「その、正直何の迷惑をかけたのかはよく分かっていないのですが、迷惑をおかけしてすみませんでした。」
初手謝罪。
「構わないわ。ちょっとウチの子に取り憑いていただけ。」
「結構なことだと思うんですけど......取り憑かれた子は大丈夫でしたか?」
「えぇ、問題ないわ。今は湯に浸かってゆっくりしているところよ。」
「そうでしたか。」
なんかあっさりしてるなぁ。でも問題が解決したならいいか。
「でもそうねぇ。どうしてそうなったのか、説明くらいはして欲しいわ。」
「あ、はい。」
どう説明したらいいんだろう。とりあえずふわっとでいいかな。
「私は死に関することを知りたかったんです。そのことを
私はあの奇妙な体験を
「不思議な体験だわ~。」
「は、はい。そうなんです。」
満足していただけたのだろうか。
「でも一番不思議なのは死に関する情報を集めていること。あなたはきっと、幻想郷の者ではない。」
「はい。外来人の霊らしいです。」
「どうして霊と思い込んでいるのか不思議でならないわ。」
「違うのでしょうか?」
「さぁ?あなたが私にどれだけ話してくれるかで変わるのかも。」
「別に隠しているわけではないんですけど......」
難しいなぁ。どこまで話すべきなんだろう。何か知っていそうだし......いや、もう全部話そう。最悪なのは情報が足りずに新たな情報が出ないこと。
「今から全部話すので、気になったことがあれば後で質問していただければと思います。まず私は練炭自殺をしまして__」
この世に未練がなく自殺をしたこと。そうしたら変な場所に出て
「あ、巫女さんってことはもしかして
「こわいわぁ。ひとの目の前で次の殺人計画を練るだなんて。」
「いえいえ、そんな。元に戻るだけですよ。」
「あそこは手ごわいわよぉ?神様ばかりなんだから。」
「むしろ好都合かもしれません。邪魔に思って消されるなら万々歳ですし。」
「うふふ、無敵って素敵ね。」
「無敵ではないですけど、何故か消えることができないんですよね。」
とりあえず全部話したけど......なんだか
「その、できれば
「あら?言ってなかったかしら。」
「直接聞いたことはないです。
「そうよ。私は
「め、冥界って、あるんだ......!」
「知らずについて来たのね。どう?知ったら帰りたくなったかしら。」
「いえ、むしろ運がいいと。」
「ふふ、そうよね。だってあなたは消えたいんだものね。」
「はい。あの、冥界パワーで私を消したりはできませんか?」
「もう試したのだけれど、結果は残念♪」
「そうですか......」
どうして私のことを消そうとしたんだろう。
「幻想郷では霊は成仏できないのでしょうか?」
「そんなことはないわ~。」
「うーん。外来人の霊だから......?あっ、私は霊なのでしょうか?」
「さぁ、どうなんでしょう。もし外来人の霊だとしても成仏はできるわ。」
「成仏しても困るんですけどね。外来人かどうかで変わるものではない、と......」
「そうとも限らないわ。」
「えっ?」
意外な情報が出てきそうな気配に、つい
「あなたが大嫌いな
でも、と
「その美しい仕組みに
「え、そこ私に聞くんですか?うーん、知りませんけど......」
話の流れ的には外来人かなぁ?
「外来人、ですか......?」
「うふふ......♪」
正解かな?
「そうでしたか。私利私欲に使われるというのは弱肉強食だとして、
「その二つを分けるから分からなくなるのよ~。」
「......」
弱肉強食って生前の話じゃ?それが死後の
「利用されるのは生きている時、で大丈夫ですかね?」
「半分正解。頑張って。」
「半分ですか?じゃあ死んでいるときもってこと、ですか?」
「あら、ペケが増えて不合格になりそう。」
「うーん。」
自分で考えろってこと?それとも正解から遠のいたのか。正解から遠のいたとして......半分なのに死後の時間は含まないの?生きているけど死んでいるみたいな?なんか、私と逆だ。肉体が死んでて生きてるのが私だから、肉体だけ生きてて中身をすっぽ抜かれた外来人が
「その、生きている人の中身ってすっぽ抜けますかね?」
「えぇ、もちろん。」
「そのすっぽ抜かれたものが誰かに消費されたら、どうなるのでしょう?」
「さぁ?少なくとも、
「それを幻想郷の人間にやるのはダメなんですか?」
「あら、次の標的は人間かしら?」
「標的にする理由なんてないですよ。」
「理由があればやるだなんて、あぁこわい。こわいわぁ。」
「あはは......」
なんというか、断片的にしか情報をくれないなぁ。しかもこの情報は何に使えるんだろう。これは
「あの、死ぬじゃないですか。霊になるじゃないですか。巫女さんに
「えぇ、そうね。」
「成仏しない霊なんているんですか?」
「小道具を使うような子なら、成仏しないかもね。」
「小道具......?」
「少なくとも、あなたにその知見があるようには見えないわねぇ。不思議ねぇ。」
「はぁ。」
「誰かに守られているのかしら?」
「いえ、守られる前にちゃんと死ぬまで見つからないよう細工して」
言葉はそこで止まった。守られているという言葉を聞いて、巫女さんに抱えられた私の姿を思い出したから。
「......ぁ。」
「あら?」
そう、生前の話じゃない。
「妖夢、入って来て大丈夫よ。」
「す、すみません。
私の問題はすべて幻想郷で起きている。
「ありがとう。妖夢、あとで話があるわ。」
「うっ、すみません。」
問題の原因もきっと、幻想郷にあるんだ。
「ねぇ、これ見て。あなたの柏餅よ。」
「ゆ、
私が最終的に目指さなきゃいけないのは
「あむあむ......」
「......私は失礼しますね。」
「
もうひとりの私を幻想郷の中で殺すこと自体、リスクが高い行為なんだ。アレを外に連れ出すことさえできれば、別に私は一つになる必要すらないのかも。むしろ変に状態を変える方が怖い。もうひとりの私を外に連れ出して一緒に死ぬ。これが私にとって最善のプラン。
「
「
「あ、お食事中でしたか。あの、結局分かったことはひとつもありませんでした。でも、今後の方針が決まりました。ありがとうございます。」
私には幻想郷は難しい。生前の世界以上に、よく分からない仕組みが絡み合っているのだろう。その仕組みを熟知するとしたら、一体どれだけの時間がかかるだろうか?考えるだけで身震いしてしまう。十数年を生きることすら辛かったんだ。私にそんな時間は耐えられない。一点集中で、できるだけ早く死にたい。死ナセロ。
トン、と音が聞こえた。気付けば
「お茶でもどう?」
「え?あ、ありがとうございます。」
話の場に軽食はつきものだ。脳が舌から受け取った刺激に反応して、幸福と同じ信号を弾き出す。その信号が話し合いが上手くいっていると錯覚させ、中身の良し悪しはともかく良い時間だったと円満で解散するのが談笑というものである。つまるところ、談笑に必要な軽食を用意したのにも関わらず、未だ届ける素振りを見せない
『その美しい仕組みに
「......」
「(
『外来人、ですか......?』
掴みどころがない。
『あなたも本当に
『はい。』
あの時は
「(自信に満ちていた訳ではなかった。かといって不安も見られなかった。あれは、
それにしても何が起こるか心底興味なさそうな顔をしていたなと
「(この子からは未練の一切を感じない。この子の言うもうひとりの方に集まっているのでしょう。)」
相反する気持ちや、不要と捨てられたものが自我を持つことは起こりうることだ。
「(消滅したくない気持ちが導き出した答えが記憶喪失。ふふ、おかしいわ。死にたい方、死にたくない方、そのどちらも自分の人生を否定しているだなんて。)」
不要になった心が自我を持つのなら、分裂した双方から否定されている者はどこにいるのだろうか。
「(きっと、もうひとりいるわ。死にたいとも、死にたくないとも思わない。それでいて、自分の人生を受け入れている子がどこかに。)」
「(違うわね。死にたい自分と、死にたくない自分を追い出しているのが三人目の本質かしら。)」
となると三人目は言わば
「(この子は常に死に、常に生まれていたのね。)」
死そのものである
「(あらあら。この子の目の前でこの仮説が出てくるのは心が痛いわ。)」
考察を一旦区切り、先ほどから動きが止まっている
三人目を知らない
「(供給があるのに繋がりが見えない外来人の霊。それ即ち......)」
「(もしかすると幻想郷に穴があくかもね。のんびりしていると
答えを察した