幻の夢を追いかける華   作:日振

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クリスマスパーティーと年末に向けて

 

 クリスマスでも、クリスマスイヴと呼ばれる日でもない、何でもないただの平日。普段よりも早くトレーニングを終わらせたウマ娘のアセビボタンをリーダーとするチームシェアトのメンバーは、学園内に設置された自販機に寄り道をしながらチームで使用している教室へと戻ると、ジャージ姿のままいそいそと各自が持ち寄った袋やバッグの中身を広げる。

 焦茶色の木目の上に甘いものからしょっぱいもの、流行りのものから懐かしいものまでカラフルな袋が滑っていく。

 決められた訳ではないものの、自然と自分のポジションとなっていた椅子に座り、ボタンが一拍置いてから口を開く。

 

「……それじゃあ、乾杯」

 

「ンー」

「乾杯、ですー」

「かんぱ〜い」

「乾杯」

「か、かかか、かんぱい……!」

 

 ボタンを始め、スズナ、ルピナス、ロード、ツバキ、コウロの6人は机を囲みながら、お茶、紅茶、牛乳、ミネラルウォーター、コーヒー、人参ジュースと性格と好みに合わせた飲み物が入ったペットボトルや紙パックを合図に合わせて持ち上げた後、口を付けていく。

 6人全員がバラバラな飲み物を選び、机に広がるこれまたバラバラなお菓子へと無造作に手を伸ばし封を開ける。

 飲み物とお菓子、性格が現れ物によってはアンバランスな組み合わせになる中身を見つめながら、ボタンはシェアトのメンバーと過ごせるのが楽しくて、隠さずもせずに頬を緩ませる。

 トレーニング終わりのお楽しみ会は和気藹々とした雰囲気のまま時間は進み、ふと、ボタンがロードへと目を向ける。飛び出たのは、間近に迫ったお祭りの話題。

 

「ローちゃんは、有馬記念を見に行くんだっけ?」

 

 ポテトチップスを摘みながら問い掛けるボタンに、ロードは酸味の強いグミにキュッと目を閉じた後、有馬記念か、と復唱してから頷く。

 ムニムニと口の中に残ったグミを飲み込み、楽しそうに笑顔を見せる。

 

「はい〜。後輩が出るらしいんだね?」

「後輩って、ロードの後輩モ障害の選手ダロ」

「そうだね。うらもビックリしたんだね? でも、投票で選ばれたらしいんです。うらは鼻が高い!」

「投票カ。成る程ナ」

「投票と言えば、スーちゃんも有馬記念出れそうって話じゃなかったっけ?」

「直近の成績を知ッテいる癖に、全く酔狂なこった。だが、アタシはもう関係ネーからパス。それに、ファルコン先輩ガ来いってウルセーから、今年のクリスマスは園田ダ」

「あら、気を付けて行くんだよ」

「その言い方、アタシを子供扱いスンナ!」

「コウちゃんは?」

「オイ! 無視すんな!」

「わ、わわわたくしはですね! えぇと、そのぉ……今年は学園に残ってトレーニング的な!?」

「ルーちゃんと、一緒。ですねー」

「へェえ!?!?」

「んふふー、ちょっとばかしやらねばならぬ事がありましてー」

「そっか、怪我だけはしない様にね」

「先輩として、ちゃんと責任。持ちますねー」

「ルーちゃんもだよ?」

「はいー」

「あわわ……」

「ツーちゃんは?」

「吾は、そうですね……もう少し学園に残り用事済ませた後、実家に帰省しようかと」

「ツーちゃんはきっとそれが良いね。ちゃんと顔を合わせて、話しておいで。あなたの脚で辿り着いた成果を、ゆっくり話すんだよ」

「……はい!」

 

 一通りメンバー全員の予定を聞くと、ボタンは買った時よりは温くなったお茶を飲む。お節介な気質を持つボタンは、メンバーの中でもし、1人で冬休みを過ごす様な娘がいれば一緒にいようかと考えていたが、杞憂で終わった事実にホッと胸を撫で下ろす。

 持参した醤油味の煎餅をもう1枚手にして口に入れれば、ボタンの側に座るスズナが何やら企んだ顔をしながら珍しく肩を組む。

 

「っテ、言うけどヨォ。先輩はドウするんだ」

 

 スズナの言葉に、ボタンはんーと首を捻る。特にこれといった用事はないが、考えながら口の中に残る煎餅を咀嚼し飲み込んで、また少し考える。

 何か、面白いこと、珍しいことでもしようかと一瞬頭によぎったが、矢張りと言えば良いか突飛な考えは浮かばなかった。

 

「そうだね。実家に戻って、いつもみたいに家族や親戚の皆と宴会。かなぁ」

「フーン。面白くねぇの」

 

 スズナは平凡過ぎる程に日常的なボタンの答えに興味を無くすと直ぐに肩に回した腕を話し、目の前に残るお菓子に手を伸ばす。

 ボタンのチームは、他のチームと比べ名前が似ているウマ娘達がこれでもかと集まっており、共にトレーニングをしたり出掛けたりと仲も悪くない。しかし、特別なタイミングを共に過ごすという事が殆どなかった。

 一見すると机の上に広がるお菓子や、選んだ飲み物の様にバラバラだが、バラバラでありながらも仲良しなのに変わりはない為、関係を気にする者はいない。言い換えれば、仲良しだからこそ、普段は一緒にいない事も気にならない。

 ボタンが色々と頭の中に考えを巡らせて、勝手に考えていれば教室の扉が前触れもなく開けられる。分かり易く肩を揺らしたコウロと共に、扉の方へと目を向ければ見知った姿が立っている。

 

「すまん。遅れた、まだ間に合うか?」

 

 そう言って、チームシェアトのトレーナーである若旅伊吹がコツコツと床を鳴らす。

 その手には、自販機で買ったであろう缶に入ったコーンスープと、おつまみの様なお菓子が入った詰め合わせ。

 

「……ふふっ」

「どうした?」

 

 またしてもバラバラが増えた事実にボタンが笑えば、若旅は首を傾げる。ボタンは気にしないでと伝える様に手を振るが、改めてチームの個性の強さを再確認する。

 そして、十人十色なメンバーが集まったこの場所が大好きなのだと、言葉にしないまま尻尾を揺らした。

 

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