遅いですね。遅くなってしまいすみませんでした。予想以上に筆が進まず今も苦戦しながら書いてます。なるべく間を空けず投稿できるように頑張りたいです。
sideパウロ
転移事件から1年が経った頃にようやくミリス神聖国に着いた。俺はまずゼニスの実家であるラトレイア家を訪れた。捜索団の資金援助とブエルの魔法陣を消す方法を探すためだ。俺にあったのはゼニスの母親であるクレア夫人だった。いきなり現れた俺を見て怪しんだが子供たちを見せて面影を感じてくれたのか信頼を得て資金援助をしてもらえることになった。
ただブエルの魔法陣を消せるであろう魔術師を雇ってもらうことはできなかった。理由は2つ。ブエルをラトレイア家専任の医師が見たところ上級以上でないと確実な対処ができないと言われたがミリスで上級を雇うには高額な報酬が必要でラトレイア家ではすでに捜索団の資金援助で手いっぱいになると言われたこと。もう1つはブエルがゼニスと血が繋がっていないことだ。
クレア夫人はノルンとブエルを見たことで2人が似ていない感じたらしく俺に聞いてきた。未だ突然現れたゼニスの夫を名乗る俺に対して警戒感を持っているため俺は事情を包み隠さずに伝える。ブエルと血縁がないことを話さなかったのはこちらのミスだがすっかり頭から抜けていたので許してくれと思った。
事情を聴いた夫人は納得してくれたが魔術師を雇うことはできないと言った。血縁なら筋があるもののそれ以外を特別扱いすれば全ての被害者に対して救済をしなければならず際限がないからということだ。
家を出て随分経つが俺も元は貴族社会にいたから血の繋がりが貴族に求められるのを一応は理解している。ひとまず捜索団に関しては資金を援助してもらえるということで納得することにした。全てを叶えてもらうのが厳しいのは分かっている。金はいくらでもあるわけではないからな。ブエルは死ぬわけではない。それよりも行方不明の4人を見つける方に力を注ぐのが優先事項でもあった。ここは引き下がるのが得策だろうと考えた。
ラトレイア家で解決が無理だと悟った俺は他の方面に助けを求めた。まずはシーローン王国にいるロキシーだ。俺の知る中で最も魔術に詳しくかつてラノア魔法大学で勉強していたと言っていた彼女なら魔法陣に対する知識があり助けてくれる可能性があると考えた。そこでロキシーの元へ速達で手紙を送った。返ってくるのは早くて半年、1年後には来るだろう。
元黒狼の牙のギースとも再開した。ギースは昔と同じ態度で俺に接してくれた。俺は頭を下げて家族の捜索らを依頼すると「あいよ」と言ってどこかへ行ってしまった。それから連絡は取れないがどこかで探してくれていると信じている。
俺はギルドに貼るメモを書き換えた。元メンバーへは状況の変化、ブエルが見つかったことと腕のいい魔術師を探していること。ルーデウスにはブエルを助けるために力を借りたい旨、現在地などの連絡を取り安全な場所から動かないことを強く書いておいた。
特に動かないことという部分は強調させた。ブエルの現在の状況は俺の油断が招いた。ブエルは村ではそこそこ強く生き抜く方法を知っていた。呪いもあって人攫いなどに捕まるヘマはしないだろうと考えていた。その結果がこれだった。
忘れていたのだ。まだ子供だということを。
その時考えた。ルディはどうだろうかと。アイツは昔から天才だと思っていた。思い出してみれば変なところで失敗するところもいっぱい見てきた。アイツにもできないことはいっぱいあった。ルディだってまだ子供なんだ。俺の元へ自力で来れるという考えは甘い。時間がかかってもいい。安全な方で行こう。
その時できることをした俺は捜索の日々へと戻っていった。それから捜索活動を行い転移された多くの人を救い出すことができていた。あれ以降家族に関する情報は一切なかった。だが心が折れることはなかった。ブエルとノルンがいるからだ。特にブエル。最初は塞ぎこんでいたがシェラたちのおかげで立ち直っていった。
立ち直ったのはラトレイア夫人の策によるものも大きい。幼い娘の状態を気の毒に思ってくれた夫人はカツラを用意してくれた。元の髪色とは違うがこれで頭を隠さずに外を歩けるようになった。呪いもあり視線に怯えていたブエルもそれを気にしなくなったことは大きな一歩と言えるだろう。
家族は揃っていないが俺は親としてやれることをしようと決めた。これから捜索の日々であいつらとの時間が減っていく。留守番させているだけではゼニスが戻ってきた時に合わせる顔がない。
ということでまずは学校へ通わせることにした。最初、ラトレイア夫人には貴族のための学校へ通わせることを提案されたがそれは断った。俺がかつて窮屈な体験をしたこともありよいイメージを持っていないことに加えて2人は貴族として育ててきていない。2人の状態では貴族からいじめられる結果を生むと考えた。
夫人は考えが変わればいつでも受け入れると言っていた。一応俺たちのことは気にかけてくれているのかもしれない。
というわけで2人は庶民向けの学校に入った。この街なら警察組織もしっかりしている。仲間もいる。もう2人が子供らしからぬ環境で生きる必要はなくなるだろう。これで俺は家族の捜索に専念できる。そう考えていた。
パウロはミリスに着いた後、ラトレイア家とコンタクトを取り援助を受けて活動を再開した。フィットア領の住民は続々と見つかり保護活動は順調に進んでいた。そんな保護活動は段々と暗礁に乗り上げるようになっていった。最初は人攫いなどならず者に捕まった人や転移した先で生活していた人が多く見つかっていたため捜索団への引き渡しは実力行使や交渉で解決できトラブルになることは少なかった。
その後時間が経ったことで売られてしまった人が増えてきた。そうした人は店や貴族の奴隷などの立場に置かれていたりする。その人はミリスの法律で合法的に取引されているため捜索団が強引に動けば不利になるのはこちら側だった。そのため交渉が行われるが中には応じてくれない人もいる。
パウロは転移したすべての人を助けると旗を掲げた以上やるしかなかった。時にはグレーな立ち回りをして保護していた。そんなことをすれば目を付けられるがラトレイア家の後ろ盾によりなんとか活動を続けていた。
捜索団のリーダーに転移された人がいる場所やラトレイア家との交渉。時には遠征とパウロは忙しくなり子供と過ごせる時間は減っていっていた。
「ただいま」
この日もパウロは数日ぶりに宿へ帰ってきた。遠くの町へ遠征があった。人身売買組織が捕えていた人たちを開放していた。
解放した人たちは自力で帰れない人がほとんどなので捜索団と行動を共にしている。おかげで人口は増え子供たちの面倒を見てくれる人もいるようになった。そのおかげでパウロは安心して遠征に出かけられた。
帰ってきた部屋は明かりがなく暗くなっていた。パウロは寝ていると思い物音を立てないように慎重に歩いた。
ふとドアの下から光が漏れているのが見える。寝室からだった。時刻は深夜起きているとは思えずロウソクの火を消し忘れたのかと思いドアを開ける。
3つあるベッドのうち埋まっていたのは1つだけだった。ベッドで寝ていたのはノルンだった。小さな寝息を立てて安らかな顔で寝ている。ブエルは机に突っ伏して寝ていた。頭の下には学校の教材とみられる資料もある。
(全く、)
頑張りやな娘にやれやれといった呆れも含む感情を持ちつつ風邪をひかれないようにベッドへと運ぼうと抱きかかえる。
昔より重くなった体に時間の流れを感じつつ横たえるとかけ布団を被せた。よっぽど疲れているのか起きることはなかった。
ふと教材の方へ目を向けると水滴がいくつかある。汚れてしまっては使えないので布を持ってきてぬぐっておいた。
次の日、3人は朝食を囲んでいた。
「2人とも学校はどうだ?」
パウロは何気ない会話の種として聞いた。
「うん!楽しいよ!」
ノルンは明るい声で答える。そして最近学校であった出来事を一つ一つ話していった。パウロもその話を聞いて一つづつ相槌を打ち娘が楽しそうにしていることに喜びを感じていた。
「ブエルはどうだ?」
「うん、勉強は大変だけど大丈夫だよ」
ブエルも同じように学校であったことを話していた。友達もできたらしい。ブエルはノルン以上に不安な要素が多かったため馴染めていると聞けて安心した。
俺たちは一歩ずつ前へと進んでいるとこの時は考えていた。ブエルの表情の陰に気が付いていなかった。