幻の夢を追いかける華 作:日振
家の中にある一つの金庫。築100年近い家に見合った年季の入った重厚感のある塊は、バラエティ番組で見られる様な大きさをしていて威圧感すら感じられる。
しかし、バラエティ番組と違って目の前にある金庫の鍵は掛かっておらず、錆びのあるハンドルへ力を込めれば簡単に音を立てながら扉を開く事が出来る。中身は既に整理されているのか、めぼしい何かが入っている事はなく、精々「何かが入っていたのだろう」と察せられる空っぽの箱が置かれている程度。
「……あれ?」
物珍しさから弄っていた金庫の中、一番下の薄い引き出しのみが動かない。古いものだから立て付けが悪いのかと思うが、感触的に何かが引っ掛かっている様だった。
引き出しをコツコツと叩いてみても中で上手く嵌ってしまっているのか、改善される余地はない。
「えー、気になるじゃん」
どうせ原因なんてガラクタによるもので、価値あるものが入っている筈はないと分かっていても、好奇心は湧いてしまうもので。金庫を弄っていた青年は近くで座椅子に座りお茶を飲む祖父へと顔を向ける。
「じーちゃーん! この開かない引き出し開けて良い?」
「あ? 開かねぇと言ってるじゃねぇーか」
「そうなんだけど、壊して良い?」
「壊すだぁ? まぁ、良いけどよお」
隠してあるものなんてないしな。
ガッハッハと豪快に笑う声を聞きながらヨシっと気合を入れ、その昔一瞬だけDIYに目覚めた時に購入した埃の被る工具を引っ張り出す。
取手を取り外し小さく残る隙間へとドライバーを入れ、中を掻き回す。思惑通り指先に何かが引っ掛かる感覚があって、諦めずにドライバーを動かす。
暫くして、思う様にならず破壊してしまうかと物騒な考えが頭によぎりかけた瞬間、ガコンと鈍い音が聞こえる。
まさかと思いながら、改めて外した取手を取り付けゆっくりと力を込める。
「……開いた、開いたわ! 爺ちゃん開いた!」
まず目に入ったのは引き出しの中、変な形に歪んだ棒があった。きっとそれが引き出しと金庫の壁、ほんの少しある隙間に嵌っていたのだろう。
ある意味で開かずの間を己の手でどうにかした達成感に包まれながら工具を箱の中へ戻そうとした手前、漸く引き出しの中に歪んだ棒の他、別のものが入っていた事に気付く。
持ち上げてみれば、博物館でしか見た事がない茶色くなった紙の様だった。四隅はボロボロになり、紙面には文字らしきものが書いてあるが鉛筆で書かれているものだからか、自然と色が薄まり、擦れ、読める状態にはなかった。
なんなんだこれはと今度は裏返し、目を見開く。
ただの古びた紙だと思っていたものは写真だった。今と比べたら画質が良いなんて言える筈もないカメラに写され、現像された内容は雰囲気から見てスーツを着た男性と、黒い塊。黒い塊といっても形的に動物で、馬である事は見ただけで分かったが、やはりというか画素数の少なさと経年劣化により馬である事と男性が写されている事しか分からなかった。男性の方も顔の判別までは出来なかった。
「じーちゃーん! 写真、写真出てきた!」
「写真だぁ?」
「そう! 開かなかった引き出しから! これ、馬でしょ?」
座椅子に座る祖父の元へ写真を持っていく。古さ的に、祖父なら分かるかもしれないと聞いてみれば、先程まで豪快に笑っていた様子から一転して祖父は酷く懐かしそうな表情に変わる。
「こりゃあ、俺のお父さんだよ。お前から見たらひいじいちゃんになるなぁ。懐かしい、これ、ボタンか」
「ボタン?」
「あぁ。今はもう高垣さんの方に全部任せてるけど、この家に一時期馬がいたのは知ってるだろ? それがこの馬、ボタンだよ」
「へぇ。それにしても真っ黒だね」
「昔のカメラだからなぁ、仕方ねぇ。でも、ボタンはこの後真っ白になって綺麗な馬だったんだ。珠子もボタンが好きだった」
「大叔母さん?」
「そうだ。家の手伝いしなきゃいけないのにアイツがボタンに会いたいって我儘言ったから帰るのが遅れて怒られたり……ほんと、振り回されたもんだ」
「そんなイメージないけどなぁ」
「こんな小さな子供の時の話だからな。今もそうだったら俺が困っちまう」
「そりゃそうか」
写真に釣られて色々な事を思い出すのか、祖父の表情は依然として穏やかだった。何度も何度もたった一枚の古い写真を見つめ、大切そうに手を添える。
「なんだ孫が変な事を始めたなぁと思っていたが、とんでもない収穫だったなぁ」
「変な事って」
「変な事だろうよ、いきなり何も入ってない金庫をまじまじと世紀の大発見みてぇに弄り始めるんだから」
「だって、こんな金庫テレビの鍵開け企画でしか見た事なかったし」
「家だけは古ぃからな」
ガッハッハと、豪快な笑い声が再び部屋の中に響き渡った。
1:名無しが適当語り ID:xxAA3QRvg
【朗報】アセビボタンの新しい写真が見つかる
https://x.
2:名無しが適当語り ID:G3pfIz4z5
圓谷牧場大歓喜やん
3:名無しが適当語り ID:tLMh8V3iW
向こう数日高垣さんは喜びで寝れなくなってそう
4:名無しが適当語り ID:KQZY/H0q0
アセビというかボタンの新情報が出る度に心配される圓谷牧場もとい高垣さん一家……本来は円谷さんの馬なのに……
5:名無しが適当語り ID:wZgao//aB
>>4その円谷さんとボタンちゃんに一番脳焼かれてる人から薄まる事なく原液のまま血が繋がっている家だからね、仕方ないね
6:名無しが適当語り ID:bX7Z+ZCqg
今はもう芳司さんからしたら曾孫の代の筈なんだけどなぁ
7:名無しが適当語り ID:W3B00VUDz
高垣さん、円谷さんの子供の代ならまだしも4代目だからね。どうなってんねん
8:名無しが適当語り ID:7sCCAhE2N
それだけの魅力が円谷巽さんとアセビボタンにはあったという事だけど、問題は情報が少ないから何と言うかこう、第三者的にはおもしれー家だと思ってしまう事だ
9:名無しが適当語り ID:Xhf7NDjJw
俺達は完全部外者だからしょうがないんだけど、それにしたって勢いが止まらないのは素直に凄いと思う。だからこそ今でもアセビの馬が活躍している姿を見れる訳だし
10:名無しが適当語り ID:OO7uqgvZx
今回の写真は円谷さんのお家にあったものを円谷さんが「新しく見つけたやで^ ^」ってわざわざ持ってきてくれたって事でしょ?愛じゃん……
11:名無しが適当語り ID:XE8X3wV+q
ネット上ではSNSをやっている関係上、高垣さんの強火エピソードをよく見るけど、今でも円谷さんのお家と普通に交流あって仲良しなの良いよね
12:名無しが適当語り ID:kEIcga9Su
少なくても1950年より前から「たつみ♡ほうじ ウチらまぢ一生仲子☆☆☆」をやってた片割れの血筋やからね。ちゃんと円谷さんの家からも矢印は向いているんだ……
13:名無しが適当語り ID:XbXV43jr2
もしかしてなんですけど、圓谷牧場(高垣家)に負けず劣らず円谷家もおもしれー家だったりする?
14:名無しが適当語り ID:Q6MBu8l4W
偶にポップする情報を見るにまぁ、はい
15:名無しが適当語り ID:nbxew1Lx8
ボタンが引退してから諸々を高垣家に移す事になって、その後は殆どお任せ状態だったのが唐突に桧さん(アセビデージーの馬主)が爆誕した家、それが円谷家だ
16:名無しが適当語り ID:pVr1Cvzen
しかも円谷桧さんはコウロの走りに脳焼かれて馬主になってるんだよな
17:名無しが適当語り ID:to3op92oz
アセビの馬が人間の脳を焼いて本家から新たなアセビの馬が生まれる良い循環
18:名無しが適当語り ID:B0pNAMU/F
そしてそれは今回新たに見つかったボタンから始まったと
19:名無しが適当語り ID:mXt8A5/gO
噂には聞いてたけど、マジで真っ黒。カメラの性能的に仕方ないけど、黒い塊にしか見えん
20:名無しが適当語り ID:j49+Lq3FD
クロノジェネシスもそうだけど、これだけ真っ黒な子が雪風の名前の通り真っ白になるの本当に不思議
21:名無しが適当語り ID:lPers6WRc
写真に写ってるのって人間の方は巽さん?
22:名無しが適当語り ID:OuJM6YDdL
>>21
そう
23:名無しが適当語り ID:b/rRbT/wR
円谷さん写真に写る立ち方だけでお上品だってのが分かる
24:名無しが適当語り ID:xuWGIQzJa
お上品だし、穏やかだし、懐もチャレンジャー海淵くらいある
25:名無しが適当語り ID:Q7Um/+KSv
芳司さんが結構巽さんとの思い出を話してるけど、色んな意味で凄い人だったらしいからね
26:名無しが適当語り ID:YurIrYXyo
お仕事以外の話だけでも強盗改心させて禊が終わったら雇ったり、家を動物園にしてたり、交流関係広過ぎたり、病気で動けないレベルなのにボタンの引退レースは無理矢理行ったりと短命ながらエピソードが尽きない人よな
27:名無しが適当語り ID:S9kNDM1W9
逆に短命だったからこそ、人生の中でゆっくり経験する事をギュッとされてたのでは
28:名無しが適当語り ID:xycsqRV2L
ゆっくり経験するといっても強盗に動じず論するのは肝が座ってる所の話じゃないよ
29:名無しが適当語り ID:AJSjGcVd/
アセビの祖が肝座りまくりのパパに愛されてたから、その後のアセビの馬達に気性難が生まれなかった疑惑
30:名無しが適当語り ID:YNvDKyE4N
>>29
否定は出来ない