銃、手榴弾、幽波紋(スタンド)   作:春雨シオン

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ジョジョ6部のアニメを見返しております。6部は直感的に理解できるスタンドは少ないですが、スゴ味で理解した気になって読み進められるのが流石だなあと感じます。そういったスタンドバトルを描けていると嬉しいです。


Part8 春葉原行き超特急 その②

「金具が爆発したら、この車両は線路上に取り残されるッ! そうなったら次の電車と衝突して大事故になるぞッ!」

 

 

 ネルの叫びに対し、答え合わせをするように爆発が巻き起こる。

 

 

「や……やっぱり爆発したッ! 電車が止まってしまうぞッ!」

 

「いいや―――その心配はない。既に私の『スティッキィ・フィンガーズ』が、金具どうしを結合させたからな。」

 

「何を……。」

 

「わっ、すごいすごい! 見てみてリーダー、金具がジッパーで繋がってる!」

 

「はぁ?」

 

 

 爆発した金具はボルトを吹き飛ばし、本来ならこの車両は分断されていたはずだ。だが私の『スティッキィ・フィンガーズ』は、穴を開けるだけが能じゃない。ジッパーを閉じることで、異なる二つのものを接合することも出来る。

 

 

「と……とりあえず、車両が分断される心配はない、ということか……。」

 

「ああ。敵の能力も大体は把握できた。ここから反撃だ。」

 

「反撃、って……敵はこの近くにいるのかッ!?」

 

 

 私は頷き、自らの考えを述べる。

 

 

「まず、敵の能力だ。今までの爆発が攻撃方法なのは間違いないが、それには『スイッチ』がある。『振動』だ。」

 

「確かに、今まで爆発したやつは全部震えてやがったな。それが一定の基準まで達すると……ドカン!ってわけか。」

 

「ああ。それも、恐らくは生物以外に限定されるのだと思う。そうでなかったら私たちの声帯や鼓膜も爆発しているはずだからな。」

 

「ちょ、ちょっと待って、ください!」

 

 

 いきなり話に割り込んできた声に振り向いた。牛乳瓶の瓶底みたいな眼鏡をかけた生徒が、脚を震わせながら声を上げていた。

 

 

「そ、その話、本当なんですか? し、振動で、爆発するって……。」

 

「……ああ。だが―――」

 

「だ、だったら、不味いですよ! この後、老朽化のせいで電車が大きく揺れる線路に差し掛かるんです!」

 

「なっ……! 今から何分後だッ!」

 

「じゅ、十五分もありません! 私はキヴォトス中の電車を乗り回した乗り鉄なので、間違いありませんッ!!」

 

 

 その声に、乗客はとうとうパニックになる。誰も彼もが察したのだ。この電車そのものが、爆発しようとしているのだと。

 

 

「皆さん、落ち着いて……! どうか、落ち着いてください!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! そこどいてよ、早く逃げないと!!」

 

 

 何とか落ち着かせようとしたアカネを押しのけ、草食獣の群れが大移動するように、車両の連結口に殺到する。機関銃のような足音が鳴り響き、狂乱はより一層激しくなっていく。

 

 

「ま、待てよ……! 生物以外の振動に反応して、爆発するということは……ッ!!」

 

 

 今、大量の生徒が殺到する出口付近。彼女らは皆、衣服や靴を身に着けている。それが激しいくんづほぐれつの中で、基準に達してしまったとしたら……!

 

 

「と、止まれェーーーッ!! お前たちの衣服が、爆発しようとしているんだァーーーーッ!!」

 

 

 激しい光と共に、爆発が巻き起こる。爆弾と化した衣服が次々と生徒たちの意識を刈り取り、負傷者の山を築き上げていく。

 

 

「く……クソっ! このスタンド……!」

 

「部長! 伏せて!」

 

「クッソ!」

 

 

 アカネの叫びに、咄嗟にネルは床に伏せた。爆発によって生じた衝撃と爆風により、大きく揺れたつり革が爆発したのだ。クレイモアを仕掛けた時のように、連鎖的に爆発が生じていく。

 

 

「お、終わったか……?」

 

 

 呟きながら立ち上がったカリンは、信じられないようなものを目にした顔になって硬直する。続いて立った私も、きっと同じような顔をしていただろう。

 

 

「窓ガラスが……ふ、震えてしまっているゥーーーッ!!」

 

 

 つり革の次はガラスだ。空気の震えが窓ガラスに伝わり、その振動は加速していく。とっさにカリンの体を抱き寄せ、スティッキィ・フィンガーズは防御姿勢をとる。

 

 

「くっ……!」

 

「り、リンゴ!」

 

 

 今度の爆発は、ただの衝撃だけじゃない。割れた鋭利なガラス片が、ちょうどフラググレネードの破片のように飛び込んできた。顔や心臓、喉元はしっかりとガードしたが、体中に尖ったものが突き刺さる痛みは想像以上だ。出血こそしていないが、これ以上食らうのは不味い。

 

 

「おいッ! お前ら、伏せろ!! 風が吹き込んでくるッ!!」

 

「!」

 

 

 体中の痛みに耐え、床に伏せる。飛び散ったガラス片が床に散らばっており、ただ伏せているだけでも痛みが体を襲う。それでも立ち上がれば、激しく吹き込んでくる風に服が揺らされ、全身が爆破されるだろう。

 

 

「服から手を離すんじゃねえぞ! フリルが揺れて、そこから爆発するッ!!」

 

「こ、このスタンド使い……ッ!!」

 

 

 こいつのスタンド能力ッ! 振動による爆発と、電車というシチュエーション! 相性が良すぎるッ! 揺れるものがすべてが、敵に味方しているというのかッ!!

 

 こんなやつ相手に、どうやって勝てばいい!? 思考と焦りで頭がオーバーヒートしそうな気分だ。全てを諦め、思考を手放しそうになった私の頭の中に、耳障りな音声が響いた。

 

 

《えー、次は~地獄~~。地獄行きで~~ございます。》

 

 

「な……何だ、このアナウンスはッ!」

 

 

 私だけでなく、ネルやカリンも訝し気な表情をしている。どうやら幻聴ではなさそうだ。

 

 

《本日はご乗車ありがとうございます。車内アナウンスは、()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()。》

 

 

「な……ッ!」

 

「「何ィーーーーーッ!?」」

 

 

 

《私の名前は『ビート・イット』『今夜はビートイット』とお呼びください。》

 

 

 こいつ! 車内アナウンス、運転手がスタンド使い! わざわざ自分から正体を現すというのかッ!?

 

 

「てめぇッ!! わざわざ出てくるとはいい度胸じゃねえか! 今すぐそっちに行ってぶちのめしてやるから覚悟してろッ!!」

 

 

 そうだ、今から行ってケリをつけるッ! この車両から運転席のある車両までは、ほんの3つの車両を走ればいいだけだ。立ち上がろうとして、一抹の不安が頭をよぎる。こいつ、何故わざわざ自分から姿を現した? 黙っていれば、奴の勝ちは揺らがないものだったはずなのに―――!

 

 

《まもなく、老朽化した線路に差し掛かります。到着予想は8分後です。》

 

 

《車内は負傷者で大変混雑しております。危険ですので、電車が止まってから席をお立ちください。》

 

 

《電車が爆発しました場合には、火事にご注意ください。煙が充満した車内に長時間ご滞在なさりますと、ヘイローが破壊される危険がございます。》

 

 

「こ……こいつ……!」

 

 

 人質をとっていやがるんだ。ここから何とか運転席にたどり着き、敵のスタンド使いを倒す。だがそれには、何かをうっかり揺らさないように気をつけながらという条件付きだ。時間内に奴を倒し、電車を止められるかどうか。私一人だけなら分の悪い賭けではないが、乗客全員の命をベットするわけにはいかない。

 

 

「クソが……!」

 

 

 ネルも悔しそうに、床を拳で殴りつける。静まり返った私たちを嘲るように、ビートイットは続けた。

 

 

《ただし……あなた方が宝くじを諦めると言うのであれば、話は別でございます。あなた方の話している内容はこっそりお聞きしていました。宝くじ、1等、5千万円。ククク、乗客の命と引き換えにするには、あまりにも安すぎる代金かと思われます。》

 

 

「そこまで聞いてやがったのか……。」

 

「……リーダー……。」

 

 

《要求を呑んでいただけるのであれば、ゆっくりと後部車両にお下がりください。》

 

 

 その声を最後に、アナウンスは静まりかえった。再び私たちの間に静寂が流れ、空気がどんよりと重くのしかかる。その沈黙を破ったのは、意外なことにカリンだった。

 

 

「……リーダー。悔しいけど、諦めるしかない。ビートイットの言う通りにするのは癪だけど、乗客を危険に晒すわけにはいかない。」

 

「……。」

 

「リーダー!」

 

「クソっ!! わかってんだよ、ンなこたあ!」

 

「……待て。違和感がある。」

 

 

 私は2人の会話を遮った。今までの現象を考えれば、明らかにおかしなことが起きている。

 

 

()()()()()だ。音は空気の振動であり、音を発する機械も振動している。だからこそ、最初に気絶したあいつはイヤホンの爆発を脳にくらったんだ。」

 

 

「なら何故……あのスピーカーは爆発しない? イヤホン程度の小さな音を発する機械でも爆発しているはずなのにッ!!」

 

「スピーカー!? そんなもの、()()()()()()()()()ッ!!」

 

「それが答えだッ!! 私には見えて、お前たちには見えないスピーカー!! 位置がわかるッ!! そこだッ!! ビートイットーーーッ!!」

 

 

 スティッキィ・フィンガーズを用いた伸びる拳がスピーカーを捉え、確かな手ごたえを感じる。私のパンチは弾丸より遅いかもしれないが、弾丸より遥かに重たいぞッ!!

 

 

《ガ……ガァーーーーッ!!?》

 

 

 スピーカーがぐにゃぐにゃと歪み、驚かされた猫のように壁の隙間に逃げ込んでいく。咄嗟に身をかわそうとしたのか、拳のダメージとしては浅いようだが、安全圏からニヤニヤしてやがるゲスに一発叩き込んだのは気分がいい。

 

 

「今のは悲鳴か!? やったのか、リンゴ!」

 

「いや、浅い! だが食らわせてやったッ! スタンドに対するダメージは、本体にも同じダメージがあるッ! 今頃奴は、私のジッパーを喰らって動けなくなっているはずッ!!」

 

 

 身を低くしながら、運転席に向かって走り出した。私の背後からは、複数の足音が聞こえてきて、私に勇気を与えてくれる。

 

 

「5千万は必ずいただくッ! そして、あのゲス野郎もぶちのめすッ! ビートイット、お前如きに両方やるのは、そう難しいことじゃなさそうだぞッ!!」

 

 

 




スタンド名『今夜はビートイット』 本体:ビート・イット

破壊力:B スピード:D 射程距離:B 持続力:A 精密動作性:E 成長性:E

スピーカーの形をしたスタンド。生物以外の物体の「振動」に反応し、振動が一定の基準に達すると爆発を起こす。爆発の規模は物体の大きさに比例するが、電車1両分くらいが爆発させられる限界のサイズのようだ。
スピーカーであるため、音を発することが可能。スタンド自体に戦闘力はほとんどないため、本体は姿を隠し、スピーカーを通して敵とコミュニケーションをとることが多い。
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