真剣であなたに恋い慕い   作:こぼ~ず

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小雪との過去編です。


『雨と雪が混じる時』

 

 

 

あの日の出来事は良く覚えているよ。

 

 

なんせあの日は初めてあの娘と出合った日だからね。

 

 

息子が一皮剥けた日?そんな事は覚えていないね。

 

 

 

 

 

 

 

一々覚えていたらキリが無い。

 

 

 

 

 

 

 

その日は珍しく天気予報が外れて昼過ぎから激しい雨が降っていた。

 

 

「ふむ、カオス理論天気予報より1時間早く降り始めたか…何か胸騒ぎがする」

 

 

 

 

そう、天気予報が外れるなんてのは特に珍しい事ではない。げじまゆお天気キャスターの話など話半分程度で聞き流すものだ。

珍しいのは岬越寺式カオス理論(そろばん使用)にわずかなズレが生じた事である。

 

 

 

 

「大抵こうしてズレが生じた場合は何かしらのイレギュラーが存在するものなのだが、それも極近くで」

 

 

そう考えながらも趣味と実益を兼ねた地蔵作りに取り組んでいると表の門が豪快に開け放たれる音がした。

 

 

「親父!いるか!?急患だ!!」

 

 

(珍しいな、怒気5・焦燥3・悲しみ2…か)

 

 

そうして息子の怒鳴り声から精神状況を読み取ると息子が待つ自宅の離れにある自身の診療所へと急いだ。

 

「親父!この子だ、見てやってくれ!」

 

するとそこには息子の学生服に包まれた白髪の少女が弱りきった姿で抱きかかえられていた。

 

「(アルビノ?それにあの手形は…)そこの診察台の上に寝かせるんだ、お湯を持って来なさい」

 

息子に指示を出すと急いで制服を脱がし少女の上着を脱がした、するとそこには…

 

「親父!これでいいか?…っ!?その痣は」

 

どうやら息子には少しショッキングな場面だったらしい。多少なりとも荒事に巻き込んだり修羅場は潜らせてはいるが日常生活の中で、ましてやこんな小さな女の子がこの有様では中学校に入ったばかりの息子には少し酷だったか。

 

「最近のガキは加減ってもんを知らねぇのか!?女の子をこんなになるまで痛めつけて挙句道路に放り出すなんて…」

 

「確かに最近の子供にそういった傾向が見られるのは確かだが、何でもかんでも子供のせいにするのはよくないな」

 

私は少女を触診しながら息子を落ち着かせるように言った、…どうやら読みは正しかったようだ。

 

「どうやら内臓がかなり弱っているようだ、おまけに栄養失調の兆候も見られる。そして…首の辺りを見てみなさい」

 

「首を絞めた跡、でも子供の手にしては大きい?」

 

「成人男性の手に比べれば指の跡が細すぎる…ということは」

 

「嘘だろ…自分の娘だろ!?」

 

「嘘か本当かを議論している暇は無い、我々に出来る事はこの命を紡ぐ事だけだ」

 

息子はそれ以上言葉を発しなかった。ただ己の本能のままに力を振るう輩は沢山見せてはきたがまさか自分の守るべきものを一方的に虐待するという存在を目の当たりにして動揺しているのか…

 

(整体を施して体の歪みは直せるが…剣星を呼んで漢方を処方してもらえば)

 

衰弱しきった少女を触診しながらそんな事を考えていた時だった。息子がいた後ろの方から吹きすさぶように暖かい気がこの部屋を満たしていった。

 

 

「……ごめんな、俺は何もわからないけどキミはきっと悪くない。キミはきっと何も間違っちゃいない。」

 

 

ゆっくり語りかけるように息子は少女に近づいた。私の横を通り過ぎる時、体中の細胞が活性化するのが感じて取れた。

 

(コレは、まさか…!?)

 

横になっている少女の手を握り頭を撫でる、ゆっくり慈しむように。

 

「もう大丈夫だ、キミはもう頑張らなくていい。ゆっくりありのまま生きていけばいいんだよ。」

 

息子の気が少女の身体を包み込む、その気の量は見ていて冷や汗が出るほどの量だった。

 

その気が少女の身体に少しずつ染み込んでいき少女は弱弱しく目を開き口を開いた。

 

「…もう泣いてもいいの?」

 

「いいよ、いくらでも泣いてくれ」

 

「もう黙っていても怒らない?」

 

「怒りなんてしないさ」

 

「……一緒に笑ってくれる?」

 

「……あぁ、これからは一緒に笑おう」

 

「……ふぇぇぇぇぇ~~~~~ん」

 

今まで押さえ込んでいた感情を吐き出すように泣き続ける少女を抱きしめ、息子は静かに泣いていた。頭を撫で、背中を摩り文字通り泣く子をあやしていた。

それからどれだけの時間が経っただろう、泣き声が静かな吐息に変わると部屋中に満ちていた気が二人に集まり、そして四散した。

 

「おっと」

 

さっきまで蚊帳の外にいた私だが流石に気を失い床に倒れそうな二人を放っておく訳にはいかない、抱き合っている二人を診察台に寝かせてようやく一息つく。

確認してみると少女の身体から痣が消え、弱っていたはずの内臓も正常になっているようだ血色も良い。あとは歪んでいる骨を後で整体してあげれば彼女の体調は万全になるだろう。

息子のほうはどうやら気の急激な消耗で眠ってしまったらしい。気の初めての発露でろくにコントロールも出来ていなかったようだし、気が少女の怪我を治したのは火事場の馬鹿力のようなものか。とにかく

 

「心のケアも上手くいったようだ」

 

息子の腕の中で眠る少女は今まで閉じ込めていた物をさらけ出すように満面の笑みで眠っていた。

 

「しかし、まさか龍掌(りゅうしょう)とは…」

 

私のカオス理論のズレはこの少女かそれとも息子の異能なのか…どちらにしろ

 

「ここからは大人の仕事だな」

 

 

私は知り合いの単身赴任中のサラリーマンと神の腕を持つ老人に電話を掛けることにした。

 

 

 

 

 

 

この日我が家に娘がやってきた。

 

 

そして息子が異能の力を解放した。

 

 

二人がこの先どのような道を歩むのか

 

 

それをそろばんを弾いて予想するのは簡単だが…

 

 

 

 

 

 

野暮な真似はよそう、自分の子供がどんな成長を遂げるのか。

 

それをワクワクしながら見守れるのは親の特権だからだ。

 

気がつけば雨は上がっていた。




ここで出てきた「龍掌」は天上天下から持ってきた設定ですが今作品では独自解釈を盛り込んでいます、また天上天下のキャラは出てこないのであしからず。
しかし小雪の親といい京の母親といい冬馬の親父といいロクな大人がいないんですが川神…
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