芋者奮闘録   作:舞い降りるズゴック

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 リアルがやっと落ち着いたので、設定の齟齬がないかと恐る恐る筆を進めました。

 


Re:Rising

「これでまた……会いに行ける」

 

 

 改修作業を終えたライジング・フリーダムの前で、真由は佇む。真由が一夏達と顔を合わせてから、十時間が経過していた。その間にフリーダムだけでなく、IS学園の専用機持ち達もいつ出撃しても問題ない程に調整を終えていた。

 作業が早すぎる?否、こうしてる間にもデュランダルはISコアを回収し続けている。それも半日足らずの出来事だ。限られた時間で対策と準備もできぬなら、デュランダルとの勝負の席に着くことはできない。

 

 

「少し話せるか?」

 

 

「……そんな時間あると思います?」

 

 

 千冬を冷たく突っぱねる真由。いくら時間との勝負とはいえ、今は一分一秒を争うほどではない。

 

 

「アイツらよりは準備ができているだろう」

 

 

「まだ届いてない武装があります」

 

 

「そうか、なら私から伝えてやろう。実戦でモノにしろ」

 

 

 追加の武装は吉良とマックを始めとした多くの作業員が当たっているが、完成には至っていない。この状況になっても執心するのは、それが切札の一つだと確信しているからだ。

 それでも開戦には間に合わないという匙を伝えられてはいたが、それは当然千冬も報告を受けていたため追い返す口実にはなりえなかった。

 

 

「ハァ……しつこいとこは姉弟そっくりですね。何のようです?」

 

 

 一度は頭を下げてまで頼み込んだが、この一時間の間にその畏まった態度は消え失せてた。主に一夏が飛鳥の妹だからと遠慮なしに関わってきたためだが……結果として素で馴染めるようになったのは不幸中の幸いか。

 

 

「そういってくれるな。ただでさえ、負い目を感じているというのに」

 

 

「…………どの口が言ってるんだか」

 

 

 真由は千冬と目を合わせない。だが、その一言によってその目は細められていた。間接的にとはいえ、千冬が為したことの幾つかは飛鳥と真由の人生に大きな影響をもたらした。バタフライエフェクトというには、あまりにもその要因がハッキリしている。悪感情を抱かない方が無理な話だ。

 

 

「飛鳥と初めて会った時も、そんな目をしていた。すぐに取り繕っていたが、あの目を忘れたことはない」

 

 

 ISによって傷ついた人間などごまんといる。その一人が、弟の友人で、自分の生徒と近しい存在であっただけのこと。だからこそ、千冬は意識せざるをえなかった。自らの罪を……背負うことになる十字架の重さの一端を。

 

 

「可能なら私自らの手でデュランダルに相対したかったが、それも叶わぬとは歯痒いな」

 

 

「……それが最善なら、悔やむことはないでしょう。天災への理解度(・・・・・・・)は誰よりも高いんですから」

 

 

 悪感情抜きの正当な評価。この状況に至っても、世界最強のIS操縦者である千冬が戦いの場に出ない。戦力を持て余しているともいえるが、実際はそうではない。

 千冬には確信があった。もし自らが出撃するならば、必ずあの天災・篠ノ之束が介入してくると。

 そもそも、束とデュランダルが協力関係になって、束にもたらされる利益とはなんなのだろうか。むしろ、我が子同然のISを消そうと画策する者など、不倶戴天の敵ではないだろうか。

 今になって何の動きも見せていないのは、最終的に頓挫することを見越しての静観なのか。あるいは、これから起こりうる事象に狙いを定めているのか。そうなれば、次に束が動くのは、織斑千冬がISで出撃した時。そう睨んだ千冬が選んだ行動こそが、行動を起こさないことだった。

 その選択に真由は異議を持たない。それほどまでに恐ろしい相手だと理解しているからだ。例え束が千冬だけを相手にする、あるいは千冬が束を抑え込めたとしてた、その戦いの余波で起こる影響は未知数なのだから。

 

 

「少なくとも、アナタはコンパスに……敵だった私に協力することを了承してくれた。それだけでも十分ってことにしてあげます」

 

 

「……憎いはずの相手に配慮するか。そういうところも、兄妹そっくりだな」

 

 

 千冬の記憶に残る、飛鳥の深い憎しみが宿った目。しかし、それは一瞬で、その時一度きりのもの。まるでこちらに罪はないとでもいうかのように、ただ友人の姉として、教えを請う教師として飛鳥は接していた。どれだけ辛い目に遭おうとも、失われなかったその優しさに、千冬は兄妹の繋がりを見た。

 

 

「無事に連れ帰ってこい。アイツから妹の話を聞き出すのは楽しそうだ」

 

 

「言われなくても。お兄ちゃんからアナタ達(織斑姉弟)への愚痴聞いてあげるつもりですから」

 

 

 

 

 

「デュランダルがIS学園を後に回すことはわかっていた。だが、ここまで放置とは……やはり、気づいているか」

 

 

 作戦の要となる追加の武装。その調整を手伝いながら、戸高は思考を巡らせていた。各国を襲撃し、ISコアを集めるデュランダル。もちろん、各国から代表候補生や専用機の集まるIS学園も標的の一つ。しかし、そんな場所が真っ先に襲われれば、各国は対策のために結託する恐れがある。IS学園より先に国への襲撃を行えば、次は我が身と自国の防衛のみに集中する。その隙の内にデスティニーによる国単位の各個撃破が行われてしまったことで、今から国家間の連携ができたところで打つ手はないだろう。

 その逆転の芽を積んだ今、デュランダルにIS学園を後回しにする理由は無くなったのだ。にも関わらず、まだ攻めてこない。その理由の一つに、戸高は心当たりを感じていた。曲がりなりにもデュランダルのクローン。その思考回路をほんの少し読み解くことはできる。

 

 

「ただの口約束でしかないというのに、この後に及んで守り切るつもりか」

 

 

 戸高の推理はこうだ。デュランダルは飛鳥との約束を律儀に守っている。

 真由から聞いた限り、飛鳥はデュランダルに身を委ねる前に真由の安全を条件にした。守られる確証なんてどこにもない。それでも懇願した飛鳥の願いを、デュランダルは聞き届けたのだ。たった一人による、たった一人のための口約束。ひとでなしのテロリストにそれを守る義理など、反故にしない理由などない。……だが、自分ならそうする。本質が変わっていないのなら、デュランダルも同じ選択をする。目指す理念だけは同じなのだから。

 だが、それがただ無益な選択ではないというのも確かだ。今のIS学園には真由どころか、コンパスが接触していることもデュランダルも想定の内だろう。準備と対策次第では脅威となるのに、向かうからは襲うことは決してない。それこそが、自らの計画を壊しかねない最大の変数(・・・・・)になると確信しているからだ。

 

 

「……その口約束をした相手が、飛鳥くんだからな。まだ覚醒してはいないとはいえ、片鱗はあった」

 

 

 異常なまでの成長性、機体の動きを置き去りにする反応速度。その兆しはデュランダルにとっても無視できるものではない。そのために用意したデスティニーすら振り切ろうとしていたのだから。

 だからこそ、刺激してはならない。目覚めるきっかけを与えなければ、想像の範疇で事を進められる。

 

 

「だが、その時は必ず来る。どのような形であろうとも」

 

 

 この戦いにおいて無視できない最大の不確定要素。飛鳥に眠る『何か』は、軋みながらヒビを広げていた。まるで種を芽吹かせようとするように。

 

 

 

 

 

「……ふー」

 

 

 小さく深呼吸する。作戦開始時刻まで五分を切った。何度もやってきたはずの兄のための戦い。だが、このプレッシャーの重さは初めてのことだった。もしこれが失敗したなら、今度こそ兄は誰も届かない場所まで行ってしまう。

 

 

「だからこそ、今度は離さない」

 

 

 デュランダルを抜けてから、このような展開になるとは思いもしなかった。二度と会うことはないと本気で思った。

 だから二度目だ、このような不安を抱くのは。一度失敗したのなら、その次に抱く思いは今まで以上のものとなる。不安は消えない。けど、それ以上に強い思いがあるのなら、前に進める。

 

 

『まもなく作戦開始です。発進準備をお願いします!』

 

 

 通信が入る。デスティニー・プランの宣告から、ちょうど半日が経とうとしていた。尽くせるだけの手は打った。あとは、飛ぶだけだ。

 一度破れても、同じ思い、同じ名前を乗せたこの機体で。

 

 

「進藤真由、ライジング・フリーダム零式。出ます!」

 

 

 その機体は、再び彼女に飛び立つ自由を与えた。




 超久々の執筆なので若干テンポ優先しました。作戦の概要は次回以降を楽しみに。

 ライジング・フリーダム零式ですが、これはライフリをベースにバックパックやレールガンを初代フリーダムにしたものをイメージしました。つまり飛行形態にもなれず、レールガンの取り回しも悪くなった下位互換。敵が味方になった時によくある弱体化です。
 それでも、今の真由にとっては最上の機体であり、新たな始まりを与えてくれたのです。派生元のフリーダムを使っているからという安直な理由で『零式』と付けましたが、なんか今の真由の状況とミラクルマッチした気がしないでもない。
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