皆で楽しい食事が終わった後に小雪にこれからの事を説明した。
俺が当分の間修行漬けになり、小雪の相手が中々出来ないと話すと泣き出してしまったがお風呂と食事と寝る時は片時も離れないと約束し修行の間はアパチャイさんが全力で遊び相手をしてくれるという条件でなんとか手打ちとなった。
異国の地で心細いかもしれないがアパチャイさんがいれば大丈夫…だろう。
そんなこんなで慌しかった初日が終わりついに修行が始まった。
「さて、まずは気についての勉強じゃ。本能で発動させて3流、身体で覚えて2流、頭で理解してやっと1流といったところかの」
「はい、よろしくお願いします。早速なんですけど結局気ってなんなんですか?」
「気とは万物に宿るエネルギーの事ですね、地球上に生きる全てのモノに宿っています」
「全てって事は植物や石ころにも?」
「はい、その通りです。いい考えですね、普通なら人間や動物くらいまでしか考えが及ばないものです」
「いや、なんかうちに置いてある地蔵とか門とか時々怖いくらい存在感があるもんで」
「なるほどの、秋雨程の者が作り出す物なら気も篭り易くなるじゃろうて。材料が秋雨の選らんだ石や木なら尚の事じゃな」
「(家の門って親父が作ったのかよ…)人が作った物にも気が宿る事が?」
「うむ、かなりの才能が必要じゃがの。世にある名作などはそういった才気ある者達が作り出したものじゃ。見る者が見ればその作品に宿った気を見ることができるじゃろう」
「さて、気についての考察は簡単にこの程度でいいでしょう。今後専門的な知識については随時教えていきます。」
「そうじゃの、龍掌を教えるにしてもまずは基礎の気の操作から始めんとどうしようもないわい」
「わかりました」
「では、いきますよ」
「は?」
ズンと朧のこぶしが俺の鳩尾に綺麗に入ったと思うと
「グガァ…ガッ!」
体中の痛みから膝をつき四つんばいになる。体中の細胞から何かが吹き出ている、コレが気か。あの時は無意識だったからわからなかったがコレは…
「今あなたの鳩尾に私の気を少し流して強制的に気を放出させています。さ、コントロールしないと死に至りますよ?」
あれ?何この超スパルタ、まともに声も出ないから助けも求められないんですが。
「身体から吹き出ている気をまずは身体に纏わり付かせるイメージじゃ」
師匠の言葉をかろうじで聞き取り、身体から蒸気の様に噴出している気を身体に纏わり付かせる。ダメだ、この体勢じゃ集中できない。
「ギ、ガッガァッ…」
口から漏れる声は相変わらずだが無理やり立ち上がり自然体となった事でだいぶ楽になった…かも。
眼を瞑りどうやら起点となっている水月に意識を置き身体中に纏わり付かせていく。下から脚、股間、腰、腹、胸、喉、眉間、頂点の順に絞り上げるイメージ。
「ほぅ…」
「…流石ですね、物事の本質をしっかり把握している」
感心の声が聞こえるが今はそれどころじゃない。放出が止まり気が身体に留まっているからか痛みは徐々に引いているが腹の底がまだ熱い、緊張の糸を切ると留めている分一気に爆発しそうだ。
「もうすぐ私の気の影響がなくなる筈です、そうしたら水月に力を込め今纏っている気をそこへ収めてください」
「さっきの気を纏うのと同じ要領じゃ、大事なのはイメージ。集中せいよ」
確かに、さっきまで腹の底にあった熱さが引いてきている。だとしたらそれは朧の気だったのだろう、後はその熱が引いた所に一気に圧縮すればいいのか。集中…集中…
心を細くせよ 川は板を破壊できぬ 水滴のみが板に穴を穿つ
「なんと!?」
「……」
頭の中で紙でこよりを作るように集中力を細くしていく。
すると身体にあった熱が冷め、代わりに水月に暖かいモノが残った。コレが気か。
「これで気の発現は完了です、しかしまさかココまでのモノとは思いもしませんでしたよ」
「大したもんじゃ、最初はその身体の創りに驚いたもんじゃが今はその精神力に感心してしもうたわ」
「そのへんは親父と高槻のおじさんに叩き込まれたもんで、というかこの方法ヤバくないっすか?皆こんな事やってんの?」
「いや、大体の達人は修行の間に自ずと気をコントロールしていくもんじゃからな。今回は時間ももったいなかったし無理やり叩き起こした」
「殺す気ですか!!一歩間違えてたら俺バーン!ってなってましたよ!?バーンって!!」
「大丈夫じゃ、その時は世界最高峰の気法師の朧もおるし医者としてワシもおる。最悪のケースだけは免れたじゃろうて」
「最悪の一歩手前くらいは予想してたって事ですか!?」
「まぁまぁ上手くいったんですからいいではありませんか、それでは次にまいりましょう」
「展開はえーよ!俺さっき気を発動させたばっかりだよ!?」
「おやおや、修行を始めてまだ1時間も経ってませんよ?」
内容があんまりにも濃過ぎて時間の経過が…
「鉄は熱いうちに打てというじゃろ、ほれ外で朧と身体を動かして来い」
「筋トレ的な?」
「知っていますか時雨、昔の武術家は筋トレの必要が無いほど組み手をやったそうです。その方がより実戦に必要な筋肉が付くとか」
「そのやり方、弟子が100人いても一人残るかどうかって親父が言ってたぞ!」
そんな抗議の声も聞いてもらえず俺は売り飛ばされる子牛よろしく朧に表に連れて行かれた、笑顔だが眼が笑ってねーよ朧。
「コユキ~これがソーク・クラブよ~!!」
「わ~いぐるぐる~!」
向こうの方から小雪達が仲良く遊んでいる声が聞こえてきた、俺もあっちへ行きたい……タイ語わかんねーけどこっちで流行ってる遊びかな?
今回は習得にあたってまずは触りだけ、マジ恋内で見られる描写…空を飛んだり川神波のような飛び道具に関してはまた次の機会にでも~。