人間にも被害を出していると知ってしまった。

 

 ……見てみぬふりをして、自分には関係ないと生きていればよかった。矯正局の中にいれば、三食の食事はきっちり出る。クリスマスや正月にはご馳走だって出た。刑務作業をこなせば賃金が支払われる。自由だけはなかったが、スティッキィ・フィンガーズを使えば簡単に脱獄出来た。

 

 そして何より、アリウスからの刺客も手が出せない場所だった。無理に矯正局の中に攻めて来れば必ず騒ぎになり、アリウスの存在が露呈する。そうなればトリニティに攻め込まれ、虫ケラのように踏みつぶされるだけだ。だから矯正局は、私を閉じ込める檻であったと共に、私を守る砦でもあった。

 

 

 だが今、こうして私は外に出た。今もどこかで、矢のせいで死にかけている奴がいると思うと我慢ならなかった。確かに危険は増えたが、私は自分が正しいと信じられる道を歩いている。後悔はない。

 

 

「今はシャーレの先生の庇護のもと、スタンド使いを追っている。補習授業部に来たのもその一環だ。」

 

「スタンド使いを……? 何故だ?」

 

「それに答える前に、お前にも自分のことを喋ってもらおうか。白州アズサ。」

 

「そうだな、その通りだ。話そう。」

 

 

 アズサは一つ咳払いをして話し始める。心なしか、その表情には憂いが見て取れる。先ほどまではスカルマンとやらを語る時のように生き生きしていたのに、どういう心境の変化だ?

 

 

「私は白州アズサ……あなたと同じように、アリウス自治区出身だ。『スクワッド』の指導を受け、今回は任務でトリニティに来ている。その任務は……。」

 

 

 アズサは一瞬ためらった後、一息に告げた。

 

 

『スパイ』だ。私はトリニティに潜伏している。」

 

眠れる諜報員(スリーパー)……ということか?」

 

 

 アズサがおずおずと頷く。まるで大人にいたずらが見つかって、怒られるのではないかと怯えている子供だ。

 

 スリーパーというのは、敵の自治区や組織の中に一般人として潜り込み、指令を受けるまで待機するスパイのことだ。普段は一般人として過ごしているが、ひとたび指令が入れば情報収集や破壊工作など、いかにもスパイといった働きを行う。

 

 

「どうやって潜り込んだ? 私もそうだが、背景が不透明な者に、簡単にトリニティの門が開かれるとは思えない。」

 

「……ティーパーティーの、聖園ミカを知っているか?」

 

「ああ。私がここに入れたのも、ミカの手引きがあったからだ。」

 

「それなら話は早い。ある日、ミカが私たちの自治区にやって来たんだ。」

 

「!? バカな……ッ! 自殺行為だ!」

 

 

 ミカのいかにもわがままなお嬢様というイメージと、トリニティと敵対しつづけてきたアリウス自治区に行くという行動はどう頑張っても結びつかない。

 

 

「うん……私も正直、まだ信じられない。しかもミカは、私たちアリウスと仲直りしたいと言ってきた。その友好の象徴のために、アリウスの生徒をトリニティに転校させないか、とも……。」

 

「……ありえない。アリウスとトリニティが、仲直りだと? トリニティの連中にその気持ちがあったところで、アリウスがそれを飲むとは思えん。」

 

「それは、私もそう思う。アリウスを見捨てたクセに、今更何だと思う気持ちがないわけじゃない。」

 

 

「……でも、トリニティに迫害されたのは、私たちじゃあない。私たちが抱いている憎悪も、怨念も……私たちのものじゃあないと思うんだ。」

 

 

 言いながら、アズサは跳び箱から立ち上がった。静かに目を閉じたかと思うと、一言だけ小さく、しかしはっきりと告げた。

 

 

『リブ・ウィズ・ミー』

 

「ッ! こいつは……」

 

 

 アズサの傍に、彼女を守るように人型の(ビジョン)が現れた。黄金を基調に、花のような意匠で飾られたそいつに表情はないが、どことなく誇らしげに見える。私がかつて憧れ、それ以上に妬んだあいつらにそっくりだ。

 

 

「私のスタンドだ。能力は体を糸のように解くと、発見した痕跡をつけた人を示す絵になったり、その人に向かって伸びていったりする。糸はある程度の強度があるから、拘束や足場にも使える。」

 

「……何故わざわざ、私に能力を話した? お前もスタンド使いなら知ってるはずだ。スタンド使いにとって能力を知られることは、命に関わることだと。」

 

「……。」

 

 

 私に背を向けたアズサの表情は伺いしれない。スタンドの体を解いた糸を指の間に通してみたり、交差して結んでみたりと手遊びをした後、意を決したように振り向いた。その瞳には、妙に力を感じることが出来た。

 

 

「私が……あなたに、憧れたからだ。」

 

「……何?」

 

 

「あなたがアリウスを脱走した後。当たり前だけど、アリウスは大騒ぎだった。どうにかしてあなたを捕まえようと、私たちみたいな兵隊だけじゃなく、教官たちまで駆り出された。でもとうとう、あなたが見つかることはなかった。」

 

「見つかったのは壁に残されたジッパーの跡だけ……それさえも、スタンド使いにしか見ることは出来なかった。完全に、アリウスから逃げ切ったんだ。」

 

 

「あなたは……『希望』だったんだ。アリウス出身なのに、外の世界に逃げ延びた。そういう人がいるという事実自体が、私たちに希望を抱かせた。もしかしたら、いつか私たちも……と。」

 

「……私は、そんなつもりで逃げ出したわけじゃない。ただ単に、あそこで死んでいくのは嫌だっただけだ。」

 

「そう、それなんだ。あの場所にいた私たちの心は、ずっとゆっくりと死んでいくだけだった。教官や大人の都合のいいように使い潰されて、道具として捨てられるだけだった。でもあなたが逃げ延びたおかげで、皆の心が生き返ったんだ。」

 

「今のアリウスは、あなたがいたころとは全然違う。大人の命令に盲目的に従うだけじゃなく、自分たちで進む道を決めたいと願う人たちだって大勢いるんだ。」

 

 

 いつの間にか私のすぐ前に立っていたアズサが、両手で私の手を握る。まるで祈りでも捧げるかのような両手の形は、アズサの体温を私の手に伝え、その熱は心の臓まで届く。

 

 

「私が今まで生きてこられたのは、私だけの力じゃない。家族に生きるための力をもらい、あなたに前に進む勇気をもらった。」

 

「……やめろ。私はそんな、高尚な人間じゃあない。」

 

 

 振り払おうとした手は、それでも固く握られた。アズサは一言一句伝わるようにと、力強い言葉を紡ぎ続ける。

 

 

「あなたが生きていてくれたことが……この上なく、嬉しいんだ。この世に生きていていいんだと、生きていればいつか、ここから抜け出せるかもしれないと、あなたが教えてくれたんだ。」

 

「『|vanitas vanitatum et omnia vanitas《全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ》』……確かにそうかもしれない。でも!」

 

 

「―――あなたは、それでも諦めなかったんだろう?」

 

 

 ……白州、アズサ。私はかつてお前のことを、『スクワッド』に運よく拾われただけの、才能に恵まれただけの、憎たらしい奴だと思っていた。どうしてあそこにいるのが私じゃないんだと……妬ましさに唇を噛んだ日なんて数えきれない。

 

 

 感謝するべきなのは私の方だ。今日この瞬間まで、生きることを諦めないでくれてありがとう。私と出会ってくれてありがとう。救われたのは、生き返ったのは、私の方なんだ。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 ―――現実に存在するのか、それともしないのか……。それすらも不明瞭な場所で、一人の大人が忌々しげに壁を―――彼女の横にあるため、便宜上壁と呼ぶ何かを―――拳で殴った。

 

 

「……アリウス自治区の洗脳が不十分ですね。脱走者を出したせいで、希望などというくだらないものが蔓延しつつあるようです。」

 

 

 彼女は、人間とはとても思えない深紅の肌を持っていた。赤鬼の絵を描く際、誰もが想像するような肌の色と、花弁の隙間から覗いているような無数の瞳を持ち、あきらかに人間ではなかった。それでも誰も彼もが、彼女を『大人』だと認識していた。盲目的に従うべき、絶対的な主人だと。だがその支配に今、綻びが生じつつあった。

 

 

「……ですが、まだ慌てる必要はありません。ゲマトリアの集会……その中で、面白い話が聞けましたから。」

 

「―――『地下生活者』。ゲマトリアから追放された、哀れで孤独な求道者。」

 

「せいぜい、私が上手く使って差し上げましょう。どうか、愉快に踊ってくださいね?」

 

 

 彼女―――ベアトリーチェの口の端から、頬が不気味に裂ける。その痛ましい表情はまるで、無邪気な子供の笑顔のように見えた。




『リブ・ウィズ・ミー』 本体:白州アズサ

破壊力:B スピード:B 射程距離:C 持続力:C 精密動作性:D 成長性:A

体を糸のようにほどくことが出来る。糸は自在に動かすのみならず、見つけた痕跡を調べると、痕跡を残した相手の方に伸びて追跡したり、相手の情報を示す絵を描いたりすることが出来る。

そのデザインにはかつて、彼女が家族と慕っていたとある人物に聞かされた童話が大きく影響している。孤独で飢えた猫が獲物と勘違いして捕まえた金の糸が、猫すら忘れていたご馳走や女の子の姿を描いてみせる。それを見て自分がかつて飼い猫であったこと、自分を可愛がってくれた女の子がいたことを思い出し、金の糸に導かれて家族のもとに帰るという話だ。

何者かを追跡するのに持ってこいの能力だが、彼女の家族たちはアズサの能力を誰にもばらすことはなかった。そのため、リンゴの追跡にスタンドが用いられることはなかった。
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