機動戦士ガンダムSEED SOLID   作:赤バンブル

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危うく今年は投稿できないと思った。

あんま期待しないで見て。


PHASE:27『暁の宇宙へ』

シアーズとウズミのモニター越しの会談が打ち切られて2時間後、地球統一連合は再びオーブへの侵攻を再開する。

 

第二陣と合流したことでストライクダガーが増えたのはもちろんのこと、航空戦力はスピアヘッド・スカイグラスパーの混成部隊にレイダー制式仕様が加わったことで戦力は倍以上へと膨れ上がり、誰から見てもオーブの敗北は時間の問題だった。

 

その圧倒的な数に司令部のカガリたちが顔を顰める中、アークエンジェルは前線に向けて発進。

 

軽食を取っていたスネークも残りのカロリーメイトを口に押し込んでフリーダムで出ようとしていた。

 

「キラ!」

 

「うん?」

 

口の中の物を呑み込んで乗り込もうとしたところでアスランに呼び止められ、彼は足を止める。

 

「この戦力差じゃ、どの道オーブに勝ち目はない。分かってるんだろ?」

 

カズたちダイアモンド・ドッグズが離脱したこともあってこちらの戦力は、明らかに減っている。そんな中で戦いに向かうことは自殺行為にしか見えない。

 

「確かにな。だが、ここで敗けを受け入れれば地球連合はオーブの力を取り込んでより力を付けることになる。ここにいる誰もがそれを望まないはずだ。特にフリーダムを奴らに渡すわけにはいかない。」

 

「キラ・・・」

 

「お前がどうするかは任せる。最悪、この戦いに紛れて逃げても構わない。その時は、マザーベースを訪ねるといい。カズ・・・ミラー副司令がうまく宇宙へ送り返してくれるはずだ。フリーダム奪還については、止むを得ず破壊したとかで誤魔化してくれ。悪いな。」

 

そう言うとスネークは、別れの言葉を残してフリーダムで出撃していく。

 

 

 

 

 

上空へ飛ぶと彼は、早速上陸してくるストライクダガー部隊に向かってハイマットフルバーストモードによる一斉射撃をお見舞いし、防戦していたムウたちのもとへ駆けつける。

 

「少佐、トール。大丈夫か?」

 

「サンキュー、キラ。」

 

「俺たちは心配いらない。だが、奴ら沖の方から次々と来てやがる。ここは俺たちで何とかするからキラは艦隊の方へ叩いてくれ。」

 

「了解、向こうで派手に暴れてくる。」

 

フリーダムは沖へ移動するや武装を使い分けて連合艦隊の艦船を沈めていく。

 

「いた、昨日のやばい奴!」

 

調整を終えて出撃したシャニたちは、ターゲットを見つけたとばかりに向かってくる。本来は前日同様オーブ艦隊とMS部隊を叩く予定だったが、出撃前にシアーズから『昨日交戦した新型を三人でくい止めるように』と言う命令を受けていた。

 

「あれが強い奴か!」

 

「パパは、止めろって言ってたけど今日こそやらせてもらうよ!あの赤い奴もいないようだし!」

 

レイダー、フォビドゥン、カラミティの三機は、分散してスネークに襲い掛かる。

 

スラスターで巧みに攻撃を避けながら反撃するがシアーズに褒めてもらいたいがためか、クロトたちは先日と打って変わってうまく連携して追い詰めて行く。

 

「昨日よりも動きがいいな。隙が無い。」

 

「そーら、落ちやがれ!!」

 

海上をホバー移動しながらカラミティが一斉砲撃を仕掛けてくるがそこへ遅れて駆けつけたジャスティスのビームブーメランで連携は崩されてしまった。

 

「クソー!また、邪魔しに来やがって!!」

 

三機が一旦距離を取り直している合間、アスランはスネークと合流する。

 

「キラ、待たせた。」

 

「アスラン。お前、いいのか?俺たちと付き合って。」

 

「・・・本来ならこの戦いにザフトが介入する意味はない。だが、俺にも分っているんだ!戦ってでも守らなきゃならないものがあることが!!」

 

意を決して援護をする彼に対し、スネークは連携を組んで仕掛けて行く。

 

「よし。今から三機を牽制しつつ、艦隊を撃つ。後ろを任せたぞ。」

 

「あぁ、奴らを蹴散らそう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、オルガたちを相手にしている裏でシアーズは、親衛隊を率いてオノゴロ島本土へと迫りつつあった。

 

「うん!?」

 

アグニ砲でストライクダガーを一掃したムウは、何かを感じ取ったのか海上の方を見る。

 

「フラガ少佐?」

 

(この気配・・・・ラウ・ル・クルーゼ?いや、似てるが何か違う!)

 

 

同時に向かってくるシアーズも同様の反応をする。

 

「ムッ、この感覚は・・・・・そうか、カルフォルニアへ栄転するチャンスを捨ててアラスカで死んだと思っていたが。やはり、貴様も父親と同じ先読みの能力があるようだな、息子(ムウ)。」

 

彼は、部下たちに先に行くように指示すると両刃を引き抜いて彼らの方へと空接近してきた。

 

「別のストライク!?」

 

トールは、向かってくる敵に向けて数発ビームを発砲するが切り払うように刃で弾かれてしまった。その様子を見てムウは、直感で自分を狙ってきていると理解した。

 

「俺が引き留める!お前は、お嬢ちゃんたち一緒に他の味方の援護に迎え!」

 

「えっ、でも少佐・・・・」

 

「行け、よく分からないがコイツはかなりヤバイ!」

 

マイダスメッサーを投擲すると彼は、シュベルトゲベールを構えてシアーズ機へと向かって行く。2機のストライクの刃を交え、一進一退攻防の状態となる。

 

ムウは、イーゲルシュテルンとコンボウェポンポッドで距離を取ろうとするがシアーズは、スラスターで高速移動するや背後に回り込み刀を振り下ろす。寸でのところで回避するがアグニ砲の砲身が切断されて使い物にならなくなった。

 

「クッ!このストライク・・・なにもんだ!?」

 

「そんなものか、ムウ!これでは期待外れにもほどがあるぞ。」

 

残った砲身部分を捨て、ムウは予備のバッテリーパックを目の前に投げ捨てガトリング砲で誘爆させようとする。しかし、シアーズ機は発砲されるよりも早くバッテリーパックを切り裂いて難なく処理されてしまう。持っていたシュベルトゲベールも切られ、フラガ機はビームサーベル二刀流で何とか喰らいつく。

 

「畜生、新型以外にこんな奴がいるなんてな!!」

 

シアーズとの実力の差に徐々に追い込まれて行くムウ。だが、そこへディアッカの乗るバスターがミサイルで援護してきたことでシアーズ機は距離を取らざるを得なかった。

 

「邪魔が入ったか。もう少し相手をしたかったが私には仕事がある。今回はここまでとしよう。また、どこかで会おう。息子(ムウ)よ。」

 

シアーズ機が離脱していくとバスターは、膝をついているムウの元へと駆けよる。

 

「大丈夫か、おっさん?」

 

「誰がおっさんだよ。・・・・ハア、けど助かった。あのパイロット、俺を弄んでいやがった。何を考えて・・・っと、それよりも一旦戻らねえとな。アイツのおかげで装備が無くなっちまった。」

 

ストライクを立ち上がらせると彼は、補給に戻ろうとするが同時に来たオーブ国防軍本部からの命令に目を丸くする。

 

「カグヤに集結しろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーブはよく持ち応えていますな。」

 

「しかし、あの物量ではもはや陥落は時間の問題だろう。ここまで粘るのを見ると地球軍があれだけ手懐けようとしていたのも納得いく。」

 

オーブと統一連合との戦いは、領海外に潜伏しているクルーゼたちザフト軍も確認していた。最初こそ、すぐに陥落すると考えていた彼らだったが予想以上に抵抗してくれたおかげで思わぬ収穫を得ることができた。

 

「あの見慣れない機体のデータは?」

 

「最優先で取らせていますが何しろこの距離ですから。どこまで正確に取れるかは保証致しかねます。」

 

「いずれ相まみえるかは分からんが、ザラ議長閣下へのいい土産話にはなりそうだ。何か変化があったら知らせてくれ。」

 

「了解しました。」

 

彼は、艦長にそう告げるとイザークとジョニーを連れてブリッジを後にする。何か言いたげそうな彼らの様子にクルーゼは足を止めて振り返る。

 

「面白くなさそうだな、イザーク。自分もあの中に入って戦いたいと思っているのかな?」

 

「い、いえ。自分は別に・・・」

 

「とはいえ、オーブはザフトからの支援も拒否しているからな。仕方あるまい。ある程度見届けたら、我々はカーペンタリアへ帰投する。パナマからずっと狭い艦内暮らしももううんざりだろう。ジョニーは特に辛いだろうがもう少し我慢してくれ。」

 

二人の気を遣うように声をかけてくる彼に対し、今まで黙っていたジョニーが重い口を開く。

 

「・・・・クルーゼ隊長、一つ聞いてよろしいでしょうか?」

 

「うん?」

 

「隊長は、この戦争がどうすれば終わると思いますか?」

 

普通では聞かないであろう質問にクルーゼは、少しばかり沈黙する。イザークは、失礼だと言おうとするが我に返った彼は改めて聞く。

 

「唐突な質問だな、訳を聞かせてくれないか?」

 

「俺は・・・正直軍に入るのはあまり気が進みませんでした。でも、『エイプリル・フール・クライシス』で父が行方不明になったのを機にザフトへ入隊する決心を固めました。これまで戦ってきたのはプラントの未来のためだと思ったからです。ですが・・・ジョシュアどころかパナマに壊滅的被害を与えても戦争が終わることはありませんでした。」

 

 

「ふむ、確か君のお父上はあの作戦の前に地上へ降りたっきり消息を絶ったそうだな。直接お会いしたことはないが優秀なパイロットだったと聞いているよ。」

 

「俺だけじゃありません。死んだラスティやミゲル、ニコルたちも戦争が終わることを望んで戦っていました。それなのに・・・」

 

「本国のザラ議長閣下も今回の件に関して頭を悩ませている。無論、最前線に立っている私自身もその問いに対する明確な答えは持ち合わせていない。・・・しかし、戦争を終わらせる鍵がないわけではない。それを見つけることも又、我々の務めかもしれんな。」

 

「鍵・・・ですか。」

 

「そうだ。だが、鍵だけを見つけてもそれを差し込むための鍵穴が存在しなければ意味がない。この二つが合わさってようやく一つの答えに辿り着くことができる。」

 

「・・・」

 

「すまないな、君の求めていた答えにならなくて。」

 

「い、いえ!参考になりました。ありがとございます。」

 

そう言うとジョニーは、イザークと共に居住区の部屋へと戻る。

 

クルーゼは、そんな2人の後姿を見ながら内心不敵な笑みを浮かべていた。

 

(・・・尤も鍵も鍵穴も既に私たちの手に届くところにあるがね。後は開く時を待つのみ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、時間稼ぎのためにフリーダム、ジャスティスの2機を相手にしていたオルガたちだったが絶え間なく攻撃をしているにもかかわらず、ほとんどダメージを与えられないことに板だっていた。

 

「クッソー!もうパワー切れかよ、このポンコツモビルスーツ!!」

 

カラミティは、砲身から排熱で煙が出るほど撃ったこともあってエネルギーが切れかかっている。

 

「お前はバカスカ撃ち過ぎなんだよ、バーカ!!」

 

「なにっ!?」

 

クロトの挑発に乗るオルガだが時間帯を見てシアーズの『指定した時間分、新型2機の足止めをしろ。』と言う言葉を思い出す。

 

(・・・一応、やることは終わりってことかよ。)

 

本来、彼ら強化兵士『ブーステッドマン』は強化具合によって思考力が落ちて行くと言う欠点を持っている。

オルガは、他の二人と比べて強化ステージが低いこともあり、既に目標が達成されていることに気が付くことができた。

 

方向転換して引き上げて開始するカラミティを見送るとレイダーは、2機に向かっての攻撃を再開する。

 

「帰るなら一人で帰ってよね。僕は知らないよ・・・!」

 

言い終える前に海中からジャスティスが強襲してきたことでクロトの判断が遅れる。

 

変形による回避で直撃こそ免れたものの、右翼を切断されたことで機体はバランスを崩して正常な飛行が困難となった。

 

「ハッ、馬鹿はてめえの方じゃねえか!」

 

「なんだとっ・・・ウッ!?」

 

墜落寸前なところをカラミティに乗りかかる形でレイダーは、戦線を離脱していく。

 

2機が引き上げて行くのを見たシャニは、バッテリー残量を確認して自分も限界にきていることに気づく。

 

「もう、終わり?」

 

鬼気迫るフリーダムに対して、フォビドゥンは鎌を投げつけて急いで2機の後を追う。同時にバッテリーの問題か押していた地球統一連合の部隊は次々と撤退を開始した。

 

「アスラン、大丈夫か?」

 

「あぁ。・・・奴ら、何故撤退を?」

 

「さあな。だが、こっちの被害も相当だ。一旦、本土に引き上げるぞ。」

 

スネークたちは、仲間たちのことを気にして戦線から引き上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウズミから残存部隊全てにマスドライバー『カグヤ』に集結するよう命令が出たのはそれからすぐ後のことだった。

 

アークエンジェルが修理している間、マリューは彼から残存勢力を載せた『クサナギ』と共に宇宙へと離脱するように告げられた。

 

「オーブを離脱・・・我々に脱出せよと、そう仰られるのですか?ウズミ様。」

 

「貴方がたにももうお分かりであろう。このオーブが失われるのももはや時間の問題だ。人々はダイアモンド・ドッグズの協力で避難した。支援の手もある。後の攻めは我らが。」

 

その言葉に傍にいたカガリは、悪い予感を感じた。遅れてスネークたちも合流し、ウズミは更に話を進める。

 

「しかし、例えオーブを失うことになっても失ってはならぬものがある。地球軍の背後にはブルーコスモスとそれを手中を治めているジョージ・シアーズの姿がある。そして、プラントも又コーディネーターこそが新たな種とするパトリック・ザラの手のうちにある。このまま進めば世界はやがて認めぬ者同士が際限なく争うものとなろう。そんなものでよいか?君たちの未来に、別の未来を知る者が今ここにある小さな火を抱いてそこへ向え。またも過酷な道だが分かってもらえるな、マリュー・ラミアス。」

 

すぐ近くで聞いていたマリューは、一瞬ためらうものの傍にいるムウが頷くと決心がついたのか彼と向き直る。

 

「小さくとも強い火は消えない・・・と。私たちも信じております。」

 

「うむ、時が来ればダイアモンド・ドッグズの使者が迎えに来るであろう。では、急いで準備を。」

 

「ハッ!」

 

彼女たちは敬礼し、艦へと戻る。

 

ウズミは、不安そうなカガリの頭にそっと手を当てながらスネークの方を見る。その様子にスネークは、彼女同様に違和感を覚えるがその答えを知るのはもう少し先となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「閣下、オーブ軍は全て『カグヤ』に集結。我々に最後の決戦を望むようです。」

 

『いや、ウズミ・ナラ・アスハは、部下諸共心中するような男ではない。』

 

「では、何を?」

 

『周囲を取り囲まれている以上、奴らが逃れられるのは宇宙だけだ。イズモ級に残存勢力を載せて打ち上げるのだろう。』

 

「なら、今すぐ各部隊に攻撃を・・・・」

 

『待て。下手に動けばマスドライバーを失いかねん。例え逃れても国を失った奴らは、迷える子羊も同然。下手に傭兵紛いになるよりアスハ本人を生け捕りにし、降伏させた方が手早い。』

 

「分かりました。各部隊は待機。レイダー、カラミティ、フォビドゥンは補給終了後、予定通りに向かわせます。」

 

『こちらも手を進める。任せたぞ。』

 

「ハッ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラズマブースターの取り付け作業が進められている中、アークエンジェル内では仕様の確認と大気圏離脱のシミュレーションが行われる。

 

当然、ほとんどのクルーが持ち場で缶詰め状態となるため、ミリアリアやフレイと言った一部の乗員は各所へと食事の差し入れをしていた。

 

「・・・」

 

「フレイ、大丈夫?」

 

暗い顔をしているフレイに対し、ミリアリアは心配そうに声をかける。

 

「えぇ、大丈夫。ちょっと、ヘリオポリスの時のことを思い出しちゃって。まさか、こんな形でオーブから離れるなんて考えたこともなかったから。」

 

「・・・私も。あの時の当たり前が今じゃ遠い夢のように感じちゃうもん。カズイ、ご両親たちと一緒に避難できたかな。お母さんたちも無事だといいんだけど。でも、今は目の前のことに集中しなくちゃ。バジルール中尉がいたらきっと怒られちゃうし。」

 

彼女は、同じ気持ちであることを伝えると同時にこの場にいないかつての上司のことを思い出しながら苦笑した。

 

「あっ、分かる。短かったけど、私もあの人怖いと思ったし!」

 

「でしょ!フフッ、転属先で元気にしてるかなぁ。」

 

 

 

 

 

同じ頃、空中戦ができないことを理由にストライクとバスターをアークエンジェルの格納庫に入れたトールとディアッカが席を外して休んでいた。

 

「・・・なあ、ディアッカ。聞いてもいいか?」

 

「あぁ?何を。」

 

飲料を飲みながら彼は、トールの方を見る。

 

「お前、本当にザフトに戻らなくてよかったのか?向こうには仲間もいるのに。」

 

「・・・イザークなら心配ねえさ。アスランの話を聞く限り二コルと俺がいなくなった後、大分冷静に動けるようになったみたいだし。」

 

「デュエルのパイロットのことか。」

 

「確かにカーペンタリアに戻ることもできたろうけど俺一人で行くってのもさ。まあ、アスランに合流してフェイスの指揮下に入って地球軍と交戦してたってことにしとけば、問題ねえよ。」

 

「そんなに偉いのか、特務隊って。」

 

「まっ、それ以上にほっとけない(お前)がいるってこともあるけどな。」

 

「ブッ!?」

 

まさかの自分も原因に入れられたことにトールは、吹き出してしまった。

 

「さっきの戦闘もおっさんと比べて危なかったしな。帰ってお前が死んだってことになったらシャレにならないぜ。」

 

「ゴホッ、ゴホッ!!・・・・言われなくても分かってるよ。もう、ミリィのこと心配させたくないし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外では、いつでも迎撃できるようスネークとアスランが機体の傍で待機している。

 

葉巻を吸って休んでいる彼に対してアスランは、ラクスとシーゲルの話を思い出していた。

 

「・・・・ザフトのアスラン・ザラか。」

 

「うん?」

 

「いや、ここに来る前のことを思い出していたんだ。あの二人には分かってたんだ。国や軍の命令に従って、敵を撃つ・・・それで一日でも早くこんな戦争が終わらせればと、仕方ないと自分に言い聞かせていた。・・・でも、俺たちは本当は何とどう戦わなくちゃいけなかったんだ?」

 

スネークは、葉巻を消すと彼を向き合いながら答える。

 

「アスラン、いつの時代も『絶対的な敵』は存在しない。プラントと地球、コーディネーターとナチュラルのように『相対的な敵』と戦い合うことが世の中の常だ。故に答えは自分自身で出すしかない。それがどんな結末になろうとも。」

 

「それが父を裏切ることになったと・・・してもか?」

 

「或いはな。だが、すぐに出す必要はない。これから俺たちと探すのも手段の一つだ。今は、オーブを脱出することに専念すればいい。親父さんの件は宇宙に上がってから改めて考えればいい。」

 

その直後、アークエンジェルの方から警戒アラートが発せられる。

 

「どうやら、奴らがここに向かい始めたようだ。」

 

二人は、すぐに機体に搭乗していつでも出られるようにした。

 

「艦長、先に出てくれ。俺とアスランは、クサナギと一緒に上がる。」

 

アークエンジェルは浮上を始め、左右のカタパルトからローエングリンの砲台を展開、チャージを開始する。

 

「キサカ一佐、敵が迫っている。アークエンジェルはいつでも出れる。クサナギの発進を急いでくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父様、共に脱出を!残していくなどできません!!」

 

「いかん!お前にはお前の役目、我らにはわれらの勤めがあるのだ!」

 

カガリは父に腕を引っ張られながらも何とか共にオーブを脱出しようと説得していた。

 

管制室に五大氏族首長たちがクサナギに乗船せずに残っていたことから予感は的中しているのは明らかだ。少し前まで国の方針で仲たがいしていたとはいえ、親を置いて逃げるなど彼女には考えられなかった。

 

「でも・・・」

 

「思いを継ぐ者無くば、すべて終わりぞ!何故、それが分からん!!」

 

泣きかけている娘を他所にウズミは、発射準備を終えたクサナギの前に向かう。

 

入り口では既にキサカが待っていた。

 

「ウズミ様!」

 

「急げ、キサカ!もう時間がない。この馬鹿娘を頼んだぞ。」

 

ウズミは、やや乱暴にカガリを彼に託す。

 

「お父様!」

 

このやり取りをしている間にも外ではアークエンジェルが大気圏離脱を開始し、スネークたちがクサナギの打ち上げを待っている。

 

彼は、泣いている娘に対し僅かながら表情を和らげて最後とばかりに頭を優しく撫でる。

 

「そんな顔をするな。オーブの獅子の子たるものが。」

 

「でも・・・」

 

「父とは別れるがお前は一人ではない。姉弟もおる。」

 

そう言うとウズミは、ポケットから一枚の写真を取り出して渡す。その写真には、双子の赤子を抱えて微笑んでいる女性が映っていた。

 

カガリは、最初こそ何のことなのか理解できなかったが写真の裏に書いてあるものを見て目を丸くし、頷く父の顔を見た。

 

「其方の父で幸せであったよ。」

 

同時にドアが閉まる。

 

カガリはまだ何か叫んでいたが聞こえることはなく、クサナギの加速が開始される。

 

娘の最後の姿を見送ったウズミは、自分たちの役目を果たすべく、管制室へと戻る。

 

 

 

「なっ!?こ、これは!?」

 

しかし、目の前の光景に彼は絶句する。

 

そこには自分と共に残ることを決めた五大氏族首長たちの亡骸が無造作に転がっていたのだ。

 

背後に気配を察したのも束の間、ものすごい力に首を絞めつけられ、ウズミは宙へ投げ出された。

 

「愛娘との最後の会話は楽しかったかな?アスハ代表。いや、今の代表は娘の方か。」

 

自分を捕らえた者の正体を見て、ウズミは苦しみながらも口を開く。

 

「じょ、ジョージ・シアーズ・・・・」

 

敵のトップがこの場にいることに彼は、自分が想定したことが事実であったことを悟る。

 

シアーズは、強化スーツに取り付けられている2本の大型マニピュレーターで彼を捕らえながら不敵な笑みを浮かべていた。

 

「何故、敵である私がこの場にいるのかは薄々察しているようだな。その通り、彼らが我々をここまで導いてくれた。祖国を戦火の海にした貴様を見限ってな。」

 

するとある2人が親衛隊にに囲まれて姿を現した。

 

セイラン家の当主ウナト・エマ・セイランを始めとするオーブ下級氏族の面々、近くで死亡しているコトー・サハクの跡継ぎであるロンド・サハクだ。

 

「やはり・・・密告者がいたと言う事か・・・・」

 

「う、ウズミ様・・・誤解なさらないでください。私は・・・飽くまでこの国の未来を考えての行動なのです。このオーブを復興させるためにカグヤとモルゲンレーテを失う訳にはいきません。貴方がシアーズ閣下の交渉を受け入れれば、こんな事態にはならなかったのです・・・。」

 

裏切ったことへの罪悪感なのか、またはシアーズから見切りを付けられてしまうことを恐れているのウナトは、額から冷や汗を流しながら話す。ロンド・サハクを除く面々も同様の反応で彼に怯えているようだった。

 

「貴殿のやり方では、この国の未来はない。オーブ存続のため、我らは貴殿をシアーズ閣下に差し出すことを選ばせていただいた。」

 

「ミナ・・・・」

 

「そういう事だ、ウズミ・ナラ・アスハ。貴様には脱出した残存勢力への降伏勧告のための人質になってもらう。戦力はたかが知れているがこれから先のプラントとの戦いの邪魔になられても困るからな。必死に消したであろうモルゲンレーテのデータもミナ・サハク嬢がバックアップを確保している。カグヤもありがたく使わせてもらう。」

 

「・・・・・」

 

ウズミは、じっとモニターへと視線を向ける。

 

クサナギは加速しながら打ち上げられ、フリーダムとジャスティスも無事に乗り込めたようだ。

 

裏切り者の存在を知らせることはできないが自分にはまだ最後にできることがあると考えを切り替え、シアーズへと向き直る。

 

「・・・・種は既に飛んだ。悔いはあるが全てを貴様の思い通りにさせるわけにはいかん!」

 

「うん?」

 

そう言うとウズミは、奥歯を強く噛み締める。

 

すると体が一瞬青白く発光し、強く痙攣し始めた。

 

シアーズは、寸でのところで彼を手放したことで無事だったがウズミの体は白目を剥いてその場に転がる。ウナトたちが近づいて確認すると感電死していることが分かった。

 

(利用されぬよう自害するとはな。だが、私を道連れにするための物ではない。何を・・・・)

 

思考を張り巡らせようとしたのも束の間、外から爆発音が響く。何事かとモニターを見るとマスドライバーのレール部分が爆発し、カグヤはみるみる崩れ落ちて行った。

 

「か、カグヤがっ!?」

 

ウナトたちが想定外の事態に困惑する一方、ミナはウズミの最後の一言で納得していた。

 

あの男がマスドライバーを破壊する方法を一つだけにしておくはずがない。恐らく、自分たち内通者がいることを予期し、施設の破壊ができずともしばらくの時間を稼ごうと自分の命に引き換えにできるよう奥歯に起爆装置を仕込んでおいたのであろう。

 

完全に崩壊したカグヤを見て、シアーズはしばらく呆然としていたが我に返ると気でも障ったのか急に笑い始めた。

 

「・・・クックックッ・・・フッハッハッハッハッ!!」

 

「か、閣下?」

 

「ハハハハッ・・・例え己の命を引き換えにしてもマスドライバー本体は破壊すると来たか。どうやら、私は『オーブの獅子』を侮っていたようだ。」

 

白目を剥いているウズミの目を閉じさせると彼は、一同の方へと向き直る。下級氏族たちがうろたえている中、先の口を開いたのはミナだった。

 

「これからどうなさるおつもりで?」

 

「マスドライバーを失ったことは残念なことだがモルゲンレーテの関連施設を手に入れることはできた。諸君らの協力に感謝する。予定通り新政権はサハク家を中心に統一連合への加盟と同時に本土の復興を進めてもらう。私は、ビクトリア基地奪還次第、月へ向かう。ミナ・サハク嬢、貴殿らの居城『アメノミハシラ』を貸してもらうぞ。」

 

「では、受け入れ準備を進めます。ウナト、我らが宇宙にいる間、本土ことは貴様たちに任せる。」

 

「承知しました。それで・・・カガリ様の方はいかがいたしましょう?」

 

ウナトは、頭を下げながらクサナギで脱出したカガリの扱いについて確認した。

 

アスハ家が国民からの支持が厚い以上、下手に彼女を失う訳にはいかない。その質問に対してシアーズは、笑みを浮かべて返答する。

 

「カガリ・ユラ・アスハ代表は、混乱に生じて徹底抗戦を上げた逆賊に拉致された。私は、地球統一連合代表として彼女を彼らから奪還することをここに約束しよう。」

 

「期待します、シアーズ閣下。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C.E.71年6月16日

 

地球統一連合軍とオーブ連合首長国との戦いは、ウズミ・ナラ・アスハの自害によって幕を閉じた。

 

敗戦したオーブは、ロンド・サハクと下院から選出された暫定政府によって降伏勧告を受諾。統一連合に加盟することとなった。

 

 

その僅か2日後、オーブ開放作戦と同時進行で進められていたビクトリア基地奪還作戦が発令。

 

一週間以上に渡る『第三次ビクトリア攻防戦』となるが疲弊しているザフト軍に対し、統一連合はストライクダガーを始めとする新型機を大量投入したことによって劣勢に立たされ、宇宙港は陥落。マスドライバーを確保することに成功したのだった。

 

対するザフト軍は、度重なる戦力の消耗によって地上での戦線を維持することが困難であると判断、プラント本土の防衛に注力すべく宇宙戦力強化へと舵を切るのだった。

 

 

 




カセットテープ《オセロットとパトリックの会話の盗聴》

『・・・』

『閣下、お話とは。』

『・・・・』

『閣下?』

『ん?あぁ・・・すまん。気づかなかった。』

『大分お疲れのようで。』

『少しな。あの小娘(ラクス)の方はどうだ?』

『シーゲルを尋問し、吐かせた場所を総動員して調べましたが全てもぬけの殻でした。』

『クラインが嘘をついている可能性は?』

『いえ、全てのポイントの彼女たちがいた痕跡は残されていました。間違いはありません。』

『あのふざけた放送で動揺している国民が増えつつある。一刻も早く黙らせねば・・・・アスランの方から何か報告は?』

『今のところは何も。』

『ふう・・・・奴には荷が重すぎたのかもしれん。』

『珍しいですね、貴方が心配なさるとは。』

アイツ(レノア)が唯一残してくれたものだからな。軍人とは言え、心配にもなる。』

『ご子息なら心配ないでしょう。・・・・っで、私の用事は?』

『そうだったな。・・・実は、アカデミーの教官を君にやってもらいたいのだ。』

『私に?』

『今回の戦争で多くの若者が戦死した。これ以上犠牲が出ぬよう君にプラントの未来を担う若者を指導してほしいのだ。』

『閣下・・・私は教育者には向いていません。それならユウキを親衛隊から引き戻した方がよろしいかと。それとも私では今の役割が実力不足とでも?』

『そうではない。これまでの実績があるからこそ任せたいのだ。代わりにクルーゼをこちらに呼び戻す。議会でも今後は宇宙に注力することになったからな。』

『私やり方では、スパルタ程度ではすみません。生徒の親が黙っていませんよ?』

『それについては私の方で抑えておく。不満を持つ輩がでるだろうが少なくともナチュラル共に情けない姿をさらすようなことはなくなる。』

『ハア、分かりました。』

『頼んだぞ。』

『では、シーゲルの尋問に戻ります。』







『・・・・お前がこの場に居たら、きっと今の私を軽蔑するだろうな。だが、軍人になった以上特別扱いするわけにはいかん。私も引くわけにはいかん。お前を奪ったナチュラル共に手を下すまでは。』
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