ワタシは、ボンバー……   作:無記名 to 稿

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「モモさん選抜2位! モモさん選抜2位! うおおお!」





092:根回し

 

さて、困った。

それが正直な感想である。

セレナードからの依頼。

 

いや、依頼か。

まあ依頼か。

依頼と言うことで良いだろう。

よろしく言われたし。

 

ともかく。

それを熟す分には問題ない。

むしろ、ワタシとしても都合が良い方だ。

都合が良いから誘導した訳でもある。

 

ボンバーマンとしては。

普段潜伏していることになっているウラインターネットの秩序の維持。

パインとしては。

ウラインターネットを端に発する悪影響とその波及の低減。

 

どちらも見込める。

やるに越したことはない。

越したことはないが。

 

「……どうしタもんか…………」

 

悩みは一つ。

セレナード。

ヤツをどうするか。

それに尽きる。

 

セレナード。

ウラの王。

まだ、単なるセレナードだが。

 

ウラの王を決める戦い。

ソレが執り行われる。

そうなるように進めることにした訳だ。

力とは、最も根本的な権威の証明であるのだから。

やはり見せ付けさせるのが良い。

 

そして、セレナード。

アレを打倒出来るよう、当然ワタシも動く訳だ。

ということは、だ。

 

もしかすれば。

万が一。

かなり薄い可能性ではあるが。

ワタシ自身が王に成り得る可能性があるということだ。

可能性だけは。

 

かつてより。

ワタシの目標の一つとして。

セレナードのデリートが実の所、ある。

思考の端に。

 

物語のシナリオ。

三作品目において。

ウラの王、セレナードはシナリオの一端を担う。

最終的には完全に無駄足に終わるような流れであるし、ワタシとしてはその流れを利用したくもあるにはあるのだが。

セレナードは物語の一端を担うのだ。

 

ソレをデリートできれば、どうか。

物語。

シナリオ。

プレイヤーによっては表側よりも余程潜っている時間の長いだろうエリア。

その秩序体系自体の破壊も叶うだろう。

 

「………………」

 

問題は二つ。

一つ目。

ワタシは現状、セレナードを友と思っている部分。

彼方もこのようなことをわざわざ相談してきたのだ。

相応、友情かソレに近しいモノを感じている。

とは思う。

 

そうでもなければ愚痴を溢したりはしてこないだろう。

そのような相手だ。

些か、心苦しい。

本気でデリートしに掛かるのは。

 

まあ出来るとは思う。

いざとなった時、カーネルのように手が止まらないか。

その点が少し、我ながら気になる部分ではある。

あるが。

ワイリー様よりも優先されるモノではない。

 

そして二つ目。

此方が最も深刻。

かつ、厄介。

 

「…………ウラの王……」

 

セレナード。

アレにそもそも勝てるのか。

それが最大の問題である。

何せワタシの見立てでは、三番目の物語の後。

裏ボスとして戦うセレナードは恐らく、全く本気を出していないのだから。

 

整理しよう。

裏ボスとしてのセレナード。

戦法として、攻撃を衝撃波にして返しながら、移動の際に揺れ動く光弾を放ってくる。

あと、片手を掲げて衝撃波を放っても来たか。

 

最も厄介なのは、攻撃を衝撃波にして返してくる部分。

対策は、セレナードを動けなくすること。

具体的には横移動できないよう、穴パネルを作り動けないようにする訳だが。

さて、翻って。

 

セレナード。

宙を浮けるのである。

そもそも、何かと浮いて現れている。

 

光弾についてもそうだ。

一回につき一つだけ。

しかし現実としては、幾つも放っている姿を見掛けている。

 

では、だ。

にも拘らず何故セレナードは攻撃を甘んじて受け、敗北したのか。

それについての考察はある。

 

単なる試しだったのだろう。

ロックマン達。

その実力が、更にその先に存在するフォルテGS。

其処に届き得るかどうかの。

 

自身が動くべきでないと判断したのか。

単に面倒臭かったのか。

あるいは何らかの意図を持ってロックマン達を更に成長させようと考えたのか。

そこは情報がなさ過ぎて分からない。

だが少なくとも、かつてデリート寸前まで追い詰められた等と言うのは眉唾物である。

危機感を煽るための言葉ではないかと言った疑念すら浮かぶ。

 

何せ、戦う際のHPは確か二千。

そうであっても。

それだけの体力を削り切られてもなお、長々とロックマン達に警告を口にしていたのだから。

本当に底が知れない。

 

ドリームウイルス。

ゴスペル。

プロト。

それらを乗り越えた筈の存在が、警告される側に回っているのだ。

 

その後も悠々と、座するシークレットエリア内に指示を出してタイムアタックを開催したり等と。

本気全力が垣間見えない。

何度でもだが、底が知れない。

そのようなセレナードに、果たしてワタシは勝てるのか。

 

「キョキョキョ! ボンバーマン アナタガ 先デスカ」

「オう。悪いガ議題を一つ……ツっても、報告だけダが、増やシたくテな」

「ホウ?」

 

他のお仲間を巻き添えにするのは、なし。

そもそも戦力に成り得るモノは限られるし、ある種、私的な用件に巻き込む気はない。

ボンバーマンとしても。

パインとしても。

其処は一線を引くべきだろう。

 

他力をあまり願えず。

その状況下で、勝てるのか。

セレナードに。

 

勝てる。

勝てるのだ。

最低限の勝算はある。

 

ロックマン達すらもお遊びで済ませたのだろう。

その油断。

慢心。

あるいは、『慈悲のココロ』か。

そこを突く。

 

セレナードが全力を出すよりも前。

本格的に動くよりも前。

全力を出さなければならないと。

そう、セレナード自身が判断を下すよりも前に、仕留める。

少なくとも現状の、隠し札までも含めた、あらゆる手札を踏まえればそうするしかない。

 

「ドノヨウナ 案件デショウカ?」

「なニ、知り合いがウラの頂点を決めル戦いを開こウっつってな。宣伝、手伝っテやろウと思っタだけダ」

「頂点? ナゼ?」

「最近、身の程知らズが増えタろ? ソイツ等、黙らセるためダ」

 

思考を巡らせながら、準備のためだろう。

やって来た会議場にやって来たプラネットマンに答える。

他にも若干数居るが、わざわざワタシに話し掛けては来ないのだ。

会う機会自体、あんまりないし。

 

仲間外れ感。

若干のモノ寂しさを覚えながらも会話を進めた。

中で。

今回のコト。

それを聞いたプラネットマンが押し黙った。

 

「…………キョキョキョ! 良イデスネェ……!」

 

微かな疑念が生じたのも束の間。

分かり辛いが、にやりと笑った。

ハッキリとそう分かった。

 

「我等 WWW ソノ素晴ラシサヲ示ス 絶好ノ 機会デスヨオ!」

「ァー……王は無理かも知れネえが、実力を広めルのは良いかモな」

「…………無理? 王ガ?」

「勝算一割とネえヤツが居るカらな」

「キョキョキョ 古イ アナタ ダカラデハ?」

「おっ、そウだな」

 

嘲り。

ではない。

純粋に、自身達の能力とワタシの能力を比較した結果なのだろう。

 

とりあえず頷いておく。

別段ワタシ達で諍いを起こす意味はない。

実際問題、プラネットマン達は中々に特殊ではある。

リソースの割かれた割合。

能力の方向性とでも言うべきか。

 

分かり易い例を挙げるとすれば、グラビティマン。

赤い球体に頭や手腕を取り付けたような、独特の見た目をしたネットナビ。

特筆すべきは、重力操作とでも言うべき能力か。

 

電脳世界に重力というのも妙な話だが。

要するに空間そのものに異常を起こすことで、実質的に重力を操れる。

と言うよりも引力全般なのかも知れないが。

 

まあ言葉の違いは何だって良い。

ともかく、そのために割かれた割合が多過ぎるのだろう。

ストーンマン以上の大きさであるにも関わらず、言動が片言でどうにも幼げ。

ちょっとポンコツが入っていて親しみ易くすらある。

 

だが、それを差し引いても凄まじい能力ではある。

ある程度、場所を選べる重力操作。

味方に居てこれほど心強い存在は中々にないだろう。

 

もっとも。

流石のワイリー様でも小型化は無理だったご様子。

以降の後継は、するにしても超局所的な重力操作に限定しておられる。

 

ワタシもこれについてはオネダリしてみたが、まだ反応がない。

科学省襲撃の成果で是非とも頂ければ有り難い所だ。

何やら話が逸れたが、

 

「議題は良いンだな?」

「構イマセントモ! 科学省ノ件ヨリモ前ニ コノヨウナ イベントガ近々アル ト言ウ風ニデモ 広ゲテ下サイ」

「分かっタ」

「参加者ノ募集ハ 全部 終ワッタ後デ 構ワナイデショウ! キョキョキョキョキョキョ!」

 

ふむ。

これは。

危ういか。

 

自意識過剰。

とまでは言わないが、自身か自身等の力がかを頂点かソレに近しい位置と信じて疑っていない。

そのような自信を感じられる。

まあ分かる。

 

二番目の物語における、ある種セレナードの立ち位置に居るのがプラネットマンだ。

フォルテの前の前座とでも言うべき立ち位置に。

そしてそれだけの能力が伴っていることを、ワタシは全く疑ってはいない。

疑ってはいないが、信じれるほどではない。

 

例えるならば。

国家の主と、一組織の管理職。

その差はあまりにも明確である。

 

他も同様。

ワイリー様によって作られた性能。

そこに慢心がある可能性が高いと見るべきか。

 

まあ、大体のネットナビには勝てるだけの性能は確かにある。

『オフィシャル』の大体のナビにも勝てるとは思う。

恐らくは、シグマであっても。

 

「……マ、ワイリー様にもお伝えハする」

 

危うい。

ウラの王を決める戦いは別段、セレナード以外の強者も参加する見込みにある。

ワイリー様にお願いして、釘を刺すように勧めるべきか。

ヤツのことを考慮して、速やかな撤収も考慮に入れた上で。

 

あとは、そう。

当初の予定外にもなるが、パインとして作った子達の幾らかを参加させるのも良さそうだ。

自身等の身を危うくし得る。

お互いの組織に、そのようなナビが存在することを知ら占める良い機会だろう。

危機感があるのと、全くないのとでは大いに違ってくる。

 

いや、であるならば。

この辺りで少し、プラネットマンの好感度を稼いで話を聞いて貰い易く出来やしないか。

幸いにしてまだ時間はある。

これ以上誰かしら来る気配は、まあ来たら来たでも別に困ることでもなし。

それにそもそも、プラネットマンと話が出来る機会もそうあるものではない。

まあ正直に言うと、別にプラネットマンに原因があるというよりもちょっと敵愾心持たれてるみたいだから会い辛いだけなのだが。

 

よし、そうしよう。

思い立ったが吉日。

善は急げと言われるぐらいなのだから。

なんか、こう。

良い感じに褒めて、あとは、良い感じに褒めればればいけるんじゃないか。

 

「プラネットマン」

「……ナンデショウカ?」

「先ず初めにダが、ワタシはおめえを高く評価シてる」

「……キョキョキョ! オ世辞ヲ ドウモ」

「世事じゃネえ」

 

好感度を稼ぐと言った手前。

世事と言われればちょっと困る部分ではある。

しかし、評価しているのは事実である。

 

将来的な話ではあるが、一組織の管理職。

管理職。

コレ、馬鹿に出来ない。

特にプラネットマンが担当していたと言っていいだろう事柄は、幹部候補の選定と採用だった。

要するに、将来を定める部分である。

 

これをワイリー様が、生半可なナビにお任せされるだろうか。

いや、ない。

相応であると確信しておられなければ、そうは成されないだろう。

何せご自身にとっての手足となる存在なのだから。

 

「改めて言ウが、プラネットマン――ワタシはおめえを、高く評価しテる」

「………………ドウモ?」

「ダからこそ、言ウ。侮るナ。油断、慢心は万事の敵ダ」

 

これでダメならダメだろう。

予想以上に嫌われていると判断すべきか。

じっと顔を、多分、顔の部分を黙って見遣る。

合わせること、一分も経たず。

小さく首を傾げるように、傾いた。

 

「―――――解セマセンネェ」

「何がダ?」

「オ世事 ト 思イマシタガ 高ク評価シテイル ト言ウノハ 真実ノ様子! ソレガ 解セナイ! 何故?」

「評価に以上も以下もネえ」

 

正当、と言えるかは微妙だ。

ワタシの主観が大分入り混じっている自覚はある。

しかしソレを差し引いたとしても。

プラネットマンの存在は評価に値するだろう。

 

そのような内心を知ってか知らずか。

訝し気に。

目を細めたような気配が感じ取れた。

 

「ソレガ 解セナイノ デスヨ」

「ン?」

「何故 戦ウ所ヲ 見セタコトモ ナイノニ ソウ思ウノデスカ?」

「バトルが全てじャネえ。おめえは優秀ダ」

「エエ……」

 

実際問題、我々はネットナビである。

バトルしか出来ないネットナビとか、使い辛くて適わないだろう。

巧く運用できるの等、ワイリー様ぐらいだ。

辛うじて、六尺玉燃次が花火職人だったからとかで、爆薬の知識が豊富なナパームマンと相性が良かったような記録もあるが。

それこそ特殊事例でしかない。

 

ともかくとして、プラネットマン。

バトル以外でも当然優秀であることは、幹部選定を担当していたことからでも十分によく分かる。

実際、その性能の片鱗は見て取れている。

また此奴とバトルをしたことがある存在で、プラネットマンが弱いと思う方が少ないと思う。

 

いや、環境が原因の一つとはしても。

唐突な《ラビリング》。

不用意なフミコミ系を咎める惑星。

後半は殆んど直撃しかねないほど忙しない手数の暴力。

そして何より。

周囲全面穴パネル。

 

「ボンバーマン?」

「! ……すまネえ。チョイと立ち眩みガ……」

「エエ…………」

 

困惑し切りな様子のプラネットマンに対し、気を取り直すように首を振る。

少なくとも。

ワタシとしてはナパームマンよりも強いと思う。

 

いや、ダメだろう。

周囲全面穴パネルは。

最後の手段が使えないとか。

変に比較的容易に使えていた最終手段があった所為で、プラネットマンで詰んだ子供は多分多いと思われる。

殆んど自力で勝負するしかないものだから。

 

いや、改めてだが。

ソレを差し引いても、プラネットマンの方がナパームマンより強いと思う。

言ったらナパームマンの方がいじけそうだから口には出さないけれども。

 

「モう一回言うが、プラネットマン。おめえは凄い。ワタシでも分かンだ。機会がなカっただケで、ワイリー様もすぐ分かっテ下さるダろウ」

「……マア? 言葉ダケハ 有難ク 受ケ取ラセテ 頂キマスヨ」

「そうシろ。正直、手を貸しテ貰いタいぐレえだ」

「…………ナパームマン デハナク?」

「おめえ等に、ナ」

 

最終的には。

納得出来ない。

しかし、ワタシの思っていること自体は本音だと伝わった様子。

暫くの間、視界を閉じたワタシでも分かるぐらいにはジロジロと見て来ている気配を感じられたが、やがて、

 

「エエ! ソウデショウ! ソウデショウトモ! キョキョキョキョキョキョ!」

 

上機嫌にキョキョキョ笑いを溢し始めていた。

思ったよりチョロくないか。

割と褒めていただけだが。

何だか気を良くしている風だが。

ちょっとチョロくないか、コレ。

 

評価を気にする完璧主義。

そう見取っていたからこそ。

真にそう思っていることでこそあったが、確りと褒めてみた。

そうして実際、褒められたいタイプだと勝手に想像してた身でそう考えるのも失礼かも知れないが。

大丈夫か、コレ。

 

ちょっと、あの。

チョロ過ぎやしないか。

いや、ワタシにとっては都合が良いんだけれども。

好感度アップとか考えていた身からすればチョロい分には都合が良いから良いんだけれども。

チョロ過ぎやしないか。

 

初心者向けの恋愛シミュレーションでのチュートリアル的な一番最初の攻略対象ぐらいのチョロさに感じられる。

何か、将来的に悪い輩に騙されないか心配になる。

ワタシがそのような悪い輩の一員であるのはこの際、無視しておくにしても。

いや、プラネットマンが表立って動くことは殆んどないとは思うのだけれども。

 

藤崎大先輩ほどではないにしても。

その。

警戒心とか、お持ちではないのか。

いやもしかすれば、ワタシの言が心底からのモノだと分かっているからこその反応なのかも知れないけれども。

それにしたって、ちょっと、気になると言うか。

 

まあ、なんだ、都合は良いから良いことにしておこう。

そのように。

視界を閉じ、頭の中で幾らかの口には出せない物事を考えながら。

やがて開催の時が来るのを静かに待ち続けた。

 

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