恐れを知らぬと、後に呑み込まれる。それが死に至らしめる毒を持つ蛇でさえも……。

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 皆さま、おはこんにちばんわ。

 今回は企画小説という事で短編をお送りします。

 それでは、どうぞ。


水も滴る、いい恐れ

 関東地方では梅雨明けが発表されて、夏も本格的な暑さに見舞われる今日この頃。Ave Mujicaの面々はRiNGでスタジオを借りて練習に励んでいた。

 

 このバンドは、結成して1年はおろか数ヶ月しか経ってないが、メンバーが実力者揃いのためか最近の話題性のトップに躍り出るのであった。そんなAve Mujicaだが、今の時点ではライブの予定は入っていないので、次のライブが来るまでの備えとしてのバンド練であった。

 

 ……といっても、今此処にいるメンバーで全員ではない。ギター&ボーカルの初華はAve Mujicaの他にも2人組アイドルバンド…sumimiというバンドと兼任で所属しており、今はsumimiでの相方と一緒にグラビア撮影のため1日いないのだった。

 

 「祥子ちゃん、一旦休憩に入らない?流石にこの暑さで水分補給もしないで練習は厳しいからね」

 

 ひと段落ついたからか、獅音はあらかじめ持参していたクーラーボックスからスポーツドリンクを祥子に差し出しながらそう提案してきた。

 

 「そうですわね、熱中症で倒れたのなら元も子もありませんわ」

 

 そう言って祥子は続け様に30分の休憩を全員に言い渡した。

 

 「しかしここ最近暑くなってきたね〜。水分摂らないと身体が持たないよ〜……それになんか冷房の効きが悪いみたいだし」

 

 にゃむがそんな事を愚痴りながらクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出しグビグビと飲み始めた。確かに都内は熱中症で倒れる患者が後を絶たないため彼女の言い分は正しいが、同時に冷房が点いているのに一向に部屋が涼しくならないのに不満を顕になっていた。

 

 それと同時に、祥子と獅音はRiNGのスタッフに急遽呼ばれたので、休憩は『ひとまずスタッフとの話が終わるまで』延長されたのであった。そこから約1時間経過して、漸く祥子と獅音が戻ってきた。そして何があったか、祥子と獅音は今いるメンバーに説明をした。

 

 「なるほど、RiNGは暫く使用できないのですか」

 「残念……」

 

 2人から聞かされたのは明日から暫くRiNGの一時的な休業である事だ。理由としては、先程空調設備の点検に来た業者曰く『設備に色々と不備が見つかったから修理が必要』との事だ。その為、RiNGのスタジオを使用はできないのだ。

 

 確かに今の時期は猛暑が続いてるため、これから今日以上に暑くなる日も見込まれるので、熱中症でダウンしないよう考えた故の決断であった。

 

 しかし翌日以降RiNGで練習予定のバンドもあるので、それらに対してはCiRCLEで空いているスタジオに変更になるのだが、如何せん予約数も多いから『希望日は抽選になる』のと『1組最高2つまで』という制約がある。

 

 そこで抽選結果としては、Ave Mujicaは明日と明後日にCiRCLEで練習する事になったのだ。

 

 「それなら仕方ありませんね。では明後日の練習が終わってからはどうするのですか?」

 「そこは先程颯樹さんと連絡を取り合って相談したのですが、それ以降は1週間のオフになりましたわ。曰く『ライブも暫くないから休める時は休め』と言われたのでそうするしかありませんわ」

 

 確かに颯樹の言い分は一理ある。時期が時期だから練習も必要な分休息も必要となるのだ。だから練習を暫くオフにして身体を休める日を設けたのだ。

 

 その後は、時間まで練習をしてRiNGで流れ解散する事になったのであった。

 

 

 「しかし1週間のオフですか。そうなれば何もする事がありませんね……」

 

 その後解散した後、海鈴は羽沢珈琲店でスマホでスケジュール確認をしながらアイスコーヒーを一口飲んでいた。オフになった分1週間の間でサポートに入ろうと思ったが、不運にもサポート先も元々の予定あったので振り出しに戻ったのだ。一度アイスコーヒーから口を離すと、ため息をついた海鈴はこの1週間どうしようか考えていた。

 

 「あれ、海鈴じゃないか。どうしたんだ、こんな所で?」

 

 しかしその時、海鈴に声を掛けてきたのだ。その人物は、海鈴が個人的に気になっている人物…京介であった。その京介の後ろには、ましろと七深が控えてた。

 

 「京介さんではないですか。どうしたのですかこんな所で?」

 「俺?俺らはCiRCLEで合同ライブの打ち合わせが終わった帰りに此処に立ち寄ったんだ」

 

 京介が羽沢珈琲店(ここ)を訪れた理由を話すと海鈴は自分と相席にするよう促してきた。確かに店内は涼みに来た外回りのサラリーマンや主婦もいるためか満席に近かった。あと3人座れる席もなかったため海鈴と相席にする事になった。

 

 「それで海鈴ちゃんはこんな所で何してたの?」

 「練習帰りにここに立ち寄ったんですよ」

 「あれ?活動拠点は主にRiNGじゃなかった〜?此処からだと結構遠いけど」

 「実はですね……」

 

 七深に指摘された事に対して海鈴は先程RiNGで何が起きたのか京介達に説明した。

 

 「……それは大変だね」

 「このくらい大丈夫です。でも問題なのがそれ以降の事です」

 

 臨時休業くらい問題ないようだが、海鈴にとって問題なのがその期間はスケジュールが空いてしまったのでどうするかであった。1〜2日なら自主連を入れても問題無いが流石に1週間となると全部が全部自主連を入れるわけにはいかないのだ。

 

 それに今の時期は夏休み、学校から出された宿題もやらなくてはならないが、海鈴はサポートやバンドの事もあってか、宿題は計画的に進めていたので、残りは数える程度で2日ほど時間を要せば終わるところまでに至っていたのだ。

 

 「京介さん」

 「どうした海鈴?」

 「この1週間、何処か予定は空いてますか?」

 

 考えた矢先、海鈴は何か思いついたように京介に予定を聞き出し始めた。

 

 「俺は特には予定は無いが……」

 

 予定が無い、といえば嘘になる。京介の場合は生徒会長の仕事やMorfonicaの活動もあるからだ。しかし、立場上オーバーワーク気味になっていたので、その両方から『少しは休んで!』と釘を差されたのだ。だから『ある』と言っても一緒にいるましろと七深に後で咎められるのが目に見えているのだ。

 

 「それなら好都合です。何処か一緒に遊びに行きませんか?」

 

 これを好機と捉えてか、海鈴は京介に遊びに行かないか提案をするのであった。

 


 

 そして数日後……

 

 海鈴の提案通り、京介は彼女と海に来ていた。しかし京介は何処か複雑そうにしていた。実は生徒会やMorfonica以外にも、同メンバーである透子が学期末のテストで赤点を複数取って補習を受ける事になったのだ。

 

 ちなみに補習は夏休み初日から始まっており、2週間近くやってから試験をやってから結果次第で補習は解放されるわけだが、もしその試験を落とせば夏休みは補習で丸々潰れるのだ。

 

 バンドはもちろん、合同ライブもあるからそれを回避させないといけないので京介は透子の勉強を見る予定であったが、『京介先輩は働きすぎだから休まないとダメ!月ノ森の生徒の問題は私達だけで解決します!』と言われて、瑠唯が京介の妹の桜雪を脅して透子の勉強に付き合う事になったので、『月ノ森の生徒で解決させる』が実行されたのだ。

 

 ちなみに京介は今年受験生のはずだが、普段の素行と成績が良いのでその点は問題無いのだ。しかも学校から推薦を貰ったり自力で試験を受けて合格できるレベルにいるためそこまで苦ではなかった。

 

 「全くアイツら……だが来てしまった以上、ここは休暇を存分に楽しむしかないか」

 

 無理矢理送り出されたメンバー達(特につくし)に愚痴を言いつつも、京介は複雑になりかけてた気持ちも割り切り、パラソルやシートの準備をしていた。

 

 ちなみに京介は更衣を済ませており、灰色で統一されたサーフパンツとラッシュガードに身を包んでいた。あとは同じ色合いのビーチサンダルを履いているくらいだ。

 

 そして2人が(くつろ)げる広さを確保したら、想定してたより場所取りにそんなに時間を使ってないので、海の家で飲み物を数本購入してから持参してきたクーラーボックスに入れた。

 

 場所取りや飲み物確保を済ませた京介だが、海鈴が来る気配はまだなかったので、来るまで少し横になって寝転がろうとした。

 

 「京介さん、お待たせしました」

 

 しかし、その時着替えを済ませた海鈴が声を掛けてきた。

 

 この時海鈴は、白の無地のTシャツを着ているが、裾結びをしており、黒色のショートパンツに身を包んでいた。

 

 「(オイオイ、まさかとは思うが露出度の高い水着を着てないだろうな……?)」

 

 裾結びをしているから腹部が見えるのは明白だが、腰の部分に赤色の紐の部分が見えていた。所謂見せパンの部類に当てはまるが、問題は紐の面積が狭かったためか、水着より肌の面積の方が多いのではないかと京介は懸念した。

 

 「全然待ってないよ……というより日焼け対策をそれなり徹底しているな」

 

 しかし海鈴に悟られると何が起こるか分かったものではないため、照れ隠しをしながら適当にはぐらかした。

 

 「人並みに対策してきただけですよ。それに、これらは()()()()()()()()()()ので」

 「えっ?」

 

 海鈴はそう言うと、その場でショートパンツを下ろした後、結ばれている裾を解いてからTシャツを思い切り脱ぎ捨てた。

 

 「お待たせしました。さぁ、改めて早速遊びに行きましょう」

 

 ショートパンツとTシャツを脱ぎ捨てると、そこには上部が黒を基調とした、下部のサポーターの部分が赤色のレイヤードビキニでに身を包んでいた海鈴の姿があった。

 

 しかも、ティモリスの衣装を見て分かる通り、彼女は脚が長く、身体のラインもしっかり整っており、スタイルも抜群なため、誰もが思わず見入ってしまう程の美少女であるのが明白であった。

 

 「(オイオイ、なんちゅー大胆な物着てくるんだ……!)」

 

 京介は思わず目を逸らした。それもそのはず、布面積も一般のと比べても多少少ない分肌の露出度がそれに比例して多いのだ。

 

 「(これはこれは……三角さんには感謝するしかないですねぇ)」

 

 そんな京介の様子を見た海鈴は口角を軽く上げて反応を楽しんでいた。実は今回海鈴の着てきた水着は数日前に初華と相談して買ったものだ。ちなみに、先程の仕草や()()()()()()()()()()()も、初華に教え込まれたものである。

 

 そして海鈴は、京介が目を逸らしている隙を突いて、胸元を右腕で押さえて左手で背中の水着の紐を緩めた直後、シートの上にうつ伏せで寝転がった。

 

 「その前に、日焼け止めを背中に塗って貰えませんか?」

 「聞く前に行動に移さないで貰えるかな?」

 

 日焼け止めを見せつけながら京介に塗るよう頼んできた。しかし聞く前に行動に移してきたので京介は呆れるしかなかった。

 

 しかし既に塗るところまでスタンバイしているので、ここで断る訳にもいかないので渋々海鈴の背中に日焼け止めを塗る事にした。

 

「あんっ……♡」

 

 そして日焼け止めを塗る最中、海鈴はわざとらしく甘い喘ぎ声を時折出してきた。普段からサバサバしている彼女から出ているのとは思えない…とても甘く感じるものであった。

 

 喘ぎ声で周りの視線が京介達に向けられるが、京介はそんな事で心を折れるわけにはいかないのと生粋の真面目さも相まってか手間取ったが塗り終える事ができた。

 

 背中を塗り終える際に海鈴に「前も塗りますか?」と尋ねられた際は当然驚くも、すぐさま「でも残念ながら前は着替えする際に塗ってきましたので」と返ってきたので心臓に悪いと感じたのだ。

 

 日焼け止めを塗り終えるとやっと遊ぶ事になるのだが、ひとまず浅瀬に移動してどうしようか京介は考えた。しかしその直後、海鈴は京介の顔に水をかけてきた。しかも海鈴はしてやったりって表情をしながら笑みを浮かべていた。

 

 「ほう?『やられたらやり返す覚悟』は持ち合わせているだろうな?」

 

 そう言うと京介はお返しと言わんばかりに海鈴の顔に水をかけ返した。

 

 「やりましたね……えいっ♪」

 「元をただせばそっちから先に手を出してきたからだろ?ほらっ」

 

 その後2人は周りを気にせず大いに水をかけあいを始めた。しかも2人を知る者が見たら『アレ?そんなキャラだったっけ?』ってツッコミを入れたくなるほど無邪気になっていたのであった。

 

 そして暫し水かけを終わると一度パラソルの所まで戻って気まずそうにタオルで身体を拭いていた。

 

 「なんか…はしゃぎすぎたな」

 「大丈夫です、私も少々はしゃいでましたので」

 

 そう言いながら2人は身体を休める目的で休憩を取る事となった。暫くして時計を見ると昼ご飯には少し早い時間であったが、この時期と周りを見る限り、大変混雑する可能性があるので、海の家で少し早い昼食を摂る事になった。

 

 しかし、京介が予想してた以上に混雑していたのだ。だが外には若干列は出来ているが海の家よりは混雑していないテイクアウトできる屋台があったので、京介は海鈴を一度パラソルの所まで帰して自分はリクエストを聞いて列に並んで昼ご飯を買うのであった。

 

 そして列に並ぶ事約30分、京介の手には焼きそばと焼きイカやたこ焼きを入れたビニール袋が握られていた。

 

 「ったく、まさか30分も待たされる羽目になるとは……」

 

 パラソルまで戻る道中で水を飲みながら京介は愚痴を呟いた。しかも直射日光を直で浴びていたのか顔には汗が流れていた。

 

 「熱中症で倒れる前にさっさと海鈴の所まで戻るとしよう」

 

 そう言って京介は真っ直ぐ海鈴の元に戻るのであった。しかし……

 

 「ねぇお姉さ〜ん、俺らと遊ばない?」

 「流石タクさん、激マブの娘ゲット!」

 「俺、寒井丸(さむいまる) 拓実(たくみ)。略して『サムタク』付き合ってよ〜、お姉さん」

 

 戻るや否や、京介が真っ先に目撃したのは、ガラの悪いチャラ男3人にナンパされている所であった。「まだこんな輩がいたのか……」と京介は呆れながらため息をついた。

 

 とりあえず海鈴をあのままにしておくわけにはいかないので、近くにいた通りすがりに荷物を任せてパラソルまでチャラ男達に警戒されないように向かっていった。

 

 「フンッ!」

 「グボラッ⁉︎」

 「タクさん⁉︎」

 

 京介はタクと呼ばれた男目掛けてエルボーをかました。その後は近くにた取り巻きA(仮称)の顎目掛けてアッパーを入れた。

 

 「ヒィッ⁉︎」

 「お前は見逃してやる。ただし、この2人の後片付けを今すぐしろ。でないとこの2人と同じ末路を辿る事になるが?」

 「……失礼しましたー!」

 

 京介の脅しに屈した取り巻きB(仮称)はタクとA(仮称)を引き連れてその場を立ち去った。立ち去ったのを見届けた京介は先程荷物を預けた通りすがりの元まで戻って行って、荷物を受け取り、何事も無かったかのように海鈴の元に戻った。

 

 「お待たせ海鈴、遅くなってすまない」

 「大丈夫ですよ。それより先程の腕前はお見事です」

 「まあ褒められた事ではないがな」

 

 その後はシートに腰掛けると、軽く水分補給をしてから昼食にした。食べ終わった後は、食休みをとるためか、2人はサングラスを掛けながらシートに寝そべり日光浴を始めた。

 

 「それにしても今日は暑いですね」

 「毎日熱中症警戒アラートが発令してるからな……今日も猛暑日だよ」

 「だから今日はこんなにも人が集まっているんですね」

 

 海鈴は寝そべりながら辺りを見渡した。何処もかしこも人だらけで海のある方角まで人で溢れ返っていた。

 

 「……京介さん。一度2人きりになりませんか?」

 「2人きりに……分かった。でも人が多いから2人きりになれる場所はないが、何処に行くんだ?」

 「ついてくれば分かります」

 

 その後海鈴に手を引かれて到着したのは、人気(ひとけ)の少ない…というより全くない岩場であった。

 

 「此処なら人が来ないですね」

 「確かに2人きりになれるが……どうしてこんな所に俺を連れてきたんだ?」

 「いずれ分かります」

 

 何故此処に連れてこられたのか理解出来なかった京介は海鈴に尋ねるも、本人は頑なに事情を話さなかった。それに対しため息をついた京介は近くにある岩に腰掛けた。

 

 しかし、チャンスと言わんばかりに一瞬海鈴の目が光った。その隙をついて京介に再接近して彼の唇に自分の唇を押し付けた。

 

 「うぐっ……うっ!」

 「…………」

 

 京介は抵抗しようにも、体勢的にも力が入らなかったのと海鈴が彼の顔を手で抑えていたためか彼女からなかなか離れる事が出来なかった。その後は京介の口内に舌を入れて、彼の舌と自身の舌を絡めさせるのであった。

 

 「…………ハァッ、ご馳走様です♪」

 

 ディープキスをして数分後、充分に堪能できたからか海鈴は一度自分の唇と京介の唇を離した後妖艶な笑みを浮かべた。そして離した際に銀色の糸が京介と海鈴の間を伝った。

 

 「海鈴、一応聞くが何故このような事を……?」

 「貴方の事を愛しているからです

 

 何故海鈴がこのような事をしたのか京介は尋ねたが、返ってきたのは彼女の告白であった。もちろん京介は突然の告白に驚きに隠せなかった。

 

 「貴方が私をナンパから助けてくれたあの日から、貴方をいつのまにか意識していました。だから先輩や豊川さんが貴方をスカウトした時は正直嬉しさが込み上げてきましたよ、それも感謝しても感謝しきれないくらいに」

 

 京介が驚いている事を尻目に海鈴は自身が抱いている気持ちを淡々と吐露した。いつもはサバサバしている彼女だが、今回ばかりは年相応の少女に見えた。

 

 「おそらく貴方の事を好きになっている異性の方はいるでしょうが、私はその方達に負けないよう頑張ります。もちろんバンドやサポートも両立させますが」

 「そ、そうか……」

 

 そして海鈴はこのタイミングでこの場にはいない恋のライバルに負けない事を宣言するのであった。

 

 「ですが……」

 

 そう言葉を区切ると同時に海鈴は京介と再度口付けを交わした。先程と同じディープキスではあるが、違う点を挙げるとキスを交わす時間が長かった。

 

 「…まずはやる事をやってしまいましょうか?流石に人気が無いとはいえ絶対とは限らないので手早く済ませちゃいましょう」

 「待て!もしかして此処に連れてきたのって……」

 「無論このためですが?」

 

 やられた……!京介が最初に思ったのはその一言であった。もっと警戒すべきだったと後悔するしかなかった。休みだからその点が怠った事を京介は自身を心中呪った。

 

 「京介さん、まさかこのお誘いに乗らないという選択はありませんよ?断れば恥をかくのは私だけでなく、貴方自身も恥をかくことになります」

 

 海鈴の指摘をするも、それは正論に近かったのか反論する余地もなかったの。京介は悩んだが、苦虫を噛み潰したように歯を食いしばりながら海鈴を優しく押し倒した。

 

 「……覚悟しろよ海鈴?」

 「もちろん覚悟はとっくに準備出来てます」

 

 海鈴がそう言うと、京介は理性の限界が超えたからか、その後は時間が許すまでお互いが本能のままに身体を求め合うのであった─────。

 


 

 海鈴との一件の後は、利用時間が近いので後処理を手早く済ませた後は、パラソルとかを片付けて返却してから更衣室で着替え終えて海を後にするのであった。

 

 その帰り道、2人は疲れているからか、あるいは先程の一件が衝動的なものであるので気まずくなったのか終始無言であった。その際、電車は終点に到着すると乗り換えのために降りてから別のホームに向かうのであった。

 

 「京介さん」

 「どうした?」

 「今日はありがとうございました。私は此処で失礼します」

 

 京介の乗る電車とは別の電車に乗るようで海鈴は一言言ってからこの場を後にするのだった。

 

 「それと……」

 

 しかし何か言い忘れたのか一度京介の方を振り向いた。そして……

 

チュッ♡

 

 海鈴は京介と唇を重ねた。しかし、場所も人目がつくからかキスをした後すぐに離した。

 

 「……今日私が言った事、頭の片隅に入れておいて下さい。それでは、お気をつけて」

 

 そう言って海鈴は踵を返したこの場を立ち去って自分が乗る電車の改札口に向かうのであった。

 

 「ましろ達になんて言えばいいんだ……」

 

 京介は先程海鈴にキスされた口元を抑えながら顔を赤くした。その後は電車に乗った後は自宅の最寄り駅で降りて家に帰るのであった。

 

 そして後日、勉強を教えた者のおかげか透子は無事補習のテストを見事にパスして合同ライブを成功に収めたのだ。その際、全員でそのご褒美…というより合同ライブの打ち上げとして、海鈴と行った海に行く事になったのは、また別の話である────。




 最後までありがとうございました。

 今回は、最近の猛暑もあってか海に行く話にしました。短編という事もあってか少しだけ冒険しました(笑)

 猛暑日が続いてますので、読者の皆さまはどうか体調管理をしっかりして元気で夏を乗り越えていただくようお願いします。

 今度は連載中の作品でお会いしましょう。それでは、また……。

【作家名】
なかムー
【代表作品】
白き蝶に導かれて……(処女作)
https://syosetu.org/novel/258703/

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