さて、研究である。
何に押しても研究である。
科学省襲撃。
もあるが、その後の一大事。
具体的には、王を決める戦い。
セレナード撃破。
ソレに向けた研究である。
「う~ん…………」
と言っても。
別に具体的に今から何かを準備するという訳ではない。
準備自体、九割以上済んでいた。
其方に関しては最終調整が主であるからして。
何せワタシにはスタッフマン達が居るのだ。
必要なチップ集めだとかは、暇な時にでも五体チームでウラに潜るようにとでもお願いしておけば殆んど問題ない。
と言うか、していた。
余程の存在でもなければ返り討ちにしているらしいし、余程の存在も旨味がないから寄り付かない様子。
それでも当初は狙われることも多かったようだが、過去の話。
ウラの王を決める戦い自体でも、準備に役立ってくれている。
場所の選定はまあ、早々に広い場所をセレナードに確認を取ったので問題ない。
既に先行隊として二十チームほど派遣し、ウイルスの殲滅と整備が開始されている。
そして宣伝。
「王を決める戦いを何時何時に何処其処でやります。文句がある方はご連絡頂ければデリートしに行きます」と言うような宣伝。
ボンバーマンもといWWWと、ワタシ。
その連名による開催告知を方々へと。
ウラインターネットを出入りするような存在の誰もが知れるよう、看板を配置して回って貰っているのだ。
これも人海もといナビ海戦術が出来なければ難しい話。
なので、非常に助かっている。
話が逸れたが、ワタシ自身の強化。
ソレを完全な形にすることを後回しにしていた。
と言うよりもお仕事を優先し過ぎて手が回らずにいた。
その辺りの事柄を、一つずつ片付ける。
ソレが今回の主題であった。
「スタッフ、スタッフーゥ!」
【ウッス】
「《リモローソク》どの貯蔵庫に溜めてあったっけかにゃ?」
【コッチっす】
まずは手始め。
白衣と眼鏡を装備。
ドクターパイにゃん。
形を整えるのは大事。
切り替えになるので。
さて、《リモローソク》。
主にウラインターネット奥地や灯りに関わる電脳に生息している火属性のウイルス。
キャンデービル。
それから入手できるチップである。
《リモローソク》の効果自体は単純明快。
設置したロウソクに火が付いている限り、HPが回復し続ける。
要するに、リジェネ効果がある置物を設置するチップ。
ワタシが着目したのはリジェネ効果。
火が付いている限り。
その部分である。
さて、翻ってワタシ達。
ボンバーガール。
実は尻尾が導火線なのだ。
悪魔チックな鏃型だったり、ぶっとい触手であったりと、明らかに違うんじゃないかと言う尻尾持ちも居るが。
誰が何と言おうと導火線なのである。
その辺りは下手に続けても押問答にしかならないので、ともかく。
つまり何が言いたいか。
もうお分かりだろう。
「…………取付、ヨシ! どうかにゃ?」
【ウオオオ! すごい力が漲ってくる!】
「にゃはは、それは良かったにゃ」
案内してくれたスタッフマンを試験体に。
おおよそ準備出来ていたチップデータや理論を元に弄繰り回すこと一時間足らず。
完成。
したのでその尻尾に着火。
俯せに寝そべっていた所から勢いよく立ち上がり、両腕を上に掲げて盛り上がっている様子からしても特に問題はなさそうに見えるが。
「ちょっと《ミニボム》当てていい?」
【グワアアアア!】
「まだ投げてにゃいが」
胸元抑えながら倒れ伏したスタッフマンに追撃。
魚みたくビチビチと跳ね回ってるけど観察。
よし。
《リモローソク》のリジェネ効果の付与は成功した様子。
受けたダメージ部分が順調に回復されている。
バインダー風のメモにワタシから見た映像の一部を貼り付けつつ、経過記録と比較確認。
念には念を入れてスキャン。
問題は。
ないように思えるが。
「何処か痛い所はありますかにゃ?」
【ココロが……】
「センチメンタルね」
わざわざ胸元を抑え、ホロリと涙を流す演技までし始めた。
悪かった。
とりあえず豪華お食事券五千ゼニー分を手渡し。
袖の下的な。
お食事券と尻尾の根元を持って嬉しそうにブンブンしている様子を尻目に、ワタシ自身の改造へと移る。
といっても簡単。
道具がちゃんと揃っているのだ。
爪切りやハサミで先を整えるぐらいの感覚。
座って。
腰から尻尾をワタシの前側に回し。
エンチャントファイア。
「ほふ……」
得も言われぬ温かみが体を巡る。
回復効果のあるエネルギーが尻尾から全身に向けて巡り始めたからだろう。
体感、体温が一度ぐらい上がったような。
お風呂から出たばかりのような温もり感。
《リモローソク》系のチップ自体は容量が大きい。
多分、置物と言う以外にも着目したリジェネ効果が影響されているのだろう。
その分の負荷が性能に影響するかとも考えたが。
しかし思考に陰りは感じ取れない。
軽く片足立ちになってI字バランス、フィギュアスケートの如くするすると回ってみても。
体幹。
姿勢。
稼働。
良好。
全てにおいて問題なし。
想定の範囲内に収められていることの証左であろう。
となれば後は、
「スタッフ、スタッフーゥ!」
【ウッス】
「ちょっと《ラビリング》撃ってくれにゃい?」
【イヤです……】
「そこを何とか……」
【イヤです……】
ワタシ自身で問題なく稼働しているか。
ソレを確かめたいのだが。
拒否の構え。
これではいけません。
「いや、そこをにゃんとか……」
【イヤです……】
「ダメージが一番低いのって《ラビリング》じゃにゃいですか」
【イヤです……】
おお、うん。
これはアレだ。
RPGとかである回答への無限ループ。
ワタシが諦めるまで続くヤツ。
仕方ない。
手法を変えよう。
「仕方ありませんにゃぁ……自分で《ミニボム》当てるしかにゃいですね」
【えぇ……】
「まあそこで見てて下さい」
【しょうがないにゃあ……】
凄く嫌そうな顔をしているが。
通った。
まあ単純な話。
《ミニボム》のダメージは50。
《ラビリング》はダメージ20。
直撃した場合の概算の数値として。
どちらがマシかの判断はすぐ出来よう。
マヒ効果だけはちょっとだけれども、ぶっちゃけ面倒だから助かった。
自分にダメージ喰らうようにデータを加工するのは。
「ヘイ! カモンカモーン!」
等とやっている間にも。
凄く渋々と言う姿勢を隠そうともしないまま銃を構えたスタッフマン。
その銃口がワタシを。
詳しく言うならば、絶対に外さないようにか、腹の辺りに澄まされる。
そして。
引き金は引かれた。
射出された《ラビリング》。
ソレは寸分違わずワタシの、ヘソはないがあればその辺り、腹の中心に突き刺さり、
「アバ――――えっ?」
【えっ】
「え? えっ?!」
一瞬。
一秒にも満たない痺れ。
いや、なぜ。
思わずスタッフマンと顔を見合わせる。
予定通りダメージは回復しているが。
ある意味、それどころではない。
ワタシの様子に流石のスタッフマンも驚きを隠せていない。
いや、おかしい。
おかしいのだ。
「……ちょ、ちょっともう一発撃ってくれにゃい?」
【本来なら嫌ですけど……しょうがないにゃあ……同僚も呼んでおきますね】
「ありがニャババ、早い早い早い!」
今度は一瞬の躊躇もなく撃ちおった。
再度の痺れ。
回復効果は。
引き続き問題なし。
それよりも、
【ウオオオ!】
【反逆者はぶち殺せえ!】
【殺します】
【デスペナルティ】
「落ち着くにゃ」
雪崩れ込んできたスタッフマン達を一瞥。
四体。
元々の子と合わせて五体。
仮の実験には丁度良い。
「はーい、そこに並んで下さいにゃ」
【了解】
【了解】
【ワカリマシタ】
【反逆者はぶち殺せえ!】
何か血気盛んな子が混じっているけれども。
見なかったことにしておこう。
とりあえず。
流れ作業で《リモローソク》のデータ抽出と加工、そして導火線に着火。
一緒に色々していたスタッフマンが暇してる子達によって十字架に括り付けられているのを尻目に、ソレを全員四体分済ませる。
「…………はい、完了」
【やったぜ!】
「とりあえず状況は揃えたいから降ろしてあげてね」
【チッ】
わざわざ手看板で舌打ちするなと言いたい所だが。
まあコレも個性である。
大人しく括り付けられていた子は降ろされ、そのままの流れで全員横並びに並んだ。
「では右端のあなたから順に、その横の子が一発。予後の確認は三十秒取って次に移る流れで……何がしたいかは分かってますよね?」
頷いた。
なので頷き返した。
「では」
【喰らええ!】
【グワアアアア!】
「早い早い早い…………よし、開始!」
等と。
寸劇を繰り広げながら軽い調査を終えた。
結果。
困った。
再現性がある。
ソレが分かった。
「…………嘘でしょ」
バインダー片手に、もう片手で頭を掻く。
何の。
と言われれば単純。
マヒ耐性の。
である。
本来《ラビリング》を受ければ数秒程度。
マヒ効果によって動くことが出来なくなる。
痺れるので。
だから凄く強い。
しかし《リモローソク》の隠された効果なのか。
リジェネ効果。
ソレは据え置き。
その上で、マヒ効果のある攻撃を受けても、殆んど一瞬で回復出来た。
出来てしまったと言うべきか。
コレは、困った。
困らないのだが、困った。
ワタシことパインとしては全く困らないのだが。
ボンバーマンとしては困った。
何らかの理由でスタッフマン達や他のボンバーガール等と敵対してしまった場合。
適当にあしらって逃げる。
その後、パインの命令と言う形で治めれば良いと思っていたのだ。
そう言った場合、逃げるために使い易いのが《ラビリング》だとかの弱めでマヒ効果のある攻撃と考えていたのに。
と言うか研究の一つが無駄になったかも。
いや、完全に無駄にはなっていないけれども。
具体的には、『ステータスガード』という代物。
これはマヒ効果等の状態異常諸々を無効化する耐性。
なのだが。
この内の、最も有り触れているマヒ効果への対策が想定外ながら出来ただけ良いと考えるべきだろう。
有用性は計り知れない。
なので一先ず、敵対時の対策は《アナザーマインド》だとかの混乱系列を用意して代用するしかないとして。
実際問題。
『ステータスガード』を全ての子に施すのは流石に難しそうなのである。
まだ実用化の目途すら立っていないのもあるが。
そもそもの労力。
その他諸々を考慮した話としても。
「………………とりあえずフラグシップモデル……幹部級の子達の分は残すとして……残りはスタッフマン達と戦闘部隊を中心に取り付けていくにゃ」
【ワカリマシタ】
【通達はいつ?】
「すぐに……いえ…………いや、そうですにゃあ……すぐに。あと手は空いてるようならボンゴ達も呼んで下さいにゃ。取付方法を見て貰って、問題なさそうになったら以降はあの子達に任せるにゃ」
ワタワタと早速動き始めるスタッフマン達を尻目に。
積み上げられている《リモローソク》のデータを眺める。
とりあえず、予め五十体分になる程度は選り分けるとして。
さて。
果たして山とあるコレ等だが、
【スタッフマン六番乗りィ!】
【七番乗りィ!】
【八番乗りィ!】
【九番乗りィ!】
【以下省略!】
【十一……?!】
スタッフマン達一同。
手隙の時に創ったりしていた所為で最早、ワタシですらどれだけ居るのか数えていない子達。
それに戦闘部隊一同。
全体に行き渡るには足りているのか。
足りていないだろう。
そのように考えながら、軽くため息を吐いた。
疲弊した体に鞭を打ちながら奥へと歩く。
あんまり疲弊自体はしていないが、気分は疲弊しているので。
疲れた。
そう言うことにする。
ボンゴ達の「また自分で仕事増やしてる」みたいな視線が痛かった。
今回の件についてはもうボンゴ達に任せた。
あとは都度都度、進捗を確認するだけである。
序にスタッフマン達の数も数えておくようにお願いした。
コレでどれだけ居るか分かるだろう。
結局ワタシが暇だからとかそう言う手慰みに増やして、訳分からんことになりそうな気もするが。
ともあれ、研究である。
何に押しても研究であった。
具体的には、王を決める戦い。
ソレに備えた研究であった。
《リモローソク》のリジェネ効果。
アレはハッキリ言って長期戦前提の代物。
日々のウイルスバスティングの時だとか、そう言った際に役に立つようにと準備していたモノに過ぎない。
直近で言えば、科学省の方なら役立つかも知れないが。
もう暫く先。
ウラの王を決める戦いの方で役に立つとは思っていない。
セレナードに長期戦を挑む等、最終的には地力の差で磨り潰されるのが見える。
切り札の一つ。
ソッチなのだ。
セレナードに対する本命は。
何か思わぬ発見があった所為で気を取られてしまったけれども。
何よりも切り札の完成。
そのための研究。
と言うよりも、最後の大詰め。
改良をこそが重要。
足元のドクロマークを抜け。
居並ぶスタッフマン計十体。
その間を通り。
「あ、お疲れ様です!」
「うむうむ! 一応伝えるが、スタッフマン達以外は来ておらぬぞ」
「いつもお疲れ様にゃん。問題にゃいなら良し」
設置してある自販機から団子を買っていたパプルと、大剣の素振りをしているアウルムに挨拶して。
抜けた先。
「…………さて」
ショートカット。
ワタシ以外の一切。
入れ替わりのためのフェイクマンを除いた、限られた者すらも入れない、奥地。
其処に鎮座する。
ワタシよりも、パインやボンバーマンとしての姿よりもなお巨大。
あるいはストーンマンすらをも見える大きさだけなら上回る、中身の詰まった超大型データ。
ソレを取り込んだ後、エネルギーチャージから問題なく複製出力出来るようにするための最終調整へと、
「総仕上げと行きましょう」
手を伸ばした。
《リモローソク》のマヒ回復効果は、バトルチップGPより。