こちらはEO海域で勲章集め終わったら出撃しようと思います。
前回と同じく、前段で全力出して後段は丙丁かなぁ。
磯端総司令側は心労が重なったようだけど、巡視は無事に終わった。
滞っていたあれこれも進みそうだし、適性関連の情報開示も責任はあっちに移ったし。総司令は今後も見えない支援を約束してくれたし、桃箭島としては満足いく結果だった。
これでしばらくは通常業務以外の書類作成から解放される。鎮守府としては一段落ついた。となると、次のことも考えないといけない。
そんなわけで、その日の夜。一部の艦娘に集まってもらった。場所は懐かしの仮本庁舎だ。
総旗艦大和、事務方代表大淀、食堂代表間宮、工廠代表明石、そして各艦の代表として戦艦霧島、軽空母鳳翔、重巡足柄、軽巡天龍、駆逐艦吹雪、海防艦稲木、潜水艦伊58。
「じゃあ、桃箭島鎮守府運営会議を始めよう。ひとまず不定期で、こうして集まろうと思う。鎮守府の方針を考えるための意見交換や提案が主な目的だ。各艦代表については暫定だから、今後の増加に応じて変更してくれていいよ」
内容はともかく、課業内じゃないから口調も崩して開会宣言をする。
「稲木、もう少し肩の力を抜いても大丈夫だから」
緊張してガッチガチの稲木に声を掛けると、更に固くなってしまった。そのうち慣れるかな。
「まずは今日の巡視の報告から。横須賀本鎮守府総司令の磯端大将と面談し、情報共有と今後の方針について話し合った。桃箭島というか、俺にちょっかいをかけてる『敵』について目星がついたので、後で掲示板で周知する」
「誰なんだ、そいつはよ?」
腕を組んでいる天龍が鋭い視線を向けてきた。鳳翔と吹雪も厳しい顔だ。
「海軍省の軍務局局長、財尾中将とその派閥らしい。ただ、現時点で俺との接点が判明していない。みんなが直接接触する機会はまずないだろうけど、把握だけはしといて」
「まだるっこしいわね。ガツンとやれないの?」
「こちらから手を出したら負けでしょう。総司令が自ら調査の指揮をしている意味を考えなさい」
物騒なことを言う足柄を、霧島がたしなめた。
「まぁ、そっちは基本的に総司令任せだ。俺達は日々の任務に励み、何かあれば報告し、火の粉が降りかかった時には払う。それでいい」
対処しかできないというのが現状だ。桃箭島単独で打って出るなんて政治的にも武力的にもできるものじゃない。ただし、
「そのための牙は、研ぎ澄ませておかなきゃな」
苦難を跳ね除けるための力は必要だ。足柄、天龍が獰猛な笑みを見せた。好戦的だなぁ。
「次。先の話だけど、横本で大規模演習が開催される。うちも参加しなきゃならない。どれだけ連れて行くことになるかは分からないけど、いくらかは本土に行くことになる」
大和と吹雪、大淀以外が、おぉ、と声を漏らした。やっぱり今の本土への興味はあるよね。
「そこで大淀。頼みがある」
「何なりと」
「うちの艦娘達に、常識を教えてやってくれ」
「……はい?」
少しの沈黙の後、大淀が首を傾げた。他の皆もだ。ありゃ、通じなかったか。
「知識のアップデー……更新だ。沈んだ当時の知識と常識しか持ち合わせていない者達に、『今』を教えてやってほしい。吹雪はその補佐を」
言い直すと、皆納得したようだ。これは、今の帝国の本土を知る艦娘にしか頼めない。となると、横本で教育を受けている大淀と吹雪だけになる。曙達は……どうなんだろ、確認してなかったな。
「とはいえ、何をどこまで教えましょう。横本で私が学んだことでよろしいですか?」
「そうだな。本土を普通に出歩け、自らトラブルに突っ込まないようになることが目標だ」
あと、トラブルに巻き込まれた時の対処法とかね。そういうの、本土にマニュアルがあるんじゃないかな。
「離島で隔離しているようなものだから、今の人の営みは見せたい。世界は違っても、みんなが戦い、守ってきたものだ。演習時に全員は無理だけど、順次送り出していこう」
「「分かりました、お任せください」」
大淀と吹雪が力強く頷いた。後は任せて大丈夫だろう。
次に工廠代表へと視線を移す。
「明石。総司令から、飛行艇の晴空を回してもらえることになった。水上機用の駐機場整備を頼む」
「ついに来ますか! 楽しみですねぇ。どこに建てます?」
「主に輸送用で本土への連絡用にも使うことを考えると、動線を確保できるのが望ましい。ただ、海も含めた地形によるところもあるから、折り合いのつく場所で。ゴーヤ、沿岸調査はどのくらい進んでる?」
「島周りの近い所の水深と海底の質は調べ終えてるよ」
話を振られると思ってなかったのか、少し驚いた様子だったゴーヤは、それでも質問にすらりと答えた。
「じゃあ明石に協力して、いい場所を選んでくれ。陸上部分については、ある程度の地形変更を許す。砲撃訓練のついでに切り崩してもらっていい」
「提督。その作業でしたら、艦載機の訓練にも使わせてもらえませんか?」
鳳翔が小さく手を挙げる。あぁ、
「うん、必要に応じて手を貸してやってくれ。そういうことで明石、頼む。林野火災だけは気をつけてな」
桃箭島は緑豊かなので、爆撃や砲撃で必要以上に燃えたりしたら大変だ。
「了解です。立派なのを建てますよ!」
明石が意気込む。開発より建築のほうがやる気出てそうだなぁ。暴走まではしないだろうけど。まぁ、次に行こう。
「で、次はさっきも触れた大規模演習の件だ」
ピクリと足柄と天龍が反応した。ほんとにもぅ……
「うちの場合、俺の適性で底上げされてる分、練度以上の働きが期待できるわけだけど、参加者をどう選べばいいと思う?」
「演習の規則はどうなっているんですか?」
霧島が挙手した。
「艦種や練度、装備の制限はない。模擬弾を使用し、撃破は判定で行われる」
「でしたら一番強い艦をそれぞれ選出するべきかと。戦艦、空母、重巡、軽巡、駆逐と一通り揃えておけば、尖った運用はできなくとも対応力は上がります。この辺で一発ガツンとやっておきたいですね。対外的な意味で」
なるほど、バランス型ってことか。でも、対外的な? どういう意味だろう。
「提督、適性の件は総司令にお伝えしたのですよね?」
「うん、教えた」
「でしたら、演習で桃箭島の艦娘の強さがおかしいことには気付かれるのではないでしょうか」
「多分。総司令も同じ考えだった。だから演習後に周知する運びになってる」
「では、しっかり暴れて度肝を抜いてやりましょう。世間で噂されている無能な提督などどこにもいない。それを鵜呑みにしている者こそ無能なのだ、と」
淡々と言う霧島の表情に動きはないけど、彼女なりに俺の現状を憂いてくれているのは分かった。
「無能云々はともかくとして、演習後は結果関係なく、反応は変わるだろうな」
中尉に昇進してるし、適性のこともあるし、噂関連でも牽制するって総司令も言ってたし。あとはどれだけよその連中が察することができるか、だ。一旦の『選別』もその時にするみたいだし。
「そういうわけだから、しばらくは周囲の『雑音』を我慢してくれ」
そろそろ話を戻そう。
「とりあえず、演習参加については大和、鳳翔、天龍、吹雪は確定とする。各艦種の練度最上位で、改修可能になってるからな」
大和はただ頷き、天龍は満面の笑みを浮かべ、吹雪は少し緊張した顔になり、
「あの、提督。私で良いのでしょうか?」
鳳翔が、不安げに聞いてきた。
「演習までに龍驤の練度がお前に届くかは分からないけど、そうなったとしても変える気はない。何せ、大島と当たる可能性もあるんだから」
そう言うと、鳳翔がハッとする。そう、お前を無能扱いした
「単独で戦うわけじゃない。勝ち負けのある話ではあるけど、負けたからと言って沈むわけでもなく、経験として次に活かせる。だから気負うことはない」
「はい、頑張りますっ」
いや、だから気負わなくてもいいと言うに……
「提督。演習までに新規建造の予定はあるの?」
足柄がギラついた目を向けてきた。重巡枠は今のところ青葉と足柄だけだから2択ではある。参加したいんだろうな。
「重巡を狙って建造する予定は今のところないけど、できてしまう可能性はあるな。選抜戦をやりたいか?」
出たければ勝ち取れ、という意味だ。足柄なら乗ってくるだろう、そう思ったのに、
「……提督がそれを望むならそれでもいいけど、判断は任せるわ」
意外な答えが返ってきた……どうした、体調が悪いのか?
「何よその目はっ!?」
「日頃の言動を省みなさい」
心配したら吠えられた。そこに霧島がツッコミを入れる。最初が最初だったし、今も訓練で突っかかってくるから仕方ない。
「失礼しちゃうわねっ。これでも提督の判断を信じてるのよっ」
俺の決定なら従うってこと? それは……なんか嬉しいな。今なら青葉のほうが強いと思うけど、先は分からない。やる気にもよるし。
「まぁ、残りの選定は追々だ」
今すぐ決めなくちゃいけないわけでもない。よく考えるとしよう。
「で、次の議題だけど……懇親会をやろう。巡視に係る資料作成や日々の訓練・任務遂行への慰労を兼ねて」
あと歓迎会。結局、まだできてないままだし。
場が静かになる。あれ?
「転任組は今も古参との接触が限定的だしな。こういう機会で交流してもらえればと思ってる」
転任組はいくつかのグループに分け、古参がそれぞれに付いて指導する形をとっている。顔を合わせる機会はあるものの、個別の交流をする機会が今は少ない。同じ鎮守府で共に戦う仲間なんだから、もう少し広く関わりを持ってもらいたいんだ。
「総司令からの差し入れもあるからそれらも振る舞う予定だけど、懇親会用の料理は俺も参加したい。頑張る皆へのご褒美だからな」
「それ、司令官が作りたいだけじゃ?」
……そうでもあるがぁぁ……
「労いたいという心に偽りはないよ」
吹雪のツッコミに、表情を変えないまま答えると、間宮が笑った。
「そうさせろと命令すればいいのに、あくまで提案なんですね。提督らしいです」
「確かに提督の料理は、褒美としては艦娘・妖精に効果大のようですし、いいのでは? 実力を知らない子のほうが多いですし、この機に知らしめてもいいと思います」
大淀も賛成してくれる。というか、期待の目を向けられた。そういえば大淀も知らないんだったか。ゆで卵はノーカンで。
「楽しみでち!」
「あ、あの、稲木も興味があります……」
ゴーヤが賛成し、稲木も控えめに挙手する。よし、いい流れだ。
「皆が提督の料理の味を知ったら褒美としての価値も上がりますし、提督が料理をする名目も立ちますし、いいんじゃないでしょうか」
そして鳳翔からも援護が。ここまできたら、却下されることはないだろう。
「まぁ、そろそろ提督にも気分転換が必要でしょうけど」
一部の目が一斉にこちらを向いた。気遣うような雰囲気が伝わってくる。
「気分転換が逆効果になりませんか?」
大和の問いかけに、古参達が、あー、と声を漏らした。え、何が?
「まぁ、そこは後回しにしましょうか。提督、方針は?」
と、何やら棚上げするようなことを言って、大和が聞いてくる。何が後回しなのか気になるけど、話を進めよう。
「立食形式にしようと思う。そのほうが皆との話もしやすいだろ。料理は大皿に載せて、好きな物を取っていく感じだ。飲み物は準備だけしておいて、後はセルフで」
「料理はどうとでもなります。差し入れの件、食料も来てましたから」
間宮が言った。お、そうだ。
「料理に、お菓子を加えられるか? 試作してる引換券用のあれだ。一口サイズで、食後のデザートにちょっとずつ摘める感じで」
ケーキバイキングというか、ホテルの朝食バイキングのプチデザート的な。イメージとしてはそんな感じ。
「「大丈夫です」」
間宮と鳳翔が顔を見合わせ、同時に頷いた。できそうか、それなら良かった。実施前に味を知ってもらえれば効果も増すだろうし。
「ところで提督が仰っていた磯端総司令からの差し入れとは? 食料以外もあったのですよね?」
「酒だ」
鳳翔の問いに答える。日本酒とビールが半々といったところ。ノンアルはなかったから、そちらをどうするか。ラムネは作れるとして、後はお茶とかでいくか。今後の課題かな。
「銘柄は?」
「日本酒は賀茂鶴と千福。ビールはキリン」
「あら、懐かしい」
と大和が声を漏らす。
「そうなのか?」
「海軍御用達でしたから。変わらず残ってるんですね」
そういえば今までここで飲んだ日本酒は違う銘柄だったか。御用達だったということは、乗組員の記憶として銘柄を知っている艦娘も多いんだろう。
「それでは日本酒とビールに合うものを主軸に作りますか?」
「他の種類の酒も少しはあるし、酒は飲まない者もいるだろうから、幅広く作ってみようか」
分かりました、と頷いた間宮が、あ、と声を漏らした。
「妖精達はどうしますか? 艦娘と一緒にとなると、今の食堂では狭くて難しいですけど」
妖精さんか。彼女らも桃箭島の一員だ。当然仲間外れにする気はないけど、場所の問題かぁ。艦娘と妖精を全員収容できる部屋はさすがにないし、作るのも厳しい。晴空の駐機場ができればできなくもないけど、それは先の話だし。
「妖精達を蔑ろにするわけにはいきませんから、妖精達の懇親会を別に開催してもらっては?」
「そうだな。懇親会用の料理等はこちらで準備させてもらって」
霧島の提案に頷く。一部だけこちらに参加だと不公平になるからそれがいいか。ただ、妖精さん達の人数が分からないと適切な量も分からないから、俺達のより事前の準備が必要だな。
「提督には2回出席してもらうことになりますが」
「そうですね。司令官がいないと、拗ねてしまうかも」
大和と吹雪が笑う。そう? 妖精さん同士でワイワイやるほうが彼女らも気楽だと思うけど。
まぁ、そういうことなら、その方向で行こう。